渦巻く暗黒星雲の奥深くに陣を構え……
虎視眈々と地球を狙い続ける、恐怖の怪獣軍団。
今日も、怪獣魔王・イフの命令が配下の怪獣たちに飛ぶ。
また恐るべき侵略の魔手が、私たちの故郷･緑の地球に迫るのだ！
イフ「にっくき宙マンを倒せ！ 地球を攻め落とせ！
我が軍団の誇るつわものどもよ、誰ぞ使命を果たすものはないか！？」
ゾネンゲ博士「ご安心下さい、魔王様！」
ゾネンゲ博士「血気盛んな怪獣たちが、続々と名乗りを上げており……
その中から特に優れたものを、私が選抜致しましてございます。
……既にその者は、地球で行動を開始しておりますれば！」
イフ「おお、相変わらず仕事が早いな、感心だぞ。……
今に見ておれ宙マンめ、地球は間もなくワシら怪獣軍団のものだ！」
おお、またしても……
怪獣軍団の新たなる魔手が、地球に向けて迫るのだ。
危うし北海道、危うし宙マン！
そして、その大いなる危機は……
のどかな平穏を破り、ここ・北海道千歳市に訪れんとしていた。
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ！
何の前触れもなく、千歳の街を激しく揺さぶる局地地震。
大地を裂き、そびえるビルを崩して……
激しく土煙を巻き上げながら、地上に姿を現した者とは！？
「びゃるるぅぅ～んっ！！」
熊澤夫人「ちょ、ちょっとお父ちゃん、アレ……！？」
熊澤さん「（ガタガタ震えながら頷き）……か、かかか、怪獣だぁ！」
「（ニヤニヤ）びゃるるぅ～んっ、それ以外に見えたら大問題だろう～！？」
人々の恐怖をアザ笑いつつ、千歳市の中心部に姿を見せたのは
怪獣軍団の尖兵にして、南大東島出身の荒くれ者……
「びゃるるぅ～んっ、その名も高き古代怪獣ダンガー様よ！
良い機会だから、ま、覚えといてくれや！」
みくるん「あっ……あの、えっとぉ、野暮な質問なのかもしれませんけどぉ……」
ながもん「ＹＯＵは、何しに……千歳まで？」
ダンガー「びゃるる～、そいつァマジで野暮な質問だわなぁ、お嬢ちゃん。
地球侵略のためのド派手なぶっ壊し、それ以外に余分な用事はねぇ！」
みくるん「ふぇぇん、やっぱりだよ、やっぱり～！（涙目）」」
イフ「おおっ、張り切っておるなダンガーよ。
結構、結構、怪獣たる者まずは元気が第一じゃ！」
ダンガー「そうですとも魔王様、何たって待ちに待った出番ですからね！」
イフ「ならば晴れ舞台に相応しい暴れぶり、このワシに見せてみよ！」
ダンガー「びゃるるぅぅ～んっ、心得ましたぁ！」
怪獣魔王の命を受け、奮い立つダンガー！
逃げ惑う人々を追い散らし、傍若無人の進撃を開始する。
車を踏み潰し、家を蹴り壊し……
大怪獣ダンガー、早くも全力全開での大暴れ。
のっけから千歳の大ピンチだ――だが、その時である！
ながもん「（空を見上げて）……おおっ」
みくるん「あ、あれは……！」
見よ！ 青空にひときわ映える紅の翼たち。
ダンガーの猛威を阻むべく、航空防衛隊の精鋭たちが最新鋭機に乗って
颯爽と防衛基地から飛び立ったのである。
ながもん「おお……いい、タイミングで……来てくれた」
みくるん「うん、よかったよね。
（ぼそっと）でも、宙マンさんがいてくれたら、もっと安心なんだけど……」
ながもん「そう言えば……今日はまだ……姿、見てない……？」
ダンガー「びゃるるぅぅ～んっ、何だか知らねぇが……
人間なんぞにやられるほど、ダンガー様はヤワじゃねぇぜ！？」
「なんの、思い知らせてやるぞ！ 全機、一斉攻撃開始っ！！」
戦闘機隊とダンガーの死闘が、これから始まろうとしている！
だが、そんな緊迫した状況の中……
我らが宙マンは、いったいどこで何をしているというのだろうか？
と、ここで唐突に場面は変わって、こちらは千歳市内某所の焼肉レストラン。
そう、賢明なる読者諸兄諸姉は既にお気づきのこととは思うが……
お馴染み宙マンファミリー、今日はこの店まで焼肉を食べにきていたのである。
ビーコン「うひょひょひょ、早くもヨダレの海で溺れそうっス！」
落合さん「いいですわねビーコンさん、くれぐれもお行儀よく……ですわよ！？」
宙マン「おおっ、きたきた、来ましたよ！」
