渦巻く暗黒星雲の奥深くに陣を構え……
今日もまた、虎視眈々と地球を狙い続ける恐怖の怪獣軍団。
だが、怪獣魔王・イフの配下は、ただ暗黒星雲に控えるのみならず
既に地球の各地に散り、それぞれの潜伏場所にて力を蓄えながら
魔王の攻撃命令が下るのを、今や遅しと待っているのだ。
ここ、太平洋の無人島「悪島」においてもまた……
新たなる悪の使者が、立ち上がろうとしていた!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ……!
悪島火山の剥き出しの岩肌を破り、地中から吹き出す蒸気ガス。
濛々たるその煙こそ、大怪獣出現の前兆に他ならなかった――
「アルゥゥゥ~っ!!」
甲高い声と共に、悪島火山の噴火口から飛び出してきた黒い影。
「空飛ぶ軍艦」の異名をとる、始祖怪鳥テロチルスだ!
イフ「おおっ……しっかり力を蓄えたようじゃな、テロチルス!」
イフ「そんなお前に、これからワシが命令を与える。
テロチルスよ、お前がこれから為すべきこと、それは――」
テロチルス「アルル~、ご説明には及びませんやな、魔王様!」
テロチルス「俺らの悲願、前線基地を千歳に築くこと……
そして、その邪魔になる宙マンの野郎をぶちのめす。
これ以外に何かあるなら、逆に聞きたいぐらいでさ!」
イフ「ふふふ……相変らず、口の減らない奴め。
だが、その負けん気こそを今のワシは欲しておる――」
イフ「行け、始祖怪鳥テロチルス! 行ってお前の務めを果たせ!」
テロチルス「アルルぅぅ~っ、やりますぜィ、魔王様!」
おお、見よ! 戦慄せよ!
巨大な翼で大空へと羽ばたき……
悪島から北海道へと飛びたった、悪魔の怪鳥テロチルス。
危うし千歳、危うし宙マン!
が、ひとまずそれはそれとして……
こちらは毎度おなじみ、北海道千歳市。
怪鳥テロチルスと怪獣軍団の魔手が、すぐそこまで迫っているとは
まったく露ほどにも気づいていない宙マンファミリーはと言えば
例によってまったりと、呑気そのものであった。
宙マン「いやぁ、いいお天気が続いて嬉しいねぇ!」
落合さん「えぇ、全くですわ、お殿様。
こういう日は、ぶらぶらとお散歩するにはもってこいで」
ピグモン「はうはう~、お買いものとかお食事も、なの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてそして、エッチするにも……」
げ し っ !
落合さん「……全くもう、ビーコンさんったら。
陽の高いうちから、そんなご冗談は笑えませんわよ?」
ビーコン「や、オイラ的には100%の超本気で……」
落合さん「(憤って)なおひどいですっ!!」
宙マン「はっはっはっ……まぁまぁ、二人とも。
喧嘩はほどほどにして、まずは街歩きといこうじゃないか。
歩いているうち、何か面白そうなものでも……」
……と、そんな穏やかな日常風景のさなか。
千歳へと飛来してくる未確認飛行物体の存在をキャッチした
航空防衛隊の動きが、俄かに慌ただしさを増していた。
ビーコン「おろっ、急にどうしちまったっスかね、防衛隊のお歴々!?」
落合さん「ただの演習、と言う訳でもなさそうですし……」
ピグモン「はわわ、まさか、また悪い怪獣が出てきたの~?」
結論から言おう。
甚だ遺憾ながら……まさに、ピグモンの言う通り!
「アルル、アルゥゥゥ~っ!!」
ビーコン「あっ、鳥っス!」
落合さん「それとも、飛行機ですかしら!?」
ピグモン「どっちでもないの、やっぱり怪獣だったの~!(涙目)」
宙マン「ううむっ……あれは始祖怪鳥・テロチルスか!」
持ち前の飛行能力で、千歳上空を悠然と舞うテロチルス。
その巨体に、スクランブルをかけた戦闘機隊が果敢に挑んでいく。
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
雨あられと叩きこまれる、戦闘機隊のロケット弾!
だが、テロチルスの頑強なボディは、猛攻撃を全く受け付けない。
テロチルス「アルルぅぅ~っ、こそばゆいわァ!」
「……う、うわぁぁぁぁ~っ!?」
テロチルスの鼻先の角がスパークし、鋭く放たれるニードル光線!
その直撃を受けて、戦闘機隊は次から次に撃墜されていく。
テロチルス「アルルぅぅ~っ、どんなもんだィ!」
落合さん「……あら嫌だ、勝ち誇っちゃって!」
ビーコン「って言うか、降りてくるみたいっスよアイツ!?」
ズシィィーンっ!!
重々しい足音を響かせ、勢いよく土砂を巻き上げて……
テロチルスの黒い巨体が、北の大地に舞い降りた。
ピグモン「ああっ、どんどんこっちに来てるの!」
ビーコン「どひ~っ、勘弁して欲しい流れっスねぇ!(汗)」
宙マン「君の強さは良く判ったから、大人しくお引き取りを……
……なんて、素直に聞く相手でもなさそうだねぇ!」
テロチルス「アルルぅぅ~っ、判ってるじゃねぇか。
せっかく来たんだ、とことん「やらせて」貰うぜ!」
イフ「わはは! それでよい、それでよいのだテロチルス。
存分に暴れろ、地球人どもを蹂躙してやるのだ!」
テロチルス「アルルぅぅ~っ、任されましたぜ、魔王様!」
巨体を唸らせ、進撃開始するテロチルス!
