春から初夏へ、そして夏へと季節が移り変わった中……
すっきりと、気持ちの良い青空が顔を出した北海道千歳市。
その千歳市の一角、ほんわか町5丁目。
毎度お馴染みの「宙マンハウス」から、今回もまた物語の幕は開く。
落合さん「さぁ皆様、今日もそろそろお昼に致しましょうか!」
宙マン「おおっ、待ってました!」
宙マン「シャワーでさっぱりした後に、美味しいランチが待っている……
日々の幸せってやつを、しみじみ感じるねぇ」
落合さん「(ぽっ)まぁ……お殿様ったら。
“そんなランチを作ってくれる落合さんは、限りなく有能で美人だ”なんて……♪」
ビーコン「だーっ、それはさすがに幻聴ヒドすぎっス、落合さん!」
落合さん「……いいじゃないですの、少しぐらい夢を見させてくれたって!」
ビーコン「ヒヒヒ、いちいちツッコンであげるのもオイラの優しさっスよ~☆」
ピグモン「はうはう~、今日のお昼ご飯は何なの~?」
落合さん「暑い季節と言えば、何と言っても冷たい麺類ですわよね
本日はこの通り、爽やかな冷麺など用意してみましたわ」
ビーコン「ウホッ、冷麺いいっスよねぇ、冷麺!」
宙マン「これからの時期、夏場の麺類にも色々あるけれども……
冷麺の味わい深さってのは、また格別だものねぇ」
ピグモン「たっぷり具だくさんで、栄養マンテンなの~♪」
落合さん「美味しく食べて、さっぱり、ひんやり暑気払い致しましょう!」
ビーコン「う~ん……暑気払いのコンセプトはいいんスけどね。
気のせいか、急に……
涼しいのを通り越して、寒くなってきてないっスか?(汗)」
宙マン「そうだねぇ、言われてみれば……確かに」
ピグモン「冷房も入ってないのに、なんだか変なの~」
ビーコン「ねっねっ、でしょでしょ!?
なんつーか急に、真夏から真冬になっちまったみてーな!」
落合さん「(苦笑)それは流石にオーバーすぎますわよ、ビーコンさん。
真夏が真冬になるなんて、そんなバカなことが――」
……などと言いつつ、窓の外を見てびっくり仰天!
ビーコン「ど、ど、どっひ~っ!!(汗)」
落合さん「(驚愕)こ、これは……っ!?」
ビーコン「寒いわけっスよ、雪まで積もって!」
ピグモン「はわわ、ほんとにほんとの冬みたいなの~」
宙マン「季節外れの雪……と言っても、これは度が過ぎてるぞ!」
などと、驚きを隠せない宙マンたちの度肝を抜くように……
更にここで、驚くべき異変が起こった!
ゴウンッ!
凄まじい音を立てて、勢いよく噴きあがる白い水柱……
いや、微細な雪の柱。
落合さん「きゃああっ!」
宙マン「こ、これは……っ!?」
「ごわぉぉぉ~んっ!!」
ピグモン「ああっ、雪男なの!」
ビーコン「ってか、あのサイズはもう、そんな生易しいレベルじゃ……」
落合さん「えぇ、もはやあれは怪獣そのものですわ!」
「あぁ、、そうとも!
俺様は冷凍怪獣・ギガス様だぁ、震えおののけ~!」
ビーコン「冷凍怪獣っスかぁ、道理で寒いわけっスね!(汗)」
宙マン「暑さが厳しくなる中、涼を求めたいのはやまやまだが……
だからって、この寒さは度が過ぎてやしないかね!?」
ピグモン「えう~、これじゃみんな風邪ひいちゃうの~」
ギガス「ごわぁぁ~、こちとらソレが狙いよぉ!」
宙マン「……何だって!?」
ギガス「今のこの時期、夏風邪は「長引く」からなぁ。
このギガス様が、真夏の街を氷の地獄に変えることによって
まずは地球人どもに夏風邪をひいて寝込んでもらい……」
ゾネンゲ博士「その隙を狙って攻めれば、地球征服など容易いこと!」
ゾネンゲ博士「くくくく……その上でですね、魔王様。
今度の作戦には、更に「先」があるのでございます」
イフ「ほう! この上、まだプラスアルファがあると?」
ゾネンゲ博士「夏風邪にかかった地球人が求めてやまないもの……
休養と消化の良い飯、そしてよく効く風邪薬」
ゾネンゲ博士「そこへ我々が、絶妙のタイミングで風邪薬を売りつければ。
地球人はたちまち、怪獣軍団を神のごとく崇め……
占領後の統治がやりやすくなることは必定かと!」
イフ「なるほど、そこまで考えておったとは!」
ゾネンゲ博士「この収入で軍団の大金庫も潤い、一石二鳥……
いいえ、それ以上の大成果でございますとも!」
イフ「流石は知恵者・ゾネンゲ博士! 素晴らしい作戦じゃ!」
落合さん「(戦慄)……な、何て怖ろしい……」
ビーコン「(ドタこけ)それにも増して、超くだらね~っス!」
ピグモン「えう~、ピグちゃん風邪ひきなんて嫌~んなの~」
イフ「わはは! 怖れおののけ、地球人どもよ!
