遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

星人ぶらぶら街歩きの巻

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遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……

美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。

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彼らの秘蔵っ子たる邪悪の五人衆、人呼んで“ダークネスファイブ”。

バルタン星人Jrと同様、怪獣軍団の若きエリートとして将来を嘱望されており

それぞれが宇宙の各地へ散って、修行に励んでいた彼ら五人の宇宙人――

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そんな彼らだが、決してただ暗黒星雲でとぐろを巻いているだけではない。

幹部候補生は幹部候補生らしく、地球を征服し、宙マンへのリベンジを果たすべく

各々の仕事を粛々とこなし、励んでいるのであった。

 

 

まずは彼、グローザ星系人“氷結の”グロッケン

あらゆる物を凍りつかせる能力とは裏腹の、誰よりも熱いハートを持った彼は

一度痛い目を見た宙マンへのリベンジを果たすべく、立体映像の宙マンを相手に

今日も熱心なトレーニングを重ねていた。

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グロッケン「ケケケケッ、今に見てやがれ宙マン……

 永久氷壁ばりに磨き抜いた俺の技で、次こそ吠え面かかせてやるぜ!」

 

お次はヒッポリト星人“地獄の”ジャタール。

持ち前の猟奇的超能力で挑み、敗れた彼もまた、来たるべき雪辱の日に備えて

過去の宙マンの戦闘データ分析に余念がなかった。

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ジャタール「……おのれおのれ、宙マンめぇっ!

 だが、次はないぞな――勝つのは“地獄の”ジャタール様だぁっ!

 ヒョホッ、ヒョホホッ、ヒョホホホホ……!」

 

更に、五人衆きっての武闘派たるテンペラー星人“極悪の”ヴィラニアス

彼は持ち前の頑強なボディとパワーを更に引き上げるべく、ゾネンゲ博士と共同で

戦闘アタッチメントの新開発に取り組んでいた。

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ゾネンゲ博士「どうかなヴィラニアス、ハイパーアームのつけ心地は。

 あらゆる宇宙の正義を打ち砕く、この私の傑作だ!」

ヴィラニアス「結構この上なしだぜ博士、これさえあれば怖いものなしだ!」


ダークネスファイブの実質的リーダー、メフィラス星人“魔導の”スライ。

彼もまた、もっか地球上の情報収集に余念がなかった――

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スライ「(メモしつつ)……ほほう、ふむふむ……

 なるほど、帯広にはそんなにも豚丼の美味しい老舗店がある、と!

 ……ううむ、これはいけませんねぇ、すぐ食べに行かねば!」

 

イフ「……おいコラッ、何だか一人、おかしい奴がおるぞ!?

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「ま……まぁまぁ魔王様、落ち着いて下さい!(汗)」

「あと一人いますから、まずはそっちを見てみましょ。ね?」

イフ「ううむっ……全く!」

 

と言うわけで、最後のひとり――

五人衆の中で最も無口なデスレ星雲人“炎上の”デスローグはと言えば。

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デスローグ「(怪獣の背骨をマッサージしつつ)……グロッ、グロロっ……♪」

「ク~ッ、相変わらず効くなぁ、デスローグさんの指圧は!」

 

宇宙各地で習い覚えたカイロ・プラティックの技術を活かすかたちで

怪獣軍団内における凄腕整体師として引っ張りだこのデスローグ。

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強めに揉んでくれることで、覿面に疲れや凝りがとれる技量の的確さに加え

温厚な彼の人柄を慕って、ただ世間話にやって来る怪獣も少なくないことから

勤務時間中のデスローグ周辺は、いつも大変な賑わいようである。

 

そんなこんなで、慌ただしい時間が一段落しての昼休み……。

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イフ「なに、ちょっと地球まで行ってきたい、と?」

デスローグ「グロ、グロロロッ」

イフ「そうかそうか、よしよし。

 羽根を伸ばすのは構わんが、くれぐれも車や宙マン……

 それと、ゼッドやヤプールには気を付けるのだぞ!」

デスローグ「(嬉しそうに頷き)グロロ……ッ♪」

 

……と、言うわけで。

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数百万光年の距離を、空間転送によって一瞬のうちに飛び越え……

デスレ星雲人“炎上の”デスローグは、昼下がりの地球へとやって来た。

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「グロロロロ……っ♪」

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地球侵略の任務ではなく、あくまでプライベートでの飛来と言うことで……

いつも通りのデスローグの唸り声にも、どこか楽しげな響きが感じられるのは

果たして筆者の考え過ぎであろうか?

