遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
その秘蔵っ子たる邪悪の五人衆、人呼んで“ダークネスファイブ”。
バルタン星人Jrと同様、怪獣軍団の若きエリートとして将来を嘱望されており
それぞれが宇宙の各地へ散って、修行に励んでいた彼ら五人の宇宙人――
そんなダークネスファイブが今、続々と古巣の暗黒星雲に帰参を果たしつつある。
既に北海道千歳市へ襲いかかった“氷結の”グロッケン、“地獄の”ジャタール、
“極悪の”ヴィラニアスに“炎上の”デスローグ……と言った四大兇悪宇宙人らが
我らが宙マンの正義の力の前に敗れ去っていたものの、肉体の強靭さにも恵まれ
ヤングパワー全開の彼らは、宙マンにとって厄介な相手には違いなかった。
……と言う大前提のもと、幕を開ける今回の『宙マン』。
この流れで行けば、今回はダークネスファイブ・最後の一人が帰還を遂げて
宙マンに戦いを挑んで来る、と言うのが妥当な筋道なのであろうが……。
イフ「――で!
そのスライは、一体いつになったら帰るのじゃ!」
イフ「デスローグ、そなたの所にアレからの連絡は届いておらぬか?」
デスローグ「……(ふるふると首を横に振り)」
イフ「……そうか」
ヴィラニアス「……全く、スライの気まぐれにもほとほと困ったものだな!」
ジャタール「芸術家気質と言うか、フリーダムと言うか……」
デスローグ「(心配そうに、そわそわと)……ぐおっ、ぐおっ」
グロッケン「“どこかの星で事故にでも逢ってたらどうしよう”ってか?
心配ねぇよデスローグ、スライに限ってそれはねぇ!」
ジャタール「まがりなりにも、我らダークネスファイブのリーダーだからな!」
ヴィラニアス「……(静かに頷く)」
イフ「……この場にいない者のことで、気を揉んでいても埒があかぬ。
ワシらはこれまで通り粛々と、地球征服を目指すまでのことだ――
さぁ行け、怪獣軍団の新たなる戦士よ! 今こそお前の出番だぞ!」
と、言う訳で……
今日も今日とて、怪獣軍団の悪企みが迫り来ようとしていた。
危うし地球、危うし宙マン!
だが、ひとまずそれはそれとして――
毎度お馴染み、北海道千歳市・ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」。
みくるん「ふぅー。
もうすぐ一月も終わりですけど、相変わらず冷えてますね~!」
ながもん「風邪には、御用心……ゆめゆめ、ご油断……めされるな。
……へくちっ(軽いくしゃみ)」
ビーコン「たはは、ながもんちゃん、さては寝冷えっスねぇ?」
ながもん「……面目、ナイジェリア」
宙マン「まだまだぬくぬくの鍋物が恋しい季節だねぇ、北海道は。
飽きが来ないし、美味しいし……
落合さんが支度してくれるものなら、尚の事、ね」
落合さん「うふふ……ありがとうございます、お殿様。
それではお褒めにも預かったことですし、今夜も鍋料理ということで……」
宙マン「うん、その辺は落合さんに一任するよ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお鍋だいすきなの~♪」
「宙マンハウス」の昼下がり、和気藹々の団欒のとき。
だが、そんな平穏を破るかのように、突然……!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「……じ、地震っ!?」
ピグモン「はわわわ、お、おっかないの~!(涙目)」
ビーコン「どひ~っ……もう、何てタイミングで来るっスかね~!?(汗)」
市内の中心部が激しく揺さぶられ、大地がメキメキ音を立てて割れ裂ける。
そして地中から、大量の土砂を巻き上げつつ立ち上がった巨大な影とは!?
「ギャロロロロ~ンっ!!」
ピグモン「ああっ、やっぱりなの、やっぱり怪獣なの!」
ビーコン「う~ん、やっぱりつーか、何つーか……」
落合さん「こういう予感に限って、的中してしまうものですわよねぇ!(汗)」
古代の「鎧竜」を思わせる巨体に長大な二本牙。
怪獣軍団の一員、その名も恐ろしい地底怪獣・ガズラーが
今、千歳市のド真ん中に恐るべき姿を現した!
