遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

激闘! きたぐにの秋の巻

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スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋……

いろんな「秋」があるけれども、美しい自然環境に恵まれた北海道の場合は

何と言っても「行楽の秋」。

吹き抜ける風は日に日に冷たくなってはきているものの、広大な山々を

美しく彩る赤や黄色の木の葉の色や、今ならではの豊かな食の恵みが

冬の訪れの前にここへ来て、ささくれだった心身を癒しておゆき……と

人々を優しく誘っているかのような。

おりしも10月半ば、絶好の行楽日和。

気持よい秋晴れの空の下、今日もまた『宙マン』の物語を始めよう。

 

 

落合さん「あぁ~、素晴らしい眺めですわねぇ!」

ビーコン「絶景かな、絶景かな~っス!」

宙マン「うんうん、わざわざ千歳から遠出してきた甲斐があったよ!」

ピグモン「はうはう~、とってもすてきなの~♪」

 

こんち、毎度おなじみ宙マンファミリー。

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今回彼らはホームグラウンドの千歳を離れ、秘湯として知る人ぞ知る

ここ・八雲町熊石の山中……秘境と言って差し支えない場所にひっそりと建つ

一軒の温泉旅館へと足を運んでいたのであった。

 

ビーコン「ヒヒヒ、どのくらい秘境かっつーとっスね……

 なんせカーラジオもいつの間にか聞こえなくなって、宿のTVも

 BS放送しか映らねー、ってなぐらいなんスけど!」

宙マン「いやいや、そのぐらいの方がね……

 外界のことはすっぱり忘れて、身も心もリフレッシュできるってものさァ。

 ……と言っても、別に今の暮らしに不満があるわけじゃないけどね」

落合さん「えぇ、そこは気分の問題ですわよね、お殿様。

 ……それにこちらの旅館には、そんな不便さを差し引いても余りあるほどに

 わざわざ訪れたくなるものがある、ありすぎるのですわ」

宙マン「ひとつは源泉かけ流しの天然温泉。そして、もうひとつは……」

落合さん「古くからこの地域の名産品だったと言うアワビをふんだんに用いて

 宿泊客をもてなして下さる、素晴らしいフルコース料理ですわ!

 えぇ、もう、これがあるからこそココに決めたようなものです!」

ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも今から楽しみなの~♪」

ビーコン「ヒヒヒ、そして何もすることがない夜でも……

 オイラがいる以上、落合さんには退屈なんてさせないっスよ~☆」

落合さん「いえいえ、放っておいて下さいませ、どうぞお気遣いなく!

 不肖・落合、退屈ダ~イ好きですからっ!」

ビーコン「ちょっ、ここの温泉が混浴じゃねーのは百歩譲るとしても……

 その後の甘い夜のひと時がないなんて、画竜点睛を欠きすぎじゃないっスか!?

 そんじゃ何のためにここまで来たんスか、落合さんっ!」

落合さん「まかり間違っても、あなたの劣情を充たすためじゃありませんっ!!」

 

宙マン「……と、その温泉なんだけどね、落合さん。

 何か……さっきから、様子がおかしい気がしないかな?

ピグモン「くんくん……そういえば、煙の中から何かいい匂いがするの~」

落合さん「(眉をひそめて)いえ、甘くて良い香り……には、違いないですけど」

ビーコン「ぶっちゃけ、こいつァトイレの芳香剤の匂いっスね!」

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落合さん「(頷き)……ですわね。

 良い匂いではありますものの、あまりにも温泉らしくないと申しましょうか……」

ビーコン「あまりに不自然っつーか、場違いなんスよね」

落合さん「(ジト目)常に場違いなビーコンさんが仰ると、説得力抜群ですわね!」

ビーコン「っがー、何スか、その擦り方!?(憤慨)」

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ピグモン「ねぇ宙マン、これももしかして怪獣軍団の……?」

宙マン「いやぁ、いくら何でもこんなところにまで――」

 

「ジャッパッパッパッ……

 いやいや、そうとも限らんぜェ!?」

ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!

 

ピグモン「きゃあああんっ、揺れてるの~!」

ビーコン「ま、まさか……こんなところにまでっスかぁ!?」

落合さん「……ちょ、せっかくの湯治旅行ですのに……!」

宙マンファミリーのぼやきなど、どこ吹く風とばかり……

温泉旅館のすぐそばを流れる「見市(けんいち)川」の水面を激しく泡立たせて

忽然、突然、立ち上がる異形の巨体。

 

……正にそれこそ、先ほどの声の主そのものであった!

