地球から遠く離れた、遥か彼方の暗黒星雲……
そこは、兇悪無比な怪獣たちの集う全宇宙の悪の総本山。
悪名高き、「怪獣軍団」の本拠がある場所である。
そして、それらの怪獣たちの頂点に……
完全生命体・イフが、強大な超能力とパワーにものを言わせて
計り知れぬ恐怖とともに、絶対の支配者として君臨。
「怪獣魔王」と呼ばれ、文字通り「畏怖」されていたのであった。
おお、今ここに……
怪獣魔王・イフは、自らのもとに集った幾多の凶悪怪獣らに向かって
恐怖の大号令を発しようとしていた!
「魔王様! 魔王様!」
「ありとあらゆる怪獣を束ねるに相応しきお方……
暗黒星雲の支配者、我らが怪獣魔王・イフ様!」
「万物に優れ、万事を見通す魔王様!」
「我ら、魔王様の忠実なる配下は……
ご命令を、今や遅しと待ちわびております!」
「わはははは……よくぞ申した、皆の者!」
イフ「では怪獣どもよ、改めて聞けぃ――
ワシは汝らの総帥、怪獣魔王イフである!」
イフ「今こそこのワシの名のもとに、我ら怪獣軍団が
太陽系の青い惑星……美しい地球の真の支配者として、
地球人どもになりかわり君臨する時が来たのだ。
左様、今こそ地球征服の時だ!!」
「やってやります、やらせてもらいますぜ、魔王様!」
「俺たちの力をもって臨めば、あんな惑星の一つや二つ……
そりゃもう、あっちゅー間に制圧してみせますとも!」
イフ「その意気やよし、その言葉を待っておったわ――」
イフ「ようし、ならば行けぃ!
怠惰な平和を貪る地球人どもに、恐怖を教えてやるがよい。
我らが威力、今こそ全宇宙に示せ!!」
「ウォォォォーッ!!」
怪獣魔王の大号令に、意気上がる凶悪怪獣の群れ!
魔王の意を汲んだ、いずれ劣らぬ一騎当千の荒くれ大怪獣たちは
暗黒星雲を飛び立って地球の各地に散り、地球征服の野望に向け
早くも行動を開始したのであった!
「ガンガオォォーッ!!」
「ギギッ、ギッギュォォ~ンッ!」
「グゥオォ~ンッ! 散れ散れ、地球人ども!
怪獣サマのお通りだァ!」
岩を砕き、山をかき分け、波しぶきをあげ……
或いは空や宇宙の彼方から、続々と姿を見せる「危険なやつら」。
ありうべからざる巨体、ありうべからざる異形!
威勢の良い咆哮とともに、次々と世界各地に現れる大怪獣たち。
平和な時の中にあった地球の人々にとって、それは突然すぎる
絶対の「驚異」にして、「脅威」そのものであった。
姿かたち、生まれ育ちは違えども、その邪悪な心と凶暴な破壊衝動は
地球……いや、全宇宙に破壊と混乱をもたらす「悪」の根源たることに
何ら変わりはない。
その目指すところは、ただひとつ。
人間たちの文明を徹底的に破壊し、地球を完全に征服して
自らがその新たな支配者として君臨することなのだ!
イフ「わははは! そうだ、それでよい!
実に痛快だぞ、我が自慢の頼もしい配下どもよ――」
「おおっと! 魔王様、魔王様……
あと一頭、俺をお忘れじゃござんせんか~い!?」
怪獣軍団の送り込んだ地球侵略の第一陣。
その中の一頭は、ここ……
日本列島の最北端、北海道の「空の玄関口」として広く知られる
千歳市のど真ん中に、今その姿を現さんとしていた。
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
大地が揺れ、舗装道路がメリメリと割れ裂ける。
夥しい土砂を噴き上げ、地上にその巨大な姿を現した者とは!?
「ギシャウゥゥ~ッ!!」
「ちょ、うそっ、まさか……か、怪獣!?」
「(ボソッと)おお……これまた、めっちゃ……サプライズ」
「ギシャウ~ッ……驚け、騒げ、地球人ども!
もう間もなく、この千歳って街は地図から消えてなくなるんだ。
怪獣軍団の一員、このゴルゴザウルス様の手でな!」
イフ「わはは! いいぞいいぞ、暴れろ! 大いに暴れろ!
怪獣軍団の威力を見せつけてやれ、ゴルゴザウルス!」
ゴルゴザウルス「ギシャウゥゥ~ッ! お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受けて意気あがり……
今、猛然と進撃を開始した巨大星獣ゴルゴザウルス!
獰猛そのものなその巨体を前にして、千歳の人々はただただ狼狽え
右往左往し、逃げ惑うより他に術はない。
おお……北海道千歳市、絶体絶命の大ピンチ!
だが、そんな危機を、ただ黙って座して見ている人類ではない――
直ちに航空防衛隊の空の精鋭たちが、ゴルゴザウルス迎撃のために
「ようし、行くぞ! 全機、怪獣への一斉攻撃開始っ!」
怒濤のような、ロケット弾の一斉射撃!
だが、その連続炸裂にも、ゴルゴザウルスの侵攻は止まらない。
ゴルゴザウルス「ギシャウゥゥ~ッ、雑魚はすっこんでろィ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ゴルゴザウルスが口から吐き出す灼熱火焔!
その直撃を受け、戦闘機隊は一機、また一機と撃墜されていく。
巻き起こる連続爆発! 吹き飛ぶ建造物!
