異次元空間を支配する恐るべき宇宙の悪魔、異次元人ヤプール。
彼らの怨念は北海道千歳市の空に渦巻き、やがて千歳はもちろんのこと
この地球の全てを我が物にしようとしている――
「そして、そのためには……
この私が、再び完全なるヤプールとして復活するための「滋養」が、
より多くの恐怖と不安、絶望のマイナスエネルギーこそが必要だ」
「我が愛しの超獣たちよ、今こそ我が手足となれ。
地上の平和を踏みにじり、人間どもから恐怖と絶望を絞り取り……
異次元の悪魔、偉大なるこのヤプールへの供物とせよ!」
地球の奴らに、異次元人の悪魔の強さを見せてやれ……!」
おお、またしても性懲りもなく……
異次元人ヤプールの侵略の魔手が、地球に伸びようとしている!
が、ひとまずそれはそれとして――
こちらは毎度おなじみの舞台、北海道千歳市。
そこに暮らす多くの人々……そしてこれまたお馴染み・宙マンファミリーは
今まさに迫りつつある恐怖のことを、何も知らずにいたのであった。
宙マン「ひゃあ、今日も食べた食べた!」
落合さん「ボリューム満点で、お財布にも優しい価格設定……」
ビーコン「焼肉ランチは、いつだって庶民の味方っスよねぇ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃん、もうお腹いっぱいなの~」
ビーコン「チチチ、ピグモン、何でもこっからが本番っスよ。
ランチ決めてエネルギー補給も完了したからにゃ、午後からは
そりゃもう気合入れて遊ぶしかないっしょ!」
ビーコン「ヒヒヒ、具体的にはどこか適当な個室にシケこんで……」
落合さん「それ以上仰ったら、本気でお仕置きですからね!?」
ビーコン「オッケーオッケー、そいつは「言え」ってフリっスね!」
落合さん「っがー、ああいえばこう言う、そういえばハウユー、全く……!」
落合さんの怒りが、ビーコンへの鉄拳制裁となって発動せんとした時。
そう、事件が起こったのは、まさにその時であった!
ズゴゴゴグワーンっ!!
ビーコン「うっひょ~、これぞまさしく天の助けっス!」
落合さん「喜んでる場合ですかっ!(呆)」
ゴゴゴゴ……ズゴゴゴゴゴッ!
バキバキバキッ! ガラガラガラッ!
おお! 見よ! 驚愕せよ!
突如、何の前触れもなく、不気味な震動とともに舗装道路へ荒々しい亀裂が走り
高層ビルが次から次へと、まるで蟻地獄に呑まれていくかのように轟音を立てて
地中へと沈み、崩壊していく、この恐るべき光景。
「いでよ、超獣アリブンタ!
大いに暴れて、北海道を恐怖と絶望の色に染め上げろ!」
「ギチギチギチュィィ~ッ!!」
ピグモン「あっ、何か出てきたの!」
落合さん「……怪獣ですわ!」
「おどりゃ、ナメとんのか!?
わしゃ超獣じゃ、超獣アリブンタっ!!」
宙マン「超獣……そうか、お前もまたヤプールの!」
アリブンタ「ほうじゃ、そしてワシこそ超獣の決定版よ!」
アリブンタ「ギチギチギチ、今からワシが超獣の力っちゅうんを見せちゃるけぇ!
みィんなまとめて、往生せえやぁっ!」
ピグモン「えう~、乱暴は嫌~んなの~(涙目)」
ビーコン「あー、こりゃダメっス、いろいろとダメっスよ……
冗談とかそういうの、一切通用しないタイプっス!」
落合さん「仮に通じても、それでどうなるとも思えませんけど!(汗)」
宙マン「……うぬっ!」
「ははははは……行け、行け、さぁやるのだアリブンタ!
人間どもを震えあがらせろ、恐怖の悲鳴をあげさせろ……!」
アリブンタ「ギチチ~っ、まぁ見ときんさいや、創造主様!」
異次元からの呪いの声とともに、進撃開始するアリブンタ!
迫り来るヘビー級の巨体を前に、なすすべもなく逃げ惑う人々。
落合さん「あぁもう、何てことでしょう!
これならまだ、ビーコンさんの世迷言を聞き流していた方が……!」
ビーコン「おおうっ、やっと分かってくれたんスね、落合さぁん!」
落合さん「……ってモウ、抱きついてこないで下さいな!」
ピグモン「はわわわ、いいからとにかく逃げなきゃなの~!(汗)」
超獣アリブンタの出現で、たちまち大パニックの千歳市!
だが、こんな緊急事態を、防衛隊は放置などしない――
直ちに陸と空の精鋭が、最新鋭機でスクランブル!
落合さん「あらまぁ、航空防衛隊の皆様!」
ビーコン「やっぱ、来てくれると嬉しいもんスよねぇ!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし、総員……怪獣への、一斉攻撃開始だっ!」
超獣めがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、アリブンタはそれをものともせずに傲然と進撃を続ける。
アリブンタ「おんどりゃあ、ナメとんのか!?
怪獣じゃのうて“超獣”じゃ、そのクソ頭に叩きこんどけぃや!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
アリブンタの両手から迸る、恐怖の火炎放射!
その洗礼を受け、戦闘機隊は次から次に撃ち落されていく。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
ビーコン「つーか、怪獣じゃなくて超獣って……」
落合さん「そのブランド名には、こだわってらっしゃいますのねぇ」
宙マン「……何はどうあれ、困ったものだよ!」
アリブンタ「ギチチチ、ワシぁこがな芸当も出来るんど!」
火炎放射に続き、アリブンタが吐き出したのは強力な蟻酸!