「ジャ~ッパッパァァ~っ!!」

 

ビーコン「ずげっ、なんかヤバそうなのが出て来たっスよ!」

落合さん「怪獣軍団の方が、ヤバげでなかった試しもございませんけど……」

ピグモン「えう~、とにかく今日も一大事なの~(涙目)」

タツノオトシゴを彷彿させる巨体の主は、水異怪獣マジャッパ。

もちろん怪獣軍団の一員だ。

 

落合さん「温泉に変な匂いをつけていたのも、貴方の仕業でしたのね!?」

宙マン「マジャッパ君とやら、一体何が狙いだね!」

マジャッパ「ジャッパ~、よくぞ聞いてくれましたっ!

 この山の温泉を、俺たち怪獣軍団の保養地にするため……

 まずは一人残らず、この山から人間どもを追い出すのが俺の使命なのさァ」

ビーコン「な~る、だからあの芳香剤みてーな匂いづけを……」

マジャッパ「(頷き)そうやって噂が広まり、客足が遠のけばしめたもの」

宙マン「なぁるほど……いかにも君ららしい、小賢しい悪知恵だよ。

 だがそれで、思うようにいかなかったら……その時は、どうするね?」

マジャッパ「ジャッパッパッパ、その時は――」

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イフ「わはは、決まっておろう、その時は問答無用の大暴れじゃ~っ!

 さぁ行けマジャッパよ、まずは宙マンたちから片付けろ!」

マジャッパ「ジャッパッパ~、お任せお任せ、魔王様~っ!」

芳香とともに……そして咆哮とともに、マジャッパ進撃開始!

巨体を唸らせ、足元の宙マンたちを踏みつぶさんと迫り来る。

 

ビーコン「どひ~っ、えらいこっちゃ、えらいこっちゃっス!」

落合さん「ああもう、これでは骨休めどころか骨折れですわ!(汗)」

ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」

宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!

 宙マン・ファイト・ゴー!!

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閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。

さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!

落合さん「ああっ、今日も凛々しいあのお姿……♪(うっとり)」

ビーコン「こうなったらもう、頼みの綱はアニキだけっス!」

ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」

宙マン「みんなの湯治場、伝統ある温泉地を荒らす無法者め……

 天に代わって私が懲らしめてやる、覚悟しろ!」

マジャッパ「ジャパ~ッ、痛い目見るのはお前の方だ、宙マン!」

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ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――

さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!

マジャッパ「ジャパジャパ~ッ、徹底的にやるぞ、宙マン!」

宙マン「いいだろう、とことん勝負だ!」

真っ向激突、宙マン対マジャッパ!

落合さんたちがはらはらと見守る中……巨大サイズの凄絶な戦いが

秘境の原生林を激しく揺さぶる。

トボけたルックスに似合わず、戦闘意欲は旺盛で……

持ち前の怪力により、左右から鋭い爪のパンチを繰り出してくるマジャッパ。

その打撃をかいくぐり、受け流しつつ、宙マンも果敢に敵へ挑んでいく。

マジャッパ「ジャパパッ、なかなかやりやがるな!?」

宙マン「なぁに、まだ序の口さ――こんな芸当もあるぞ、それっ!」

体のバネを活かし、跳び上がってからのストレートキック!

胸元へまともに食らい、さしものマジャッパも後退する。

宙マン「はっはっはっはっ……どうだ、正義のキックに怖れをなしたか!?」

マジャッパ「ジャパパパッ……デカい口を叩くのは、これを受けてからにしな!」

宙マン「う、ぐっ……!」

 

マジャッパの口から吐き出される、甘い香りの「マジャッパ芳香」。

単に主張の強い良い香り……と言うだけにとどまらず、大量に吸い込んでしまえば

全身の感覚を一時的に麻痺させる怖ろしい作用も秘められているのだ。

宙マン「な、なんの……これしき……っ……」

マジャッパ「ジャパジャパ、まだまだ、お次はコイツだぁ!」

マジャッパの鼻先から噴き出す、高速の「マジャッパ水流」!

まともに直撃を受けた宙マンの体を、大きく後方へ吹っ飛ばす水圧だ。

 

「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」

ズ、ズーンっ!!

