遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
緑の地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへ向け、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの地球に迫るのだ!
イフ「にっくき宙マンを倒せ! 地球を攻め落とせ!
我が怪獣軍団の誇る、一騎当千のつわものどもよ……
そのための支度は、既に整っておろうな……!?」
「えぇ、勿論でございますとも、魔王様!」
イフ「おおっ、ゾネンゲ博士! では、次なる使者は――」
ゾネンゲ博士「(頷き)既に、地球への侵入を果たし……
魔王様のご命令を、今や遅しと待ちわびておりまする」
イフ「よしよし、大いに結構。そうでなくてはならん!」
ゾネンゲ博士「地球侵略の功を成し、怪獣界に一旗挙げんものと……
やる気に満ち、燃えに燃えている頼もしい奴めにございます。
その旺盛なハングリー精神にかかれば、今度こそ……!」
イフ「ううむっ、ますますもって素晴らしい!」
イフ「やる気とハングリー精神、そこがますますもって気に入った。
模範的怪獣像の何たるか、示してもらおうではないか!」
ゾネンゲ博士「輝かしき戦果にご期待下され、魔王様!」
イフ「ぬふふふっ……わははははは……!」
おお、何と言うことであろう!?
新たなる戦慄は、今この瞬間にも迫りつつあったのだとは。
危うし地球、危うし宙マン!
だが、ひとまずそれはそれとして――。
毎度おなじみの舞台、北海道千歳市。
これまた毎度おなじみの宙マンファミリー、今日は心地よい陽気と
青空に誘われ、揃って街まで出てきていたぞ。
ピグモン「はうはう~、とってもいいお天気なの~♪」
ビーコン「あったかいのを通り越して、軽く汗ばむくらいになってきて……
春から初夏へ、初夏から夏へって感じっスねぇ!」
宙マン「だからほら、見てごらんよ、街の様子も……」
落合さん「えぇ、皆様、とっても活き活きしてらっしゃいますわ」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラだって、オイラだって!
もうね、ここ数日は活き活きを越えた“ビッキビキ”で……」
落合さん「(赤面)……ちょ、何ですの、藪から棒に!」
ビーコン「いやいや、棒は藪からじゃなくって、むしろ股からっス!
つーか、そんなに疑うってんなら……
今から見せてあげるっスよ、オイラのビッキビキ!?」
落合さん「そう言う問題じゃありませんってば!
全くビーコンさんったら、昼間から何て言う寝言を……」
ビーコン「うつし世は夢、夜のうつつこそ真実(まこと)。
ヒヒヒ、江戸川乱歩ならぬエロかわ●ンポと呼んでくれていいっスよ!」
落合さん「な~るほど、そうですか、そう来ますか。
ではどうぞ、ご遠慮なく夢の住人におなりあそばせ――
今から私が眠らせて差し上げますから。永遠に!!」
ビーコン「どひ~っ、真顔で指をボキボキ鳴らさねーで欲しいっス~!(汗)」
セクハラ発言への制裁が、拳の一撃となって炸裂しようとした時。
そう、事件はまさに、そのとき起こった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「ど、ど、どひ~っ!」
落合さん「あらあら、まぁまぁ、これはまた……!?」
その激しい震動こそが、恐るべき怪獣出現の前奏曲なのだ。
大地が揺れ、舗装道路がメリメリと割れ裂ける。
激しく土砂を巻き上げ、地中から猛然と立ち上がった巨体とは!?
「ガブルルゥゥ~ッ!!」
ピグモン「あっ、地面から何か出てきたの!」
落合さん「あらまぁ、やっぱり怪獣さんでしたのね!」
ビーコン「つーか、今度のヤツは、一体……!?」
宙マン「ううむっ、恥ずかしながら……私も初めて見る顔だねぇ」
「ガブガブガブ~、だったら今から教えてやるぜ。
怪獣軍団の一員にして、最強の戦士……
大怪獣・マジェリス様とは、俺様のこった!」
宙マン「(首を傾げて)……んー、申し訳ない、やっぱり判らんよ!」
今、千歳の街にその恐るべき姿を現した大怪獣マジェリス!
極めて現存する資料が少なく、一部文献の記述のみにとどまる
所謂「名古屋出身組」の一角を成す希少種の怪獣なのである。
ビーコン「なぁんだ、マイナー中のマイナー枠っスかぁ」
落合さん「道理で、滅多にお見かけしないお顔だと思いましたら!」
マジェリス「ガブルル~、何とでもほざくがいいさ!」
マジェリス「だがなァ、そんな評価も今日を境にひっくり返るぜ――
この俺様が見事、千歳を制圧したその暁にはなァ!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱやらかす気マンマンっスか!」
ピグモン「きゃああんっ、ピグちゃん怖いの~!(涙目)」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「おおっ、その意気だ、素晴らしいぞマジェリス!」
ゾネンゲ博士「これ、この通り、魔王様も見守っておられる――
存分に働き、名を上げるがよいぞ、マジェリスよ!」
マジェリス「ガブガブルルル~、やらいでか~っ!」
猛然と進撃を開始する、大怪獣マジェリス!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
落合さん「もう、せっかくのんびり出来ると思ってましたら!」
ビーコン「ひえぇ、人生はキビシイっスねぇ!(汗)」
怪獣マジェリスの出現で、たちまち大パニックの千歳市。
だが、こんな緊急事態を、防衛隊は放置などしない――
直ちに陸と空の精鋭が、最新鋭の装備でスクランブル!
落合さん「あらまぁ、防衛隊の皆様!」
ビーコン「なんだかんだでやっぱ、来てくれると嬉しいもんスねぇ!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし、総員……怪獣への、一斉攻撃開始だっ!」
上空から、そして地上から。
防衛隊・渾身のダブルアタック作戦がマジェリスに炸裂する。
「ようし、効いてる、効いてるぞっ!
