この街に一軒、とても旨いラーメンが食べられるお店があります。
それが、こちらの「ピッパラの森」さん。
屋号の「ピッパラ」とは、サンスクリット語で“菩提樹”を意味するのだとか。
で、こちらのお店の看板メニューは“きのこラーメン”!
味噌・塩・醤油の三種類から、僕は醤油スープを選んでの注文です。
ヒラタケ、ラクヨウ、マイタケ、シメジ、タメギ……などなど、店舗の裏の山に
自生するキノコを十種類も使用し、あっさりとしたスープの味わいの中に
それら複数のキノコから溢れ出る滋味が、複雑で奥行きがあり、かつとても優しく
飽きの来ない味わいを醸し出しているこの一杯。
キノコの風味を上手にラーメンに取り入れている、というのも異色ではありますが
やはり何より異色中の異色なのは、こちらのお店を経営なさっているご店主さんが
実はラーメンがお嫌いで、「そんな自分でも食べられるラーメンなら、お客さんにも
きっと喜んでもらえるだろう」との理由でこの素晴らしい一杯が生まれた、という
その誕生の出自に尽きるでしょう。
そんな風変わりな出生の秘密(笑)を有するラーメンですが、その味は正攻法。
「地元産のキノコをふんだんに使っている」という話題性のみに頼ることなく
スープに麺、その他の具材などなど、それぞれ吟味された上でしっかり調和した
何度でも食べに行きたくなる素敵な一杯なのです。
そして、個人的には……
黒一色の光沢の中で、ひときわ美しい存在感のアクセントとなっている
この白キクラゲが何とも嬉しくて。