土星の衛星・エンケラドゥスにあるロード・ゼッドの居城に現れた
甲冑の魔人、ヴォイド・ナイト。
ロード・ゼッドの忠実なる臣下であり、その「右腕」として
主君からの信頼も篤い彼は、宙マンと怪獣たちとの戦いぶりを
密かに観察・研究・分析し続け……
そして今、怪獣ナイフヘッドとの戦いを終えたばかりの宙マンの前に
頃合いよしとばかりの奇襲攻撃とともに、その姿を現したのであった!
ヴォイドナイト「ははは、どうやら驚いてもらえたようだな。
……そうでなければ、小生が出張った甲斐もない!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
楯の宝石から放たれる、邪悪な魔力の光に包まれて……
みるみるうちに、等身大から巨大化を果たすヴォイド・ナイト!
みくるん「ああっ、そんな!?」
ながもん「(ボソッと)お約束と、言うには……あまりに……邪悪」
落合さん「あぁもうっ、怪獣退治で一件落着のはずでしたのに……」
ビーコン「どひ~っ、とんでもねーのが出てきやがったっス!」
ヴォイド・ナイト「ははははは……我が名はヴォイド・ナイト!
偉大なるロード・ゼッド様に仕えし、最も忠誠心篤く武勇なりし者……」
ヴォイド・ナイト「そして宙マン、貴様の英雄伝説に終止符を打つ者ぞ!」
宙マン「く……ぬ、ううっ……!」
ヴォイド・ナイト「ふふふ、宙マンよ……
小生の素晴らしき趣向が、この程度で済むと思ってもらっては困るぞ」
「さぁ――いでよ、アイ・ガイ!」
「クォコココココ……」
ヴォイド・ナイトの声に応え、千歳市の上空に忽然と姿を現す
巨大で不気味な「眼」。
これまで宙マンの戦いを、密かに監視し続けてきたあの「眼」だ。
いや、そればかりではない。
そんな巨眼の出現に呼応するように、次々と虚空から湧き出てくる
無数の眼、眼、眼。
それらは引き寄せあうかのように、最初の巨眼のもとに群れ集って……!
「クォココココ……メガ、メガぁぁ~っ!」
みくるん「ああっ、また何か出てきたですぅ!」
ピグモン「えう~、おっかないの、お目々のお化けなの~!」
ながもん「これは……そうとしか……表現、できない」
ヴォイド・ナイトが操る魔界のモンスター。
その全身が無数の目玉によって形作られている、まさに名前通りの
目玉男(アイ・ガイ)である。
ビーコン「っかー、なんつー悪趣味っスか!」
落合さん「ビーコンさんがそれを仰るのもどうかと思いますが……
今回ばかりは、同意せざるを得ませんわ(汗)」
ヴォイド・ナイト「小生、ヴォイド・ナイトと……」
アイ・ガイ「メガメガメガ、このアイ・ガイ様が揃った以上……」
ヴォイド・ナイト「貴様からは、万にひとつの勝機も失せたと知れ!」
宙マン「大した自信じゃないか……
その鼻っ柱が、今すぐへし折られるとも知らずに!」
ヴォイド・ナイト「減らず口を……虚勢のツケは高くつくぞ!
構わん、やれィ! アイ・ガイよ、お前の怪力を見せてやれ!」
アイ・ガイ「クォココココ……行くぜ眼が! キメるぜ眼が!」
猛然、宙マンに襲いかかってくる妖人アイ・ガイ!
先のナイフヘッド戦の余韻もさめやらぬうち、それに勝るとも劣らぬ
凄絶な激闘が千歳の大地を揺るがす。
太く、たくましい腕から、続けざまに放たれる連撃!
その凄まじいパンチ攻撃の前に、先に一戦交えたばかりの宙マンは
体力・気力の消耗とともに、どうしても守勢に回らざるを得ない。
宙マン「く、ううっ……!」
アイ・ガイ「メガメガ~、どうしたどうした! 不甲斐ないぜ!」
アイ・ガイの怪力一閃!
