爽やかな陽気に包まれている北海道。
ここ・千歳市もまた、清々しい青空の下で平和の時を満喫中である。
などと思って、安心していると……
おやおや、今日もまた、にわかに不穏な気配が漂ってきた様子だぞ。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
ピグモン「あ、みくるんちゃんとながもんちゃんなの!」
宙マン「やぁやぁ、お二人さん、いらっしゃい!」
落合さん「ちょうど今、シナモンロールが焼けたところですのよ。
よろしかったら、召し上がっていかれません?」
みくるん「あ、ハイ、それは有難いんですけどぉ……」
ながもん「まず、その前に……伝えたい、ことが」
宙マン「もしかして、また何か事件かい?」
ながもん「……(こくこくっと頷き)」
みくるん「ええっと、話せば長いんですけどぉ……」
宙マン「構わないよ、聞かせてくれたまえ」
ビーコン「深呼吸して……落ち着いて、ゆっくりっスよ?」
みくるん「って言うか……前に、熊澤さんが言ってたでしょ?
山菜採りの最中に、怪獣に出くわしたって」」
ビーコン「あー、そう言えば、そんな話もあったっスねぇ」
落合さん「ってことは、もしかして……お二人も?」
みくるん「(頷き)私たちも……見たんですぅ、おっきな影を!」
みくるん「森の中へ、山菜を探しに出かけたら……」
ながもん「木々の、あいだから……」
宙マン「大きな目玉がぎょろり、影がのっそり……かね?」
ながもん「……(こくこくっと頷き)」
落合さん「……どう思われます? お殿様」
宙マン「もしかしたら、また怪獣軍団か……」
ビーコン「事実だとしたら、そうなんスけどね。
……でもまだ、見間違いの可能性も捨てきれないっしょ?」
落合さん「見間違え?」
みくるん「そんなっ、私たち、確かにこの目で――」
ビーコン「いやいや、みくるんちゃんたちを疑ってるわけじゃなくて
オイラのマジな願望、ってやつっスかねぇ。
そう毎度毎度、悪い怪獣に出てこられちゃかなわねーっスよ!」
落合さん「えぇ……それはまぁ、確かに……」
……だが、次の瞬間!
ズゴゴゴグワーンっ!
落合さん「あっ、あらあらまぁまぁ!?(汗)」
ビーコン「どひ~っ、何スか、なんなんスか、いきなり!?」
爆発! 炎上!
そして、事態はただそれだけにとどまらず――
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「(慌て)お、おろろろっ!?」
ピグモン「きゃああんっ、揺れてるの、おっきいの~!」
落合さん「こっ、これはもしかしますと……」
宙マン「……もしかするのかなぁ、また今回も!?」
そう、残念ながら今回もやっぱり「もしかする」のである。
激しく大地を揺さぶる局地地震とともに……
天高く土砂を吹き上げながら、地上に姿を現した者とは!?
「グワゴォォ~ンっ!!!」
みくるん「(涙目)ああんっ、やっぱり怪獣はいたんですぅ!」
ながもん「私たちの、言ったこと……真実だった、と。
証明、出来たのは……よしとして」
ピグモン「はわわ、でもちっとも嬉しくないの~!」
「グワゴゴォ~ンっ、復活怪獣タブラ、只今参上!
千歳の山ン中で、たっぷり鋭気も養ったことだし……」
ビーコン「養ったことだし、あとはもう……」
落合さん「(愛想笑い)気持ちよ~く、お帰り頂くってことで。ねっねっ?」
タブラ「グワゴゴ~、とんでもねぇ!
ここからが俺様の見せ場、一世一代の晴れ舞台よ――
千歳の街を、派手にブッ壊させてもらうぜィ!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱ今回もこれっスかぁ~!?」
落合さん「穏便な解決に、一縷の望みを賭けてはみましたものの……」
ビーコン「う~ん、やっぱ平和への道は遠いっスねぇ!(汗)」
宙マン「……うぬッ!」
ゾネンゲ博士「ぬふふふ……ご覧下さい、魔王様。
この私が自信を持って選んだ怪獣タブラの、あの頼もしい面構えを!」
イフ「うむっ、あとはそれに相応しい働きを……だな。
さぁ行けタブラよ、期待しておるぞ~!」
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、任しといて下さいや、魔王様!」
怪獣魔王らの命を受け、進撃開始するタブラ!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて右往左往、逃げ惑う人々。
みくるん「きゃあぁんっ、こっち見てます、こっち来てますぅ!」
ビーコン「え~らいこっちゃ、えらいこっちゃっス!」
落合さん「ああっ、もう、結局こうなっちゃうんですのねぇ!」
ピグモン「はわわ、おっかないの~!」
おお、早くも千歳は絶体絶命の大ピンチ!
だが、怪獣タブラの暴虐を、防衛隊が見過ごすはずもなく……
危機的状況を前に、空の精鋭らが直ちにスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんが来てくれたの!」
ビーコン「タイミング「は」絶妙なんスよねぇ、いつも!」
落合さん「あとは、もう少し成果が伴って下さいますと……ねぇ?」
「う~ん、なんか今、凄く失礼なコトを言われたような……
えぇい、気にせず行くぞ。全機、攻撃開始だっ!」
戦闘機隊のミサイル攻撃!
が、度重なる爆発にも、タブラの勢いは止まらない。
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、そんなもん効くかぁ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
タブラの両目から放たれる怪光線!
