地球から遠く離れた大宇宙、遥かなる暗黒星雲。
その奥深くで、地球征服を企む巨大な悪の一味が蠢いている。
彼ら怪獣軍団の辞書に「懲りる」と言う文字は無い。
はたしてそれが単なる落丁版か、故意に消したものかは定かではないが……
そんなわけで今日もまた、暗黒星雲から恐怖の魔手が地球に迫るのだ。
イフ「わははは……もう間もなく、地球はワシら怪獣軍団のものとなるのだ!
破壊と混乱を好む我が配下の前に、地球人は決して勝てはしない――
そしてゾネンゲ博士よ、そのための新たな作戦は進んでおろうな……!?」
「勿論でございますとも、魔王様!」
ゾネンゲ博士「地上を地獄に変え、地球征服を成し遂げる次の使者……
そやつは海底で力を蓄え、北海道を目指しているところでございます」
イフ「むふふ、その成果が間もなく見られると言う訳か……素晴らしい、楽しみじゃ!
怪獣軍団の一員たるに相応しい暴れぶり、ワシも期待しておるぞ!」
そう!
怪獣軍団が地球に送り込んできた新たなる使者は、海底で力を蓄えながら
その目的地たる北海道への上陸を、虎視眈々と狙っていたのである。
危うし地球、危うし宙マン!
だが……
宙マンはじめ、北の大地に暮らす数多くの善良な人々は、巨大な危機が
すぐそこまで迫っていることを、未だ知らずにいたのであった。
そんなわけで、場面は変わり……
こちらは北海道某所、千歳市からほど近い港町にある市場。
みくるん「わぁっ、まだ朝の10時前なのに、すっごく賑やかですぅ!」
宙マン「はっはっはっはっ、いかにも港町ならではの活気だねぇ」
ピグモン「はうはう~、潮のにおいがプ~ンってするの~」
ながもん「そして、掘り出し物も……きっとある……はず」
専門業者のみならず、一般市民にも広く門戸が開かれているこの場所。
市価よりもずっと安く、しかも鮮度も品質も折り紙つきと言う海の食材を求めて
お馴染み宙マンファミリーとコロポックル姉妹も、わざわざ千歳市ほんわか町から
ここまで足を運んできていたのであった。
落合さん「できればホタテか牡蠣あたりの貝類……
あとは、お刺身で行けそうなお魚が欲しいところですわね。
そうすれば、我が家も今夜はパーッと豪勢に……」
ビーコン「おおうっ、パーッと豪勢に女体盛りっスね!!」
落合さん「(赤面)違いますっ!!」
ピグモン「えう~、こんなとこまで来て、ケンカはだめなの~」
市場の活気にも後押しされて、何気ない会話も弾む楽しいひととき。
だが、そんな平和な時間が……今、破られようとしていた!
ながもん「(ピクッと反応し)……来 た」
みくるん「ふえっ!?……な、ながもんっ、来たってまさか……」
ながもん「(頷き)うん、たぶん……その、まさか」
みくるん「き、気のせいってことにならないかなぁ?」
ながもん「……残念ながら……」
みくるん「そ、それじゃ今日も……今日も、やっぱり……!?(汗)」
北海道の大自然と共に生きてきた、コロポックルならではの鋭敏な「勘」。
それを色濃く受け継いでいるながもんの「勘」が、迫り来る異変を感じ取った。
海面を異様に泡立たせ、波しぶきとともに立ち上がったのは……こいつだ!
「くきゃきゃきゃきゃ……!!」
みくるん「ああっ、やっぱりですぅ、やっぱり!」
ピグモン「おっきな蛸ちゃんなの、おっかないの~!(涙目)」
ながもん「あれは……コンパス島の……大ダコ、スダール」
ビーコン「つーか、あのサイズまで行くと……」
落合さん「もはや蛸のレベルを超えて、怪獣そのものですわ!」
そう、まさしく怪獣!
