遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
緑の地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへ向け、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの地球に迫るのだ!
イフ「わははは……もう間もなく、地球はワシら怪獣軍団の物となるのだ!
破壊と混乱を好む我が配下の前に、地球人どもは決して勝てはしない――
ゾネンゲ博士よ、そのための行動は既に進んでおろうな……!?」」
「ハハァッ、勿論ですとも、魔王様!」
ゾネンゲ博士「魔王様のご命令を待つまでもなく、既に地球の海におきましては……
日本海溝の悪魔、蛸怪獣ガイロスが行動を開始しております」
ゾネンゲ博士「そしてスパイ情報によれば、現在、宙マンは苫小牧にいるとの由……
行楽気分の奴めに奇襲をかけ、一気に叩き潰してご覧に入れましょう!」
イフ「おおっ、それは頼もしい!
今度と言う今度こそ、必ずや地球征服の悲願を達成してみせるのだぞ!」
ゾネンゲ博士「(平伏し)ははァーッ!」
おお、またしても地球に迫る危機!
そして、ゾネンゲ博士の言葉通り……
新たなる悪の使者は、苫小牧市の近海からその巨大な姿を現した!
「ガヴォボボボ~っ!!」
熊澤さん「で、出たぁっ! あ、あ、あれは……」
熊澤夫人「か、怪獣……!?」
たまたま苫小牧に来ていた熊澤さんご夫妻も、これにはびっくり仰天。
……そう、まさしくその通り!
波しぶきとともに姿を見せ、苫小牧市への上陸を果たしたのは……
怪獣軍団の一員、異形の蛸怪獣・ガイロスである。
ガイロス「カヴォボボボ……イカにもタコにも、ガイロス様だぁ!
俺様は七つの海を股にかける覇者、蛸怪獣ガイロス様でいっ!
さぁ宙マン、出て来い! 出て来て俺様と勝負しやがれっ!」
ガイロス「ガヴォボボボ、あ~、え~っと、そのぉ……
おーい、もしもし、宙マンや~い……宙マン、宙マぁン~っ?
……呼べど叫べど返事はなし、ということは……」
ガイロス「も、もしかして、行き違い~っ!?
あー、もう、どうしましょう博士ぇ……
勢いこんで出た手前、すっごく恥ずかしいんですけど~っ!(涙目)」
ゾネンゲ博士「えぇいっ! うろたえるんじゃない、落ち着かんかガイロスっ!」
ゾネンゲ博士「道楽好きの宙マンのことだ……
苫小牧まで来た以上、すぐには千歳に帰りなどすまい。
まだ遠くへは行っていないはずだ、探せ! 探すんだ!」
ガイロス「ははぁーッ、直ちにそうしますぜィ!」
せっかく上陸した以上、このままではどうにも引っ込みがつかない。
と言うわけで、ガイロス君……
宙マンの姿を探し求めて、苫小牧の市街地へ突き進んでいくことに。
ガイロス「ガヴォボボボ……おーい宙マン、宙マンちゃんや~いっ!
どこよ、どこだよ、一体どこにいるんだよぉ~っ!?」
あてどなく歩き回るガイロスも大変だが、そのおかげで苫小牧市も大パニック。
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は黙って座して見ているだけではない。
「ようし――全機、一斉攻撃開始だッ!」
大空の戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット弾の一斉砲火!
人間相手の戦争ならば、絶大な威力を発揮するであろう通常兵器……
だが、深海の水圧にも耐えるほど頑健なガイロスには全く通用しない。
ガイロス「あ゛~、もう、お前らなんかに構ってるヒマないんだよっ!
ガヴォボボボ……宙マン、どこよ、マジでどこだよ~っ!?」
かくして今や、どったんばったん大騒ぎな苫小牧。
そして、そんな混乱のさなか、我らが宙マンはどうしていたのかと言うと……
ただ一言、「例により例のごとく」としか言えないのもまた事実なわけで。
宙マン「さぁて、来た来た、来ましたよっ!」
落合さん「まぁ、きれい……
これが、こちらのお店ご自慢の寿司ランチセットなんですのねぇ!」
ビーコン「やっぱねぇ、アレっスよねぇ……
漁港のお膝元だけあって、ネタの鮮度がダンチっスよね!」
ピグモン「はうはう~、とっても綺麗なの~」
宙マン「そして、その綺麗さこそが仕事の丁寧さの証明さ――
ん、これは旨い、堪らないねぇ!」
落合さん「回転寿司店だからと言って、決して馬鹿にはできませんわ」
ビーコン「これが、今どき税込1000円ポッキリなのも嬉しいじゃないっスか。
安くて旨い、まさしく庶民の味方っスよ!」
ピグモン「ピグちゃん、ここのお寿司だいすきなの~♪」
と言うわけで、外での大騒ぎを全く知らず、意にも介さず……
心ゆくまで寿司ランチを堪能して、店から出て来た宙マンたちであったとさ。
宙マン「いやー、食べた食べた、お腹一杯だよ!