ビーコン「は~、それにしても……
この寒い中、おたくらもよくやるっスよねぇ!(汗)」
落合さん「見たところ、爬虫類の一種とかでいらっしゃるようですし。
素直に冬眠でもなさっていればよろしかったのでは?」
ガズラー「ギャロロロッ、実は俺もそのつもりだったのよォ。
「冬眠休暇」も取得して、春までぐっすりのつもりが……」
ガズラー「ところがどうだィッ、このバカ寒さ!
寒くて寒くて、とても寝ちゃいられねー、っつうの!!」
ビーコン「……あ゛ー、なるほど。
逆に冷え込み過ぎて、冬眠途中で目が覚めちまったんスねぇ」
落合さん「(頷き)冬場のあるある……ですわねぇ」
落合さん「ガズラーさん、そちらの事情は理解しましたわ。
ですが、ここで騒いでも埒があきませんので……
ここは素直に二度寝を、と言う事でいかがでしょう?」
ガズラー「(欠伸して)……ん゛あ゛~、そうすっかなぁ?」
「おっと、待て待て、ちょ~っと待ったぁ!」
そりゃ余りにも勿体ないってもんだぜ、ガズラーよ。
どうせなら、このままの勢いで一暴れしてみないか?
カラダも暖まるし、ストレス解消にもなって一石二鳥よ!」
ガズラー「ん゛~、それはそれでかったる(い)……」
イフ「冬眠休暇中の出撃、ということならば……
もちろん、特別手当はしっかりつくぞ!?」
ガズラー「ギャロロロ~、それを早く言って下さいよぉ、魔王様!
不肖ガズラー、必ず千歳を制圧してみせますぜィ!」
「特別手当」の四文字に、態度が一変――
俄然、大張り切りで進撃を開始する地底怪獣ガズラー!
迫り来る巨体を前にして、街はたちまち大パニックに陥る。
落合さん「あらあらまぁまぁ……
今日は平和的に事態収拾できるかと思いましたのに!」
ビーコン「世の中そうそう、上手くいかないもんスねぇ~!」
みくるんあわあわ、ボヤいてる場合じゃないですってばぁ!(汗)」
極寒の千歳市に、またまた迫る怪獣災害の危機……だが!
ガズラーの暴虐、許すまじとばかりに……
千歳の平和を守るべく、防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおー、今日も今日とて来てくれたっスねぇ!」
落合さん「防衛隊の皆様、どうぞよろしくお願いします!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
ガズラーめがけて叩きこまれる、戦闘機隊のロケット弾!
更に地上からも、勇猛果敢な攻撃が繰り返される。
手持ちの小銃が、バズーカ砲が続けざまに発射され……
ガズラーの表皮で幾度となく炸裂し、激しい火花が飛び散る。
……が、それらの猛攻にも全く怯まないガズラー!
ガズラー「ギャロロロ~、ガズラー様をナメるんじゃねぇっ!」
突き進む重量級の巨体は、それそのものが恐るべき兵器。
建物が、車が無造作なまでに蹴散らされ、踏み潰され……
今や千歳市は、紅蓮の炎の地獄と化しつつあった!
ガズラー「ギャロロ……いい具合に、あったまって来たぜぇ~!」
落合さん「このままではみんな、寒空の下で路頭に迷ってしまいますわ!」
ビーコン「ひぇぇ、いまの北海道でそれはシャレんなんないっスよぉ!(汗)」
ながもん「宙マン、お願い……あなただけが……頼り」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ガズラーの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣ガズラー、ヤンチャをするのもそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「おお。……いつもながら……頼もしい」
ビーコン「いよっしゃ、出たっス! アニキの十八番!」
落合さん「頼みましたわ、お殿様!」
みくるん「宙マンさ~ん、頑張ってくださ~いっ!」
ガズラー「ギャロロロッ、邪魔しない方が身のためだぜ、宙マン。
バカ寒いは眠れねーはで、こちとら気が立ってンだ!」
宙マン「あぁ、その気持ちはよくわかるし、同情もしよう――
だが、千歳の街で無法を働く免罪符にはならないぞ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ガズラー「ギャロロ~、講釈よりも腕づくで来い!」
宙マン「あくまでやる気か……ならば、やむを得ん!」
激突、宙マン対ガズラー!