ピグモン「はうはう～、とってもおいしそうなの～♪」
落合さん「ランチタイムとは言え……
この内容とボリュームで1２00円に収まるのは、正直有難いですわねぇ～」
ビーコン「ヒヒヒ、さぁさぁ、どんどん焼くっスよ！ どんどん食うっス！」
宙マン「おお～、焼けてきた焼けてきた……。
この香ばしさが鼻先に漂ってくるとね、また実に堪らないよねぇ！」
ビーコン「やっぱ焼肉は炭火に限るっスよね、アニキ！」
宙マン「うん、この煙もまた絶妙の調味料なんだよね」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんもう待ちきれないの～」
落合さん「うふふっ、慌てないで下さいね、ピグモンちゃん。
もうちょっと、こんがりするくらいに焼いてから……」
ビーコン「表面カリッと、中はジューシー、これが理想っスよね！」
宙マン「おおっと……そんな事言ってる間に、いい感じに焼けてきたぞ。
さぁ、みんなで美味しく食べようじゃないか！」
ピグモン「はうはう～、いっただっきま～す、なの～♪」
ビーコン「おおお～、口ン中でとろけるっスよ！ いい肉使ってんなぁ！」
落合さん「牧場直営ならではの強みですわね～、このお値段でこの肉質は。
……ってビーコンさん、それ私のお肉ですわよ！？（憤慨）」
ビーコン「へっへ～ん、早いもん勝ちっス～☆」
落合さん「（ムカッ）この、大飯食らい怪獣は……！」
宙マン「(苦笑）たっはっはっ……まぁまぁ、二人とも」
宙マン「そうそう、そして何といってもコレだよ……
焼肉に一番合うおかずは、何といっても白いご飯だよねぇ！」
ビーコン「そのうえ、ライスお代わり自由ってのもホント有難いっス！」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんもお代わりしちゃうの～♪」
……などと、宙マンファミリーが和気藹々と焼肉ランチに舌鼓を打っていたころ。
航空防衛隊の戦闘機隊は、その全火力による大奮戦にも関わらず
残念ながら、ダンガーの進撃を食い止めきれずにいたのであった。
「何てタフな奴だ……これだけの攻撃でも、まだ参らないなんて！」
ダンガー「びゃるるぅ～んっ、このダンガー様をなめるな～っ！」
熊澤さん「ああっ……なんてこった、戦闘機でも歯が立たないなんて！」
宇佐美さん「ううむっ、これはまずいぞ、非常にまずい！」
みくるん「ああっ、こんな時、宙マンさんがいてくれたら……！」
そう、その宙マンたちはと言えば……
美味しい焼肉ランチを食べ終えて、気分よく支払いを済ませたところであった。
宙マン「いやぁ～、美味しかった、すっかり堪能しちゃったよ！」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんまた来たいの～」
落合さん「ええ、是非またみんなで参りましょう！」
ビーコン「いえっふ～、目指せ全ランチメニュ制覇っス～☆」
……などと言いつつ、良い気分で一歩店の外に出た瞬間！
ピグモン「（目を丸くして）ああっ！」
宙マン「（も驚き）……こ、これは……っ！？」
落合さん「あらイヤですわ、どうしましょう……
ちょっとお食事を楽しんでいる間に、こんなことになっていたなんて！」
ビーコン「う～ん、なんか外が騒がしいかな、とは思ったんスけど……（汗）」
ダンガー「びゃるぅぅ～ん、恐れ入れ人間ども！
それもこれも、すべてこの俺・ダンガー様の仕業さ。
この俺のパワーで、千歳を完膚なきまでに叩き潰してやる！」
落合さん「……あぁ、もうっ、何てこと仰るんでしょう！？」
ビーコン「旨い飯の直後に、一気に胸焼けしそうな宣言っスねぇ！（汗）」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの～」
宙マン「（頷き）ああ、やるとも――宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るダンガーの前へ舞い降りる！
宙マン「トゥアーっ！ 宙マン、参上！
古代怪獣ダンガー、これ以上の乱暴狼藉は許さないぞ！」
ズ、ズーンっ！！
ビーコン「おおっ、今日も出たっス、アニキの十八番！」
