一般的には「七夕」と言えば7月7日だが……
ここ・北海道を含む、一部の地方においてはそうではない。
と、言う大前提のもとに。
今回の『宙マン』は、本州から一か月遅れの七夕の日を迎えた
お馴染み・北海道千歳市より物語を始めよう。
ピグモン「ささの葉、さ~らさら~、なの~♪」
宙マン「はっはっはっはっ、ごきげんだね~、ピグモン。
今年はいったい、短冊にどんなお願いごとを書いたのかな?」
ピグモン「んーとね、ずっとみんなでなかよく暮らせますように~、って書いたのよ~。
ピグちゃんのお願い、ちゃんと聞いてもらえるかしら~?」
ビーコン「ヒヒヒ、無理っスよピグモン、期待しない方がいいっス!」
ビーコン「だってねぇ、七夕は遠距離恋愛中の彦星と織姫とが
一年に一度だけ巡り合える特別な日なんスよ?
お願いそっちのけで、しっぽりよろしくやってるに決まってるじゃないっスか!」
げ し っ !
落合さん「純真なピグモンちゃんに、なんてこと仰ってるんですかっ!
そういう危険なご発言は、くれぐれも自重なさって下さいなっ」
ビーコン「いやいや~、落合さん。
こんな時代だからこそ、子どものうちからしっかりした性教育を……」
げ し っ ! げ し っ !
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
宙マン「たっはっはっ、それはまぁ、さて置き……
一年に一度の七夕様だ。晴れてくれるといいよねぇ」
ビーコン「……な~んて言ってるそばから、なんか雲行きが怪しくなってきたっスよ!?」
落合さん「あら嫌ですわ、せっかくの七夕ですのに……。
この際、ビーコンさんを生贄に晴れ乞いの儀式でも致しましょうか?」
ビーコン「ドイヒー! そう言う冗談は笑えないっスよ!?」
落合さん「あらあら、落合的には100%本気発言ですことよ?(にっこり)」
ビーコン「……輪をかけてヒデェっス!(汗)」
だが、この黒雲がもたらしたものはと言えば……
突然の雨降りなんかよりも、もっとタチの悪い悪意であった。
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マン「!?」
突如、天空から降り注いできた一条の雷光!
まばゆいその輝きの前に、思わず目がくらむ宙マンたち。
「グオオオオ~ッ!!」
ビーコン「ずげっ! あ、あいつぁ!?(汗)」
ピグモン「はわわわ、か、怪獣なの~!」
雷鳴が迸り、青白いスパークとともに空中で実体化した巨躯。
まさにそれこそ、マイナス・エネルギーそのものの化身たる
怪獣軍団の一員・月ノ輪怪獣クレッセントだ!
ビーコン「つーか、今日も今日とていきなりのお出ましっスね!」
落合さん「もう少し詫びさびと言いますか、前置きと言いますか……
とにかく、もっとこう……ございますでしょう!?」
クレッセント「グオオ~っ、まだるっこしい話は全部抜き!」
クレッセント「世はまさに、スピード命の情報化社会。
ちんたらやってると、置いていかれちまうぜ!?」
落合さん「あらまぁ、これって……」
ビーコン「オイラたち、逆に説教されてる流れっスか!?(汗)」
クレッセント「そう言うワケだ、グズグズしねーでテキパキ進めるぜぇ。
とりあえず手当たり次第にぶっ壊すんで、ヨロシクぅ!」
ピグモン「えう~、そんなのちっともよろしくないの~(涙目)」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「わははは! そうだ、行け行け、クレッセントよ!」
イフ「な~にが七夕祭りだ、何がロマンチックだ!
そんなものは、我ら怪獣軍団の手で叩きつぶしてやるっ!」
イフ「やれ健康だの、家内安全のと、みみっちい願い事ばかり短冊に書きおって……
どうしてそこで、ワシら怪獣の応援をしようとしたり、
怪獣ブームの再燃を祈願する奴が一人もおらなんだのだ!?」
ゾネンゲ博士「……は、ははっ、まったくもって仰る通りで(汗)」
と言う訳で、今回は(も?)完全に怪獣魔王の逆恨み!
癇癪を起こした魔王の命を受け、クレッセントがやって来た、と言うわけだ。
クレッセント「グオォォ~ッ、どんどん行くぜぇ!」
逃げる人々を追い散らし、自動車を軽々と鷲掴みにして……
そのまま一気に、地上めがけて叩きつけるクレッセント。
大音響とともに、爆発! 炎上!
