季節は、もう真冬に限りなく近い晩秋……
毎度お馴染みの舞台、ここは北海道千歳市。
さて、北の大地を吹き抜ける木枯らしの寒さをも圧倒せんばかりの
激しい闘志に燃えて、航空防衛隊・千歳基地の空の精鋭たちによる
飛行訓練が、今日も精力的に行われていた。
さて、今回の『宙マン』は、まさにリアルタイムで展開されている
戦闘機隊の飛行訓練から物語を始めよう。
ビーコン「おお~、今日もやってる、やってるっスねぇ!」
落合さん「防衛隊の皆様方、アレがお仕事とは言え……
あのたゆまぬ熱心さには、本当に頭が下がりますわねぇ」
ビーコン「あとはもうちっと、結果が伴ってさえくれりゃ……」
落合さん「(慌てて)シーッ、お言葉が過ぎますわよ、ビーコンさん!
……いくら本当のことだからって、さすがにお気の毒ですからっ」
ビーコン「……そっちの方がひどいじゃねーっスか(汗)」
宙マン「やぁ、それにしても、この爆音!
……千歳に引っ越してきて間もない頃は、面喰ったりしたものだけど
何というか、慣れてしまえば慣れるものだよねぇ」
落合さん「良くも悪くも、「基地のまち」ならではですわね」
ピグモン「はうはう~、防衛隊のおじさんたち、かっこいいの~♪」
地上でそんな会話が為されていることなど露知らず……
ますます熱気を増していく、航空防衛隊の飛行訓練。
変幻自在のフォーメーションが、見事に描かれていくその最中!
リリリリリリ……!
「……う、うわぁぁぁぁっ!?」
落合さん「(驚愕)……ちょ、え、ああっ!?」
ビーコン「どひ~っ……ま、マジっスか!?(汗)」
ピグモン「はわわ……た、大変なの~!」
おお、何ということであろう!?
誰もが予想だにしていなかった、白昼の惨事……
快調に空を舞っていた戦闘機が、突如鳴り響いてきた怪音とともに
空中で爆発し、そのまま地上へと墜落してしまったではないか。
ビーコン「あ~、シャレんなんないっスよコレ、マジヤバいっス!」
ビーコン「航空防衛隊の不祥事ってんで、マスコミに叩かれまくって
ネットのSNSとか荒れまくなっちゃうこと請け合いっス!」
落合さん「それも確かに大変なことではあるんですけど……
……あのですね、お殿様。
戦闘機が墜落する直前に、何か奇妙な音が聞こえたような……」
宙マン「ああ、私も確かに聞いたよ。
間違いなく、地球外生命体の放つ特殊な音波だった!」
ピグモン「耳の良い宙マンが言うんだから、もう間違いないの~」
宙マン「……ううむっ、そう考え出すと気になるな。
済まないみんな、ちょっと行って確かめてくる!」
落合さん「……あ、は、ハイッ」
ビーコン「行ってらっしゃいアニキ、気ぃつけてっス~!」
全速力の宙マン・ダッシュ!
自動車をも上回るスピードで駆け抜け、怪音の聞こえた方角へと
疾風のように突っ走っていく我らがヒーロー。
そして、そんな宙マンの向かった先……
郊外の山奥では、今まさに怪獣軍団の悪企みが進んでいたのだ!
イフ「さぁ、今こそ立ち上がれ、怪獣軍団の戦士よ!
地球を征服し、ワシらが支配者として君臨する時は今なるぞ!
いでよ、華麗なる幻惑の音色の紡ぎ手よ!」
「リリリリリリ……!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
晩秋の山中に、忽然とその姿を現した巨体……
昆虫がそのまま高度な進化を遂げたような、宇宙の怪奇魔人。
音波怪人・ベル星人、もちろん怪獣軍団の一員だ!
ベル星人「リリリリ、ご覧頂けましたか、魔王様!?
私の破壊音波にかかれば、地球人の戦闘機などあの通り!」
イフ「うむっ、見事であったぞ!」
イフ「ワシがお前の超能力に、期待することは一つ。
そう、それは即ち――」
ベル星人「北海道の制空権確保、でありますな」
イフ「(頷き)頼もしい奴よ、話が早くて助かるわい!」
イフ「北海道の空の玄関・千歳の制空権を奪うこと……
怪獣軍団の悲願であり、地球征服には欠かせぬ地固めだ」
ベル星人「大船に乗った気でいて下さいませ、魔王様!
