ヤプール「さぁ行け、我が超獣連合軍、戦いの嬰児たちよ!
地上の全てを焼き尽くし、破壊し尽くして……
我ら異次元人の悪魔の力を、全宇宙に見せつけてやるのだ!」
ベロクロン、キングクラブ、ブラックサタン……
先遣隊にあたる超獣ハンザギランとの戦いで宙マンが疲弊した隙を突き
卑怯にも三頭ががりで総攻撃をかけてきた「超獣連合軍」。
持ち前の破壊力と、三頭と言う「数」に物を言わせた悪の暴力が
宙マンを、北海道を蹂躙する。
北海道千歳市、今まさに絶体絶命の大ピンチ!
おお、だが、前回よりお付き合い下さっている読者諸氏よ!
あなた方は、もう既にご存じのはずだ――
北海道千歳市と、宙マンのピンチを察知して……
一人のヒーローが、地球を目指して飛んできていると言うことを!
騎士甲冑を思わせるプロテクターと、赤い体の鮮烈なコントラスト……
誰もが知っているその姿は、正に真紅のファイターである。
急いでくれ、戦士よ!
宙マンと北海道千歳市の命運は、まさに風前の灯なのだ。
そう。
この瞬間、こうしている間にも……!
ズガーン! グワーンっ!
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
ベロクロン「グゥオオ~、ざまァないな、宙マン!」
キングクラブ「ギニャニャ~、ブラックサタンよ、時間が勿体ないぜ――
こんな野郎、さっさと片付けちまおうぜ!」
ブラックサタン「ゴワゥゥ~、いいだろう、うんと惨たらしい有様でな!」
みくるん「ああっ……そ、そんなぁ!」
ピグモン「はわわわ、宙マンがやられちゃうの~!」
ブラックサタン「(ニヤニヤ)」ああ、やってやるさ、ズタズタに……な!」
宙マンにとどめを刺すべく、雪崩を打って殺到してくる超獣連合軍。
ああ、我らが宙マン、今度こそ絶体絶命か――
……と思われた、まさにその時である!
ながもん「(一方を指し)おおっ。……あれは」
みくるん「えっ?」
ビーコン「急にどうしたんスか、ながもんちゃん!?」
落合さん「えぇ、私にも見えましたわ。……あれは、あの方は……!!」
そう、このタイミングで空から駆けつけて来た雄姿――
あの真紅のファイター以外に、いったい誰がいるだろう?
キングクラブ「(驚愕)ま、まさかっ!?」
ベロクロン「(狼狽)ま、間違いねぇっ、あの姿は……!」
「ダァーッ!!」
空中から舞い降りざま、左右の足で繰り出すドロップキック!
有無を言わせぬその威力に、もんどりうって倒れるベロクロン。
キングクラブ「ああっ、べ、ベロクロンっ!?」
ブラックサタン「(歯噛みして)味な真似しやがって、一体どこのどいつ……
……とは、改めて聞く必要もなさそうだな!」
宙マン「(見上げて)おおっ……き、君は……!」
危機迫る千歳に颯爽と現れた正義の助っ人……
中世の騎士を思わせるプロテクターも勇ましい、真紅に輝く巨人!
落合さん「ああっ! あの方は、もしかして……!?」
ビーコン「そうっスよぉ、間違いなくあのヒトっス!」
「待ってたっスよ、ウルトラセブン~!!」
「いや、違う!」
「申し訳ないが、私は彼……ウルトラセブンとは別人なのだ。
セブンが恒点観測員340号としての任務に従事していた時、
私は彼の直属の上司にあたる存在だった――」
「そして今、ウルトラ兄弟としての公務で多忙な彼に代わり
この私がピンチヒッターとして駆けつけてきた、というわけだ」
そう、彼こそは「セブン上司」――
かつてウルトラセブンの地球滞在時、長い戦いによって疲れ果てた
セブンの身を案じ、「光の国」への帰還を促したM78星雲人。
そのセブン上司が、かつての部下であるウルトラセブンの要請を受け
宙マンを救うべく地球へやって来たのだ!
セブン上司「宇宙警備隊アンドロメダ星雲支部で勤務していた頃、
宙マンにはずいぶん世話になった。見殺しにはできない!」
落合さん「その辺の細かな事情はさておき……
ああ、こんなにも頼もしい援軍はございませんわ!
なんたって、天下のウルトラセブン様でいらっしゃいますもの♪」
ビーコン「セブン、この場はお任せするっスよ~!」
ながもん「(ボソッと)セブンがいれば……もう、安心」
みくるん「セブンさん、私たちも応援してますぅ~」
セブン上司「いや、だからね! この私はセブンじゃなくて……」
ブラックサタン「ゴワゥゥ~、出たなウルトラセブン!」
キングクラブ「だが、こっちは三頭がかりだ……
ウルトラセブンだろうが、もはや恐るるに足らずだぜ!」
ベロクロン「構う事ぁねぇ、まずはセブンから片付けちまえ!」
「 う が ー っ !! 」
セブン上司「全くもう!
どいつもこいつも、セブン、セブン、セブンって……
この私をセブンと呼ぶな~っ!!」
度重なる呼び間違いに、ついに怒り心頭に発したセブン上司。
群がる超獣のまっただ中に飛び込んで、暴風のごとき大立ち回り!
ウルトラセブン本人ではないとはいえ、彼と同じく戦闘能力に優れた
M78星雲“レッド族”出身だけあって、その強いこと、強いこと。
セブンに勝るとも劣らぬその技量に、超獣連合軍もたじたじ!
