怪獣軍団のエリート集団として、将来を嘱望される「ダークネスファイブ」。
その最後のひとりであり、実質的な五人衆のリーダー格でもあるメフィラス星人
“魔導の”スライが今、宙マンめがけて挑戦状を叩きつけてきた。
自らの超能力で創り出した魔導ゾーンに宙マンを引きずりこみ、対決を迫る
スライの慇懃無礼を前に、ちょうどこれからランチの天丼を食べるつもりだった
宙マンの怒りも頂点に達した!
スライ「んふふふ、おやおや……勝てるつもりなんですかぁ、宙マン!?」
宙マン「ああ、勝つともさ。
ランチタイムに水を差されて、今、私はとびきり機嫌が悪いんだ!」
宙マン「行くぞ、“魔導の”スライ!」
スライ「んふふふ、さぁ――ゲームの始まりですっ!」
激突、宙マン対“魔導の”スライ!
一面の荒涼たる原野に加えて……
不気味な黒雲が邪念をはらんで渦巻く「魔導ゾーン」において
宙マンとスライ、両者の技が真っ向からぶつかりあう。
飄々として捉えどころのない性格ながら、そこはそれ……
ダークネスファイブのリーダーだけのことはあり、ひとたび戦い本番ともなれば
宙マンに勝るとも劣らぬ格闘術で、歴戦のヒーローと互角に渡り合う。
だがしかし、宙マンもまたやられっぱなしではいない。
果敢に相手のすきを窺いながら、敵の間合いへと飛び込んで攻めかかる。
スライ「んふふふ、なかなかおやりになりますね!」
宙マン「それっ、こいつを受けてみろ!」
宙マンの胸から、勢いよく放たれるブレスターシュート。
だが、その激しい一閃は、スライの魔導バリヤーによって無力化された!
宙マン「(驚き)何っ!?」
スライ「んふふふ、今度はこちらから行きますよ!」
お返しだとばかりに、ブレードの先端から光線を放つスライ。
すかさず宙マンも、エクシードフラッシュを発射してこれを迎撃――
両者の光線が空中で激突し、エネルギーの干渉が凄まじいスパークを放つ。
バリバリバリバリ……グワァァァーンっ!
宙マン「(その輝きに目がくらみ)――ッ!?」
スライ「んふふふ、死になさい宙マン!」
右腕のメフィラスブレードで斬りつけてくるスライ。
だが宙マンもさるもの、とっさの判断でその切っ先をかわし、ジャンプ!
スライ「うぬっ!」
宙マン「これならどうだ、“魔導の”スライ!」
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
出た、電光石火の必殺キック!
幾多の怪獣たちにとどめを刺したこの一撃を受けては、硬い鎧にその身を包んだ
“魔導の”スライと言えども、ノーダメージではいられない。
宙マン「さぁ、次の一撃で今度こそ終わりにしてやる!」
スライ「いいや、まだです……受けてみなさい、魔導・稲妻落とし!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
魔導ゾーンの暗雲に超能力で干渉し、天空から叩きつける無数の落雷!
周囲に爆発が巻き起こり、さしもの宙マンも大きくよろめく。
スライ「んふふふ、お次に……こんなのはどうです!?」
左手から宙マンめがけて放つ、メフィラス一族伝統の「グリップビーム」。
エネルギー衝撃波の洗礼が、容赦なく宙マンの全身を駆け巡り、痛めつける!
宙マン「(悶絶)う、ぐ……あ、ぅああああ……っ!!」
スライ「んふふふ、どうです宙マン!?」
宙マンの全身を駆け巡り、容赦なくこれを痛めつける破壊エネルギー!
全身を覆ったダメージに、遂にドドーッと地面へ倒れこんでしまう宙マンである。
ジャタール「おおっ、流石はスライだ……あの流れるような連続攻撃!」
グロッケン「遊んでいるようで、修行はしっかりこなしてたってこったな……」
ヴィラニアス「頼むぞスライ、我らの無念を晴らしてくれィ!」
デスローグ「グロ、グロロッ……!」
イフ「そうだスライよ、何が何でも勝つのだ――ワシらがついておるぞ!」
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
スライ「んふふふ、いよいよ最後です……死になさい、宙マン!」
宙マンの脳天を叩き割るべく、大きくブレードをふりかぶるスライ。
だが、その時である――
「魔導ゾーン」の上空に、突如として予想外の異変が生じたのは!
ピシッ……バシッ……バリバリバリッ……
スライ「なっ!」
宙マン「こ、これは……っ!?」
「魔導ゾーン」の空に走った亀裂に、同時に驚く宙マンとスライ。
そして、更にスライを驚かせたのは……
赤い亀裂の彼方から漏れ出てくる、異様な「邪念」の存在であった!
スライ「こ、こんなバカな……まさかこんな、こんなことが……!」
宙マン「――よし、今だ!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、スライのボディに爆発が起こる。
宙マン「――どうだっ!」
スライ「ぬ、ぬぐおぉぉぉ……っ!」
閃光波でダメージを受けつつも、意地で踏ん張るスライであったが……
もはや戦いは、完全に宙マンのペースと言ってよかった。
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、“魔導の”スライを直撃!!
スライ「ぐぁぁぁっ……も、もう一歩のところで……!」
やったぞ宙マン、大勝利!
かくしてメフィラス星人スライとの戦いは、宙マンが勝利をおさめ……
それと同時に「魔導ゾーン」も消失し、ヒーローの頭上には太陽と
寒々とした真冬の空気が戻ってきた。
見慣れた、いつも通りの日常の光景。
人知れず大きな戦いを終え、その中に佇む宙マンの胸中をよぎる感慨は――
宙マン「(ボソッと)……うん、内緒の外食はしばらくやめよう。自粛だ、自粛ッ」
わかったような、わからないような……そんなささやかな「教訓」を胸に抱き
「宙マンハウス」へと向かって、再び歩き出していく宙マンであった。
また、その一方で、暗黒星雲では……。
イフ「うぐぐぐっ、残念だ……あと一歩で、今度こそ宙マンを倒せたものを!
それにしても、あの巨大なる邪念……
スライの魔導ゾーンに干渉するほどのエネルギーとは、一体何なのだ!?」
そう、あの邪念の干渉さえなければ……
あるいは、“魔導の”スライが宙マンに勝利していたのかもしれない。
空間を自在に捻じ曲げ、次元を行き来し……
そして、身の毛もよだつほどの「邪念」に凝り固まった存在。
ああ、親愛なる読者諸氏よ。
「それ」が何なのかを、あなた方はすでにご存知であるに違いない!
「我ら異次元人の次なる挑戦は、既に始まっているのだ……
怪獣よ、宇宙人よ、もはやお前たちの出る幕ではない」
「……そうであろうがァ!?
我が忠実なる配下、地獄より這い出た素晴らしき下僕たち……
我が剣、我が手足、そして我が意思を体現する者らよ!」
「おお、我が愛しの超獣たちよ……!
ははは、ふゃはははは……!!」