別宇宙の支配者として君臨し、今また地球をもその毒牙にかけんと
侵略の魔手を延ばしつつある魔界の帝王がいる。
その極寒の中に、忽然とそびえる鉤爪上の超巨大オブジェ。
まさにそれこそ、大悪党ロード・ゼッドの居城。
……そしてゼッドは絶対の支配者として、玉座につき君臨しつつ
今日もまた、地球攻撃の機会を伺っていたのであった。
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……左様、如何にも、ごもっとも!」
ロード・ゼッド「我輩の名はゼッド、偉大なるロード・ゼッド。
賢明なる読者諸君のことだ、既に説明の必要はないかと思うが……
我輩は欲しい、諸君らの住む地球が無性に欲しくて堪らないのである」
ロード・ゼッド「そして今回……
このシリーズは、夏の怪談特集と言うではないか。
そのように面白そうなこと、我輩も一口乗らぬテはあるまい――
では、例によって……始めさせてもらおう!」
「ウソル・デラピダトーレ・テンタトーレ・ソイナトーレ……
デボラトーレ・マンシトーレ・エシェデュクトーレェ……
朽ち果てし万物の精霊よ、大気に遍く邪悪の意思よ!」
「悪の心を呼び醒まし、魔可異の姿を創り出せ!
カァァーッ!!」
Zスタッフから迸る、邪悪そのもののエネルギー!
それは宇宙空間を飛び越え、エンケラドゥスから一気に地球へ、
北海道千歳市某所のお化け屋敷テント内へと達し……
数多くの機材・資材とともに出番を待っていた、一体の蝋人形を触媒に
今日もみるみる邪悪なモンスターを創造、実体化させていく。
バキバキバキッ! ガラガラガラッ!
ビーコン「……どひ~っ、なんスかなんスか、何なんスかぁ!?(汗)」
落合さん「いきなり……かなりいきなり来ましたわね、今日は!」
ピグモン「(震えて)はわわ、ピグちゃんおっかないの~」
宙マン「ううむっ、こいつは只事じゃなさそうだぞ!」
すわ何事と、慌てて家から飛び出した宙マンたちの目の前で……
Zスタッフの邪悪な波動の影響により、地震とともに割れ裂ける道路。
コンクリート片や土砂を吹き飛ばし、地底からぬっと起き上がった巨体とは!?
「グモモモモモ……ッ!!」
ビーコン「あ、あれは、ありゃどう見ても……」
落合さん「(息を呑み)……ミイラ!?」
ビーコン「(コクコク頷きつつ)でも、それにしちゃ……
ガタイのデカさがトンでもないっスよぉ、ありゃ!(汗)」
そう!
何の前触れもなく、千歳にその姿を現したのは巨大なるミイラ。
悪の帝王ロード・ゼッドの魔力によって、かりそめの生命を得て
魔従者“ミイラ怪人”となって立ち上がったのである。
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……この我輩、ゼッドの魔力が生んだ魔従者。
それが生半可なものであるはずがなかろうが!」
宙マン「むむっ……その声はロード・ゼッドか!」
落合さん「怪獣魔王さんと同様に、貴方様も懲りない方ですこと!」
ビーコン「でも……なんでまた、今回はミイラなんスかぁ?」
ロード・ゼッド「ぐぁぼはは、今がちょうど「怪談シリーズ」の時期なのがひとつ……」
ロード・ゼッド「加えて市販のプラモデルやら、ネット配信などの諸々が相まって
今、我輩の中で空前のミイラ・マイブームが起きておる!
地球侵略と言う娯楽において、これ取り入れるのは当然であろうがぁ!」
ビーコン「(思わずズッコケ)……く、くっだらねぇ~っス!」
落合さん「……ええ、それだけに余計タチが悪いと言えますわ」
ピグモン「はわわ、ピグちゃん、とにかく怖いの~」
落合さん「加えて、あのミイラさん。
魂の抜け殻が、ただ破壊本能だけで動いているようなもので――」
落合さん「ですから、あれはもはや……
最初から、お話しあいを成立させうる相手ではない、と言うことです!」
宙マン「ある意味、最も厄介な相手、か……!(汗)」
ロード・ゼッド「ぐぉぼははは……さぁやれ、とことんやるがいい!
行け、ミイラ怪人よ、このゼッドの名のもとに!」
宙マンたちの心中を知ってか知らずか……
……いや、恐らくは知ろうとせず、その術さえすでになかったであろう。
悪の波動に突き動かされ、のっそりと彷徨を開始するミイラ怪人!
ビーコン「どひ~っ、なんか知らんけど、こっち向かってくるっスよ!?」
落合さん「ああもカラダが大きいと、それだけで厄介ですわよねぇ!(汗)」
ピグモン「えう~、みんな、早く逃げなきゃなの~!」
宙マン「ピグモンの言う通りだ、早くこっちへ!」
市場の平穏を脅かす、魔従者ミイラ怪人の猛威!
この恐るべき異変は、直ちに防衛隊基地へと通報がなされ……
かくして航空防衛隊の空の精鋭たちが、ミイラ迎撃のために発進した!
