謎の宇宙球体・スフィアによって物理的にも、精神的にも閉塞を余儀なくされている
劇中の現状を打破し、宇宙へ、未来へ進んでいくためのフロンティア・スピリッツ……
そんな番組の基本精神を描くためにこそ
堅実で、地に足の着いた「当たり前」の描写の積み重ねこそが必要だというのは
凄くよく分かりますし、またそれは視聴者的にも歓迎したい番組作りの姿勢です。
勿論玩具をはじめとした各種マーチャンダイジングとの連携は、好悪の感情以前の
「作品づくり」としての大前提であり、番組内でひとつひとつ消化していくべき
必須ノルマであるわけなんですが……
そこに、先にあげた「当たり前の描写」が加わり、劇中における各種の販促要素が
劇中のドラマと有機的に連携することで、ヒーローの新能力や防衛チームの新兵器が
単なる通り一遍のノルマ消化ではない「輝き」を放ち出す……
そう、つまりは「おもちゃが欲しくなる」(笑)!
そんなマーチャンダイジング番組の理想像的在り方を、地に足の着いた作劇で
しっかり着実に追い求めてくれているからこそ、現時点までの『デッカー』は
個人的にすごく好印象です。
そういう「当たり前のこと」「やるべきこと」からしっかりこなしていく作劇って
(失礼ながら)ここ数年のニュージェネ・ウルトラマンでは
久しく味わえなかったものであり……
だから却ってそれが新鮮に思えるほど、喉に刺さって煩わしかった魚の小骨が
ようやく抜けたときみたいな(笑)心地よさもあって。
長い前置きになりましたが(笑)、そんなこんなの第3話。
新たに有人化されたガッツファルコンのパイロット適性を試すシミュレーションと
最新式AI・HANE2との連携に四苦八苦する新生GUT-SELECTの新人隊員たちの姿を
省略することなくしっかりドラマの中心に据えることで、現時点の「推し要素」たる
HANE2とGUTSホークの販促と、主人公・カナタたち若手隊員たちのキャラ描写とを
見事に両立させ、その間にも隊長・副隊長の雑談交じりの会話、というテイで
「現時点までの世界観の基本的状況」を分かりやすくおさらいしてくれるなど
諸要素の交通整理っぷりにも全く淀みがありません。
そう、「パイロットを選定する」と言うことひとつをとっても、本当なら
最低限、あのくらいのすったもんだはあって然るべきですし……
そんな四苦八苦ぶりを通じて、若手隊員たちの間に自然と生まれてくる
感情の機微もまた、痒い所に手が届くと言った感じで心地よく。
前回までは割と「イヤなやつ」っぽかったリュウモン・ソウマ隊員もまた
ここに来て徐々にメッキが剥がれかけてきている、と言いますか……
彼もまた「精一杯背伸びをし、もがいている未熟な若者」なのだ、というのが
自然に「見えて」くるのが何とも微笑ましかったです。
で、今回のゲスト怪獣たるスフィアゴモラ。
オリジンたるゴモラの暖色系の色遣いに対し、スフィア合成獣のシンボルたる
クリスタルの寒色系が前面に出てくることによる、視覚的にも明快な差別化や
頭部の角が極端なまでに左右非対称になっている分かりやすい歪さによって
明らかに自然界の摂理の産物でない、むしろそれをゆがめてしまう
敵役としてのスフィアの不気味さ、異様さを具現化して秀逸です。
そして、そんなスフィアゴモラの傍若無人かつパワフルな暴れっぷりは
それをも上回る格闘・怪力戦特化形態、デッカー・ストロングタイプの
初お披露目を最大限に盛り上げるための「前フリ」としても見事に機能し
新生GUT-SELECTの初陣とデッカーとの共闘に確かな価値を持たせてくれました。
ラストでHANE2に「ハネジロー」と言う愛称もつき、お堅いだけだった「彼」が
急に砕けた口調で話し出すなどの要素でキャラ萌え&心地良い笑いをも供しつつ
後味良い余韻とともにクロージング。
新生GUT-SELECT、早くもいいチームになりそうな……
そしてこの番組もまた、名作と胸を張って言えそうな予感です!