日に日に、過ぎ行く風も冷たさを増し……
それに伴って、山々の木の葉も美しく色づきはじめるこの季節。
そんな深まりゆく秋でなければ味わえない「旨いもの」があり……
例えば北海道のあちこちに顔を出してきたキノコ類もそのひとつ。
豊富な種類のそれらは、まさしく山からの恵みに他ならない。
だが、そんな秋色の山の、平和な佇まいの中で。
今、まさに悪の野望が不気味な胎動を続けていたのであった!
こちらは、千歳市の郊外。
この沼地から、怪獣軍団の恐怖が……
恐るべき地球侵略の牙が、首をもたげんとしている。
俄かに妖しく波立つ沼の水面。
沸き立つ気泡とともに、水底から浮かび上がってきたのは!?
「ピギャルルゥゥ~ンっ!」
高らかな咆哮とともに立ち上がったのは……
トカゲとウツボカズラの生態を併せ持つ、他のどの生物とも異なる
歪んだ科学が生んだ“許されざるいのち”。
「ピギャルル、その名も合性怪獣・レオゴン様だぁ~!」
サンドロス「をほほほ、お疲れ様ドロス、レオゴンちゃん!」
イフ「早速であるがレオゴンよ、お前にはひと働きしてもらわねばならん。
すなわち――」
サンドロス「(頷いて)アタクシたち怪獣軍団の、地球前線基地の建設ドロス!」
レオゴン「ピギャルル、分かってますとも、奥方様に魔王様!
こうして地上に出てきたからにゃ、不肖レオゴン……
もうとっくに、身も心もそのつもりでおりますぜ!」
イフ「やる気十分だな、ますます結構!」
イフ「地球の各地を効率的に攻め落としていくための前線基地……
この星をワシらのものとするため、どうしても無くてはならぬもの」
サンドロス「だからこそ、レオゴンちゃんの力が必要なのドロス」
サンドロス「資材搬入も建設工事も……
まずはそのための下地作りから、わかるドロスわね?」
イフ「レオゴンよ、お前の力で千歳の山を「整地」せよ!」
レオゴン「ピギャルゥ~、お任せ下さい、魔王様がた!」
レオゴン「この俺の力にかかりゃ、そんなのァ容易いもんでさぁ。
こんな山、一本の木もペンペン草も残さず更地に……」
「おおっと、いろいろ待ってもらおうか!?」
レオゴン「(ギョッとして)だ、誰だっ!」
驚き、振り返ったレオゴンの、ちょうど足元にいた声の主……
もはや説明不要のヒーロー、ご存じ宙マンだ!
レオゴン「げげぇっ、ちゅ、宙マン!?」
宙マン「怪獣レオゴン、話は全て聞かせてもらったぞ――」
宙マン「千歳の山に前線基地を築くなど、この私が許さん!」
レオゴン「面白ェ、計画を妨害しようってか!?」
宙マン「あぁ、するね、断固としてさせてもらう」
宙マン「秋のキノコは、山の大事な恵みだよ。
……そんなことのために、更地になんてされてたまるか!」
レオゴン「……結局は食い気かよ、緊張感のないやつめ!」
宙マン「まぁまぁ、そう言うもんじゃない――
この時期のキノコ類ほど、旨味たっぷりの食材もないよ!?
味噌汁に炊き込みごはん、鍋、あとは天ぷらなんてのも……」
レオゴン「(呆れ)……あぁ、分かった分かった、もう結構!」
宙マンめがけて、轟然と迫り来るレオゴンの巨体!
宙マン「むうっ、この乱暴者め! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、レオゴンの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
合性怪獣レオゴン、悪の野望はここで行き止まりだ!」
ズ、ズーンっ!!
サンドロス「んーまっ、またまたお邪魔虫のお出ましドロスわね!?」
イフ「おのれ、またしても出しゃばりおってからに……
こうなったらレオゴンよ、まずは宙マンから先に片付けるのだ!」
宙マン「みんなの秋の楽しみを奪おうとする無法者!