凍てつく真冬の街を舞台に、巨大な両者の死闘が展開される。
二本の牙をひらめかせ、突進してくるガズラー。
その先端を軽やかなフットワークでかわし、かいくぐりながら
果敢に敵へと肉薄していく宙マンである。
がっぷり四つに組み合う両者!
宙マンとガズラーの、息を呑む力比べが繰り広げられる。
宙マン「うゥむっ、なんて馬鹿力だ!」
ガズラー「ギャロロローーそうら、隙ありだぜ、宙マン!」
ボ シ ュ ッ !!
宙マン「(悶絶)ぐ、ぐふぁぁぁっ……!?」
伸縮自在の首から、勢いよく繰り出されるガズラー突き!
まともに受けて、大きく吹っ飛ばされてしまう宙マンである。
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさん!?」
ながもん「あの、ギミックは……反則すぎの……強力すぎ」
ビーコン「あ、あんなのを何発も食らっちまったら……」
落合さん「いくら無敵のお殿様でも、只事では済みませんわっ!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、負けないでなの~っ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ガズラー「ギャロロロ~っ、次で終わりだ、宙マン!
その胴体に、でっかい風穴あけてやるぜ!」
ヴィラニアス「よーし、よしよし!
ガハハハハッ、その調子だぜ、ガズラーよ!」
イフ「お前ならやれるっ、必ず宙マンにとどめを刺すのだぞ!」
宙マンめがけて、猛然と突進してくるガズラー!
が、宙マンもさるもの――
よろめきながらも立ち上がり、とっさに態勢を立て直すことで
ガズラーの突進を真っ向から受け止めてみせた。
「調子に乗るなよ……これでも、くらえッ!」
宙マンの回し蹴りが、ガズラーの腹部へヒット!
痛烈なダメージに、怪獣がドドーッと倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・ヘッドビーム!!」
宙マンの闘志そのもののような、真っ赤に輝く破壊光線……
ヘッドビームの一閃が、ガズラーを直撃!!
ガズラー「ぎゃ、ギャロロロロっ……
こ、こ、こりゃかなわ~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~! やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ながもん「安心と、納得の……この、結末」
みくるん「ありがとうございますぅ、おかげでみんなが助かりました!」
イフ「お、おのれ、おのれおのれ、おのれぇぇッ……
よくもやってくれたな宙マンめ、だがこの仕返しは必ずしてやるぞ!
覚えておれ、覚えておれ~っ!」
……そして、それらとは全く異なる感情をこめて、戦いに勝った宙マンの巨体を
人知れず悠然と見上げている、ひとつの人影があった。
「んーふふふ……そうですか、そうですか。
あれが噂の宙マン……久々に、極上の獲物と言わねばならないでしょうね!」
勘のいい読者諸氏は、この時点で既にお気づきであろう。
そう、メフィラス星人“魔導の”スライ。
ダークネスファイブ最後のひとりにして、実質的なリーダー格とされるこの男が
皆より大幅に遅れて、ようやく修行の旅からの帰還を果たしたのであった!
……が、ひとまずそれはさて置いて。
今日も我らのヒーロー・宙マンの活躍により、地底怪獣ガズラーは撃退され
千歳市には再び平和が蘇ったのであった。
みくるん「やりましたね、宙マンさん!」
ながもん「……お疲れ様。……くちゅんっ」
宙マン「……おっと、いかんいかん!
ながもんちゃんの風邪がぶり返さないうちに、早く帰ってあったまろう」
ピグモン「ながもんちゃん、お大事になの~」
ながもん「ん。……ありがと」
落合さん「私もメイドとして、風邪には気を付けないといけませんわね」
ビーコン「チチチ、昔から言うじゃないスか、ナントカは風邪ひかないって!
それに体が冷えないように、オイラがベッドで優しく暖めて……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、どっちに転んでも失敬なッ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、真冬の北風は骨身に沁みるっスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日もまた、正義の頭上に輝く太陽。
だが宙マン、油断は禁物だ――
次なる脅威は、もうそこまで迫っているのだから!