今日より8月に突入し、名実ともに夏の盛り――
と言うわけで連日、厳しい暑さに見舞われている日本列島。
それはここ、北海道においても例外ではなく、お馴染みの舞台である千歳市、
ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」もまた、ギラつく真夏の太陽に照らされて
すっかり夏めいた風情の中にあった。
落合さん「皆様こんにちは! ご近所でも大評判、美人メイドの落合ですわ。
連日連夜、本当に暑さの厳しい日が続いておりますけれど……
水分と塩分はこまめに摂って、熱中症にはくれぐれもご用心下さいね!」
ながもん「季節を、意識した……注意勧告。……さすが」
みくるん「極端に暑い日が続くと思ったら、長雨続きで急に冷えたり……
何かと、身体には優しくないお天気ですもんね~」
ビーコン「カーッ、な~にを眠たいこと言ってるっスか、オナゴ衆!
優しさが欲しい、ってんなら……
それは案外、みんなの一番間近にあるんじゃないっスかぁ?」
落合さん「(ジト目)……何が仰りたいんです、ビーコンさん?」
ビーコン「っがー、じれったいっスねぇ、判ってるくせに!
みんな、服なんて脱いでスッポンポンでいいじゃないっスか!
で、オイラの胸に飛びこんでくればいいじゃん!?
そうすりゃ心にも体にも、オイラの優しさが染みわたって……」
みくるん「え、え~っとぉ……どうしましょう……?(汗)」
宙マン「はっはっはっはっ、あれはもうビーコンの日課みたいなものだからね~。
真に受けていたらキリがないよ、適当に受け流しておけばいいさ」
ピグモン「はうはう~、そんなことより、ピグちゃんアイス食べたいの~」
ながもん「(ボソッと)夕張メロン味……希望」
ビーコン「だーっ!! みんなしてヒドイヒドイっ、特にアニキが酷いっ!
仮にも同居人のオイラに対して、あまりに無慈悲じゃないっスか!?」
ビーコン「愛をプリーズ! 優しさプリーズっス!(涙目)」
落合さん「別に今更、そんなの必要ないでしょうにっ。
やらしさでしたら、既に有り余ってるんじゃございません!?」
ビーコン「びえ~ん、落合さん、ヒドいっスぅぅ~」
落合さん「ねーいっ、擦り寄って来ないで下さいましっ!(汗)」
などと、一同が例の調子でいると……何の前触れもなく、突然!
ズゴゴゴグワーンっ!
ビーコン「(呆然)……へっ?」
落合さん「な、何ですの……今のは一体なんなんですの~!?(汗)」
暑さのせいか、はたまた天変地異か?
千歳市内のあちこちで、火の気もないのに連続して巻き起こる爆発、また爆発。
みくるん「ちょっ、これ……ど、どうなってるんですかぁ!?(汗)」
ピグモン「はわわ、これって、ひょっとして……」
ながもん「(頷き)……ひょっとする、かも」
宙マン「まさか、またまた怪獣軍団かね!?」
左様――
そんな碌でもない予想に限って、ズバリ的中するのは世のさだめ。
バリバリバリ……ガラガラガラッ……!
何の前触れもなく、千歳の街を激しく揺さぶる局地地震。
大地を裂き、そびえるビルを崩して……
激しく土煙を巻き上げながら、地上に姿を現した者とは!?
「ピギュルゥゥゥ~ッ!!」
みくるん「(涙目)ああんっ、またまた怪獣さんですぅ!」
ピグモン「かぶと虫……それとも、バッタさん……なの~?(汗)」
ながもん「(クールに首を振り)……その、どちらでも……ない。
「全怪獣怪人大百科」に、いわく……あれは……昆虫怪獣・メガロ」
メガロ「ピギュルゥゥ~、よくご存じだ、お嬢ちゃん!」
落合さん「かつてはシートピア海底王国の守護神として崇められ……」
ビーコン「それが今じゃ、怪獣魔王の手先ってワケっスか。
何の因果か、落ちぶれたもんスねぇ!?」
メガロ「ピギュルゥゥ~、笑いたければ笑うがいいさ!」
みくるん「……って、どこかで聞いたような台詞ですぅ(汗)」
メガロ「すきま風吹く、怪獣渡世の厳しさの中……
そんな俺を拾って下さった魔王イフ様のご恩に、今こそ報いる時がきた。
軍団の悲願、地球征服、このメガロ様が成し遂げてみせるぜィ!」
落合さん「ふむっ、ここだけ聞けばちょっといいお話のようですが……」
ビーコン「(ボソッ)オイラ達には、心底どーでもいい話っス!」
イフ「わはは! さぁ行け、思い切り暴れるのだメガロ!
