7月半ば、名実ともに夏の盛り――
と言うわけで連日、厳しい暑さに見舞われている日本列島。
それはここ、北海道においても例外ではなく、お馴染みの舞台である
千歳市、ほんわか町5丁目「宙マンハウス」もまた、ギラつく真夏の太陽の中
すっかり夏めいた風情の中にあった。
落合さん「ふぅ~、今日も今日とて暑さが堪えますわねぇ~。
……ところで皆様、今日のお昼は何に致しましょう?」
ビーコン「はーい、ハイハイハーイっ!」
ビーコン「そりゃもうズバリ、女体盛りっ!!」
げ し っ !
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
落合さん「ビーコンさんの世迷言はともかく……
お殿様からは、何かリクエストなどございませんか?」
宙マン「う~ん、そうだねぇ。……
こんな日だから、さっぱり爽やかに冷や麦がいいかもねぇ。
確か、浜松の倉本さんからお中元に頂いた乾麺がまだあっただろう?」
落合さん「あぁ、ようございますわねぇ、冷や麦!」
宙マン「まぁ、何にせよ、だ。
このうだるような暑さだけれど、食欲がしっかりあるって言うのは
いい傾向なのかもしれないねぇ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも冷や麦大好きなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてオイラは食欲ばかりか性欲も……♪」
落合さん「だーっ、そんな風に纏めないで下さいなッ!(汗)
……それはともかく、少々お待ちを。大急ぎで用意いたしますので!」
宙マン「うん、頼んだよ、落合さん」
……と、その時である!
グワワワーンっ!!
ビーコン「ええっ、ちょっと……なんスか、なんなんスかぁ!?(汗)」
落合さん「今のは……爆発の音でしょうか!?」
宙マン「(頷き)それも、そう遠くじゃないみたいだぞ!」
ズガーン! グワーンっ!
すわ何事と、宙マンファミリーが家の外に出て見れば……
そこは今まさに、何者かの攻撃で爆発が次から次へとあちこちに巻き起こり
人々が為すすべなく逃げまどう、文字通りの修羅場であった。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
落合さん「あらあらまぁまぁ、みくるん様にながもん様!」
ながもん「おお、突然の……千歳……大空襲」
みくるん「いったい、いったいコレって、どうなってるんですかぁ!?」
ビーコン「まさか、またまた怪獣軍団の仕業っスかねぇ!?」
宙マン「ああ、ありえない話じゃないね――」
だが、そう言って宙マンが見上げた空には……
およそ敵らしい敵の影も形も、どこにも全く見当たらないではないか。
ピグモン「は、はわわわっ……なんにも、いないの!?」
落合さん「ですが、現に今、この瞬間にも地上への攻撃で被害が……」
宙マン「ううむっ、見えない敵ってワケか……」
ながもん「(ボソッと)……幽霊?」
みくるん「ふぇぇん、やめてやめてぇ、怖いからぁ!(涙目)」
気配もなく、音もなく、影もなく……
たとえ相手が見えない敵であろうとも、手をこまねいてはいられない。
かくして千歳基地の空の精鋭たちが、直ちにスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「ですが……大丈夫でしょうか?」
ビーコン「いつも以上に、一筋縄じゃいかない相手っスからね~」
「全機、俺に続け――スプレー作戦、開始っ!」
みくるん「……あれっ?」
ビーコン「防衛隊のお歴々……今度は一体ナニ始めたんスかねぇ?」
宙マン「(ハッと気づき)なるほど……あれは、特殊塗料か!」
赤い特殊な塗料を微粒子状にして、機体下部から噴霧し……
千歳市の上空を、幾何学的なアクロバット飛行で飛び回る戦闘機編隊。
それに伴い、青空の一角が「赤い雲」に覆われたかのようになった。
みくるん「(空を見て、ハッとなり)……ああっ!」
ながもん「(も頷き)……効果、覿面」
おお、見よ!
航空防衛隊の「スプレー作戦」は、まんまと図に当たり……
保護色で姿を隠していた怪円盤が、千歳上空に不気味な姿を現した。
そして、その怪円盤の内部に潜み、操縦していた宇宙の怪物とは!
「テュクク……カッカッカッカッ……!」
六本足のダニを思わせる、異形の知性体。
宇宙狩人(ハンター)クール星人、もちろん怪獣軍団の一員だ!
「カッカッカッカッ、地球人どもめ……
このクール星人の保護色戦法、よく見破ったとまずは誉めてやろう」
クール星人「だが、お前たちに出来るのはせいぜいそこまでだ――
何と言ってもこの私は、その名の通り超Coolな存在だからな!
OH! イッツ・ソー・クール! カッカカカカ……」
「えぇい、戯言に構うな! 全機、攻撃開始っ!」
クール円盤めがけて、一斉に叩きこまれるロケット弾!
