遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
地球を虎視眈々と狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
今日も、怪獣魔王・イフの命令が配下の怪獣たちに飛ぶ。
また恐るべき侵略の魔手が、我々の青い故郷の星に迫るのだ!
イフ「ワシら怪獣軍団の大いなる目的……他でもない、地球征服。
今度と言う今度こそ、その夢を現実のものとする時なのだ――
さぁ、今ぞ起て! 勇猛果敢なる怪獣軍団の戦士よ!」
さて、こちらは毎度お馴染み北海道千歳市……
その象徴とも言うべき、清き流れの千歳川流域。
怪獣軍団から送りこまれた、新たなる破壊の使者。
液体大怪獣コスモリキッドは、この川のほとりにて既に行動を開始していた。
おお、見よ!
緑色の燐光に包まれた怪獣の輪郭が、滲むようにぼやけて歪み……
そのままその身が液体と化して、ドロドロと溶け流れていったではないか。
まさにこれこそ、コスモリキッドが「液体大怪獣」と呼ばれる所以。
千歳川の源流から、今、静かに侵略の魔手が迫りつつあるのだ。
危うし地球、危うし宙マン!
……が、それはひとまずさておいて。
さて、コスモリキッドが人知れず行動を開始してから四日後……
こちらも毎度お馴染み、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」である。
宙マン「ええっ――魚が釣れない!?」
宇佐美さん「そうなんですよ、今年はまるっきりダメだねぇ。
釣り糸を川に落としてもそれっきり、、うんともすんとも言いやしない。
今までこんな事なかっただけに、軽く自信なくすよねぇ~」
……と、「宙マンハウス」のリビングで、宙マンたち相手にボヤいたのは
ほんわか町内で電気店を営んでおり、ご近所づきあいの中にあっては
名うての釣り名人としても知られる宇佐美さんであった。
ピグモン「はわわわ……宇佐美のおじさん、元気出してなの~」
ビーコン「弘法も筆の誤り、河童の川流れ。
……ま、たまにゃこんな事もあるっスよ、旦那」
宇佐美さん「うん、こんな事言うと負け惜しみみたいでアレだけど……
何て言うか、この釣れなさ加減は異常だよ。ありえないもん」
みくるん「う~ん……どう思いますぅ、宙マンさん?」
宙マン「町内きっての釣り名人、宇佐美さんの感じた異常だからねぇ。
長年の経験に基づくものだろうし、そこは傾聴に値するかなぁ」
落合さん「ここ数年の、異常気象の影響でしょうか?」
ビーコン「もしくはアレっスかね、またまた怪獣軍団の仕業かも……」
「ギギョギギギ……その通り!」
ビーコン「へっ!?……なんスか、なんなんスか、今の声!」
落合さん「あらまぁ……ちょっと「種明かし」が早すぎませんこと?」
不意に響いてきた不気味な声に、すわ何事と外へ出てみた宙マンたち。
ふと見れば……川の水面が、緑色の妖光とともに不気味な瘴気を撒き散らし
ブクブク、ゴボゴボと異様な泡立ちを見せているではないか!
みくるん「(鼻を押さえて)うっ、何これ、このニオイ……」
宙マン「えらく生臭いな、尋常じゃないぞ!」
ピグモン「(全身の鰭を逆立たせ)……か、怪獣なの、怪獣のニオイなの~!」
そう、まさにこれこそ液体大怪獣が姿を見せる前兆。
緑色の水柱となって噴き上がり、一気に巨大・実体化するコスモリキッド!
「ギギョギギギぃぃ~っ!!」
みくるん「(怯えて)きゃあぁんっ、やっぱりですよぅ、やっぱり!」
ながもん「あれは……液体大怪獣……コスモリキッド」
ビーコン「さっすが読書家、相変わらず詳しいっスねぇ!」
ピグモン「……って、感心してる場合じゃないと思うの~!(涙目)」
コスモリキッド「ギシャシャシャ~、その通り、コスモリキッド様だ!
これから先、この名前は永遠に忘れられくなるぜ――
千歳の街を、世界地図から消し去った偉業の担い手として、な!」
ビーコン「どひ~っ、毎度毎度、いつものパターンっスよぉ!(汗)」
落合さん「何度やって来ようと、結局はお殿様にやっつけられるんですから……
怪獣軍団の方々も、少しは懲りて下さればよろしいのに!」
コスモリキッド「ギギギギ、何とでもほざけ!
液体化して千歳川の流域に潜み、千歳川を泳ぐ魚をたらふく食って……
今の俺様は、全身にパワーが漲ってるんでィ!」
ビーコン「(呆れ)魚を……たらふく、って……」
落合さん「あらまぁ、なんてハタ迷惑な!」
宇佐美さん「これでは難を逃れた魚も、怖がって隠れちゃうわけだよ!」
宙マン「そうか、そう言う事か。……全て、お前の仕業だったんだな!」
コスモリキッド「ぎっしっし~、その通り、シャンゼリゼ通り~♪」
イフ「わははは! ようし行けぃ、今こそ行くのだ、コスモリキッド!