その直撃を受け、次から次に撃墜されていく戦闘機。
みくるん「ああっ、やられちゃったですぅ!」
ピグモン「どうしよう、このままじゃ街がメチャクチャなの!」
ながもん「これは、色々……シャレに……ならない」
タブラ「オラオラ、もうガンガン行くぜぇ!?」
勢いに乗り、ハチャメチャな大暴れを見せるタブラ。
目からの怪光線が、平和な街を破壊していく!
ビーコン「どひ~、もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
落合さん「だーっ、取り乱すんじゃありません、ビーコンさん!」
みくるん「だけど、このままじゃ本当にぃ……」
ながもん「(ボソッと)……ジ・エンド?」
ピグモン「えう~、ピグちゃんそんなの嫌~んなの~(涙目)」
宙マン「いいや、まだだよ……千歳には、この私がいる!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うタブラの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の手先め、もうこれ以上はのさばらせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「おおっ、出た出た、アニキの十八番っス!」
落合さん「えぇ、この頼りがいのあるお姿……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、出やがったな、宙マン!」
宙マン「あぁ、ついつい出しゃばってしまったよ――
この手のヤンチャには、見過ごせる限度ってものがあるんでね!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マンーー
バトルのテンションは、一気にヒートアップ!
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、行くぞぉぉっ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対タブラ!
落合さんたちの見守る中、巨大な両者が戦いの火花を散らす。
持ち前の野性を全開に、突進攻撃を仕掛けてくるタブラ。
千歳の山中で、充分にエネルギーを蓄えた直後ということもあり
その勢いは、宙マンと言えども決して油断がならない。
だが、宙マンも冷静にその攻撃をかわし、受け流しながら……
相手の隙を的確に見極め、猛然と懐に飛びこんでいく。
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、なかなか味な真似しやがるな!?」
宙マン「おうさ、例えばこんな風にな――そォりゃッ!」
おもむろに、タブラの足元で回転し……
逆立ちとともに、両足で敵の脳天に見舞うカンガルーキック!
タブラ「ぎゃ、ギャイぃぃんっ!?」
意表を突かれ、見事に直撃を受けてしまった復活怪獣。
眩暈とともに、その巨体がふらふらと後退した。
宙マン「どうだねタブラよ、正義の力に怖れをなしたか!?」
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、なめるんじゃねぇぞ、コラ~っ!」
タブラの両目から放たれる怪光線!
周囲に巻き起こる爆発と衝撃に、大きくよろめく宙マン。
みくるん「ああっ、ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「直撃じゃ、ないのに……あの……威力」
ビーコン「ガチで食らったら、どんなオットロシイことになるか……!」」
ピグモン「えう~、宙マンが負けるなんて嫌~んなの~」
落合さん「(祈るように戦いを見つめ)……お殿様っ!」
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、オラオラ、どんどん行くぜぇ!」
ズ、ズーンっ!
ダメ押しとばかり、猛ダッシュのタブラが繰り出した頭突き!
連続攻撃の威力に、遂にドドーッと倒れてしまった宙マンである。
ゾネンゲ博士「ぬーっふははは、その調子だ、タブラよ!
宙マンさえ始末してしまえば、あとはもう怪獣軍団の天下であるからして!」
イフ「今こそ好機。タブラよ、一気に勝負を決めろ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
タブラ「グワゴゴォ~ンっ、魔王様もああ言ってる事だし、なぁ。
ここいらでそろそろマジに死んでもらうぜ、宙マン!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
タブラの放った怪光線を、ひらりとジャンプでかわして大空へ。
タブラ「(驚き)ぬ、ぬおおっ!?」
宙マン「行くぞ、タブラ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクル・キックの一撃に、たまらずブッ倒れるタブラ。
ビーコン「っしゃ、これで完全にアニキのペースっス!」
落合さん「今がチャンスですわ、お殿様!」
タブラ「(呻き)ち、チキショウめぇぇっ……」
宙マン「ようし、とどめだ!
宙マン・スピンスライサー!!」
手先に発生させたエネルギーを、巨大な光の手裏剣にして……
高速回転の加速度も加えて、敵に投げつける新必殺技。
スピンスライサーの鋭利さが、タブラのボディを切り裂いた!
タブラ「あぎぃぃっ、ちょっとコレ、強烈すぎなぁぁ~いっ!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「あぁんっ、やっぱり素敵です……流石はお殿様♪(うっとり)」
ビーコン「っスよねぇ、やっぱそうこなくっちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マンが勝ってよかったの~」
ながもん「(ボソッと)……グッジョヴ」
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうですぅ!」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
千歳の街に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「ぬううっ、うぐぐぐぐっ…… またしても、またしてもやってくれたな!
だが宙マンよ、怪獣軍団はこれしきで地球を諦めはせんぞ――
この次こそは、きっとお前をギャフンと言わせてやる!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、千歳市を急襲した怪獣タブラは
見事に撃退され、街に再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いや、なんのなんの……
これでどうやら、今度の事件も一件落着ってところかねぇ」
ながもん「ほっと、したら……おなか、すいた」
みくるん「(苦笑)もう、ながもんったらぁ……お行儀悪いよぉ?」
落合さん「いえいえ、そんな時にこそ、落合手製のシナモンロールですわ。
時間も頃合いですし、午後のお茶会に致しましょう!」
ピグモン「はうはう~、シナモンロール、ピグちゃんもだいすきなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてそして、シナモンロールより甘いのは
オイラと落合さんとで過ごす、目くるめく白昼の肉悦……」
落合さん「(口許が引きつり)……はァ……!?」
げ し っ !
落合さん「お調子ぶっこくんじゃありません、このエロ怪獣っ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、やっぱ今回もこうなっちまうんスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日もまた……
千歳市民の頭上に輝く、平和の太陽。
ありがとう宙マン、次回も頼んだぞ!