カンカン照りの陽気が続いていた、夏 の北海道……
この日の千歳市は珍しく、ご覧の通り曇り空であった。
そんな生憎の空模様、ちょっとばかり憂鬱な午後。
今回の『宙マン』もまた、そんな日の千歳市ほんわか町5丁目
「宙マンハウス」のリビングから物語を始めよう。
宙マン「う~ん、どうにもすっきりしない天気だねぇ……。
予報では、今日はずっと快晴のはずだったんだが」
落合さん「えぇ、本当に……。
外に洗濯物を干すつもりでいたのですが、いつ降り出すか
どうにも危なっかしくて、それも叶いませんでしたわ」
ピグモン「えう~、おかげでお外にも遊びに行けないし……
ピグちゃん、つまんないの~」
宙マン「はっはっはっ……まぁまぁ、ピグモン。
家にいたって、楽しめることは幾らでもあるじゃないか――
ここ数日は猛暑続きでもあったしね、クールダウンの良い機会さ」
落合さん「お殿様の仰る通りですわよ、ピグモンちゃん。
せっかく涼しくなったのですし、家にいるからこその有意義な時間を過ごしましょう」
ピグモン「……はぁ~い、なの~」
ビーコン「いえっふ~! そうだー、オイラもその意見に賛成っス~!
家にいるからこその有意義な時間、いいじゃないっスか。
てなわけで落合さん、早速うつろな表情のM字開脚で……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、相も変わらず世迷言をっ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……
家に閉じこもってるしかないと、つい刺激を求めてしまう
そんなお年頃のヤンチャボーイっスぅぅ~」
宙マン「たはは、まぁまぁ、二人とも……」
「ギャボボボボ~ンっ……
だったら、俺がくれてやろうかァ?
……とびっきりの、刺激ってやつをよぉ……!」
ビーコン「……へっ?」
落合さん「ちょ、ビーコンさん、変な声色作らないで下さいまし!」
ビーコン「お、オイラじゃねぇっスよぉ!?」
宙マン「うん、だが確かに……私にも聞こえたよ、声が」
宙マン「と、言うことはだ――」
ピグモン「はわわ、今の声、いったい誰の声なの~!?」
突如、虚空から聞こえてきた謎の声……
それはまるで、天空から「降って」来たかのような。
いや、実際に天空から聞こえてきたのだ、その声は。
そして、声の主は……
千歳市上空に妖しく渦を巻く、不気味な黒雲の中にいた!
「ギャボボぉぉ~ンっ!!」
ズ、ズーンっ!
宙マン「(よろめき)う、うおっ!?」
落合さん「……あっ、あらあら、まぁまぁ!」
ビーコン「どひ~っ、一体何がどうなってるんスか~!?」
ピグモン「きゃああんっ、おっかないの~!(涙目)」
いきなりの不気味な声に、突然すぎる落下震動。
……次々と起こる様々な事態に、すわ何事と街に飛び出した
宙マンファミリーの眼前に「在った」もの、それは!?
落合さん「(茫然と見上げ)か……怪獣っ!?」
「ギャボボボ~、呑み込みが早くて助かるぜ。
この俺は、成層圏生まれの変形怪獣・ガゾート……
今は暗黒星雲の怪獣魔王様に仕える、怪獣軍団の一員だ!」
ピグモン「(怯えて)えうえう~、やっぱりぃ~!」
宙マン「怪獣軍団、と言う事は……」
ビーコン「今回もまた、友好的な流れにゃならなそうっスね!」
ガゾート「ギャボボボ、これまた説明が要らなくって助かるねぇ。
俺は時間を無駄にする気はないんで、テキパキ進めるよ!」
落合さん「……あらやだ、開き直られちゃいましたわ!(汗)」
イフ「わははは! そうだ、そうとも、問答は無用だ――
思い切り暴れて千歳を破壊せよ、怪獣ガゾートよ!」
ガゾート「ギャボ~っ、任しといて下さいな、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するガゾート!
迫り来る巨体を前に、人々は逃げ惑うより他に術がない。
ビーコン「どひ~っ、えらいこっちゃっス~!
く、曇り空がスッキリしてくれたのはよかったっスけど……」
落合さん「その黒雲の中に、あんな物騒な方が潜んでらしたなんて!」
ピグモン「きゃああんっ、おっかないの~!(涙目)」
怪獣ガゾートの出現により、またまた千歳は大混乱!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭が、怪獣攻撃用の戦闘機でスクランブル!
落合さん「ああ、よくぞ来て下さいました!」
ビーコン「なんだかんだで、やっぱ姿を見ると嬉しいもんスねぇ。
(ボソッ)……例え、どんなに成果が伴ってなくっても!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、ファイトなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
戦闘機隊の火力が、一気にガゾートへ叩きこまれていく。
……しかし、ガゾートは動じない。
ふてぶてしいまでに動じず、平然と進撃を続ける巨体!
ガゾート「ギャボ~っ、何ソレ、迎撃のつもりぃ!?」
「……ど、どひゃぁぁぁ~っ!?」
ガゾートの口から吐きだされる、恐怖のプラズマ光弾!