この私が、とことん思い知らせてやる!」
レオゴン「ピギャルゥ~、しゃら臭ぇ、返り討ちだ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
レオゴン「大口が叩けないように、まずはその喉笛、噛みちぎってやる!」
宙マン「やれるものなら、やってみろ!」
間合いを計りながら駆け寄り、遂に激突する両者!
秋の山中で、巨大超人と巨大怪獣が戦いの火花を散らす。
後ろ足で立ち上がり、連続パンチ攻撃をかけてくるレオゴン。
その猛ラッシュをかいくぐりながら、宙マンも果敢に反撃。
レオゴン「ぴ、ピギャララっ!?」
宙マン「そぉれっ、これならどうだ!」
唸る肘打ち、そしてキック!
宙マンの連続アクションの前に、さしものレオゴンも後退する。
宙マン「どうだレオゴン、これが正義の力だ!」
レオゴン「調子こくなよ、宙マン……これでもくらえ!」
レオゴンの背中の突起から発射される“シードミサイル”!
体内において生成される「種」を生体電磁波で急加速して射出する
動物と植物の合成体たるレオゴンだからこその奥の手である。
レオゴン「ピギャルル~、踊れ踊れ、もっと踊れ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
サンドロス「をほほ、相変わらずやるドロスわねぇ、レオゴンちゃん!」
サンドロス「これでもう、今度こそは宙マンも終わりドロス!」
イフ「そぉれっ、一気にとどめを刺してしまうのだ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
レオゴン「ピギャルル~、死んでもらうぜ、宙マンさんよぉ!」
宙マンめがけて突進し、これを前足で蹴り飛ばすレオゴン!
たまらず宙マンが倒れたところへ、レオゴンがのしかかってくる。
宙マン「……くっ……!」
レオゴン「そぉれ、それそれ、首をへし折ってやる!」
「なんの、これしき……やられて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
覆いかぶさるレオゴンの巨体を、キックで大きく跳ね飛ばす。
レオゴン「(よろめき)……ぐぐぅっ……ちゅ、宙マンめぇぇ……!」
宙マン「これでとどめだ、合性怪獣!」
宙マンの右手から、素早く放たれる手裏剣ビーム!
レオゴンの急所めがけて炸裂し、激しいスパークを散らせる。
レオゴン「もう一歩のとこだったのに……く、クヤシイぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
サンドロス「な、何てことドロしょ……まさか、レオゴンちゃんが!」
イフ「ぐむむむっ……おのれおのれ、またしても宙マンめ!
だが、忘れるではないぞ……
最後の最後に笑うのは、ワシら怪獣軍団なのだと言う事をな!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、怪獣軍団の秘密基地建設計画は
今回もまたまた、怪獣レオゴンの敗退で水泡に帰したのであった。
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですね!」
ながもん「さすが、宙マン……まかせて、安心」
ビーコン「ヒヒヒ、現役引退しても、宙マン印は信頼のブランドっスねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
宙マン「なんだ、みんな、見ていたのかい?
……やぁ、そんな風に言われると、何かテレちゃうなぁ!」
ビーコン「ヒヒヒ、アニキぃ、テレるのもいいっスけど……」
落合さん「本当の戦いはここからですわよ。お殿様!」
宙マン「本当の……戦い?」
落合さん「キノコ狩りですわよ。キ・ノ・コ・狩・り!」
宙マン「おお……そうだったね、肝心なことを忘れてたよ!」
みくるん「いっぱい採って、いっぱい美味しく頂きましょうね!」
ながもん「おお……想像しただけで、よだれが……じゅるりっ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもがんばるの~♪」
と言うわけで、怪獣退治の後にはキノコ狩りでも汗を流し……
その夜は心ゆくまで、美味しいキノコ料理フルコースに舌鼓を打った
宙マンとその仲間たちであったとさ。
めでたし、めでたし。
秋風の冷たさにも負けず……
宙マンファミリーは、いつでも元気一杯。
次回もまたまた、ホットに大活躍だよ~!