「今こそこのワシの名のもとに、我ら怪獣軍団が
太陽系の青い惑星……美しい地球の真の支配者として、
地球人どもになりかわり君臨する時が来たのだ。
左様、今こそ地球征服の時だ!!」
暗黒星雲の支配者、怪獣魔王イフの命を受けて奮い立ち……
その目的たる地球征服を成し遂げるため、海から、空から、地底から
次々に現れ、世界各地を蹂躙する怪獣軍団。
もはや向かうところ敵なし!
……と思われた怪獣どもの傍若無人な大進撃は、しかし意外なところで……
日本の北海道・千歳市と言う一地方都市で、その出鼻を挫かれた。
そう。
「彼」こと、宙マンの存在によって!
と言ったところで、場面は変わって……
こちらは、怪獣軍団が本拠をおく暗黒星雲。
思わぬ形でのしっぺ返しをくらって、怪獣魔王・イフの怒りは
早くもクライマックスへと達しつつあった。
イフ「ぐぬぬぬっ、おのれ、おのれぇ……宙マンめが!
よりにもよって、あのプラネット星人めが……
ワシらのやろうとすることを、又しても邪魔だてするか!」
「宙マン……
かつて「銀河連邦」の英雄と呼ばれ、数々の武勇に輝いた男……」
「だが、その英雄も既に現役を引退して久しいってハナシでしたが……」
イフ「(忌々しげに)……まさか、この地球で楽隠居を決め込んでおったとはな!」
怪獣魔王や怪獣たちが、ここまで怖れ、憎悪を燃やす「宙マン」。
果たして、彼は一体何者なのであろうか?
彼・宙マンの故郷……それは、地球から1972万光年の彼方にある
地球によく似た美しい惑星「プラネット星」である。
彼らプラネット星人は豊かな知性と高度の科学文明を有し
惑星の平穏な気候と、日々の平和にも恵まれていたのだが……
今から約1万年前、怪獣たちを率いて全宇宙侵略の大号令を発した
伝説的な巨悪・エンペラ星人と、その懐刀として陣頭指揮を執った
極悪宇宙人・テンペラー星人の侵略の魔の手が伸びたことによって
その平和が危機に晒されたことがあった。
だが、彼らプラネット星人たちは、プラネット星系の太陽から降り注ぐ
天然のディファレーター光線によりもたらされた数々の超能力と身体能力、
更にはM78星雲人やエメラルド星人、M星人らの助力をも受けて
見事にこの侵略者たちを撃退してみせたのであった。
それらプラネット星出身の宇宙戦士たちの中にあって
「2000年に一人の逸材」と謳われ、数多くの侵略者や悪魔結社を
次々に打ち砕いてきた、プラネット星始まって以来の英雄――
まさにそれこそ、我らのヒーロー「宙マン」なのである。
彼は「銀河連邦」の一員として、錚々たるヒーローたちとの親交を深め
同時に持ち前の正義感とスーパーパワーを惜しみなく発揮することで
数々の宇宙の悪と渡り合ってきたのだ。
イフ「いかに現役を退いたとはいえ、奴めの実力が決して侮れないことは
先のゴルゴザウルスの戦いで、皆もよく判ったであろう――」
イフ「……ワシもまた、現役時代の奴とは幾度となく干戈を交え、そのたびに
どれほどの煮え湯を呑まされ、癪に障る思いをさせられてきたことか!」
イフ「正に宙マンこそは、ワシら怪獣軍団にとって最大の邪魔者。
地球を征服するためには、何が何でも取り除かねばならない障壁だ!」
イフ「行け! 勇猛なる怪獣軍団の戦士よ!
直ちに地球へ向かえ……そして、宙マンを倒すのだ!」
「ひらららら~、お任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命が下り、新たな刺客が地球を目指して飛び立った。
危うし地球、危うし宙マン!
……さて、その宙マンは今、どこでどうしているのだろう?
数々の戦いを潜り抜け、ヒーローとしての現役を辞した彼は
「銀河連邦」からの莫大な報奨金を元手に、地球へと渡って
ここ・北海道千歳市に移住。
千歳市・ほんわか町5丁目に購入した、ご近所の人々からは
「宙マンハウス」の通称で呼ばれるこの家で、同居人らとともに
呑気で、賑やかで、そして楽しい暮らしをしていたのであった。
既にお馴染み、宙マンをはじめとして……
そんな「宙マンハウス」の専属メイド、落合さん。
「宙マンハウス」の居候その1、スケベで間抜けな電波怪獣ビーコン。
同じく居候その2、無邪気で可愛いマスコット的な友好珍獣ピグモン。
彼ら「宙マンファミリー」が、この物語の主要登場人物である。
落合さん「さて、と。
お昼ご飯も、美味しくいただきましたことですし……
さしあたり、この後はいかが致しましょうか?」
ビーコン「ヒヒヒ、そんなの決まってるじゃないっスか!」
ビーコン「飯のあとに美味しく頂くのは女体、コレに決まってるっしょ!
ハァハァハァ、さぁ落合さん、オイラと愛のウデタテフセを……♪」
げ し っ !
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……かなり痛かったっスよ、落合さぁん」
落合さん「そうでしょうとも、痛くしてるんですもの。
……全くもう、のっけから何です、このエロ怪獣はっ!」
ビーコン「いやいや、それもまたオイラの愛すべきところ……」
落合さん「(呆れ)“べき”って何です、“べき”って!?」
ピグモン「えう~、落合さんとビーコンちゃん、またやってるの~」
宙マン「たはは、本当にあの二人はねぇ……。
仲がいいやら、悪いのやら!(苦笑)」
と、そんな実のない言葉の応酬もまた、彼らにとっての日常。
だが、そんな平穏な時間を破るかのように……!
