季節は秋――
耳を澄ませば、近づきつつある冬の足音さえ聞こえてきそうな肌寒さ。
そんな10月の、北海道千歳市の日暮れ時。
ゆっくり赤く染まりつつある空の色と、北国の山々を彩る紅葉の色とが相まって
今、この季節ならではの風情を感じさせてくれる光景である。
と言ったところで、今回は……
木枯らしの吹く夕暮れ手前の街を、の~んびりお散歩と洒落込んでいたりする
宙マンとピグモンの二人連れから物語を始めよう。
ピグモン「はう~、風がすっかり冷たくなってきたの~」
宙マン「はっはっはっはっ、冷たいのも道理だよ、ピグモン。
なんせ今年も残り僅か、ってことは冬がもう間近だからねぇ」
ピグモン「これからどんどん寒くなって、もうすぐ雪もふってくるの~。
……でも、今の季節のお山、とってもきれいなの~」
宙マン「ああ、こういうのを“秋色”って言うんだろうねぇ。
葉が全部散ってしまう前に、目にしっかり焼きつけておこうじゃないか」
ピグモン「はうはう~、のんびり、ゆったりなの~♪」
宙マン「はっはっはっ、まったり、まったり♪」
山の紅葉を楽しみながら、穏やかな足取りで近所の散歩を満喫中の宙マンたち。
だが、このまま何事もなく、ゆる~く時間が過ぎて行くのかと言えば……
……当然、そうは問屋が卸さなかった!
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マン「!?」
突如、天空から降り注いできた一条の雷光!
まばゆいその輝きの前に、思わず目がくらむ宙マンとピグモン。
「ジャジャジャジャ……!!」
ピグモン「あっ、なんか見たことない人が出てきたの!」
宙マン「……さては、また怪獣軍団の一員か!?」
「ジャジャジャジャ! 察しが良いな、宙マン。
俺様は怪獣軍団きっての喧嘩大将、ジャシュライン様だジャジャ!」
宙マン「……う~ん、わざわざ来てもらって申し訳ないんだけど……
私たちはいま散歩の途中だし、もうすぐ見たいドラマの再放送もあるもんで
とても君に付き合ってあげられる暇はないんだよねぇ。
申し訳ないけれど日を改めて……ってことで、どうかなぁ?」
ジャシュライン「ジャジャジャ、相変わらず緊張感のない奴ジャジャ。
……だが、これを見ても、まだそんな口がきけるジャジャ!?」
バシュッ!
突如、ジャシュラインの額から迸る閃光!
その光をまともに浴びたピグモンが、みるみるうちに石化してしまったではないか。
宙マン「(驚き)ぴ、ピグモンっ!?」
宙マン「……貴様ぁっ!」
ジャシュライン「ジャジャジャジャ、俺様と勝負するジャジャ!」
ジャシュライン「シュラシュラシュラ、このチビ怪獣を元に戻したいかシュラ?
だったら僕チンと戦って、僕チンを倒すより他に方法はないシュラよ」
ジャシュライン「インインイン、もっとも……勝つのはワシらに決まっとるイン!」
宙マン「やむを得ん……その挑戦、しかと受けてやる!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、またまたスーパーバトルの幕開けだ!
宙マン「悪く思うなよ、ジャシュライン。
ピグモンの事があるのでね、今日ばかりは手加減できる余裕がないんだ!」
ジャシュライン「ジャジャジャ、抜かせ宙マン!」
イフ「わははは……そうだ、その意気だ、思い切り戦えジャシュライン!
かつてエリダヌス座宇宙を荒らし回り、悪名を轟かせた喧嘩大将……
宇宙のストリートファイターの腕っぷしで、宙マンを叩きのめしてしまえ!」
ジャシュライン「ジャジャジャ~、お任せをジャジャ、魔王様!」
宙マン「なんの、そうはいくものか!」
激突!!
千歳市近郊の山を舞台に、宙マンとジャシュラインの死闘が展開される!
エリダヌス座宇宙においてその名を轟かせた怪力……
剥き出しの暴力性が、問答無用のパンチ攻撃となって宙マンに襲いかかる。
だが、宙マンもまた負けてはいない。
ジャシュラインのパンチを冷静に見切り、繰り出される鉄拳をかいくぐりながら
果敢に敵のふところへ飛び込み、反撃に転じて行く。
ジャシュラインめがけて繰り出す、宙マンのストレートパンチ!
さしものジャシュラインもこれにはたじろぎ、後退を余儀なくされてしまう。
宙マン「ようし、このまま一気にお前を打ち砕いてやる!」
ジャシュライン「シュララララ……ほざくな宙マン、これでも食らうシュラ~っ!」
ジャシュラインを「宇宙三面魔像」たらしめている三つの顔……
二つ目の顔の額からエネルギー衝撃波が迸り、宙マンの足元に炸裂!
宙マン「くっ!」
ジャシュライン「ジャジャジャ、踊れ踊れ宙マン、もっと踊れジャジャ!」
続いて、一番目の顔の額から放たれたのは破壊光線。
凄まじい連射とともに噴き上がる爆炎の中を、宙マンが駆け抜けて行く。
ジャシュライン「インインイン……とどめはワシが刺してやるイン!」
そして、三番目の顔の額から放たれたのは灼熱の火球。
だが宙マンは、迫り来るその一閃を冷静に見切ってかわし、大空へジャンプ!
ジャシュライン「(驚愕)ジャッ!」「シュラっ!」「……インんっ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクルキックの燃える足先を受け、ドドーッとブッ倒れるジャシュライン。
宙マン「どうだ、参ったか!」
ジャシュライン「(激昂)おの~れ、おのれおのれ……
宇宙一のストリートファイターの実力、舐めるなジャジャ~ッ!!」
おおっと、ここでジャシュラインの怒りが爆発!!
立ち上がりざまに繰り出した鉄拳が、宙マンの胸板へ見事にヒットする。
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
吹っ飛ばされた宙マンめがけて、のしかかってくるジャシュライン。
このままマウント・ポジションで、宙マンにとどめを刺そうと言う算段であったが
そこはそれ、そのままやられっ放しでいるような宙マンではない。
地面を転がり、もみ合いながら鮮やかに形勢逆転。
逆に自らが跨り返して、ジャシュラインの三面へパンチの乱打!
ジャシュライン「ぐ、うううっ……」
宙マン「ようし、今だ! 宙マン・リフター!!」
ジャシュライン「さ、三人……」「揃って……」「シャクの種ぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「ふぅ。……やれやれ、手強い相手だった……!」
イフ「ぐ……うぬぬぬ、おのれおのれ……またしても宙マンめが!
だが、これしきでワシらの挑戦が終わったと思ったら大間違いだぞ。
ワシの目の黒いうちは、怪獣軍団は決して地球征服を諦めはせぬ!」
かくして宙マンの活躍により、宇宙三面魔像ジャシュラインは撃退され……
その敗退とともに、石化させられていたピグモンも元に戻ったのであった。
ピグモン「(目をぱちくり)……はう?」
宙マン「おお、ピグモン……よかった!」
宙マン「さてと、余計な寄り道しちゃったし、ここからは少し急ぎ足で帰ろう。
ドラマ再放送の時間にも間に合わせたいし……
それに、ぼちぼち胃袋が落合さんの手料理を恋しがってきたからね」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもおなかペッコペコなの~♪」
宙マン「はっはっはっはっ、ようし、それじゃ行こうか!」
戦い終わって、夕日が沈み……
平穏な日常は、これからも続いて行く。
宙マンありがとう、また明日!