南海の孤島・コンパス島の魔神として人々を震え上がらせてきた
その名も怖ろしい大ダコ・スダール!
落合さん「あぁ、私もいま唐突に思い出しましたわ……
確か、おつまみの「酢だこ」がお名前の由来だとか何とか!」
……とにかく、このスダール様が来たからにゃ……
この北海道の港町が、只じゃ済まないのは判るよなぁ?」
宙マン「むう、出来れば判りたくないんだが……」
ビーコン「でも強引に、判らされそうな感じっスよぉ!」
スダール「くきゃきゃきゃ、話が早くて助かるよなぁ。
“南海の怒り”、思い知らせてやっちゃるぜィ!」
落合さん「あらまぁ、ただお買い物に来ただけですのに……」
みくるん「今日もまた、大変なことになっちゃいそうですぅ~!」
イフ「よしよし、その意気だぞスダール!
南海で鍛えたお前の力で、まずはその港町を徹底破壊じゃ!」
スダール「くきゃきゃきゃ……まぁ見てて下さいや、魔王様!」
八本の脚をうねらせ、進撃開始せんとする海魔スダール!
落合さん「あらいやですわ、このままでは……」
ビーコン「掘り出しもんどころか、市場そのものが無くなっちまうっス!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、スダールの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
北の漁港の平和を乱すような真似は、私が許さんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~! 出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「素敵です、お殿様……これでもう安心ですわ♪」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
スダール「くきゃきゃきゃ……大口を叩きゃがって。
このスダール様が捻り砕いてやるぜ、宙マン!」
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対スダール!
落合さんたちが見守る中、巨大サイズの死闘が展開される。
八本の脚から、ランダムに繰り出される連撃。
スダールの猛攻をかわしつつ、宙マンも果敢に敵の懐へ飛びこみ
的確な打撃を次から次に叩きこんでいこうとするが……。
スダール「くきゃきゃきゃ、そうはさせるかってェの!」
宙マン「(焦燥)くッ……!」
南海に君臨する、海の悪魔の猛烈パワー。
だが、長年に渡り研ぎ澄まされてきた宙マンの経験値は……
その状況を打破する次の一手を、的確かつ鮮烈に放った!
「スダールよ、勝負はここからだ――
怒れ稲妻!宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
スダール「(悶絶)あ、あびゃびゃびゃびゃっ!?」
宙マンの気合とともに、念動力で発生させる正義の稲妻!
直撃した超電気エネルギーが、大ダコの動きを鈍らせたところへーー
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、スダールを直撃!!
スダール「くきゃぁぁっ、宙マン……こ、このタコめぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました! 宙マンさんがやってくれましたぁ!」
ながもん「……おみごとっ」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぬぬぬっ、おのれ……またしても宙マンめが!
だが見ておれよ、ワシら怪獣軍団はあくまでも地球を諦めない決意だ。
次から次に新しい怪獣を送りこみ、必ずや貴様の息の根を止めてやる!」
……などと言う怪獣魔王の負け惜しみは、例によってさておき。
我らが宙マンの活躍によって、南海の悪魔・大ダコのスダールは撃退され
港の市場には再び、賑やかな活気と笑顔が戻ってきたのであった。
ながもん「やっぱり、市場は……こうで、ないと」
みくるん「うふふっ、これでまた安心してお買い物ができますぅー」
ピグモン「どれもこれも美味しそうで、ピグちゃん目移りしちゃうの~」
落合さん「こんな宝の山に飛びこんで、手ぶらでは帰れませんものね。
……今夜のお夕飯、どうか楽しみにしていて下さいましね!」
ビーコン「いえっふ~! 期待してるっスよ、女体盛り!」
落合さん「だーっ、全くもう、このエロ怪獣ときたらっ!
いい加減にその発想から離れて下さいな!(赤面)」
宙マン「はっはっはっはっ」
北の大地の、笑顔と平和……
任せて安心、正義の味方。
我らが宙マン、次回もよろしく頼んだぞ!