さぁギガスよ、今こそお前の力をワシの眼前に示せ!」
ギガス「ごわぉぉ~、任せといて下せぇ、魔王様~っ!」
怪獣魔王の檄に奮い立ち、猛然と進撃開始するギガス!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、呑気に冷麺どころか……」
落合さん「こちらの肝が冷える緊急事態ですわねぇ!」
ピグモン「きゃああん、とにかくおっかないの~!(涙目)」
イフ「わははは……どぉれ、ギガスよ。
お前の得意技、ワシの前にしかと見せてみるがよい!」
ギガス「ごわぉぉ~、やらいでか~っ!」
ギガスの吐き出す冷気、その名も人呼んで“氷結つむじ風”。
その凍てつく吐息を受ければ、ビルも車もたちまち氷漬けである。
ギガス「ごわぉぉ~っ、どんなもんだい!
この調子で、千歳のやつらをみんな夏風邪にしてやるぜ~っ!」
ビーコン「どひ~っ、冗談じゃないっスよ~!(汗)」
落合さん「ですが、このままでは……
冗談抜きで、本当にそうなりかねない勢いですわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ようし、やるぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うギガスの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
季節外れの雪男怪獣、悪ふざけもそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「よっしゃー! アニキの十八番っス!」
落合さん「こうなればもう、安心感が半端ではありませんわね!」
ピグモン「宙マン、がんばってなの~!」
ギガス「ごわぉぉ~っ、邪魔する気かぁ、この野郎!」
宙マン「あぁ、今日もしっかりそのつもりさ!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今回もまたビッグファイトの幕開けだ!
宙マン「さぁ勝負だぞ、冷凍怪獣ギガス!」
ギガス「アイ・ガッチュ!」
激突、宙マン対ギガス!
千歳の人々が固唾を呑んで見守る中、豪快に華開く巨大戦。
野太い左右の腕をうちふり、掴みかかってくるギガス。
ひとたび掴まって、怪力で締めあげられてはおしまいだ――
故に宙マンも、軽快なフットワークで的確な回避を見せていく。
ギガス「ごわぉぉ~っ、この野郎、ちょこまかと!」
宙マン「そらそら、こっちだこっちだ!」
敢えてギガスを挑発し、軽快に動き回る宙マン。
だが、勿論ただの「逃げの一手」ではなく……
宙マンの行動は常に、次の攻撃を見据えた上でのものである。
宙マン「そぉれっ、隙あり!」
ギガスの動きに生じた、一瞬の隙を見逃すことなく……
鞭のように鋭いキックが、冷凍怪獣めがけて的確にヒット!
さしものギガスも、これにはよろめき後退させられる。
宙マン「どうだ、参ったか!」
ギガス「ごわぉぉ~っ、調子に乗るなよ、この野郎がぁぁ~っ!」
宙マン「(よろめき)!?」
ギガスの怒りそのもののように、勢いよく吐き出される冷気!
落合さん「あぁっ、いけませんわ!」
ビーコン「あれをまともに受けちゃ、いくらウチのアニキでも……!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
ゾネンゲ博士「おおっ、その調子だぞ、ギガスよ!」
イフ「そのまま一気に、宙マンの心臓まで凍らせてしまえ!」
ギガス「ごわぉぉ~っ! そぉれ、宙マン、死にやがれ~っ!」
宙マン「なんの!」
宙マンめがけて、更なる冷気を吐き出すギガス!
が、凍てつく吐息は、宙マン・プロテクションに受け止められ
完全に無効化された!
ギガス「(驚き、目をパチクリ)ご、ごわわわっ!?」
宙マン「冷凍怪獣ギガス君、せっかくのクールな贈り物だが……
これは受け取れないね、持ち帰ってくれたまえ!」
宙マン、気合一閃――
冷気を増幅・反転させて、逆にギガスめがけて一気に叩き返し
ギガスの方を氷漬けにしてしまう。
宙マン「ようし、くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ギガスのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだッ!」
ギガス「ごわぉぉ~っ……やられちゃったよ、ぐや゛じい゛ぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、この次こそはお前に目にもの見せてくれるわ!
覚えておれ、真の恐怖はこれからなのだ……!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
ビーコン「アニキ、どうもお疲れ様っした!」
落合さん「これでどうにか、この一件も無事に落着ですわね」
宙マン「少しぐらい涼しいのは大歓迎だけれど……
極端に冷えこむのは、それはそれで困ったものだからねぇ。
初夏は初夏らしく、元通りの気候に戻ってくれてよかったよ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも一安心なの~」
ビーコン「いやいや、気のせいかもしんないスけど……
あの怪獣が引き起こした寒波が、まだ残ってるみたいな気がして
オイラ、妙に底冷えするんスよねぇ」
落合さん「あらまぁ、夏風邪でも召されましたかしら?」
ビーコン「ヒヒヒ、かもしんないっスねぇ~。
でも、落合さんが裸であっためてさえくれれば……☆」
げ し っ !
落合さん「ねーい、この後に及んで、よくもそんな世迷言をっ!」
ビーコン「どひ~っ、落合パンチはぞっと底冷えするっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
でっかい力と、庶民派の夢……
今日もやったぞ、我らが宙マン。
さァて、次回はどうなるかな?