地球から遥か彼方の暗黒星雲……
そこは、凶悪無比な怪獣たちの集う、全宇宙の悪の総本山である。
絶対の支配者として君臨する怪獣魔王・イフのもと、怪獣軍団は
飽くことなく、地球征服の野望に燃え……
恐るべき配下の怪獣を、次々に送りこみ続けているのだ。
時に西暦2022年・1月1日。
怪獣たちもまた、無事に(?)新年を迎えていたのであった。
「偉大なる怪獣魔王様!
謹んで、新年のお祝いとお慶びを申し上げます――」
「あけまして、おめでとうございます!」
「ございまーすっ!!」
イフ「おおっ、明けましておめでとう!
皆と一緒に新しい年を迎えられ、本当に何よりじゃ――」
サンドロス「をほほほ、ひとつ今年もよろしくお願いするドロス~♪」
「ははぁーっ!」
イフ「地球征服を成し遂げ、今年こそ怪獣の当たり年にしてくれようぞ。
そのためにもだ、今日は……
大いに飲んで喰って騒いで、英気を養ってくれィ!」
「ヒャッハァー、そうこなくっちゃ!!」
「え? なんで俺たちが地球の風習に馴染んでるのか、だって?」
「いいのいいの、このさい細かいことはっ!」
「どんなことでも、飲み食いの口実に使うのはイイコトよ~ん♪」
「グェェェ~ッ、そりゃないヨォ~!?」
あからさまな不満の声をあげたのは、これもまた怪獣軍団の一員……
地獄谷出身の暴れん坊、「凶悪怪獣」の異名をとるイモラ。
「おーい、いきなり命令拒否なんてのはナシだぜぇ?」」
「そうそう、王様ゲームなんだから、王様の指示には従わなくちゃ。
ゲームになんないし、場も白けちまうだろ?」
イモラ「それだよ、それ、その指示ってのが大問題なんじゃねーかっ」
イモラ「…よりにもよって、その指示が……
“地球に行って宙マンを倒して来い”だとぉ!?
無茶振りにも程があるだろうがよ、無茶振りにもッ!」
「え~、いいじゃん、そのくらいやんなきゃ盛り上がんないもんよ~」
「そーそー、その通りっ!」
イモラ「だーっ、みんなして、ヒトゴトだと思って……っ!」
イフ「こらこら、イモラっ!
みんなで決めたルールに従わないなど、怪獣軍団の一員とも思えぬぞッ。
ここは一発、宙マン打倒をばっちり決めて参れっ!」
イモラ「魔王様までぇ……ちぇ、判りましたよ、行けばいいんでしょっ!」
ゲーム上の「王様」ばかりか、本物の魔王様にまでそう言われては
どうにも逆らう術はない。
ブツクサ言いながら、赤い光球となって地球へ向かうイモラ。
理由はどうあれ、またまた地球の大ピンチだ!
ズゴゴゴグワーンっ!
落合さん「あっ、あらあらまぁまぁ、いきなり何ですの!?」
ビーコン「こ、こりゃ、正月早々いきなり……っスかぁ!?」
大地が揺れ、舗装道路がメリメリと割れ裂ける。
夥しい土砂を噴き上げ、地上に巨大な姿を現したのは……勿論!
「グェッグェッ、グェェェ~ンッ!!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱり怪獣っスよ、大怪獣っス~!(汗)」
落合さん「あらあらまぁまぁ……お正月早々、なんて騒がしい方でしょう!」
宙マン「やれやれ……ずいぶんと乱暴な年始の挨拶もあったものだね!」
イモラ「グェェェ~ンッ、俺は正直、寒いの苦手だ!
だからテキパキ片付けて、さっさと暗黒星雲に帰るぜィ!」
落合さん「いえいえ、そう仰らず、今すぐお帰り頂いても……(汗)」
イモラ「グェェェ~ンッ、そうはいかねぇんだよ!
