縄暖簾をくぐり、一歩お店の中に足を踏み入れれば……
そこは昔ながらの趣を濃密に湛えた、どこか懐かしくも今や贅沢な空間。
旭川においては誰もが知っている「もっとも有名な居酒屋」。
今年の元旦放映のドラマ『孤独のグルメ』旭川出張スペシャル版の舞台として
店内でのロケがなされた事でも知名度が高まっている「独酌 三四郎」さんにて
料理を頂き、その旨さに早くも打ちのめされた――
……というところまでが、前回のあらすじ(笑)。
そして、この「三四郎」さんのみならず……
旭川に足を運んだからには、是非一度は食べておきたい料理があるのです。
そう、それがこちらの……新 子 焼 き !
そもそも“新子焼き”とは何か?
と問われればご覧の通り、旭川では古くから親しまれている若鶏の半身焼き。
出世魚として知られるコハダのもっとも若い頃の呼び名である「新子」を
若鶏にも当てはめ、「新子焼き」として定着した――というのは、この料理の
名前の由来における通説。
豚肉の串焼きを「やきとり」と呼んでしまう、いかにも北海道らしいアバウトさで
個人的には何となく頷ける話です(笑)。
若鶏を半身のまま焼き上げるスタイルというのが、ダイナミックで食欲をそそる上
しっかり中に肉汁が閉じ込められ、ジューシーで旨い新子焼き。
戦後間もなくの誕生以来、今も旭川庶民の御馳走として愛され続けています。
そして、「三四郎」さんの新子焼きはと言いますと……
骨ごとダイナミックにかぶりつく他店のそれとは異なり、骨を取り除いたうえで
短冊切りにし、食べやすくして供してくれる独自のスタイル。
若鶏の半身を炭火で焼きあげる豪快な料理のイメージとは裏腹に、その身肉は
しっとりとして柔らかく、どこか女性的な色気さえも感じさせ……
だからこそ、皮の端のパリパリ感が絶妙のアクセントにもなってくれます。
そして、そんな新子焼きの旨味を更に引き立ててくれるのが、1946年の創業以来
ずっと使われ続けて熟成し、濃厚で芳醇な旨味を湛えた店秘伝のタレ。
こんな美味しいタレを、みすみす残してしまうのは余りにもったいない!
ドラマでのゴローちゃんは「タレご飯」と言うかたちでこのタレを制覇しましたが
ワタクシは梅お握りを追加注文し、皿からタレを掬って食べる方式での攻略。
タレの染み込んだ米を食べ進めていくと、中から現れる梅干しの爽やかな酸味が
食べ味に心地よい変化を与えてくれますので、(手前味噌ながら)この食べ方は
なかなか悪くないな、と密かに自負しておりますです(笑)。
そして支払いの際、店の一角にゴローちゃんの名前と松重氏の写真を見つけて
ドラマの一ファンとして、また思わず顔がほころんでもしまったり。
御馳走様でした、本当に美味しく意義深い時間を有難うございます。
また、是非立ち寄らせて下さいね。