その威力の前に、戦闘機隊は次々と勇戦空しく撃墜されていく。
ピグモン「……ああっ、みんなやられちゃったの!」
ビーコン「っが~、相手が悪かったっスねぇ……
あの怪獣、ちょっと強すぎなんじゃないっスか!?」
落合さん「(頷き)……ええ、そういうことにしておきましょう!(汗)」
……などと、人々が嘆いたりボヤいたりしている間にも。
爆発! 炎上!
ガゾートの大暴れで、今や千歳の街は地獄と化しつつあった!
ガゾート「ギャボ~っ、ど~んなもんだいっ!」
落合さん「いけませんわ、このままでは本当に街の命運が!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ガゾートの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
成層圏の大悪党め、これ以上は好きにさせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うおお! この頼もしさ、やっぱアニキっスよねぇ!」
落合さん「はぁ……お殿様、素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ガゾート「ギャボ~っ、自分から出てきてくれたな、宙マン。
まぁいい、かえって好都合だ――
地球征服のためには、どのみちお前は邪魔だからな!」
宙マン「(ニヤリ)私を倒せるつもりらしいが、そうはいかんよ!?」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マンーー
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ガゾート「ギャボギャボ~、だったら勝負だ、宙マン!」
宙マン「さぁ来い、ガゾート!」
激突、宙マン対ガゾート!
落合さんたちが見守る中、ハイテンションの攻防戦が展開。
地響きをたて、鎬を削りあう正邪の巨体!
宙マンとガゾートの力と技が、火花散る勢いで渡り合う。
持ち前の獰猛さを全開に、宙マンめがけて襲い来るガゾート。
だが、宙マンもまた、鍛え抜かれた技で一歩も引かない。
宙マン「そぉれっ、こいつを食らえ!」
ガゾートに生じた、一瞬の隙を見逃さず……
怪獣の腹部めがけて、宙マンの鋭いストレートキックが炸裂!
その威力に、さしものガゾートも大きくよろめいた。
宙マン「どうだ、まいったか!」
ガゾート「ギャボギャボ、宙マン、いい気になるな~ッ!」
自慢の飛行能力で浮きあがり……
ふわふわと予測不能な軌道を描きながら、空中を自在に舞って
宙マンを翻弄しつつ攻撃を仕掛けてくるガゾート。
宙マン「くッ、味な真似を!」
ガゾート「ギャボボァァ~っ、そぉれ、それそれ~っ!」
ガゾートの空中殺法へ、果敢に挑む宙マンであったが……
それをもあざ笑うかのように放たれたガゾートのプラズマ光弾が
宙マンの足元へと容赦なく炸裂!
宙マン「(よろめき)う、うおっ!?」
ガゾート「ギャボ~、それそれィ、どんどん行くぞ~っ!」
完全に調子に乗って、プラズマ光弾を乱射するガゾート!
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ピグモン「はわわわ……ちゅ、宙マンっ!?」
ビーコン「ど、どひ~っ!
座布団みたいなナリに似合わず、すばしっこい奴っスね!」
落合さん「あのプラズマ光弾の威力も厄介ですわ……!(汗)」
ゾネンゲ博士「ぬふふふ、流石はガゾート、素晴らしい力でしょう!
蝶のように舞い、蜂のように刺す、あれがあやつの真骨頂にございます!」
イフ「いふ「おお、その通りじゃ、実に惚れ惚れするのぉ!
だからこそ、最後の画竜点睛を欠いてはならぬのだ――
さぁガゾートよ、にっくき宙マンにとどめを刺せ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ガゾート「ギャボボ、いよいよ最後の時が来ちゃったみたいだねぇ。
どぉれ、死んでもらおうか、宙マン!」
宙マン「いいや……まだまだ、本当の勝負はここからさ!
くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ガゾートのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだっ!?」
ガゾート「き、効くじゃなぇかよぉぉ~っ!?」
大きくバランスを崩し、地面に激突するガゾート!
墜落のダメージで、怪獣がふらふらになったところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ガゾートを直撃!!
ガゾート「ぎゃ、ギャボボボっ、やっぱりこりゃタマラン~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
落合さん「今日もまたまたお見事でしたわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、サイコーっスよ!」
イフ「ぐぬぬぬっ……おのれ、またしてもか!
だが宙マンよ、お前は未だ怪獣軍団の真の恐怖を知らぬ……
次こそは、次こそは必ず!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、千歳に出現した怪獣ガゾートは撃退され
街には再び、静かな日常と気持ちの良い青空が戻ったのであった。
落合さん「改めまして……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
落合さん「お殿様のおかげで、街にも平和が戻りましたし……」
ピグモン「お空もすっきり、きれーな青空なの~」
宙マン「はははっ、いやいや、なんのなんの。
でもまぁ、こうして本来の晴れ間が見えたことだし……
家へ帰る前に、のんびり散歩ってのも悪くないかもねぇ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんお散歩嬉しいの~」
ビーコン「チチチ、いやいや~、アニキアニキっ。
どうせならトコトン極めるっスよ、インドアでこそ出来るコト!
それには先ず落合さんが、虚ろな表情でM字開脚……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、アナタの存在が一番の暗雲ですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、空の青さが目に沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなの住む街、千歳の平和……
みごと守った、我らが宙マン。
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?