今や千歳の街は、おぞましい破壊の地獄と化しつつあった!
ゴルゴザウルス「ギシャウゥゥ~ッ、どんなもんだィ!
この俺様の力にかかりゃあ、こんな地方の辺鄙な街なんざァ
それこそ半日もかからないうちに……」
「はっはっはっ……おおっと、それはどうかな!?」
ゴルゴザウルス「(驚き)だ、誰だっ!?」
朗々たる声で、そう呼びかけた者……
ゴルゴザウルスの足元、この大怪獣と真っ向から対峙する位置に
「彼」はいた。
ゴルゴザウルス「ハハァ~ン、どこの馬の骨か知らねェが……
お兄さんよぉ、怪我どころじゃ済まねぇ目に遭う前に
大人しく尻尾巻いて退散した方が、利口だぜぇ?」
「ちょうどね、それと同じことを――君に勧めに来たのさ」
ゴルゴザウルス「(ギロッと睨んで)……何っ!?」
「君が誰の差し金で、誰のためにこんな事をしているのかまでは
残念ながら、私には判らんけどね。
……だが世の中、往々にして……
悪行の報いとしっぺ返しは、どこかで必ず巡ってくるものさ」
ゴルゴザウルス「野郎っ、ナメた口叩きやがって!
このゴルゴザウルス様を何だと思ってやがる!?」
激昂し、猛然と「彼」に向かってくるゴルゴザウルスの巨体!
「聞く耳持たずか……ならば、やむを得ん!
行くぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
まばゆい光に包まれて……
「彼」の全身が、みるみる巨大化を遂げたではないか!?
「トゥアーッ! 宙マン、参上!
千歳の街での乱暴狼藉は、この私が決して見過ごしてはおかないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ゴルゴザウルス「ゲゲェッ――ちゅ、宙マン……だと……!?」
「宙マン」。
その名を聞いて狼狽したのは、千歳において実際に彼と対峙した
ゴルゴザウルスだけではなかった。
「おいおいおい、宙マンってまさか……」
「かなり前に現役引退したって言う、、「銀河連邦」の英雄か……!?」
イフ「ぬうっ、あの姿、あの声……
間違いない、あやつは確かにプラネット星の宙マン……!」
宙マン「ああ、そうとも、宙マンだ――
現役引退して久しいが、目の前での悪事はどうにも見過ごせない
どうにもおせっかいな性質(たち)の、どこにでもいるような
ごくありふれた、何の変哲もない一介の千歳市民さ!」
ゴルゴザウルス「ぐぬぬっ……いちいちツッコまねーぞ!?(汗)」
ゆったりとした腕のモーションとともに……
ゴルゴザウルスに対して、敢然と身構える「彼」こと宙マン。
ゴルゴザウルス「ギシャウゥ~ッ、上等だコラ! 勝負だ!」
宙マン「いいだろう、とことん相手になってやる!」
かくて幕を開ける、巨大サイズのスーパーバトル……
宙マン対ゴルゴザウルス、時間無制限の一本勝負!
巨大星獣の繰り出す爪の一撃を、クロスガードで受け止める宙マン。
だが、その威力の前に、緑色の巨体がずずっと後退する――
ゴルゴザウルス「ギャルル~、どうした宙マン、噂ほどにもねぇなぁ!?」
宙マン「はっはっはっ……いいや、まだまだこれからさ!」
余裕たっぷりの言葉とともに……
巨大星獣の脇腹めがけ、しなやかな鞭のような勢いで叩きこまれる
宙マンの華麗な浴びせ蹴り!
ゴルゴザウルス「ぐ、ううっ……!」
宙マン「どうしたね、威勢がいいのは最初のうちだけかな!?」
ゴルゴザウルス「ギャルル……野郎っ、ナメやがって!」
怒り、口から灼熱火焔を吐き出すゴルゴザウルス!
だが宙マンは、華麗なまでのアクロバティックな身のこなしで
ひらり、ひらりとその一閃を回避していく。
ズガーン! グワーンっ!
ゴルゴザウルス「こ、この野郎っ、ちょこまかと……!」
「どぉれ、お返しさせてもらおうか――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ゴルゴザウルスの顔面に爆発が起こる。
たまらず、巨大星獣がドドーッと倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゴルゴザウルスを直撃!!
ゴルゴザウルス「ギャ、ギャルルッ、こりゃまた激辛ぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぐぬぬぬぬっ……おのれ、おのれぇぇっ、宙マンめ!
ここにきて、またしてもあやつが……
あのプラネット星人めが、ワシの邪魔をすると言うのかっ!?」
かくして、ここに。
緑色の巨人・宙マンの活躍によって、大怪獣ゴルゴザウルスは撃退され
ひとまず、千歳の危機は去った。
そして、戦いを終えた宙マンを迎えたもの、それは――
「うふふ……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
「怪獣騒ぎも一段落したことっスし……
みんなで飯にするっスよー、宙マンのアニキ!」
「はうはう~、今日のお昼はカレーライスなの~♪」
宙マン「おおっ、そりゃ有難いねェ、是非そうしておくれよ――
久々に巨大化して戦ったもんだから、すっかりお腹がペコペコさ!」
地球へ向け、侵略の魔手を伸ばす怪獣軍団!
そして、その野望の前に敢然と立ちはだかった
千歳市民・宙マンとは……果たして、何者!?