このまま攻撃の手を緩めず、怪獣をこれ以上前へ進めるな!」
マジェリス「(嘲笑)ガブルル、お前らの目は節穴か~っ!?」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
げに恐るべきは、マジェリスが口から吐き出す火炎!
その洗礼を受け、一機、また一機と撃墜されていく戦闘機。
マジェリス「ガブガブ~、そらそら、どんどん行くぜぇっ!」
巨体と怪力に物をいわせ、傍若無人に暴れ回る大怪獣。
千歳市の平和は、今や風前の灯であった!
ビーコン「どひ~、今日もまたまたエラいこっちゃっス!」
落合さん「これでは、まったり・のんびりどころではございませんわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)ああ、分かっているとも!
まぁ、見ててくれ――宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うマジェリスの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の悪党め、これ以上はもはや容赦しないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~! アニキ最高、千両役者っス!」
落合さん「今日もまたまた、頼りにさせて頂きますわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
マジェリス「ガブルルル、とうとうお出ましだな、宙マン!
これは却って好都合ってもんだぜ――
お前をブチのめせば、マジェリス様の名もますます上がるからな!」
宙マン「さぁて、果たして思惑通りにいくかな……!?」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
マジェリス「ガブルル~、この野郎! 勝負だ宙マン!」
宙マン「ようし、私もとことんやらせてもらうぞ!」
真っ向激突、宙マン対マジェリス!
落合さんたちが見守る中、両者の死闘は早くもヒートアップ!
地底を「掘り進む」ことに特化した、螺旋状の全身を大きく震わせ……
持ち前の凶暴性全開で迫るマジェリス。
何しろ功名心に燃えているから、怪獣の攻撃は猛烈そのもの。
それを左右にいなし、時に両腕のパワーで抑えこみながら……
宙マンもまた、冷静に反撃のチャンスを伺う。
マジェリス「ガブルル~、なかなかやりやがるなっ!?」
宙マン「いいや、まだまだこれからさ――それっ!」
空手チョップ、そして回し蹴り!
宙マンの連続攻撃を食らって、大きく後退したマジェリスである。
宙マン「どうだマジェリス、参ったか!?」
マジェリス「ガブルル~、まだまだだ、これでもくらえ~っ!」
マジェリスの口から、勢いよく吐き出される火炎の奔流!
街を吹き飛ばし、宙マンの巨体をも大きくよろめかせる。
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
ピグモン「はわわわっ……ちゅ、宙マンっ!?」
落合さん「火炎噴射なんて、ありふれた攻撃だと思っておりましたら……」
ビーコン「や、案外「効く」んスよ、そー言うオーソドックスなテが!(汗)」
ゾネンゲ博士「おおっ! その調子その調子、いいぞマジェリス!」
イフ「そのまま一気に、宙マンへとどめを刺すのだ!」
マジェリス「ガブルルル……魔王様たちも、ああ仰せだ。
悪いが死んでもらうぜ、宙マン!」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
マジェリス「ガブルル~、そらそら、とどめだァ!」
宙マン「……まだまだ、本当の戦いはここからだ!
くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、マジェリスのボディで激しい爆発が起こる。
ピグモン「はうはう~、すごいの、すごいの~!」
ビーコン「っしゃ、こうなりゃもう……」
落合さん「(笑顔で頷き)完全に、お殿様のペースですわね!」
マジェリス「く、くたばりやがれっ!」
怒り、火炎を吐きかけるマジェリス。
だが宙マンは、その一閃をジャンプでかわして大空へ!
マジェリス「(目をパチクリ)が、ガブルルルルッ!?」
宙マン「マジェリスよ、悪の栄えた試しはないと知れ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクルキックの燃える足先が、マジェリスの胸板を叩き割るように炸裂!
マジェリス「……こ、こんな筈じゃなかったのにぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、アニキ、やっぱ流石っス!
落合さん「えぇ、何と申しましても私の……
あぁ、いえいえ、私たちみんなのお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぬぬぬ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、怪獣軍団の真の恐怖は、この程度では収まらぬぞ。
この次こそは……目にもの見せてくれるわ~っ!」
……などと言う、毎度毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、恐るべき威力の大怪獣・マジェリスは
その野望もろとも粉砕され、千歳に平和が蘇ったのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~」
ビーコン「やー、一時はどうなるかと思ったっスけど……」
落合さん「お殿様のおかげで、万事きれいに落着しましたわ。
これで、心置きなくゆっくりできると言うものです」
宙マン「うん、そうだねぇ、是非ともそうしたいもんだ。
でも、特に何もせず、ただゆっくりしているだけって言うのも
それはそれなりに腹の減るものでねぇ」
ビーコン「……あ~、なんか分かるっスよ、その感じ」
落合さん「ましてお殿様は、あの激闘の後ですものねぇ」
落合さん「わかりました、ではおやつ代わりの軽食ということで……
どこかで軽く、ラーメンでも頂いていきましょうか」
宙マン「おおっ、有難いねぇ、是非ともそうしてもらえると!」
ピグモン「はうはう~、でもでも……
今からラーメン食べちゃったら、お夕飯が入らなくなぁい?」
ビーコン「ヒヒヒ、なんのなんの!
そん時ゃそん時で、運動してハラ減らせばいいんスよ~。
具体的には、オイラのビッキビキを有効活用して……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、そっちに話を戻すんじゃありませんっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、結局今回もこうなっちまうんスねぇぇ~っ」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン。
さてさて、次回は一体……
どんな冒険が、皆を待っているのかな?