落合さん「お殿様、やっぱり素敵です……♪（うっとり）」
ピグモン「はうはう～、宙マン、がんばってなの～！」
ダンガー「びゃるぅぅ～ん、やっと出てきたか宙マン！
臆病風に吹かれたとばかり思ってたぜ、一体どこで油を売ってた？」
宙マン「はっはっはっはっ、いや～、みんなでちょっと焼肉を、ね♪」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ！
ダンガー「（ぶちっ）……ふざけんなこのヤローッ、何が焼肉だ！
てめェそれでもヒーローか、もっとまじめにやれ～っ！」
宙マン「あ、いや、そんなところでキレられても……！（汗）」
激突、宙マン対ダンガー！
落合さんたちが見守る中、両者の攻防戦が火花を散らす。
ダンガーの武器は、両手の鋭い一本爪。
左右の爪と軽快なフットワークで、ボクシング世界チャンプのごとく
嵐の激しさでパンチ攻撃を仕掛けてくるのである。
右から、左から、怒涛のラッシュで攻めに攻めるダンガー！
その勢いに押されつつも、怯むことなく反撃の隙を伺う宙マン。
ダンガー「びゃるる～んっ、そぉれ、死ね死ね！」
宙マン「ふん……調子づくのも、そこまでだ！」
一瞬の隙を突き、鮮やかな反撃に転じる宙マン！
敵の懐に入りこみ、機関銃のごときスピードと破壊力が相まった
正義の打撃技をダンガーめがけて叩きこんでいく。
ダンガー「うぐっ！」
宙マン「まだまだ、こんなものじゃないぞ――それっ！」
宙マン、ジャンプ一閃！
ダンガーの眼前で、ヒーローの巨体が軽々と宙に舞う。
宙マン「セイヤァァーっ！ 宙マン・チョップ！」
落下速度を利用して叩きつける必殺の手刀！
痛烈な一撃を喰らって、たまらずブッ倒れるダンガー。
ピグモン「わぁっ、宙マンすごいの～！」
落合さん「これはいけますわ、お殿様っ！」
ビーコン「アニキ！ 一気にノックアウト勝ちっスよ～！」
ダンガー「や、野郎っ……なめるなよ！？」
よろめきながらも、残された力で立ち上がるダンガー。
だが、その間に宙マンは、既に大空高くジャンプして……
更なる必殺技で畳みかけるべく、空中で高速回転！
ダンガー「（驚愕）びゃ、びゃるるるっ！？」
宙マン「エイヤァァーッ！
宙マン・アサルトヒール！！」
右足にエネルギーを集中させ、正義の鉄槌のごとく振り下ろされた
踵落としの一閃が、ダンガーの脳天を叩き割るように炸裂！！
ダンガー「こ、こりゃ効いた……悔しいけど、効いたぁぁ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
ピグモン「はうはう～！ やったのやったの、宙マンが勝ったの～！」
ビーコン「さっすがぁ！ やっぱアニキはそうじゃなきゃっス！」
落合さん「ありがとうございました、お殿様！」
イフ「うぐ、ぬぬぬぬっ……またも、またしても宙マンめが！
だが、覚えておれ。
いつまでも、そうやって呑気に構えていられると思うなよ――
この次こそは、きっと思い知らせてくれるぞ！」
かくして、ここに平和は蘇った――
千歳のヒーロー・我らが宙マンの活躍によって、古代怪獣ダンガーは
地球征服の野望もろとも、見事に撃退されたのであった。
ピグモン「はうはう～、宙マン、おつかれさまなの～」
宙マン「ありがとうみんな。……いやぁ、それにしても」
ピグモン「（首をかしげて）はう？」
宙マン「巨大化して一戦交えたら、また急にお腹がすいてきちゃったな」
ビーコン「うへ、アニキ、まだ食うんスかぁ！？
さっき焼肉、ご飯四杯おかわりしてまで食ったばっかじゃないっスか！」
落合さん「仕方ないですわ、怪獣退治の一仕事が済んだっばかりなんですもの。
……それでお殿様、次は何をお召し上がりに？」
宙マン「う～ん、そうだなぁ……アツアツのステーキなんて、良いねぇ！」
ビーコン「（思わずズッコケ）……あ、アニキ、いくらなんでも食い過ぎっス！」
落合さん「（苦笑）さすがの私も、今度ばかりは脱帽ですわ……」
宙マン「はっはっはっはっ……んー、そうかい？」
いつでも食欲旺盛、どこでも泰然自若……
そして勇気もめいっぱい、千歳の肉食系ヒーロー。
ご存じ宙マン、次回もまたまた大活躍だよ～！
