春・夏・秋・冬、季節は巡り……
あっという間に12月、今年も残りもうあと僅か。
せかせかと慌ただしい中、どこか寂寥感が漂っているのも
また、今のこの時期ならではの独特な空気。
と言う大前提のもと、今回もまた幕を開ける『飛び出せ!! 宙マン』。
そんな冬の千歳市の一角から物語を始めよう。
落合さん「さぁて、ワイナリーに到着ですわ!」
ビーコン「いえっふ~、皆さん、こんにちはっス!
良い子と悪い子のアイドル、あなたのビーコンちゃんっスよ~」
落合さん「(軽く会釈)改めまして、メイドの落合でございます♪」
お馴染み、落合さんとビーコンの極楽コンビ。
今回この二人は、地元・千歳市産の美味しいワインを求めて
ここ「千歳ワイナリー」までやって来たのであった。
ビーコン「そりゃまぁ、ワイナリーっスから……
靴とか文房具とか、わざわざ買いには来ないっスよねぇ」
落合さん「(呆れ)また、そうやってすぐに減らず口を……。
お殿様が召し上がるワインですから、じっくりと吟味の上で
最高級のよいものを……」
ビーコン「チチチ、違う違う、そうじゃないっスってば!」
落合さん「あら、何が違っておりますの?」
ビーコン「ワインに限らず、酒なんてもんはっスね……
それなりの味があって酔えりゃ、ほどほどの値段でいいんスよ」
落合さん「……はぁ」
ビーコン「で、その分の浮いた金をオイラたちの外食に回す、と!
アニキも、オイラも落合さんも、みーんな美味しい思いできて
万事めでたくWin-Winっス!」
落合さん「んーまっ、あっきれた!
あなた、この私に、親愛なるお殿様を裏切れと!?」
落合さん「いくらなんでもそれは、メイドの職業倫理に反しますわっ」
ビーコン「チチチ、な~にを今更っスよ~。
落合さんがお使いにかこつけて、アニキやオイラたちに内緒で
一人でこっそり旨いもん食ってるのはお見通しっス!」
落合さん「(思わず赤面)ちょ! んなっ……
……あ、あなたにだって度々、こっそり奢って差し上げてるでしょう!」
ビーコン「ヒヒヒ、だからっスよ~、だからこそっス。
これからもお互い、背中の搔きっこといこうじゃないっスか~☆
あ、ちなみにここでの「背中の搔きっこ」は比喩的表現で……」
落合さん「ねーい、お黙りんこっ!
ビーコンさん、それ以上仰るなら、そのお口を強引にでも……」
ビーコンへの「口封じ」が、実力行使となって炸裂しかけた時。
……そう、異変が起こったのは、まさにちょうどその時であった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「(驚愕)!?」
ビーコン「ど、どひ~っ、なんスか……何なんスか、いきなりィ!?」
大地を割り、次々と出現する大怪獣……
良くも悪くも、それが北海道千歳市の「日常」となって既に久しい。
大地を引き裂き、赤い煙を噴き上げて、またも現れる破壊の使者。
果たして、今回の怪獣は!?
「ビュビュビュウぅ~っ!!」
ビーコン「どひ~っ、あ、アイツは……」
落合さん「お化け花ですわ、お化け花、そうとしか言いようがありません!」
ビッグアイ「ビュビュビュ~、勘弁してくれやぁ……
俺には植物怪獣・ビッグアイって、センスのいい名前があるんだぜ!」
ビーコン「ヒヒヒ、確かに落合さんのよりゃ上出来のネーミングっス☆」
落合さん「(軽く咳払い)まァ、センスの件はさておきまして……
そのビッグアイさんが、今日は一体なんのためにお越しで?
……まぁ、どうせロクでもない理由なんでしょうけど!」
ビッグアイ「ビュビュ~っ、それが判ってるなら話が早ぇやな。
そういうわけなんで、ヨロシコぉ~!」
ビーコン「どひ~っ、そんな纏め方アリっスかぁぁ~!?(汗)」
イフ「わはははは……さぁやれィ、暴れろビッグアイ!
地球の者どもに、怪獣軍団の威力を見せ付けてやるのだ!」
ビッグアイ「ビュビュ~ッ! 合点承知、魔王様っ!」
ビッグアイ、進撃開始!
地響きを立てて巨体が突き進み、人々が悲鳴をあげて逃げ惑う。
ビーコン「どひ~っ、こっち来てるっスよ、こっちぃ!(汗)」
落合さん「いいから早く――三十六計、逃ぐるにしかずですわ!」
おお、北海道千歳市、早くも絶対の危機!
植物怪獣の暴虐、もはや断じて許すまじ。
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「お~い、今日こそはマジで頼んだっスよ~!?」
落合さん「頑張って下さいませ、かなり切実に!」
「う~ん、今回もビミョーに酷い言われようだなぁ……。
……まぁいい、全機、攻撃開始っ!!」
ビッグアイめがけて、次々に発射されるミサイル。
相次ぐ直撃! 爆発!
だが、それらの攻撃を受けても、植物怪獣は全くびくともしない。
「な、何てヤツだ……
植物怪獣だから、火や爆発には弱いはずなのに!?」
ビッグアイ「ビュビュビュ、このビッグアイ様を甘く見たな!」
「ど、どわぁぁぁ~っ!?」
誠に恐るべきは、ビッグアイの一つ目から放たれる破壊光線!