それじゃこの後は、漁港の市場でも覗いて……」
ピグモン「(一方を見て)……あっ!」
宙マン「……えっ?」
と、宙マンたちがピグモンの視線の先を見やれば……
そこには宙マンを探し回り、あちこち闇雲に歩き回ったガイロスの姿が。
ガイロス「ハァ、ハァ、ゼェゼェッ……や~っと見つけたぞ、宙マン!
コンニャロ~、俺様にさんざん手間かけさせやがって!」
ビーコン「えーっと、何つーか……」
落合さん「ものすご~く、お疲れで……いらっしゃいます?」
ガイロス「カヴォボボ……うるへぇ、うるへぇっ!
余計な前置きはもう抜きだ! 宙マン、俺と勝負しろ――
さもないと、この苫小牧の街をブチ壊して全滅させちゃるっ!」
ピグモン「はわわわ……あの蛸ちゃん、あんなこと言ってるの~」
宙マン「(頷き)その挑戦、受けてやる! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛り狂うガイロスの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の使者よ、これ以上は好き勝手にさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「お殿様、お食事の直後で申し訳ありませんけれど……」
ビーコン「だけど今、頼りにできるのはアニキだけなんスよ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「黙って海に帰ると言うなら、それでよし……
このまま強情を張り続ける気なら、私ももはや手加減しないぞ!」
ガイロス「ガヴォボボボ……そう言うのを“愚問”ってんだぜ、宙マン」
宙マン「聞く耳持たずか……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
苫小牧市を舞台に、今、鳴り響く戦いのゴング!
宙マンとガイロス、ふたつの巨体が青空の下で激しくぶつかり合う。
八本の足を激しくうち振り、トリッキーな連続パンチで攻めるガイロス!
息をもつかせぬ連撃を、右に左にかいくぐりつつ……
宙マンもまた冷静に相手の隙を伺い、果敢に接近戦を挑んでいく。
宙マン「どうした……息巻いている割には、そんなものかね!?」
ガイロス「ガヴォボボ、だったらこれでもくらえ~っ!」
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
ガイロスの胸の吸盤から、勢いよく吹き出される海水ジェット!
その圧力に吹っ飛ばされ、ドドーッと地面に倒れ伏してしまう宙マン。
ピグモン「ああっ、宙マンがあぶないの!」
ビーコン「あの不意打ち……悔しいけど、いいタイミングだったっス!」
落合さん「お殿様……しっかり!」
ガイロス「ガヴォボボボ、もう一発食らわせちゃるぜィ!
お前の体中の骨、海水ジェットで粉々に砕いてやる!」
宙マン「なんの、まだまだ……負けて、たまるかッ!」
宙マンの防御技、プロテクション発動!
二発めの海水ジェットを、見事に受け止めて無力化したぞ。
ガイロス「(狼狽)が、ガヴォボボボッ!?」
ガイロスが怯んだ隙を突いて、すかさず大空へジャンプする宙マン。
空中回転とともに繰り出す技の名は、もちろん――
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
出た、電光石火の必殺キック!
燃える足先を食らって、ガイロスがたまらずブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、蛸怪獣ガイロスを直撃!!
ガイロス「ガヴォボボ……俺様、今日は踏んだり蹴ったり~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはやってくれるっスねぇ!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
覚えておれよ、この次こそはさらに強力な怪獣と作戦によって
お前をギャフンと言わせてやる! 絶対だ、絶対にだぞ!?」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
蛸怪獣ガイロスは倒され、苫小牧に再び平和が蘇ったのであった。
宙マン「やぁやぁ、みんな、どうもお待たせ!」
落合さん「あぁ、お殿様、今日もお疲れ様でした!」
ビーコン「ヒヒヒ、どうにかこうにか一件落着したコトっスし……」
ピグモン「改めて、市場めざしてしゅっぱーつ! なの~」
宙マン「う~ん、それもいいんだけど……
実はその、一戦交えたら、また小腹が減ってきてしまって……ねぇ。
と言うわけで、どこかで「おやつ休憩」……いいかなぁ!?」
ビーコン「ありゃま、アニキってば……
さっきあんだけ寿司ランチ食って、その上にまた食うんスか!?」
宙マン「ふふふ、デザートはべ・つ・ば・ら~♪♪」
ビーコン「何をカワイコぶってるんスか、女子高生じゃあるまいし!(呆)」
宙マン「(頭かきかき)……たっはっはっはっ」
落合さん「(微笑)……ふふっ♪」
とか何とか言いながらも、この後……
評判の喫茶店で注文したチーズ味のソフトクリームに舌鼓を打ち、
味覚もココロも大満足の宙マンファミリーであったとさ。
自然豊かな北海道の地に……
今日も輝く、正義の星ひとつ。
次回も頼むぞ、我らが宙マン!