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「あとはお任せしますわ、どうか頑張って下さいまし!」
ビーコン「でもって、バッチリ成果も出してくれりゃ言う事なしっス!」
猛然と、ミイラ怪人めがけて叩きこまれる戦闘機隊のロケット砲!
だが、その嵐のごとき総火力でさえも、虚ろな目と表情で市内を突き進み続ける
ミイラ怪人の歩みをいささかも止めることは出来ない。
ピグモン「ああっ、どんどんこっちに向かってくるの!」
ビーコン「ひぇぇ、もうダメっス、これじゃホントに世の中終わりっス!」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
宙マン「(頷き)ようし、いっちょやろうか! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、徘徊するミイラ怪人の前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
この世に迷い出た生ける死者、迷わず黄泉の国へ帰るがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ミイラ怪人「(唸り声)グモモモモモッ……」
宙マン「……とは言うものの、ハナから言葉の通じる相手ではないか。
いいだろう、こうなったら私も腕づくだ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの開幕だ。
激突、宙マン対ミイラ怪人!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者の格闘戦が火花を散らす。
太い両腕をブンブン奮い、パンチ攻撃を仕掛けてくるミイラ怪人。
虚ろな表情から、衝動的に叩きつけられてくる猛パワーに叩き潰されぬように
油断なく神経を尖らせながら、宙マンも冷静に相手の隙を伺う。
ミイラ怪人「グモモモモモッ……!」
宙マン「くらえ! 宙マン・バーナーだ!」
さっと伸ばした右手の指先から、勢いよく迸る高熱火炎。
宙マン・バーナーが、ミイラ怪人めがけて炸裂した……かと、思いきや!?
おお、何と言うことであろう!?
この苛烈な攻撃をまともに受けてもなお、ミイラ怪人の歩みは止まらない。
ダメージは受けているのだが、完全に魂の抜け落ちた「生ける死者」には
痛みや怖れを感じる「心」、それ自体が存在していないのだ。
宙マン「(驚き)な、何っ!?」
ミイラ怪人「グモモモモモッ……!」
バ キ ィ ィ ッ !
落合さん「ああっ……お、お殿様!?」
ビーコン「単純なパンチ一発……それだけに、当たればダメージデカいッス!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、宙マン、まけないでなの~!(涙目)」
倒れ伏し、よろめきつつ起き上がろうとする宙マン。
そんなヒーローめがけて、虚ろな歩みとともに迫り来るミイラ怪人!
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは、宙マンよ、光栄に思うがいい!
我輩が今、「怪談シリーズ」に相応しい最高の恐怖を与えてやろう――
左様、他でもない「死の恐怖」をな!」
ミイラ怪人「グモモモモモッ……!」
宙マン「ううむっ、なんの……負けて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
ミイラ巨人の突進をジャンプでかわし、すかさず繰り出す空中蹴り!
見たか、これぞ電光石火の必殺技。
ミラクル・キックの一撃を食らい、ミイラ巨人がブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ミイラ怪人を直撃!!
ミイラ怪人「グモモモ……ご、ゴォォォッ……!」
正義の光線の前に、爆発四散して風に散るミイラの巨体。
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さすがアニキ、今日も痺れる活躍っスねぇ!」
落合さん「今日も素敵でしたわ、お殿様……♪(うっとり)」
宙マン「ふぅ……びとまずは、これで一件落着ってところかな。
さぁ、帰ってご飯にしようか、うんとおいしいやつを頼むよ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも異議なしなの~♪」
落合さん「えぇ、万事この落合にお任せ下さいませ!」
ロード・ゼッド「う、うがぉぉっ……おにょ~れッ、宙マン!!」
ロード・ゼッド「またしても、またしても我輩の顔に泥を塗りおって!
こうなれば我輩にも意地がある、何が何でもお前を倒し……
宇宙のどの悪よりも先に、地球を我が手中に収めてくれるわ!」
と、そんなゼッドの呪いの怨嗟はサラリと聞き流して。
落合さん謹製、今夜のメインメニューは冷麺。
爽やかな冷たさと心地よい喉越し、辛さと酸味が相まって……
宙マンファミリーにとっては、これ以上ない「納涼」の一杯であった。
ビーコン「~~あ゛~っ、ヤバイヤバイ!!」
落合さん「(びっくり)あらまぁ、急にどうしましたの? ビーコンさん」
ビーコン「いやぁ、オイラとしたことが……
一番肝心で、チョー大事なことを忘れるとこだったっスよ~」
落合さん「大事なこと……?
平和が戻って、ご飯を頂いて、その他に何かありましたかしら」
ビーコン「いえっふ~、ズバリ下ネタっスよ、シ・モ・ネ・タ!
こいつがないことにゃファンのみんなも、オイラも納得いかねーっス!
てなわけで、こっからはチ●コ・●ンコの特盛りノンストップで……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、そしてこの私が納得致しませんっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、背筋も凍る落合パンチの威力っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
北の自然と、この平和……
それを乱す者は、許しちゃおかぬ正義の味方。
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?