宙マンの巨体が軽々と吹っ飛ばされ、地に叩きつけられる。
宙マン「なんの、まだまだ……っ!」
アイ・ガイ「馬鹿めが、このアイ・ガイ様に死角なし!」
背後への攻撃も全身の「眼」によって見られ、破壊ビーム攻撃で
しっかり対応され、再び吹っ飛ばされる宙マンである。
ピグモン「ああっ、宙マン、しっかりなの!」
みくるん「酷いですぅ……宙マンさん、お疲れなのに……」
ながもん「たぶん、最初から……これを……狙ってた」
落合さん「んーまっ、なんてズッコい方なんでしょう!」
と、人々が憤っている間にも、戦いはますますヒートアップ。
ヴォイド・ナイト「ははは、この程度でへばるのはまだ早いぞ。
次は小生の相手もしてもらおうではないか――エェイッ!」
右手に魔剣、左手に楯……
完全武装とともに、嵐の激しさで斬りつけてくるヴォイド・ナイト。
ナイフヘッド戦の疲労に加え、アイ・ガイにも痛めつけられた宙マンに
一片の容赦も、慈悲もなく叩きつけられる苛烈な剣さばき。
宙マン「なんの……これでもくらえっ!」
宙マンの放つストレートキック!
だが、その一撃は、ヴォイド・ナイトが左手に携える楯によって
完全に受け止められ、無力化される。
ヴォイド・ナイト「ふふふ、児戯にも劣るわ!」
宙マン「なんの、だったらこれはどうだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線。
エクシードフラッシュの一閃が、ヴォイド・ナイトを直撃……
……したかと、思いきや!?
何と!
宙マンの必殺光線も、楯で完全に受け止められたではないか!?
宙マン「(我が目を疑い)何っ!?」
ヴォイド・ナイト「ははは! 貴様の戦い方は、既に調べ済み……
そのデータを基に戦いに臨む以上、もはや小生が勝ったも同然よ!」
ザシュウゥゥッ!
ヴォイド・ナイトの魔剣が、宙マンのボディを切り裂く!
かくて三たび、大地に叩きつけられる我らがヒーロー。
ヴォイド・ナイト「よし! アイ・ガイよ、最後の仕上げだ!」
アイ・ガイ「メガメガメガ……見ろよ眼が! キメるぜ眼が!」
アイ・ガイの赤い巨眼が、ひときわ大きく見開かれ……
次の瞬間に放たれた魔の波動が、宙マンめがけて襲いかかった!
宙マン「ぬ、ううっ……っくぅぅっ……!」
アイ・ガイ「クォココココ……そぉれ、そぉれ……!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
おお、何ということであろう?
宙マンの巨体がみるみるうちに……なすすべもなく魔の波動によって
アイ・ガイの目の奥にある異空間へと吸い込まれていったではないか!?
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「あ、アニキが……食われた……食われちまったっス!」
ながもん「……そんな……」
ピグモン「はわわわ、宙マン、行っちゃいや~んなの~!」
落合さん「お殿様……お殿様っ!」
アイ・ガイ「ゲフッ……一丁あがりですぜ、ヴォイド・ナイト様!」
ヴォイド・ナイト「はははは! ご覧いただけましたかな、我が君よ――
ヴォイド・ナイトとアイ・ガイ、宙マンめを見事仕留めましてございます!」
ロード・ゼッド「おおっ……!!」
ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……でかしたぞ、流石はヴォイド・ナイト!
邪魔な宙マンさえ片付いてしまえば、もう地球は我輩のもの。
遠慮はいらんぞ、存分に暴れて全てを叩き壊せ!」
ヴォイド・ナイト「もとより――そのつもりにございます、我が君!
もはや宙マンは虚空の彼方で朽ち果てるのみ……
ゼッド様の覇業を邪魔するものは、もはや誰も居りはしません」
ヴォイド・ナイト「さぁ! 宴を始めよう。
火の宴、闇の宴、そして地獄の宴……ロード・ゼッド様の世紀のために!
さぁやれアイ・ガイ、まずは景気づけのファンファーレだ!」
アイ・ガイ「メガメガメガ~、承知ッ!」
落合さん「あ、あらあらあらあらっ!?」
ビーコン「どひ~っ、えらいこっちゃ、えらいこっちゃっス!」
みくるん「ふぇぇ、今はとにかく逃げなきゃですよぉ!」
爆発! 炎上!
ヴォイド・ナイトの謀略によって、宙マンが消え去った今……
北海道千歳市は、絶体絶命の大ピンチに陥っていた!
ヴォイド・ナイト「ふふふ……はァはははは……!」
恐るべき甲冑の魔人ヴォイド・ナイト!
千歳の平和は、地球の未来は……
そして、窮地に陥った宙マンの運命は!?