セブン上司「デュワーッ! どうだ、まいったか!」
キングクラブ「ギニャ~、こりゃたまらんッ!」
ベロクロン「やりやがるな、次は俺が相手だ!」
猛り狂い、セブン上司の背後から襲いかかってくるベロクロン。
だがセブン上司は、それを的確に察知して……
振り向きざまのストレートキックで、逆に超獣を蹴り倒す!
ベロクロン「だ、ダハァァァ……っ!」
宙マン「ようし……これは負けてられないな、私もやるぞっ!」
セブン上司の戦いぶりに、再び闘志を燃え上がらせ……
傷の痛みも忘れ、超獣ブラックサタンに挑みかかっていく宙マン。
ながもん「おおっ。……二大、ヒーローの……夢の、共演」
ビーコン「燃えるっスねぇ、やっぱイベント編はこうじゃなきゃっス!」
ピグモン「はうはう~、二人ともかっこいいの、頑張ってなの~!」
宙マン・セブン上司VS超獣連合軍!
「正義」の何たるかを体現した一戦が、千歳の街で鮮やかに花開く。
ブラックサタン「ゴワゥゥ~、おのーれっ!」
ブラックサタンの目から放たれる怪光線。
その恐怖の一閃を、ひらりとジャンプで躱す宙マン。
宙マン「はっはっはっ、二度も同じ手は食わんよ!」
ブラックサタン「(歯噛みして)……ぬぐぐうっ!」
凄絶に、かつ華麗に、ヒートアップしていく激闘!
宙マンが互角以上にブラックサタンと渡り合う一方で……
もう一方ではセブン上司が、二大超獣にやや手こずり気味。
セブン上司「(苦悶)ぬ、ううっ……っ!」
キングクラブ「ギニャニャ~、キングクラブ様の火焔攻撃の味はどうだァ!?」
ベロクロン「っと、それだけで満足してもらっちゃ困るぜぇ!」
セブン上司「う、うぉぉぉぉ……っ!?」
異次元の生体兵器たる「超獣」の厄介なところは、全身に組み込まれた
過剰なまでの武器、武器、武器のオンパレード。
その連続攻撃に、がっくりと片膝をついたセブン上司である。
キングクラブ「ギニャニャ~、流石のセブンも形無しだなぁ!?」
ベロクロン「ウルトラセブン、この辺境の星がお前の墓場だぜぇ!」
……ぶ ち っ !
セブン上司「えぇい貴様ら、まだ言うか!?
許せん!!」
額のビームランプから迸る、百発百中のウルトラビーム!
ベロクロン「き、キングクラブっ!?(汗)」
セブン上司「くらえ!」
頭部のクレスト(兜飾り)にあたる箇所を分離させ、投げつければ……
セブン上司のテレパシーで自在に宙を舞い、その鋭利な切れ味によって
あらゆる悪を切り裂く宇宙ブーメランと化す。
ズバシュウゥゥッ!
キングクラブ「こ、この切れ味……
ウルトラセブンのアイスラッガー、これほどのものかぁ……っ!」
セブン上司「あ゛~、もう~、だから違うんだってば~!」
ベロクロン「やりやがったな、ウルトラセブン! 許さねぇぞ!」
セブン上司「許さない、だと……?
ねーいっ、それはこっちの台詞だッ!!」
両腕をL字に組んで発射する、必殺の破壊光線。
セブン上司のワイドショットが、ベロクロンを直撃!!
ベロクロン「や……やはり強い……流石だぜ、ウルトラセブン……!」
セブン上司「ぢ~、が~、う゛ぅぅ~っ!!」
と言う感じで、セブン上司が二大超獣を倒したのとほぼ同時に……
残るブラックサタンにも、宙マンの必殺技が決まろうとしていた。
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、ブラックサタンを唐竹割りに切り裂いた。
ブラックサタン「ゴワゥゥ~、む……無念……ッ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ヤプール「ぬおおおっ、おのれ……宙マン、それにウルトラセブン!
覚えておれ……この恨み、いずれ何倍にもして返してやるぞ!
そして恨みの数だけ、異次元人は強くなるのだから……!」
セブン上司が聞いていたら「まず私の名前を覚えろ」と返されそうだが
ひとまず、それはさて置いて。
かくして……
宙マンとセブン上司、二大ヒーローの胸のすくような活躍によって
ヤプール超獣連合軍は粉砕され、平和が蘇ったのであった。
セブン上司「やったな宙マン、我々の勝利だ!」
宙マン「ああ、そうとも、君が駆けつけてくれなかったら……
私だけでは今頃、超獣たちに押しつぶされていたかもしれない」
宙マン「改めて……君の助力と友情に、心から感謝するよ」
セブン上司「いや、なぁに、それほどのことでは……」
宙マン「いやいや、この気持ちはどれほど言葉にしてもし過ぎることはないさ。
本当にありがとう、ウルトラセブン!!」
ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン!!!!!
「う……うっ、うわぁぁぁ~ん!!(号泣)」
宙マン「あっ、おい……どうしちゃったんだい、急に!?(困惑)」
落合さん「ここは追わないであげて下さいませ、お殿様!」
落合さん「きっと、感激の涙をお殿様に見られたくなかったんですわ」
ビーコン「ウルトラセブン、爽やかで気持ちのいいナイスガイっスねぇ!」
宙マン「(微笑みながら頷き)あぁ、そうだとも、そうだったね。
……彼は、昔から「そういう」男だった……!」
と、まぁ、そんな感じでの若干の勘違いなども含めつつ……
今回のお話は、これにてクロージング。
また、次回の『宙マン』にて、お目にかかりましょう!
光りは、やがて星の中に消えた。
(空想特撮シリーズ『ウルトラセブン』
「史上最大の侵略(最終回)」シナリオ決定稿・ト書きより抜粋)