その溶解力で、高層ビルがあっけなく溶け崩れていき……
今や千歳の街は、破壊と混乱の巷と化していた!
爆発! 炎上!
パニックに陥った人々の悲鳴が、幾重にも交差して聞こえる。
アリブンタ「ギチギチ~、どんなもんじゃあ!」
ビーコン「どひ~っ、こいつは色々シャレになんねっスよ~!」
落合さん「このままでは、この寒空の下……
街の皆様が揃って、路頭に迷ってしまいかねませんわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うアリブンタの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
超獣アリブンタ、これ以上はもはや容赦しないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うっひょ~、アニキ最高! 千両役者っス!」
落合さん「今となりましてはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
アリブンタ「ヤプール超獣の恐ろしさ、まだ分かっとらんようじゃの……
おどれがいつも相手にしちょる、怪獣どもとは訳が違うんじゃ!」
宙マン「なんの、要は宇宙の平和を乱す悪党だってことだろう――
怪獣だろうと超獣だろうと、正義の前に敗れ去るのが運命さ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
アリブンタ「おどりゃ、命(タマ)とったるわい!」
宙マン「行くぞ、超獣アリブンタ!」
大激突、宙マン対アリブンタ!
落合さんたちが見守る中、超人と超獣が鎬を削りあう。
ヘビー級のタフなボディと圧倒的な火力……
そして「作り物」の生命であるがゆえの猛パワーと残忍さ。
異次元人ヤプールの尖兵、「生体兵器」としての強力さを全開に
猛然と襲い来るアリブンタの前に、宙マンも苦戦は否めない……
……が、ただやられっぱなしでいるようなヒーローでもない。
宙マン「それっ、これでもくらえ!」
出た、宙マン得意の浴びせ蹴り!
脇腹へ痛烈な一撃を受け、さしものアリブンタもよろめきながら
ずずっ、と巨体を後退させる。
宙マン「どうだ、参ったか!?」
アリブンタ「ギチギチギチ……こん外道クソッ!」
ザシュウッ!
怒りとともに、アリブンタの爪がひるがえり……
宙マンのスーパーボディをも、鋭く切り裂いた。
ドッスゥゥーンっ!
アリブンタ「おどりゃ、次はこれじゃ!」
立ち上がりかけた宙マンに、反撃の隙など与えまいと……
続けざまに、アリブンタの火炎放射がヒーローを襲う!
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
落合さん「……お、お殿様っ!?」
ビーコン「どひ~っ、さすが超獣……
日頃から「強い、強い」ってフカシてるだけじゃないっスね!」
落合さん「でもって、そこで感心してる場合でもございませんわよ!?(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マンがあぶないの~!(涙目)」
宙マン「(苦悶)……う、うう……うっ!」
アリブンタ「(ニヤニヤ)ワシャ優しいけん、すぅぐラクにしちゃるぞぉ。
とどめじゃ宙マン、往生せぇやぁっ!!」
宙マンにとどめの一撃を加えんと、大きく振りかぶるアリブンタ!
だが、その時――
突如として、アリブンタの意識の中に、ある漠然とした……
しかし強烈すぎる「悪意」のビジョンが飛び込んできた。
アリブンタ「(カタカタと震え出し)……な、なんじゃなんじゃ……
一体全体、これは何なんじゃ……」
アリブンタ「(激しく怯えて)……う、わあぁぁっ、来る、こっちに来よるっ!
なんじゃ……おどれは一体、なんなんじゃ……!?」
不意に沸いたイメージに、激しく怯えて取り乱すアリブンタ!
それは同時に、宙マンにとって千載一遇のチャンスでもあった。
宙マン「ようし、今だ!」
宙マン「デリャアァァーッ! 宙マン・ショット!」
気合いとともに叩きつける、不可視の破壊衝撃波!
その直撃を受け、アリブンタがドドーッと倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・フラッシュボンバー!!」
シ ュ ッ パ ァ ァ ー ン ッ !!
右手に集中させた闘気を、裏拳とともに勢いよく解き放ち……
赤いエネルギー弾として、敵めがけて叩きこむ荒技。
フラッシュボンバーの一撃が、アリブンタに大炸裂!!
アリブンタ「……し、しまったぁぁ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
落合さん「やりましたわね、流石はお殿様です!」
ビーコン「アニキのおかげで、これでまたのんびりできるっスよ!」
宙マン「ああ、まずは午後のお茶など楽しもうじゃないか!」
かくして我らが宙マンの活躍により、大蟻超獣アリブンタは倒され
千歳の街には再びのどかな時間が戻ってきた。
だが、その一方で……。
「ぬうううっ……アリブンタめ、不甲斐ない奴!
このヤプールの名に、よくも泥を塗ってくれた――」
「だが、それにしても……だ。
アリブンタほどの超獣が、あの時……
奴はいったい、何に怯えていたと言うのだ?」
「何かがまた、地球へ向けて迫っているとでも言うのか。
このヤプールにさえも、その存在を気取らせないとすれば……
それほどの者とは、一体何なのだ!」
「えぇい、貴様は一体……誰 な の だ !?」
怪獣魔王イフ、異次元人ヤプールの怨念……
そして今またここに、迫り来る新たな気配!
果たして、その実態と目的や……いかに!?