 

落合さん「ああっ、お殿様!?」

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ビーコン「シャクな話っスけど……結構効いてるっスよ、今の攻撃!」

ピグモン「はわわわ、宙マン、負けちゃいや~んなの~!」

宙マン「(苦悶)うう……うっ!」

マジャッパ「ジャッパッパ~、次で決めてやるぜ、宙マン!」

「なんの、まだまだ……負けて、たまるかッ!

宙マン、気力を振り絞ってのパワー全開!

マジャッパの水流を、ひらりとジャンプで躱して大空へ。

マジャッパ「(驚き、目をパチクリ)じゃ、ジャパパッ!?」

宙マン「タァァーッ! 宙マン・回転アタック!

空中回転と共に、マジャッパめがけて躍りかかり……

倒れかかる勢いで馬乗りになって、続けざまにパンチを食らわす荒技。

ビーコン「っしゃ、その調子っスよ、アニキ!」

落合さん「こうなればもう、完全にお殿様のペースですわ!」

宙マン「ドォリャーッ! 宙マン・リフター!

ダメ押しとばかりの、超豪快な投げ技!

きりきり舞いで地上に叩きつけられれば、もうマジャッパはフラフラだ。

 

宙マン「とどめだ! 

 宙マン・エクシードフラッシュ!!

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全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……

エクシードフラッシュの一閃が、マジャッパを直撃!!

マジャッパ「じゃ、ジャパパパッ、こりゃタマラ~ンっ!」

やったぞ宙マン、大勝利!

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ピグモン「はうはう~! やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」

ビーコン「さっすがはアニキ、やっぱこうじゃなきゃっスよねぇ!」

落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様!」

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イフ「おのれぇぇ……またしても、またしても宙マンめが!

 温泉だの行楽だのと、浮かれていられるのも今のうちだけだぞ……

 次はさらに強力な怪獣で、必ずお前の息の根を止めてくれるわ!」

 

……などと言う、もはや毎度の負け惜しみはさて置いて。

かくして、我らが宙マンの活躍により……

水異怪獣マジャッパは撃退され、秘境・見市川流域の温泉地にはまた

これまで通りの静けさと平穏が戻ってきたのであった。

 

落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」

宙マン「わざわざ湯治場まで来て、一汗かくとは思わなかったけど……」

ビーコン「な~に、だからこそ風呂の気持ちよさが増すと思えば、ねぇ!」

落合さん「それと、ホッとした後に頂くお夕食も……ですわね」

宙マン「ああ、そうとも、大いに堪能しようじゃないか!」

ピグモン「はうはう~、まずはお宿にチェック・インなの~♪」

と、言うわけで。

旅館へのチェックインを済ませ、部屋に荷物を置いたらば、何はなくとも

当地自慢の天然温泉に浸からぬことには始まらない。

 

落合さん「はぁぁ……極楽、極楽っと!」

露天風呂の雄大な景観ともども、鉄分・塩分込みのミネラル分豊富な

温泉の効能で体の芯までじっくり温まり、疲れを癒したその後は……

これまた当地の名産・アワビのフルコースが彼らを待っていてくれた。

ビーコン「うひょひょひょ! アワビが踊ってるっス!

 網の上でうねってるっスよ、だから"踊り焼き"なんスねぇ!」

宙マン「生のコリコリ感も楽しいけれど……

 こうして熱が加わると、一気に柔らかさも、旨味も増すねぇ」

落合さん「えぇ、本当に奥の深い食材ですわ――」

落合さん「それに、料理人の方の腕前もまた非凡そのものですわね。

 このアワビのステーキの、味わいの深さと言ったら!」

ピグモン「アワビ尽くしなのに、全然飽きなくて美味しいの~♪」

宙マン「ああ、全くもって素晴らしいね。

 ……あ、仲居さん、こちらの一皿は?」

「こちらは当館のシェフから、皆様方へのサービスでございます。

怪獣と異臭騒ぎから、当館と温泉郷を救って下さったお礼……と言うことで♪」

宙マン「いやぁ、はっはっはっはっ……有難く、頂かせてもらいます!」

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と、言うわけで……

温泉も料理も満喫し、心身ともにリフレッシュの宙マン一行であった。

 

……途中、ビーコンのセクハラ攻勢に伴う落合さんの鉄拳制裁もあったのだが

ひとまず、それについてはさて置いて。

旅は道連れ、世は情け……

のんびりゆったり、宙マンファミリー。

英気を養い、明日からもまた!