とっぷりと日が暮れ、暗闇を多彩なネオンライトが彩り……
昼間とはまた違った装いと賑わいを見せている、真夜中の北海道千歳市。
だが、そんな真夜中の闇を切り裂くようにして、巨大な悪の影が
今まさに、千歳市上空へと到達していた!
「ギシャワゥゥ~ッ!!」
凄絶な咆哮を、真夜中の街に響かせて……
大空の彼方から飛来し、千歳市に降り立った大怪獣。
ズ、ズーンっ!
彼の名は、ムルロア星出身の宇宙大怪獣・ムルロア。
暗黒星雲の怪獣軍団が、またまた地球へ送りこんできた使者だ。
イフ「わははは……そう、その通り!」
イフ「そしてムルロアよ、地球においてそなたの成すべきことは
迷うべくもなく、ただひとつ――」
ムルロア「ギシャワゥゥ~ッ、判ってますとも、魔王様!」
ムルロア「万事総て、この俺様……ムルロアめにお任せ下さい!
こんなチンケな街、あっという間に更地に変え――」
宙マン「おおっと、待った! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
ムルロアの言葉を鋭く遮り――
まばゆい光に包まれながら、颯爽と巨大化する我らが宙マン。
さぁ、今夜も正義の味方のお出ましだ!
ビーコン「うひょお! 今夜も出たっスねぇ、アニキの十八番!」
落合さん「頼みましたわよ、お殿様……!」
ムルロア「げげぇっ、お、お前は宙マン!?(汗)」
宙マン「ああ、そうとも、宙マンだ!」
宙マン「この街に暮らし、この街を愛する千歳市民として……
怪獣ムルロア、お前の無法は見逃しておけないぞ!」
ムルロア「ギシャワゥゥ~ッ、シャラ臭ェッ!」
激突、宙マン対ムルロア!
落合さんたちが見守る中、ふたつの巨体がぶつかった。
はさみ状の両手を振るい、チョップ攻撃を仕掛けるムルロア!
その危険な切っ先をかわし、受け流しながら……
宙マンもまた、怯むことなく立ち向かっていく。
風を切るパンチ、必殺のキック……
そして、火のような体当たり!
宙マンの連続攻撃の前には、獰猛なムルロアもたじたじだ。
ムルロア「ギシャワゥゥ~ッ、ちゅ、宙マンめぇぇ……」
宙マン「くらえ! 宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らすムルロアのボディ!
ムルロア「ギシャワゥゥ~ッ、や、やられちまったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「お見事です!……やりましたわね、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、いつもながらサイコーっスよ!」
イフ「おのれぇぇ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、これしきで地球を諦める怪獣軍団ではないぞ。
次々に新手を繰り出して、次こそお前の息の根を止めてやる!」
……などと言う、もはや毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍で、宇宙大怪獣ムルロアは撃退され
千歳の街は、また静かなひとときを取り戻したのであった。
宙マン「やぁやぁ、みんな、お待たせ!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、どうもお疲れさまっした!」
落合さん「市民趣味講座の年末反省会を終えての帰り道……
いきなり怪獣が出てきた時は、頭を抱えはしましたけれど」
ビーコン「でも、それも、アニキのおかげで万事解決っス!」
落合さん「えぇ、お殿様にはただただ感謝しかございませんわ」
宙マン「なぁに、私は当然のことをしたまでさ」
宙マン「にしても、夕飯がまだなせいもあって……
怪獣との一戦が終わると、猛烈にお腹がすくよねぇ」
落合さん「なるほど、それは切実ですわねぇ。
ピグモンちゃんは、みくるん様たちのお家にお泊りしてますし……
私たち大人だけで、何か食べてから帰りましょうか?」
ビーコン「いえっふ~、いいっスねぇ、異議なしっス!
場所はオイラにお任せで、、いい店知ってんスよ!」
落合さん「(呆れ)……な~にを、ビーコンさんが張りきってるんですっ!」
宙マン「はっはっはっ、よろしく頼んだよ、ビーコン♪」
と、言うわけで。
ビーコンの案内で、宙マンたちは向かった先はこちら……
各種料理にも定評がある、市内の居酒屋であった。
落合さん「あーら、ビーコンさんにしてはまともなチョイス!
