一夜が明けて今日もまた、地球の上に朝が来た――
この星の誕生以来、何十億回となく繰り返され続けてきたそんな光景。
「新しい朝が来た、希望の朝だ」なんて、なじみの深いラジオ体操の歌さえも
聞こえてくるのにはちょっとまだ早い時間帯。
昇り始めた朝日を浴び、澄みきった朝の空気をも存分に味わいつつ
住宅街を往くのは、もはやお馴染みの顔。
千歳市ほんわか町5丁目在住のヒーロー、我らが宙マンその人であった。
そう。
こんち宙マン、毎朝の日課であるウォーキングの最中だったのである……が、
不意に、その足がぴたりと止まった。
宙マン「(怪訝)むむっ……なんだ、この寒気は?」
不意に吹いてきたのは、真冬のそれもかくやと言うほどの寒風。
いかに北海道とは言え、この風の冷たさは明らかに異常である――
そして、異様な冷気が周囲を包み出しているではないか。
そう、この肌寒さこそ、これから千歳に勃発する恐怖の予兆。
濛々たる冷気の中から異様な姿を現した者、それは!?
「ぐももももも……!」
千歳市ほんわか町、その外れの原生林……
不気味な唸り声と共に歩いてきたのは、もちろん怪獣軍団の一員。
絶対零度の冷たい星で生まれ育った、恐怖のソロモン星人だ!
ソロモン星人「ぐもももも、既に準備は整いましてございます……
作戦開始のご命令をお与え下さい、怪獣魔王様!」
イフ「うむっ、ご苦労である、ソロモン星人よ!
わかっていようが、そなたの使命は――」
ソロモン星人「(頷き)この千歳を再び、真冬の雪と氷に閉ざすこと!」
イフ「そうだ、その通り!
春を迎え、気持ちが緩みかけている北海道民の隙を突いて
絶対零度の洗礼を浴びせかけ、街を氷の地獄に変え……」
イフ「そして、しかる後に……ワシらが名乗りをあげ、
寒さに凍える地球人どもへ、使い捨てカイロを無償提供する。
さすれば連中は、ワシらを救いの神のごとく崇め、尊敬し……
地球は労せずして、怪獣軍団の手に落ちたも同然よ!」
イフ「そして、その第一段階の絶対零度を創り出すのは――」
ソロモン星人「絶対零度、氷の惑星で生まれ育ったこの私……
我々ソロモン星人にかかれば、いとも容易いことでございます」
イフ「うむっ、期待しておるぞ、ソロモン星人!」
ソロモン星人「ぐももも、お任せ下さい、魔王様!
それでは直ちに、この千歳を氷の地獄に変え……」
「おおっと、そう上手くいくかな!?」
ソロモン星人「(驚き)ぐももっ、誰だ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返る冷血星人。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……
もちろん、この男をおいて他にはあるまい!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団のソロモン星人、平和を乱すような真似は許さん!」
ソロモン星人「お、おのれは……宙マン!?」
宙マン「日課の最中に、嫌な予感と気配がしたから……
確かめに来てみれば、やはり怪獣軍団の悪企みか!」
ソロモン星人「こうも早く私の計画に勘づくとは……
流石だと誉めてやろう、銀河連邦の元・英雄よ。
だが、それまでだ――ここをお前の墓場にしてやるぞ!」
宙マン「なんの、正義の力で打ち砕いてやる!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
激突、宙マン対ソロモン星人!
雄大な北海道の原生林狭しと、ダイナミックに展開される死闘。
じりじりと相手の隙を伺いながら間合いを取り……
真っ向からぶつかり、しのぎを削る両者のパワーと格闘技!
両手を激しく打ち振り、パンチ攻撃を仕掛けるソロモン星人。
それらを躱し、宙マンもまた果敢に相手の内懐へ飛びこんでいく。
ソロモン星人「ううむっ、なかなかやるな!?」
宙マン「なんの、こんなのはまだ序の口さ!」
宙マンの左キックが、ソロモン星人の脇腹に炸裂!
さしもの無法星人も、これにはたまらずジリッと後退。
宙マン「どうだ、参ったか! これが正義の力だ!」
ソロモン星人「ぐももも……調子に、乗るなァッ!」
ビシャアァァーッ!
宙マン「……う、うわぁぁぁぁっ!?」
ソロモン星人の目から迸る殺人光線!
その直撃のダメージによろめき、その場に倒れてしまう宙マン。
宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」
ソロモン星人「ぐももも、その首の骨をへし折ってやる!」
倒れ伏した宙マンにのしかかってくるソロモン星人。
そのままとどめを刺さんと、全体重をかけて襲い来る異形!
更なる攻撃で畳みかけんとする星人、そうはさせじと宙マン。
両者、もみあいながらゴロゴロと激しく地面を転がり……
泥臭い寝技での攻防の果て、ソロモン星人の邪悪なファイトを上回り
逆にマウントをとったのは宙マンの方であった。
宙マン「それっ、お返しさせてもらうぞ!」
パンチ、パンチ、パンチの連打!
怒りをこめた鉄拳が、ソロモン星人の頬へと叩きこまれる。
ソロモン星人「ぐももっ……こ、こりゃ堪らんっ」
この猛反撃に、ソロモン星人がふらふらになったところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ソロモン星人を直撃!!
ソロモン星人「うぐ、ぐももぉぉぉっ……
な、なんてこった……こんな筈じゃ、なかったのにぃぃ~っ!」
正義のエクシードフラッシュの前に、もはや敵はなし。
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「ふうっ……これでどうやら、この件もやれやれだね!」
正義の戦いを勝利で飾り、ほっと一息の宙マン。
だが、その一方で怒りがおさまらないのは、勿論……。
イフ「うぐぐぐっ……おのれ宙マン、にっくき奴め!
よくもまた、ワシら怪獣軍団の邪魔をしてくれたな。
覚えておれ……この次は、目にもの見せてくれるわ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、ソロモン星人の冷凍作戦は阻止され
千歳市の平和は、またも人知れず守られたのであった。
そして、そんな平和の守り手たる宙マンは、と言えば……。
宙マン「ふぅ~、さっぱり、さっぱり。
……おっ、おっ、朝ごはんのいい匂いがしてきたぞ!」
落合さん「お待ちどう様でした、お殿様。
今日の朝ごはんは、オーソドックスな和風でまとめてみました」
宙マン「オーソドックスいいじゃないか、実に結構!」
宙マン「うんうん、こう言うのがいいんだよ、こう言うのが――
しみじみ思うもんねぇ、日本人だなぁ、って!」
ピグモン「はう~、あれれれ?
宙マン、宙マン、宙マンはプラネット星人じゃなかったの~?」
ビーコン「がっはっはっ、お約束のオチっスねぇ、アニキぃ★」
宙マン「(頭をかきかき)……たっはっはっはっ」
朝から颯爽、いつでも快調!
スカッとさわやか、正義の味方の大活躍。
宙マン、次回もバッチリ頼んだぞ!