俺もなぁ、いろいろと……そう、色々と事情があるんでぇ!」
宙マン「ううむっ、よく判らんが……困ったものだねぇ!」
まさか「宴会での罰ゲーム」だとは、恥ずかしくて言えないし……
勿論そんなイモラの事情を、宙マンたちが知る由もない。
イフ「どわっはははは! いいぞいいぞ、やれやれイモラ!
スカッと一発、景気よくぶちかましてやれい……ウイ、ヒック!」
イモラ「へいへい、今からやるとこですよ~、魔王様!」
アルコールが入って、すっかりご機嫌になった怪獣魔王の命を受け……
半ばヤケクソで、進撃を開始する大怪獣イモラ!
平和な正月ムードが一変、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
持ち前の野獣性と凶暴さを全開にして、人々の恐怖と混乱を鼻で笑いつつ
千歳市街を我が物顔で突き進むイモラ。
この猛威を阻止すべく、直ちに戦闘機隊がスクランブルをかけた。
落合さん「ああっ、年明け早々、いいところで来て下さいました!」
ビーコン「頼んだっスよ~、防衛隊!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし――全機、一斉攻撃開始っ!」
暴風雨の勢いで叩きこまれる、戦闘機隊の一斉攻撃!
だが、相次ぐロケット弾の炸裂にも、全く動じることのないイモラ。
イモラ「グェェェ~ンッ、ケチな三下は引っ込んでやがれ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
グワッと開いた口から、勢いよく吐きだされるイモラの火炎!
その洗礼を受け、戦闘機隊は勇戦空しく次から次へ撃墜されていく。
爆発! 炎上!
怪獣イモラの大暴れによって、今や千歳市は炎の地獄と化していた。
イモラ「グェェェ~ンッ、どんなもんだい!」
ビーコン「どひ~っ、アイツ、すっかり得意になってやがるっス!」
落合さん「これでは本当に……今年のお正月は、冥土の旅の何とやらですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!
ビーコン「いよっ! 待ってましたアニキ、コレコレ、コレっスよ!」
落合さん「今年もまたまた、素敵さが冴え渡っておりますわ、お殿様……♪」
ピグモン「宙マ~ン、がんばってなの~!」
イモラ「グェェェ~ンッ、出やがったな、宙マン!」
宙マン「平和なお正月を乱すような真似は、この私が許しておかんぞ!」
正義の怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
激突、宙マンVS凶悪怪獣イモラ!
千歳の人々が見守る中、年明け早々にスーパーバトルの幕が開く。
……まさか「年明け大パーティーの罰ゲームで来た」などとは
あまりにもカッコ悪くて、とても言えない理由なので、イモラとしては
ひたすら真面目な悪役に徹し、宙マンへ猛攻をかけるしかない。
が、宙マンも負けじと、磨き抜かれた格闘技で渡り合う!
イモラ「年の初めの景気づけだ、俺の手でお前をブッ倒してやる!」
宙マン「なんの、そうはいくか――それっ!」
膝蹴り一発、続けざまにパンチの連打!
さしもの凶暴なイモラも、ズズッと後退を余儀なくされる。
イモラ「グェェェ~ンッ、だったら……こいつはどうだ!?」
イモラが吐き出す高熱火炎!
だが、宙マンは得意の回転戦法で、身軽にその一閃を躱していく。
更に火炎を吐きだすイモラ――
が、その二発目は宙マン・プロテクションが無力化だ。
宙マン「どうした、息まいた割にはそんなものかね!?」
イモラ「(激昂)……て、てめェェェーッ!?」
逆上し、渾身の力で最大パワーの火炎を吐きだすイモラ。
だが、宙マンはその一閃を冷静に見切ってかわし、大空へとジャンプ!
イモラ「な、何ですとぉぉっ!?」
大空から、一気呵成に舞い降りてくる宙マンの巨体。
急降下の加速とともに、イモラめがけて繰り出す技の名は!