人々が逃げ惑い、平和な街は大パニックに陥る。
まさに、その巨体そのものが凶悪すぎる凶器!
テロチルスが街をのし歩く、ただそれだけで建物が破壊されていき
巻き起こる爆発とともに、街が炎に包まれていく。
落合さん「ああ、もう、何てことでしょう!(汗)」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!」
ピグモン「宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛るテロチルスの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
テロチルス、もう好き勝手にはさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「これこれ、お殿様のこれを待っておりましたのよ!」
ビーコン「こうなりゃもう、アニキだけが頼りっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
テロチルス「アルルぅ~っ、とうとう出やがったな、宙マン!」
宙マン「ああ、さすがにこの状況は見過ごせないのでね!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
テロチルス「アルルぅぅ~っ、叩き潰しちゃる!」
宙マン「やれるものなら、やってみろ!」
激突、宙マン対テロチルス!
人々が見守る中、巨大な両者の攻防戦が火花を散らす。
自慢の鋭利な嘴で、激しく突きかかってくるテロチルス!
一発でもまともに食らえば、大ダメージは必至である。
だが、宙マンも決してやられっぱなしでなどはいない。
攻撃を巧みにかいくぐりつつ、怪鳥の懐に飛び込んでいく。
宙マン「それっ、これでもくらえ!」
宙マン得意の浴びせ蹴りが、敵の脇腹にヒット!
鋭い一撃にテロチルスがよろめき、後退したところへ――
宙マン「よぉし! 宙マン・エクシードフラッシュだ!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、テロチルスを直撃。
……するかと思いきや!
テロチルス「アルルぅぅ~っ、ルノアールのココアより甘いぜ!」
宙マン「(驚き)何っ!?」
ビーコン「うわっ、あんにゃろ、かわしやがったっス!」
落合さん「これだから厄介ですわね、鳥の怪獣さんは……!」
宙マンを嘲笑い、大空を飛び回るテロチルス。
上空からの嘴攻撃で宙マンを牽制し、おもむろに――
テロチルス「そぉれっ! 宙マン、こいつを受けてみな!」
テロチルスの発射するニードル光線!
宙マンの周囲に、凄まじい爆発を生じさせ……
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ピグモン「はわわわ……ちゅ、宙マンっ!?」
落合さん「あの嘴もさることながら、この光線もまた……」
ビーコン「デカい口叩くだけあって、とんでもない強さっス!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
テロチルス「アルル~、次の一撃が冥途への片道切符だぜ!」
「なんの、まだまだ……勝負は、これからだ!」
宙マン、パワー全開!
持ち前の飛行能力によって、彼もまた大空へと舞い上がる。
テロチルス「アルルゥ~、この俺と空の上でやろうってか!?」
宙マン「行くぞ、テロチルス!」
スパークを放ち、激しく交錯するふたつの巨体!
千歳市の上空において、息をもつかせぬマッハの空中戦が展開。
テロチルス「くっ……ちょこまかと!」
宙マン「エクシードフラッシュを受けてみろ!」
エクシードフラッシュの一閃が、テロチルスを直撃!!
怯み、よろめき、飛行バランスを崩す始祖怪鳥の巨体。
テロチルス「(苦悶)あ、アルルゥゥっ……」
宙マン「(その隙を逃さず)とどめの一撃、受けてみろ!」
宙マン「テリャァァーっ!
宙マン・南十字チョップ!!」
両腕を真っ赤に燃え上がらせて放つ、渾身のクロスライン!
正義の南十字チョップが、始祖怪鳥の急所へ見事に決まった。
テロチルス「あ、アルルゥゥ……ま、参ったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「今日もまたまたお見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれェェ……またしても。またしても宙マンめが!
だが見ておれよ、最後に笑うのは怪獣軍団なのだ……
テロチルス以上の強豪が、すぐにお前を倒しに行くぞ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍で、恐るべき始祖怪鳥テロチルスは
空中戦の果てに撃退され、平和は守られたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~」
宙マン「いやぁ、お待たせ、お待たせ。
悪い怪獣もやっつけたことだし、これでのんびり出来るよ――
さて、改めて、これからどこへ行くとしようかねぇ?」
落合さん「最初の予定通り、お散歩でよろしいのでは?」
ビーコン「いやいや~、それじゃあまりにも芸がないっスよ。
もっと柔軟に、絶えずフレキシブルな発想でもって、ね!」
落合さん「(ジト目)風俗がどうとか、そう言うのはNGですわよ?」
ビーコン「へ? 何でオイラが言おうとしてたことを……
落合さん、もしかしてエスパーっスかぁ!?
ヒヒヒ、それともオイラと以心伝心、相思相愛の証……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、このエロ怪獣っ! よくも抜け抜けと!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、結局オチはこれっスかぁぁ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
さぁ、次回はどうなるかな?