スカッと澄み渡るような、晴れ渡った空の下……
ここ・北海道の海岸線も、心地よい陽気に暖められていた。
だが、そんな北の大地と海に、またも忍び寄る不穏な気配。
虚空から不気味に響き渡るのは、怪獣魔王イフの呪いの声だ!
イフ「いまぞ起て、我が怪獣軍団の戦士よ!
怠惰な平和を貪る地球人どもを、徹底的に蹂躙するのだ――
さぁ、いでよ! 血と破壊に飢えた二大怪獣!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
一天、にわかに掻き曇り、空に奔る鋭い落雷。
その閃光の中から、地上にその恐るべき姿を現したのは……
怪獣墓場でブイブイ言わせた無類のケンカ好き、亡霊怪獣シーボーズだ!
「ゴゴゴゴ……
グワ~ッガッガッガ~!」
そして、更にタチが悪いことに……
今回、怪獣軍団から送り込まれたのは一匹だけではないのだ。
「ヒュヒュヒュ……
グワッグワッグワッ……!」
南米生まれの血に飢えた無法者、吸血植物ケロニヤ。
名にしおう暴れ者二匹、まさしく悪魔の揃い踏み!
シーボーズ「グワッグワッ……誰かと思えばケロニヤじゃねぇか。
俺と組むパートナーってのは、お前のコトだったのかぁ」
ケロニヤ「怪獣星以来の腐れ縁で、随分ケンカもしたけどなぁ。
(しみじみ)……お互い、あん時ゃ若かったよなぁ~」
ケロニヤ「だが、俺たちが手を組めば、もう怖いものなしよ!」
シーボーズ「おうさ、その通り、良く言ってくれたぜ相棒!
……さぁて魔王様、何なりとご命令、お申し付け下さい!」
イフ「うむ、素晴らしいぞ二匹とも、そのコンビネーションだ!
そして、お前たちにコンビを組ませて当たらせる任務……
他でもない、それは道南の海岸線の完全制圧じゃ!」
シーボーズ「海岸線の、完全制圧ぅ……?」
イフ「左様、左様。
海岸線を征服することは、この一帯の海産物を制すること――
特産品のワカメの利権を、怪獣軍団が独占するのだ!」
シーボーズ「なぁるほど、そうなりゃ……」
ケロニヤ「ワカメの売り上げで大儲け間違いなし、ですな!」
イフ「その資金を元手に北海道を、日本を……
いやさ、やがては地球全域が怪獣軍団のもの。
頼むぞ、お前たち二匹の働きに全てがかかっておる!」
ケロニヤ「お任せ下さい、魔王様!」
シーボーズ「こんなチンケな海岸、アッと言う間に……」
「おおっと、そうはさせないぞ!」
凛として響いてきた声に、驚いて振り返るケロニヤ、シーボーズ。
華麗なる空中回転と共に舞い降りてきたのは……
もちろん正義の味方、ごぞんじ宙マンだ!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!」
ケロニヤ「ゲゲェッ、宙マン!……ど、どうしてここが判った!?」
宙マン「う~ん、いやまぁ、話せば長いんだけどね……」
シーボーズ「……手短に頼むぞ、手短にっ!」
と言うわけで、ここからはしばし宙マンの「語り」モード。
宙マン「出来ることなら、判りたくなんてなかった……
ああ、素通り出来てれば、いっそどんなによかったか!」
シーボーズ「(首をかしげて)……?」
宙マン「そもそも、今日はだね……
この近辺に美味しいと評判のラーメンがあると聞いて、家族で
それを味わいにきた、ただそれだけなんだよねぇ」
宙マン「着いたら着いたで、なんとも言えない不穏な気配だ!
で、どうにも気になって来てみたら……
案の定、お前たちが悪さをしかけていたってわけさ」
ケロニヤ「現役引退の身なら、隠居らしくしてりゃいいものを!」
宙マン「ああ、私もそう思わないでもないさ。……」
宙マン「だが、お前たちを放っておいては、せっかくのラーメンもさぞ不味かろうさ。
だからこそ、腹ごしらえも兼ねて……行かせてもらうッ!」
シーボーズ「野郎っ、ナメやがって!」
ケロニヤ「邪魔はさせんぞ、返り討ちだ!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまたスーパーバトルの幕開けだ!