このベル星人の得意技、ベル怪音波をもってすれば……
砲台設置の手間も要らず、制空権は我らのもの!」
イフ「うむっ、期待させてもらうぞ!」
ベル星人「ははっ、万事この私めにお任せを――」
「おおっと待った、そうはさせないぞ!」
ベル星人「(驚き)むむっ! だ、誰だっ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、慌てて振り返るベル星人。
確かな足取りと共に現れたのは、勿論この男・宙マンだ!
ベル星人「げげぇっ、宙マン――ど、どうしてここが判った!?」
宙マン「はっはっはっ、私を誰だと思っているんだね。
プラネット星人の聴力、甘く見てもらっちゃ困るよ!」
宙マン「小賢しい怪音波の超能力で、制空権を奪い取ろうなど……
千歳市民として、そんな無法を許すわけにはいかんのだ!」
ベル星人「えぇい、うるさいうるさい! 踏み潰してやる!」
宙マンめがけて、轟然と迫り来るベル星人の巨体!
宙マン「やむを得ん、やってやる! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
豪快な空中跳躍とともに、ベル星人の前へ敢然と立ちはだかる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
音波怪人ベル星人、怪獣軍団の野望はここが終点だ!」
ズ、ズーンっ!!
ベル星人「リリリリッ、相変わらずカッコつけやがって!」
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
激突、宙マン対ベル星人!
晩秋の山を舞台に、巨大な正邪の死闘が展開される。
ベル星人「リリリリ、おのれ宙マン、このベル星人の手で必ず……!」
宙マン「残念だったな、怪獣軍団は今日もまた返り討ちさ!」
恵まれた体躯を活かし、宙マンめがけて襲いかかるベル星人!
特殊攻撃のみならず、実は格闘戦においても優れた冴えを見せる
ベル星人の長所は、この戦いにおいてもしっかり健在である。
お互いの立ち位置を入れ替えながら、果敢に渡り合う宙マン!
ベル星人の怪力パンチをかいくぐり、受け流し……
相手の隙をついて、猛然と鋭い打撃を的確に叩きこんでいく。
ベル星人「リリリリ……勝った気になるなよ!」
「ぐ、ぐあぁぁぁぁ……っ!?」
リリリリリリ……!
宙マンの脳波と肉体に、容赦ない過負荷を与えるベル怪音波!
なまじ地球人以上の鋭敏な聴覚を持っていることが、ここで災いし
今、宙マンの味わっている苦痛は並大抵のものではない。
そして、遂に――
ズ、ズーンっ!
イフ「わははは!
そうだ、それでよいのだ、素晴らしいぞベル星人!
邪魔だてする宙マンめを、今度こそ捻り潰してしまえ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ベル星人「リリリリ……今度こそ、怪獣軍団の勝利だぜ!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
「でりゃぁああーっ! 宙マン・ショット!」
気合と共に放つ不可視の衝撃波!
宙マン・ショットが炸裂し、星人の動きが鈍ったところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ベル星人を直撃!!
ベル星人「リリリリ……こ、こんなのナイジェリアぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぐぬぬ……おのれ宙マン、よくもワシらの邪魔立てを!
だが、次はないぞ!
よいか、宙マンよ覚えておれ……覚えておれ~っ!!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、ベル星人の恐るべき侵略計画は潰え去り
千歳の山々には、再び穏やかな平穏が戻ってきたのであった。
そして、ひとつの戦いを終えた宙マンには……
愛する街・千歳市の平和と人々の笑顔、ファミリーとの日常と言う
何物にも代えられない報酬が与えられたのであった。
ビーコン「うほっ! 何スかコレ!?」
落合さん「うふふ、落合特製の生パスタですわ~。
乾麺とはまた違う、もちもちの歯ごたえと味わいの深さは
一度味わったら病み付きですわよっ(にっこり)」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃん早く食べたいの~」
落合さん「えぇ、みんなで揃って頂きましょう
。 ……お殿様がお戻りになってから、ね!」
ああ、木枯らしが身に沁みる中……
今日も本当に有難う、宙マン!
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?