落合さん「んまーっ、いつもながらなんて迷惑な!」
ビーコン「つーか、今日のは特に……って感じっスよねぇ!」
おお……早くも北海道千歳市は、絶体絶命の大ピンチ。
月ノ輪怪獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、航空防衛隊が来てくれたっス!」
落合さん「何度でも言わせて頂きますわ、“待ってました”と!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、怪獣への一斉攻撃だ!」
怪獣めがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、クレッセントの漆黒のボディには全く通用しない。
クレッセント「グオオオ~、相変わらず学習しねぇ奴らだぜ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
クレッセントの目から放たれる破壊光線!
その威力の前に、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
ビーコン「今回こそは……と、淡い期待してたんスけどねぇ」
落合さん「何度でも言わざるを得ませんわ……トホホ、と!(汗)」
クレッセント「グオオオ~、そぉれ、どんどんやっちゃうぜィ!」
ピグモン「ふぇぇん、このままじゃ笹も短冊も燃えちゃうの~(涙)」
ビーコン「それどころか、街ごと全部焼け野原っス!(汗)」
落合さん「色んな意味で、シャレになってませんわね……!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~!」
宙マン「ああ、勿論やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、クレッセントの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
これ以上の悪辣な真似は、この私が許しはしないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「よろしくお願い致しますわね、お殿様!」
ビーコン「もうこうなると、頼れるのはアニキしかいねぇっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
クレッセント「面白ぇ、だったら腕ずくで止めてみろ!」
宙マン「ああ、例によって話の通じる相手じゃなさそうだしね――
遠慮なく、そうさせてもらおうか!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
クレッセント「グオオオ~、潰れやがれ! 宙マン!」
真正面から組み打つ、宙マンとクレッセントの巨体!!
パワーとパワーの衝突が、千歳の大地を激しく揺さぶる。
クレッセント「グオオオ、これでも受けてみやがれ!」
宙マン「なんの、負けるか!」
持ち前の邪悪パワーで押しまくるクレッセント!
そうはさせじと、正義のド根性で踏ん張る宙マン。
力と力、技と技。
お互いに一歩も退かず、凄まじい格闘戦が続く――
その均衡を破ったのは、クレッセントの破壊光線であった!
クレッセント「グオオオ~、これでもくらえ!」
宙マン「(よろめき)う、むうっ!?」
ズガーン! グワーンっ!
「う、うわぁぁぁっ……!!」
ビーコン「どひ~っ、あの一発は侮れねぇっス!」
落合さん「今度直撃を受ければ、いかにお殿様でも……!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
クレッセント「いいザマだな宙マン、次で終わらせてやるぜ!」
ズシーン、ズシーンッ……
重々しい足音を響かせ、宙マンへと迫るクレッセント。
自慢の破壊光線で、破壊光線でとどめを刺さんとする――
……そこに生まれる一瞬の隙を、宙マンは待っていた。
クレッセント「死ね、宙マン!」
これでとどめだとばかり、破壊光線を放つクレッセント。
だが宙マンは、その一閃をひらりとかわして大ジャンプ!
ビーコン「これはっ、この流れは……もしかするっスよね、落合さん!?」
落合さん「えぇ、出ますわよ、お殿様のあの技が!」
クレッセント「な、何っ!?」
宙マン「同じ手を、何度も食うような私じゃない――行くぞ!」
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!!」
電光石火のキック技が、クレッセントの腹部を直撃!
大きく吹っ飛び、もんどりうって倒れるクレッセント。
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、クレッセントを直撃!!
クレッセント「た、七夕の夜は……は、ハレ晴レユカイ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐぐ……おのれおのれ、またしても宙マンめが!
だが覚えておれよ、すぐにこの仕返しはしてやるからな。
クレッセント以上の強者が、必ずお前を倒しに行くぞ……!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍で、恐るべき月ノ輪怪獣クレッセントは
その野望もろとも撃退され、街には再び七夕の平穏が戻ったのであった。
ビーコン「やー、どもどもアニキ、お疲れ様っした!」
落合さん「お殿様のお陰で、ほっと一安心ですわ」
宙マン「いやぁ、街の平和も勿論そうだけど……
落合さんたちも無事でいてくれて、本当によかったよ」
ピグモン「はうはう~、七夕飾りもちゃんと無事なの~♪」
落合さん「えぇ、それが本当に何よりでしたわ!」
ビーコン「せっかくの七夕、湿っぽくなるなんて似合わないっスからね~。
ヒヒヒ、濡れ場は織姫さんと彦星さんにお任せして……
いンや、むしろ負けずにオイラたちもっ!」
げ し っ !
落合さん「……だからどうして、そっち方向に話を持っていくんですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、でないと読者が納得しないんスよぉぉ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
そう。
何はともあれ――今宵は七夕!
夜空にキラキラ、天の川……
宇宙の平和を求める、無数のきらめき。
みんなのお願い、どうか叶いますように!