私、てっきり、おさわりバーとかその類かと……」
ビーコン「ヒヒヒ、ハラ減ってんのはオイラも同じっスから。
今、この時ばっかりは、性欲よりも食欲最優先っス~」
落合さん「ちょうど空きの席があってようございましたわ。
……はぁ、おしぼりの温もりが身に沁みます♪」
宙マン「まずは……そうそう、飲み物の注文だね」
まず、宙マンたちのテーブルに届いたのは飲み物。
もちろん大人向けに、アルコール入りの素敵な飲み物である。
ビーコン「ヒヒヒ、これが楽しめるのもオトナの特権ス!」
落合さん「(苦笑)えぇ、こればかりは素直に頷くしかないですわ」
宙マン「さぁて、何はともあれ……かんぱーいっ!」
ビーコン「いえっふ~、乾杯っス~!」
落合さん「(にっこり)乾杯、ですわ♪」
カチンとグラスが合わさり、お酒が場の空気を和ませたところで……
テーブルの上には、店の自慢の料理たちが次々に運ばれてくる。
宙マン「ほう、イカのゴロ焼きか……ふぅむ、味が深いねぇ!」
落合さん「内臓も用いているからこそ、なのですわねぇ」
ビーコン「おおっと、すかさず分析っスね、落合さん!」
落合さん「あらあら、この鮭のハラス焼きも凄いですわよ!?
かけたお醤油が、表面から弾き飛ばされてしまって!」
宙マン「ううむっ、それだけ凄い脂の乗りなんだねぇ。
……ふむ、味も上々だ、こりゃ堪らんよ!」
心地よいほろ酔い気分にも後押しされて、目についたメニューは
次から次へと注文してしまう宙マンファミリー(大人組)。
ビーコン「そして、やっぱり締めは握り寿司、っと!」
宙マン「ん~、やっぱりズシッとくる感じがあるねぇ」
落合さん「たまには、こういう夕食も悪くないですわね」
ビーコン「っか~、オイラ、まだまだ呑みたりねーっス!
もうね、今夜は一晩中フィーバーするっスよ! ね!?」
落合さん「(苦笑)……ほどほどに、ですわよ? ほどほどに!」
宙マン「はっはっはっはっ」
美味しいお酒と料理を満喫し、幸せいっぱいの宙マンたち。
だが、その一方で、更に怒りを募らせていたのは……。
イフ「うぐぐぐっ……おのれ、おのれ、小癪な宙マンめ!
ワシら怪獣軍団を前座扱いして、呑気に居酒屋メシだと!?
今に見ておれよ、これからお前をどうしてくれようか――」
「あらあら、あ~た、こんなところにいたドロスのね?」
イフ「おおっ、サンドロスか、どうした?」
サンドロス「をほほほ、きりたんぽ鍋の支度が整ったドロスわよ。
せっかくのお鍋、冷めないうちにお早く、ドロス!」
イフ「(コロッと態度が変わり)うむ、判った、すぐに参る!」
地球でも、宇宙でも、今夜はお酒と美味しい料理が大活躍。
なんたって年の瀬、忘年会シーズンですもんね。
……だが、ここで読者諸氏にはお伝えしておかねばなるまい。
そんなお気楽な『宙マン』シリーズの登場人物でありながら……
年末ムードの華やかさに、敢えて自ら背を向けた者がいることを。
その者は、既に地球への潜入を果たし……
自らの秘密工場において、地球侵略のための恐るべき超兵器を
着々と開発・建造中であったのだ、と言う恐怖の事実を!
「いよいよだ……もう間もなく、その時が来るんだ。
宙マン、お前に受けたこれまでの屈辱……叩き返す日はすぐだぞ」
「この僕、怪獣軍団の栄えある筆頭幹部候補生……
バルタン星人Jrの足元に、無様な骸となって転がる時は近いぞ!」
「ふふふふ……
フォッフォッフォッフォッ……!!」