日本全国津々浦々、もっか夏休みシーズン……
とは言うものの、今朝はあいにくのこの天気。
霧の中、静かに眠っている千歳市某所のキャンブ場。
だが、誰が予想しえたであろうか?
今、まさにこの瞬間。
宇宙からの侵略の魔手が、ここに迫りつつあると言うことを!
ガサガサッ……ガサガサッ……
キャンプ場の草むらを、傍若無人な足取りでズカズカ横切りながら
白樺並木の木陰からひょっこり顔を出した者、それは!
「ブッファハハぁぁ~っ!!」
かつて宇宙戦争で暴れ回った宇宙戦闘員……
その同族がウルトラマンのカラータイマーを奪い取ったこともある、
「泥棒怪獣」とも「宇宙野人」とも称される怪獣ドロボン。
そして今は、魔王イフに率いられた怪獣軍団の一員なのである。
イフ「おお、朝から気合が入っておるな、ドロボンよ!
では、早速だが……
お前には、お前の使命を果たしてもらわねばならん」
イフ「そう、それは即ち……」
ドロボン「このキャンプ場から、人間を追い払えばいいんでがしょ?
楽勝、楽勝、お茶の子サイサイでさぁ!」
イフ「ううむっ、よしよし、頼もしいことよ!」
イフ「ワシら怪獣軍団の悲願、地球侵略前線基地の建設……
コンピューターが弾き出したこの場所に長距離砲台を設営し、
道内はもとより、日本各地の都市を狙い撃ちにする作戦」
イフ「頼むぞドロボン、全てはお前の働きにかかっておる!
……くれぐれも、宙マンを警戒せよ!」
ドロボン「ブッファハハ、任せて下さいや、魔王様!
えーと、まずはしっかり左右の確認、っと……」
ドロボン「よしよし、宙マンの野郎にゃ気づかれてねぇなっ。
どーれ、それじゃ早速おっぱじめ……」
「はっはっはっはっ……
悪いが、そうはさせないよ!?」
ドロボン「(ギョッとして)むむうっ、そ、その声はっ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るドロボン。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……
もちろん、この男だ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣ドロボン、みんなを困らせる真似は許さんぞ!」
ドロボン「げげぇっ、やっぱり宙マンかよぉ!(汗)」
ドロボン「……だが、どうしてこのタイミングで!?」
宙マン「はっはっはっはっ、たまたまね……
毎朝の日課、軽い散歩の途中だったのさ」
ドロボン「さ……散歩っ!」
宙マン「うん、そうとも、散歩はいいぞぉ――
朝の空気は爽やかだし、帰った後の朝ごはんも美味しいし。
君も是非やってみたまえ、侵略活動なんて真似はやめて!」
ドロボン「ぐぬぬぬ……ンな訳にゃいかんのじゃーっ!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
宙マン「あくまでやる気か……ならば、止むを得ん!」
ドロボン「ゴワォォ~、死んでもらうぜ宙マン!」
太い豪腕から、唸りをあげて繰り出されるドロボンのパンチ!
その猛攻を、軽快なフットワークで右に左にかわしつつ……
宙マンも怯むことなく、果敢に相手の内懐へ飛びこんでいく。
激しく取っ組み合い、力と技の限りを尽くして……
ますますヒートアップしていく、宇宙の正邪の大バトル。
怪獣界でも屈指の強いエネルギーを発散しているドロボン。
その驚異的パワーとスタミナの前に、さしもの宙マンと言えども
今回ばかりはやや押され気味のように見えてしまう。
宙マン「くっ……やるな!」
ドロボン「ゴワォォ~、こいつを受けてみな!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ドロボンの噴き出す火炎に、大きく吹っ飛ばされる宙マン!
そして、この機を逃さず……
猛然と駆け寄り、倒れた宙マンの上へのしかかってくるドロボン。
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
ドロボン「ブッファハハ、首をヘシ折ってやるぜ!」
宙マンの上にまたがり、その首を締めにかかってくるドロボン!
そうはさせじと、全力で抵抗する宙マン。
地面を転がり、くんずほぐれつ……
泥臭くも激しい攻防戦が、朝のキャンプ場を舞台に展開される。
宙マン「……そぉれっ、今度はこっちがお返しだ!」
おお、見よ、鮮やかなる大逆転!
マウント・ポジションをとった宙マンが、ドロボンの頬めがけて
嵐のようなパンチの連打!
宙マン「どうだドロボン、正義の力を思い知ったか!」
ドロボン「ぐぬぬぬ、調子に……乗るなーっ!」
怒りの絶叫とともに、ドロボンが口から噴き出す火炎!
だが、その一閃は、宙マン・プロテクションに無力化された。
ドロボン「(驚き、目をパチクリ)……な、ナヌッ!?」
「受けてみろ! 宙マン・超破壊光線!!」
両手の間にエネルギーを集中させ、激しいスパークとともに放つ大技。
「超破壊光線」の直撃を受け、火花を散らす宇宙野人のボディ!
ドロボン「ゴッファァァ……き、効きすぎるぜ、コレはぁぁ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ宙マン……よくもやってくれおったな!
だが、これしきで怪獣軍団の巨大なる組織は揺るぎはせん。
次こそは必ず、必ず息の根を止めてくれるわ!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、恐怖の宇宙野人ドロボンは粉砕され
千歳のキャンブ場には、再びもとの平和が蘇った。
そして――
そんな宙マンの勝利を讃えるかのように、あいにく曇りだった空も
お昼近くには、ご覧のようなすっきり快晴に!
真夏の太陽と、さわやかな青空の下……
毎度お馴染みの面々も、サマーキャンプを大いに楽しんだことは
もはや、ここで改めて語るまでもないであろう。
正義の夏です、スカッと宙マン。
さぁて、さてさて……
次回は、どんな活躍を見せてくれるかな?