華々しい銀幕デビューを飾ったお前は、決して只の一発屋ではないのだと
地球に、人類に、そして全宇宙に見せつけてやるがよい!」
メガロ「ピギュルゥゥ~! どうぞ暗黒星雲よりご照覧あれ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始する大怪獣メガロ!
迫り来る巨体を前に、人々は逃げ惑うより他に術がない。
ビーコン「どひ~っ、今日もエラいことになっちまったっスねぇ!」
落合さん「昆虫採集ならいざ知らず……
まさか、私たちが昆虫怪獣さんから追われる羽目になるなんて!」
メガロ「ピギュルル、夏休み大サービス、出し惜しみなしで行くぜ!」
出た、メガロの得意技……
ぐわっと左右に開いた口から、勢いよく吐き出される地熱ナパーム弾!
直撃を受けた街の建物が、大爆発と共に吹っ飛ぶ威力。
おお――北海道千歳市、早くも大ピンチ!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭が、怪獣攻撃用の戦闘機でスクランブル!
ながもん「おおっ。……ナイス……タイミング」
ビーコン「頼んだっスよ~、航空防衛隊のお歴々!」
落合さん「頑張って下さいませ、本気で応援しておりますわ!」
「ようし。……怪獣への一斉攻撃、開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく昆虫怪獣へ叩きこまれる。
……が、全くびくともしないメガロ!
メガロ「ピギュルゥゥ~、映画デビューの東宝怪獣、ナメんな~っ!」
「う、うわぁぁぁっ……!!」
激しいスパークと共に、メガロの角から勢いよく迸るレーザー殺獣光線!
その凄絶な威力の前に、戦闘機は一機、また一機と撃墜されていく。
みくるん「ああっ、やっぱりやられちゃったですぅ!(汗)」
ながもん「みくるん。……この場合……”やっぱり”は……余分」
みくるん「ううっ、そうだけど……そうなんだけどぉ……!」
メガロ「ピギュルル、な~にをゴチャゴチャ言ってやがる!」
メガロ「ピギュルルル~、見たか、俺のこの実力!
元シートピアの守護神・メガロ様の力で、千歳を焼け野原に変えてやる!」
ビーコン「どひ~、あの虫、なんかむやみやたらに張りきり過ぎっス!(汗)」
落合さん「ああっ、どうしましょう……
これはもう、本気と書いてマジで大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うメガロの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
そこまでだ昆虫怪獣、もう好き勝手な真似はさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 待ってましたっス、アニキの十八番!」
落合さん「やはり、最後に頼りになるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
メガロ「ピギュルル~、どうやら今日の俺はツイてるみたいだな。
地球を征服完了したばかりか、宙マン……
邪魔なお前まで倒して、ボーナスの上にボーナス上乗せ待ったなしってんだから!」
宙マン「ふふん……獲らぬ狸の皮算用も、その辺にしておくがいい!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
メガロ「ピギャルゥゥ~っ、だったらこのメガロ様と勝負してみるかぁ!?」
宙マン「そのつもりさ、とことん相手になってやる!」
真っ向激突、宙マン対メガロ!
落合さんたちが見守る中、巨大戦は一気にヒートアップ!