全身に蓄えたパワーを爆発させ、思う存分に大暴れしろ!」
コスモリキッド「ギョギョ~ッ、有難いご命令ですぜ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するコスモリキッド!
迫る巨体を前にして、千歳市内はたちまち大パニックに。
ビーコン「どひ~っ、魚は根こそぎ食われるは、デカい図体で暴れるは……
これじゃオイラたち、踏んだり蹴ったりじゃないっスかぁ!」
宇佐美さん「(頭を抱えて)全くもう、色んな意味で勘弁してよ~!」
落合さん「いけませんわね……これは本気で、千歳の大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛りたつコスモリキッドの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
液体大怪獣コスモリキッド、お前の好き勝手にはさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「あー、やっぱここ一番で頼りになるのはアニキっスねぇ!」
落合さん「えぇ、安心感の度合いが全然違いますわっ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
コスモリキッド「ギギギギ~、出たな、宙マン!
どこのどいつだろうと、邪魔する奴は容赦ァしねぇぞ!」
宙マン「そうかね……だったら、私も手加減無用で行かせてもらおうか!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
かくしてここに、今日も世紀のスーパーバトルが開幕する――
真っ向激突、宙マン対コスモリキッド!
千歳川の魚をたらふく食べて満腹し、元気モリモリの液体大怪獣。
全身にエネルギーをみなぎらせ、猛然と宙マンに襲いかかってくる。
太い両腕で、パンチ攻撃を仕掛けてくるコスモリキッド。
その勢いに押されながらも、決して相手に呑まれることはなく……
猛攻をかわしながら、冷静に相手の隙を伺う宙マンである。
コスモリキッド「ギヒヒヒ、どうしたどうした、そんなもんかァ!?」
宙マン「なんの、なめるなよ――宙マン・パンチを受けてみろ!」
大怪獣の頬げためがけて、真正面からのストレート!
小細工抜きの鉄拳をまともに食らって、たまらず倒れるコスモリキッド。
ビーコン「っしゃ、バッチリ! 今のはいいパンチだったっスねぇ!」
宇佐美さん「うん、うん、さすがは宙マンさんだ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ファイトいっぱつなの~♪」
落合さん「このまま一気に決めちゃって下さいませ、お殿様!」
宙マン「液体大怪獣コスモリキッド、悪に勝利はないと知れ!」
コスモリキッド「ギギギ……覚えてやがれ宙マン、この次は必ず……!」
捨て台詞とともに、コスモリキッドの全身が緑色に変色。
再び液体化して、川の流れに紛れて逃げ出すつもりなのだ!
みくるん「ふぇぇ、そうなったら手の出しようがないですぅ!」
ながもん「……宙マン……急いで!」
宙マン「(頷き)ようし、見てろ――宙マン・バーナー!」
サッと伸ばした宙マンの指先から、勢いよく迸る高熱火炎!
液体化して逃げんとする怪獣の全身を包み、瞬時に水分を奪い去った。
コスモリキッド「あ、アヂアヂ、あぢゃぢゃ……か、体がめっちゃ乾くぅぅ~っ!」
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、コスモリキッドを直撃!!
コスモリキッド「千歳川、千歳川……そのフィナーレ、嗚呼~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました! 宙マンさんがやってくれましたよぉ!」
宇佐美さん「リュウセキだねぇ、ナガレイシだねぇ、さすがだねぇ!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱサイコーっスよ、アニキ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぬぬぬっ、おのれ……またしても宙マンめが!
だが見ておれよ、ワシら怪獣軍団はあくまで地球を諦めぬ決意だ。
次から次に新しい怪獣を送りこみ、必ずや貴様の息の根を止めてやる!」
……などと言う怪獣魔王の負け惜しみも、一体いつまで続くことやら。
まぁ、それはさておき……
今回もまた、宙マンの活躍によって液体大怪獣コスモリキッドは倒され
千歳の街と川には再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「お殿様、今日もお疲れ様でした!」
宙マン「悪い怪獣も追い払ったことだし、この一件もまずは落着だね。
……厄介な無法者がいなくなったおかげで、物陰に隠れていた川の魚たちも
再び元気に顔を見せてくれるはずですよ」
ながもん「そしたら、また……宇佐美さんの、腕の……見せどころ」
宇佐美さん「ああ、任せといて下さいよ、もう思い切り釣りまくりますとも――
そしたらまた、みんなにも釣果のお裾分けしますからね!」
ビーコン「いよっ、頼もしい! その言葉を待ってたんスよ、宇佐美の旦那!」
落合さん「あらあら何です、ビーコンさんったら……
そんな風にがっつくなんて、お行儀が悪くて恥ずかしいことですわよ?」
ビーコン「ヒヒヒ、そう言う落合さんだって、毎年メッチャ楽しみにしてるっしょ!?」
落合さん「(赤面)えぇ、まぁ……それは、そうなんですけど」
宙マン「はっはっはっはっ。
安全面には注意の上で、今年も存分に川釣りを楽しんで下さいね、宇佐美さん!」
宇佐美さん「(親指立てて)えぇ、そりゃもう!」
怪獣去って、平和が戻り……
今日もまた、みんなの笑顔の花が咲く。
頑張れ宙マン、次回も千歳を頼んだぞ!