宙マン「セイヤァァーっ!
宙マン・トルネード・キック!!」
空中で全身を高速回転させながら、敵めがけて突っ込む必殺技!
トルネードキックが、凶悪怪獣のボディを抉り、吹っ飛ばす。
そこへすかさず――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、イモラを直撃!!
イモラ「グェェ~ンっ、あ、あけおめぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
かくして宙マンの活躍により、凶悪怪獣イモラは撃退され……
怪獣軍団の野望は、新年一発めからその出鼻を挫かれた。
でもって、そんな怪獣軍団が本拠をおく暗黒星雲は……
宙マンに敗れたイモラが、ほうほうの体で帰ってきたところであった。
イモラ「ハンニャラ、ヒ~っ……
ご、ごめェんみんなぁ、負けちゃったぁぁ~っ!」
「いよう、お帰り~!」
「惜しかったよな~、結構いいトコまで行ったのにな~」
「いやぁ、あれだけやれれば逆に上出来なんじゃね?」
「ナイスファイト、ナイスファイト!」
イモラ「えへへ……そ、そう……かなぁ?(赤面)」
イモラと宙マンの戦いを肴に、大いに盛り上がっていたと思しき怪獣たち……
すっかり出来あがって、イモラの健闘を無責任に絶賛する。
でもって、酔いが回っていたのは怪獣たちだけではなく、この方たちも。
サンドロス「をほほほ、イモラちゃん、お疲れ様ドロス~。
ご馳走はまだまだ一杯あるドロスから、た~くさん食べるドロス~」
イフ「酒もたっぷりあるからな、じゃんじゃん呑むがよいぞ!
めでたい正月は無礼講じゃ、朝まで酒の道まっしぐらじゃ……ウイッ!」
イモラ「ういっす、ごっつぁんですっ!」
此処を先途と盛り上がり……
怪獣軍団は和気藹々と、お正月パーティーの真っ最中!
そして、それはまた地球の北海道千歳市でも同じく……。
ビーコン「いや~、アニキ、どうもお疲れ様っした!」
ピグモン「お正月でも、やっぱり宙マン、かっこよかったの~」
宙マン「はっはっはっはっ、まさか元日から体を動かすハメになるとはねぇ」
落合さん「ですがそれも、お殿様のおかげで無事に一件落着しましたわ」
宙マン「うん、お正月はゆったり、のんびりいきたいもんだよねぇ。
さてと、それじゃあ家に戻ってまた、ゴロゴロと――」
「それじゃダメですよぉ、宙マンさん!」
その時、横合いから声をかけてきたのは……
これまたお馴染み、みくるん&ながもんのコロポックル姉妹であった。
ピグモン「あ、みくるんちゃんにながもんちゃんなの!」
宙マン「やぁ、二人とも、こんにちは。ところで、ダメって言うのは一体……」
みくるん「うふふ、それですよぉ、それそれ!」
ながもん「今日は、お正月……と、いうことは?」
宙マン「(思い当たって)……あ!」
そんなこんなで宙マンファミリー、慌てて年始挨拶のセッティング。
大慌てでの着替えその他も終わりましたところで、改めて――
宙マン「やぁ、皆さん! 新年、あけましておめでとうございます!
今年もどうか、私たち宙マンファミリーをよろしくお願いしますね。
皆さんに喜んで頂けるよう、私たちも一生懸命やりますよ!」
ビーコン「おかげさまで、今年もまた例年通り……
『飛び出せ! 宙マン』を、通常営業でお贈りできたっスよ」
落合さん「これも皆様からのご愛顧のおかげです、有難いですわねぇ(しみじみ)」
ピグモン「はうはう~、そいじゃ、みんなも楽しいお正月をなの~♪」
毎度おなじみ、千歳の宙マンファミリー……
どうにも止まらぬこの元気で、2022年も邁進必至。
皆様、今年もどうぞよろしくお願い致します!