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何はともあれ、のんびりした足取りで歩き出していくデスローグ。

生憎の曇り空ではあったものの、千歳の街全体に流れる穏やかな空気は

天候のぐずつきを補って余りあるほどに心地よい。

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べつだん何か目当てがあるわけでも、用事があるわけでもない。

ただ、季節の風に吹かれながら、ぶらぶら当てどもなく街を散歩する……

そんな風に束の間、自分勝手に過ごせる気儘な時間が、現代の地球人のみならず

デスローグにとっても、最高の癒しのひとつなのである。

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「グロロロ、ゴゴッ……♪」

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不意に、こうして足を止め……

道端に咲いていたタンポポの花の可憐さに、しばし見とれるのも一興。

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あるいは歩いている途中で、何か興味をひかれる建物を見つけたらば

好奇心の赴くまま、入ってみるのもまた一興。

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特にお目当ての品はなくとも、店頭を飾る様々な商品を見て回るだけであっても

それはそれでまた、実に楽しいものである。

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デスローグ「(鼻歌)ゴッゴッゴッ、グロロロロ~♪

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ひとしきりウィンドウ・ショッピングを満喫し、軽く小腹が減ってきたところで

近場の店に飛びこむ、と言うのが、デスローグの散歩における定番。

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馴染みの店でもあるこの食堂で、デスローグの注文したのがこちら――

彼の大好物のひとつ、“かにのかき揚げ天丼”である。

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このボリュームにもかかわらず、絶妙の揚げ具合と水菜のアクセントによって

最後まで重たくならず、さっぱり爽やかに食べさせる仕事のこまやかさ……

加えて蕎麦と違い、ツユを吸ってかき揚げが途中でふやけるようなこともなく、

食べ始めから終わりまで心地よいサクサクの歯ごたえを堪能できる、と言うのも

彼がこの天丼に目がない理由である。

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デスローグ「グロ、グロロロッ……!」

「(ニッコリ笑み返し)はいっ、いつもありがとうございます。

 デスローグさんのその言葉が聞きたくて、このお店やってます♪」

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デスローグ「グロロ、グロロッ」

「(ポッと赤くなって)やだぁ……

 相変わらず口が上手いんですから、デスローグさんは。

 私みたいな小娘おだてたって、何も出ませんよ?」

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デスローグ「ごっ、ごっごっ……☆」

「うふふっ、ホント、デスローグさんにはかなわないです♪」

 

食後にしばし、お店の看板娘と歓談するのもまた楽し。

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だが、そんな楽しい時間ほど、あっと言う間に過ぎて行くのが世の常で……

ふと見れば、空はすっかり夕焼けのオレンジ色に染まりつつあった。

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「(満足げに頷き)……グロッ♪

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かくして、来た時と同様の空間転送によって……

夕焼け空に溶けこんでいくように、暗黒星雲へ帰って行くデスローグであった。

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デスローグ「グロロッ」

グロッケン「おおっス、お帰り、デスローグぅ!」

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ジャタール「それにしても少し遅かったな、みんな心配していたんだぞ?」

ヴィラニアス「ただでさえお前は人が好いから、人さらいにつかまったり

 おかしな宗教セミナーに引っかかったりしたんじゃないか、と……」

デスローグ「(照れ臭そうに頭を掻きつつ)……グロロロッ」

 

イフ「昼休みは楽しかったか、デスローグ?」

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デスローグ「(頷き)グロッ!」

イフ「そうか、それならば何よりじゃ――たまには息抜きもせんと、な」

デスローグ「グロ、グロロロッ」

イフ「何、ワシらに土産がある、と?

 いやいやデスローグよ、そこまで気を遣ってくれんでも――

 (土産物を見て)……う、うおぉぉぉっ!?

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スライ「おおっ、こ、これは……北海道産のフキではないですか!

 店で買うとメチャメチャいいお値段するんですよ、コレ――

 そして何より、今の時期のフキはめちゃくちゃに旨いんです!」

イフ「デスローグよ、コレを一体どこで……?」

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デスローグ「グロ、グロロロッ」

グロッケン「う~ん、そっか、たまたま道を歩いてたら見つけた、か!」

ヴィラニアス「無欲さがもたらした勝利か……

 むうっ、さすがデスローグ、ダークネスファイブきっての癒し系!」

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イフ「うむうむっ、でかしたぞデスローグ、大手柄じゃ!

 よし、今夜は念願のフキ料理フルコースでパッと盛り上がろうぞ!」

スライ「おおう、いいですねぇ、そうこなくてはねぇ!」

ジャタール「(肘でスライを突っついて)……調子よすぎなんだよ、お前は!」

スライ「(肩をすくめて)……あららっ」

 

デスローグ「(そのやりとりを嬉しそうに見つめて)……ごっ、ごごっ……♪」

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笑顔の絶えない、明るい職場。

がんばれ怪獣軍団、勝利は目の前だ!!

……たぶん……おそらく……いや、きっと。