ゴウンッ!
落合さん「!!(ハッと空を見上げる)」
ビーコン「……な~んか、嫌な予感しかしないっスねぇ!?(汗)」
ズゴゴゴグワーンっ!
耳をつんざく大音響とともに、千歳市の上空から猛スピードで飛来し……
一直線に落下、千歳市内の地面に激突して大爆発を起こす赤い球体。
濛々と吹き上がる、赤い噴煙の中から立ち上がったのは!?
「ひぃ~ら、ひらひらぁぁ~っ!!」
ピグモン「あっ、何か出てきたの!」
落合さん「……怪獣ですわ!」
「ひらひらひら……惜しいなぁ、半分だけ正解だ。
私は怪獣軍団の一員、宇宙怪人・ササヒラー様であ~る!」
宙マン「……怪獣軍団だって!?」
落合さん「(思い当たって)いま、世界中でブイブイ粋がっておられる……」
ビーコン「(頷いて)こないだの奴のお仲間、ってことっスよォ!」
ササヒラー「ひ~ららら~、その通り!
我々怪獣軍団の地球征服のためには……
宙マン、お前がどうしても邪魔なのさ。
……四の五の言わず、黙って地獄へ堕ちるがいい!」
ピグモン「えう~、何だかとっても嫌~んな感じなの~!(涙目)」
宙マン「ううむっ、これはどうやら……
昼食後の腹ごなしが、今すぐ必要みたいだねぇ」
落合さん「(心配そうに)……お殿様っ!」
宙マン「(にっこり)大丈夫だよ、直ぐに済ませるから。……
さぁ行くぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!
ビーコン「いよっ! 出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「お殿様、素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「既に現役引退の身だ……私は、無益な争いは好まない。
馬鹿な真似はやめて、大人しく宇宙へ帰りたまえ!」
ササヒラー「ひぃ~ららら、ここでおめおめ引き下がれるか!
お前が戦いに応じないなら、それでよし……
その代わりに、千歳の街を徹底的に破壊してやるまでだ!」
宙マン「やっぱり聞く耳持たずか……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
宙マン「行くぞ、怪獣ササヒラー!」
ササヒラー「だ~か~ら~、私は“宇宙怪人”だってーの!」
激突、宙マン対ササヒラー!
落合さんたちが見守る中、巨大バトルのテンションは早くも最高潮に。
じりじりと相手の隙を伺いながら間合いを取り……
真っ向からぶつかり、しのぎを削る両者のパワーと格闘技!
両手を激しく打ち振り、チョップ攻撃を仕掛けるササヒラー。
それに怯まず、宙マンもまた果敢に相手の内懐へ飛びこんでいく。
宙マン「トゥアっ!」
宙マンのストレートキックが、宇宙怪人の脇腹にヒット!
さしものササヒラーも、これにはたまらずズズッと後退。
落合さん「(拍手しながら)今のは上手いですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、このまま一気に押しまくるっスよ!」
宙マン「ああ、もちろんそうするつもりさ!」
ササヒラー「ひらららら……調子に、乗るなーッ!」
ササヒラーの怒りそのもののように、勢いよく吐き出される破壊ガス!
宙マンはその全身にガスを浴びてしまい、そして……!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「ああっ、お殿様!?」
ビーコン「シャクだけど……結構効いてるっスよ、今の攻撃!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、負けちゃいや~んなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
ササヒラー「(嘲笑)ひらひらぁ~、ざまァないな宙マン!
銀河連邦の元・英雄も、現役じゃなけりゃ所詮こんなものさァ!」
「いいや、まだまだ……勝負は、これからさ!」
宙マン、パワー全開!
ササヒラーの破壊ガスを、ひらりとかわして大空へ。
ササヒラー「(驚愕)な……何とぉぉっ!?」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
人呼んで、「電光石火の必殺技」。
エネルギーを集中させ、真っ赤に燃え上がった宙マンの足先が
ササヒラーの胸板を射るかのように炸裂!!
ササヒラー「ひら~り、ひらひら……こ、こ、こりゃタマラ~ンっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
……だが、その時である!
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
轟く雷鳴、きらめく稲妻!
まばゆいばかりのスパークとともに、千歳上空で実体化した巨体は
他でもない、空間跳躍で宇宙を駆け抜けてきた怪獣。
否、怪獣の中の大怪獣……怪獣魔王・イフであった!
ドっスぅぅーンっ!!
イフ「おのれぇぇ……一度ならず二度までもやってくれたな、宙マン!
だがこれしきの事で、怪獣軍団に勝ったと思うなよ……
真の恐怖に震えおののくのは、これからなのだと知るがいい!」
イフ「ワシら怪獣軍団は、あくまでも地球を諦めぬ決意だ。
これからも次から次へ、新しい怪獣を送りこみ
必ずや地球をワシのものにしてみせる!
よいか、覚えておけ宙マn……」
イフ「……って、あれっ?」
宙マン「ふぅ~、これにて一件落着、っと!」
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!
まずは、お茶とお菓子で一服致しましょう♪」
ピグモン「はうはう~、おやつ、おやつの時間なの~♪」
ビーコン「やー、一服もいいっスけど、それよかオイラは落合さんと一発……」
げ し っ !
落合さん「その先を口になさったら、本気で鉄拳制裁ですわよ!?」
ビーコン「……ひ~ん、制裁してから言わないで欲しいっス~(汗)」
宙マン「はっはっはっはっ」
「……あの~……。」