その威力の前に、戦闘機隊は勇戦空しく次々に撃墜されていく。
次々に建物が、車が破壊され炎上し……
平和だった千歳の街は、今や大いなる混乱の巷と化した。
と、そこへ!
宙マン「(呑気に)おお、二人とも、ここにいたのかねぇ」
ピグモン「帰りが遅いから、心配になって探しに来たの~」
落合さん「ああ、お殿様にピグモンちゃん!
話せばいろいろと長~いお話なのですけれど――」
ビーコン「とにかく、アレ見てもらった方がてっとり早いっス!」
ビーコン「……ねっ!?」
宙マン「ううむっ、納得したよ、言葉以上の説得力だ!」
落合さん「このままでは、とてもお買い物どころではございませんわっ」
ピグモン「宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、暴れ回るビッグアイの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
これ以上の乱暴狼藉は、この私が許しておかないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ビッグアイ「ビュビュビュビュ……お出ましだな、宙マン!
ビッグアイの名にかけて、お前の体中の骨をばらばらに砕いてやるぞ!」
宙マン「そう簡単には、やられるものか!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ビッグアイ「ビュビュビュビュ……さぁ行くぞ、勝負だ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ビッグアイ!
落合さんたちが見守る前で、熾烈な巨大戦が展開される。
植物怪獣と言うと、非力なイメージがあるかもしれないが……
太い両腕から繰り出される打撃は、怪力を誇る幾多の怪獣にも
決してひけはとらないビッグアイである。
そんな手強い相手なればこそ、宙マンも気を引き締め……
猛烈な勢いで繰り出される打撃をかわし、時に受け流しながら
冷静に相手の隙を伺い、反撃のチャンスを狙い続ける。
ビーコン「うひょひょ、何だかんだでアニキが押してるっスよ!」
落合さん「いい感じで流れに乗りましたわね!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、その調子なの~」
イフ「お、おい、ビッグアイは大丈夫なのか!?」
ゾネンゲ博士「むふふふ……ご心配なく、魔王様!」
ゾネンゲ博士「奴にはまだ、とっておきの「奥の手」がございますからして。
……さぁ、ビッグアイよ、今こそそれを使う時だぞっ!」
ビッグアイ「ビュビュビュビュ~、おうさッ!」
蔓状の両腕の先端から、スプレーのように勢いよく放たれる毒花粉。
宙マン、これをまともに浴びてしまって苦悶!
宙マン「う、ぐうううっ……げほ、ゴホッ……!」
相手の体を痺れさせて自由を奪い、じわじわとどめを刺す。
食虫植物が進化した、ビッグアイならではの残忍な戦法だ。
不覚にも毒花粉をまともに吸った宙マン、足元がよろめき……!
ズッシィィーンっ!
ビーコン「ひぇぇ、こ、こんなのアリっスかぁ!?」
落合さん「何てことでしょう、とんだ番狂わせですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ビッグアイ「ビュビュビュビュ~、とどめだァ、宙マン!」
「なんの……負ける、もの、かぁぁっ!」
宙マン、パワー全開!
ビッグアイの破壊光線をかわし、大ジャンプで空高く舞い上がる。
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
ミラクルキックを受け、怪植物がブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、空中からビッグアイを直撃!!
ビッグアイ「ビュビュビュ……残念、無念、また来年~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「アニキ~、やっぱさっすがっスねぇ!」
落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~」
イフ「うがぁぁっ……またしても宙マンめが邪魔立てを!
だが、こんなことで地球を諦めるような怪獣軍団ではないぞ。
次こそ必ず、貴様の息の根を止めてやる!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさておいて。
かくして、今回もまたまた……
我らが宙マンの活躍によって、千歳の平和は守られたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~」
ビーコン「アニキのおかげで、ほっと一安心っス!」
落合さん「では改めて、ワインを買い求めて参りますわね。
お殿様に相応しい、最高級の味わいのものを……」
宙マン「あぁ、いやいや、落合さん!
ワインの方はね、極端に不出来な代物でさえないのであれば
それなりの値段のもので構わないからね、うん」
落合さん「(目をパチクリ)……はい?」
宙マン「それよりもね、その分の浮いたお金で……
ひとつ、みんなで美味しい物でも食べて帰ろうじゃないか!」
ピグモン「はうはう~、おいしいもの、おいしいものなの~♪」
落合さん「……あぁ、それは素晴らしいご提案ですわね!
さすがはお殿様です、王者の風格さえ感じますわっ」
ビーコン「だーっ! 全くもう、このオネーチャンときたらっ!
オイラの時と、露骨に態度変えてきてるじゃないっスか!」
落合さん「(慌てて)シーッ! ビーコンさんたら、お声が大きすぎですわよっ!」
宙マン「ん、二人とも、何の話かね?」
ビーコン「ヒヒヒ、実はっスねアニキ……ムゴゴゴッ!?」
落合さん「ああ、いえいえ何でもございませんの、こちらのお話で。
お、おほ、おほほほほ……(苦笑い)」
宙マン「さぁて……それじゃあ、いっちょ出発進行だ!」
年の瀬に咲く笑顔の花。
宙マンファミリー、今日もますます元気です!