両手のドリル爪を、もっとも効果的に活用できる戦法……
フェンシングのような突きのラッシュで、宙マンを攻め立てるメガロ。
その猛攻をかいくぐりながら、宙マンも果敢に相手の懐へ飛びこんでいく。
宙マン「くうぅっ……何て言う馬鹿力だ!」
メガロ「ピギュルル、そりゃそうよ――
この夏こそは、昆虫にとって最高の晴れ舞台、殺しの舞台だからな。
そぉれっ、潰れろ宙マン!!」
単純な力比べだけでは、流石の宙マンも苦戦は免れない――
が、だからと言って、そこで怯むようなヒーローではない。
宙マン「そぉりゃッ、これでもくらえ!」
流石だ、宙マン!
メガロの猛攻の中に生じた、ほんの一瞬の隙を逃すことなく……
鋭い正面跳び蹴りが、昆虫怪獣の腹部へと炸裂した!
メガロ「ぐ、ぐっフゥぅぅ……っ!」
痛烈な宙マンのキックを受けて、さしものメガロもずずっと後退。
宙マン「どうだ! これが正義の宙マン・パワーだ!」
メガロ「ピギュルルルッ……調子に、乗るな~っ!」
グワッツゥゥーンっ!
宙マン「う、うおおおおっ!?」
炸裂、自慢の一本角を活かしたメガロのメガトン頭突き!
その直撃に大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる宙マン。
メガロ「まぁだ、まだまだ。お次は地熱ナパーム弾だっ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「想像以上の……パワーの、怪獣」
ビーコン「う~ん、色々溜まってたんスかねぇ、フラストレーションとか!?」
落合さん「判る気がしますが……断じて、判るわけには参りませんわ!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)……うう……うっ……!」
メガロ「ピギュグルル……宙マン、いよいよ最期の時が来ちゃったなぁ!?」
「なんの……負けて、なる、もの、かぁぁッ!」
宙マン、パワー全開!
メガロの放ったレーザー殺獣光線を、ひらりとかわして大空へ。
メガロ「(驚き)ぴ、ピギュルルルっ!?」
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、メガロのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだッ!?」
メガロ「……き、キクキク効いたぁ、激辛じゃ~んっ1?」
閃光波の連続発射が、メガロに次々と命中!
そのダメージに、とうとう大怪獣がドドーッと倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、メガロを直撃!!
メガロ「ぐひぃぃっ……な、夏休みの宿題は、朝の涼しいうちにねぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「宙マン……グッジョヴ」
ビーコン「いやぁ、今日も今日とて流石っスねぇ、アニキは!」
落合さん「えぇ、そしてどなたよりも素敵です……お殿様♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぐぐっ……おのれ宙マンめ、よくもメガロを!
だが見ておれよ、この次こそがお前の最期の時なのだ!
よいか、忘れるな、真の恐怖はこれから始まるのだぞ……!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、突如出現した昆虫怪獣メガロは撃退され
怪獣軍団の謀略は、今度も未然に防がれたのであった。
落合さん「改めまして……御無事で何よりですわ、お殿様!」
ビーコン「アニキ、お疲れさまっした!」
宙マン「いやぁ、さすがに今度ばかりはどうなるかと思ったけど……
それでもどうにかこうにか、ギリギリまで頑張っちゃったよ~。
なんせ私はみんなと、これからうんと旨い物食べるつもりなんだからね!」
ビーコン「出たッ、アニキのヒーローらしからぬ食い意地パワー!」
ピグモン「はうはう~、宙マンはくいしんぼさんなの~」
ながもん「でも、そこが……宙マンの……いい、ところ」
みくるん「(笑顔で頷き)うん……うんっ、そうだよねぇ!」
ビーコン「まー、何はともあれ……
今はただ心静かに、この平和の尊さを噛み締めようじゃないっスか!
ヒヒヒ、こうやって落合さんにセクハラしつつ……♪」
むにゅん、ふにふにっ
ビーコン「むひょ~、いつ味わってもたまんない感触っスね~☆」
落合さん「……きゃ、きゃああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! 全く、ビーコンさんはほんとに全く!
もう少し、綺麗にオチをつける気はないんですのっ!?(怒)」」
ビーコン「どひ~っ、これもひとつの定番オチっスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
懲りもせず、千歳の平和を乱す者……
許すな宙マン、僕らの仲間。
さぁ、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?