だが、相次ぐ直撃を受けてもなお、円盤の外装には傷一つつかない。
クール星人「カッカッカッ、それでも攻撃のつもりかね……
宇宙狩人のCoolな早撃ち、手本代わりに見るがいい!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
クール円盤から連続発射されるプラズマ破壊弾!
その直撃を受けて、次から次へと撃墜されていく戦闘機隊。
ビーコン「ありゃま、今日もまたまたやられちまったっス!」
落合さん「う~ん、保護色を見破ったまでは良かったのですが……(汗)」
イフ「わはは! いいぞ、いいぞ、クール星人よ!
その調子で千歳の街を、地球の全土を徹底的に破壊せよ!」
クール星人「カッカッカッ、お任せ下さい、魔王様!」
クール星人「地球人など、我々から見れば昆虫のようなもの――
この星は、宇宙狩人にとって絶好の「狩場」でございます!
さぁ、泣きわめきながら逃げ惑え! 楽しい狩りの始まりだ!」
地上の人々のパニックを楽しむかのように、プラズマ破壊弾を放つ円盤。
爆発! 炎上!
人々の悲鳴が幾重にもこだまして、今や千歳は炎の地獄と化していた!
みくるん「ふぇぇん、このままじゃ私たち、ほんとにおしまいですぅ!(涙目)」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの……出番」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、クール円盤の前に立ちはだかる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の悪の使いめ、これ以上は好き勝手にさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ、アニキの十八番っス!」
落合さん「ここはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわ!」
ピグモン「宙マ~ン、よろしくお願いなの~!」
クール星人「カッカッカッ、頭にカッと血が上って出てきたな!
だが宙マンよ、それではCoolな私には勝てないぞ?」
宙マン「なんの、正義の怒りで悪の野望を焼き尽くしてやるまでだ!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える我らが宙マン。
クール星人「カッカッ、上等! それならば勝負だ!」
かくして真っ向激突、宙マン対クール円盤!
高速回転しながら、右に左に飛び回る怪円盤を捉えんものと
宙マンは臆さず相手めがけて駆け寄り、掴みかかっていく。
だが、クール星人もさるもの。
宙マン得意の接近戦になどは持ち込ませまいと、素早い小回りのきく
円盤の機動性をフルに活用して宙マンを翻弄する。
宙マン「くっ……おのれ、チョコマカと!」
クール星人「カッカッカッ……次はこっちから行かせてもらうぞ!」
クール円盤から、連続発射されるプラズマ破壊弾!
まばゆいばかりのエネルギーが、次々に宙マンの周囲へ炸裂し――
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
落合さん「円盤相手だけに、楽な戦いだと思っておりましたら……」
ビーコン「どうしてどうして、ありゃとんでもない難物っスよ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、がんばってなの~!」
ながもん「(口の中で)……ファイトっ」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
クール星人「カッカッカッ、これぞ超Cool! 私の勝ちだ宙マン!」
宙マン「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
とどめとばかり、クール円盤から発射されるプラズマ破壊弾。
だが、その恐るべきエネルギーは……
宙マン・プロテクションにより完全に受け止められ、無力化されていた。
クール星人「(驚愕)な、何ィッ!?」
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、クール円盤を直撃!!
クール星人「……こ、こんなの全然、Coolじゃな~いっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ながもん「おおっ。……さすが」
みくるん「今日もやっぱり、宙マンさんがやってくれましたね!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなきゃ!」
落合さん「(笑顔で頷き)ええ。……ええっ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、いつもありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
この次こそは、お前から受けた数々の屈辱をまとめて叩き返してやる!
覚えておれ、覚えておれ~っ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、我らが宙マンの活躍により……
地球征服の野望に燃える、宇宙狩人クール星人は倒された。
落合さん「お殿様、本当にお疲れ様でした!」
ピグモン「宙マン、今日もかっこよかったの~」
ビーコン「でも、今回の相手はなかなか大変だったんじゃないっスか?」
宙マン「なぁに、それもこれも……
ランチ前の腹ごしらえと思えば、苦労なんてみんな吹っ飛んでしまうよ。
そんなわけで落合さん、美味しい冷や麦、期待しているよ!」
落合さん「えぇ、えぇ、それはもう!」
落合さん「……ああ、でも。
冷や麦だけだと、栄養価的にはちょっと不安ですかしら?」
ビーコン「ヒヒヒ、それなら心配ご無用っスよ、落合さん!」
落合さん「あら、ビーコンさん、何か妙案でも?」
ビーコン「ヒヒヒ、とびっきり旨くて精のつく、とっておきの逸品……
オイラの股間の超本格派ヴルストに、ガブリとかぶりついてもらえりゃあ!」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、このエロ怪獣!
燻製でも何でも、勝手になっておしまいなさいっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、スモークみたいに風に舞うオイラっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなのやすらぎ荒らす奴……
許しちゃおけない、ご町内のヒーロー。
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?