ケロニヤ「ヒュヒュヒュ、二対一だ!」
シーボーズ「テメェにゃハナから、勝ち目なんてねぇんだよ!」
宙マン「さぁて、それはどうかな?
怪獣軍団の小悪党ども、雁首揃えてかかって来い!」
シーボーズ「(ムカッときて)野郎、このっ!!」
激突、宙マンVSニ大怪獣!
シーボーズとケロニヤ、名うての暴れん坊二匹に挟み打ちされても
我らがヒーローの闘志は、いささかも衰えを見せない。
シーボーズ「グワッガガガ、オラオラ、どうしたァ!」
ケロニヤ「ヒュヒュヒュ、こっちも忘れてもらっちゃ困るぜェ!」
シーボーズと戦っていると、背後からケロニヤのちょっかいが入り
ケロニヤへ向き直ると、今度はシーボーズの奇襲攻撃。
二体同時の相手とあっては、宙マンもいささか忙しい。
宙マン「ようし、まずはお前からだ……どぅりゃあーっ!」
気合一発、宙マンの豪快な投げ技が決まった!
シーボーズは砂浜に、頭から叩きつけられてしまう。
シーボーズ「(目を回し)ハンニャラ、ヒ~っ……」
ケロニヤ「やりやがったな、次はこっちだ!」
宙マン「ああ、順番にきっちり片をつけてやるさ!」
お次は、宙マン対ケロニヤ。
その背後から、回復したシーボーズがのっそりと迫ってくる。
シーボーズ「グワッガァ~、宙マン、覚悟しやが(れ)……」
宙マン「(とっさに振り返り)甘いッ!」
宙マン、振り向きざまのストレート・キック!
奇襲に失敗、またもひっくり返ってしまうシーボーズである。
ケロニヤ「し、シーボーズっ!?」
怯んだケロニヤめがけ、次々にぶち当たって行く宙マンの打撃。
間合いを掴んだ宙マンが、ジャンプとともに繰り出す技は――
ケロニヤ「(驚き)、ひゅ、ヒュヒュヒュッ!?」
宙マン「受けてみろ! 宙マン・パルサーチョップ!!」
エネルギーを集中させた手刀で繰り出す、必殺の一撃……
パルサーチョップが、ケロニヤの脳天を叩き割るように炸裂!!
ケロニヤ「ダはぁぁっ……し、シーボーズ、仇を……!」
シーボーズ「グワァ~ッ、よくもケロニヤを!」
ケロニヤを倒された怒りに燃え、猛然と突進してくるシーボーズ。
だが、戦いの主導権は、もはや宙マンの手中にあった――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、シーボーズを直撃!!
シーボーズ「ごガァァっ……ざ、残念無念、たまらんねん~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぬうううっ……おのれ、またしても宙マンめが!
よくも、このワシと怪獣軍団の顔に泥を塗ってくれたな。
だが忘れるな……ワシらは決して、地球征服を諦めはせん!
よいか宙マン! 覚えておれ、覚えておれよ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、二大怪獣の凶悪コンビは撃退され
北海道の海岸線には、再びもとの平穏が戻ったのであった。
宙マン「ふぅっ……どうにか、一件落着か!」
宙マン「……っと、こうしちゃいられない。
早いとこ、みんなのもとに帰らなきゃ――
待たせちゃったからなぁ、怒ってないといいなぁ……」
と、まぁ、若干の紆余曲折こそあったものの。
ひとつの戦いを終えた宙マンと、彼の愛してやまない「家族」が
当地の美味しいラーメンを堪能できたのは言うまでもないだろう。
今日もさっそう、平和を守った地域の味方。
宙マン、次回もバッチリ頼んだぞ!