地域のため、ご近所のため、今日も頑張る我らのヒーロー。
おお、耳を澄ませば今日もまた聞こえてくるはずだ――
悪党相手に死闘を繰り広げる、宙マンの頼もしい戦いの雄叫びが。
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ササヒラーを直撃!!
やったぞ宙マン、大勝利!
かくてまたまた、怪獣軍団の野望は水泡に帰すはめに。
怪獣魔王・イフにとって、これが面白かろうはずもなく……。
と言うわけでこちら、暗黒星雲の怪獣軍団・本拠地。
案の定、魔王の怒りが沸点を越えて煮えたぎっていた。
イフ「うむむむっ、毎度毎度にっくき奴、宙マンめが……
これでよいのか、怪獣どもよ!」
イフ「……いいや、断じてよくない。良い筈がなかろう!?
地球人どもに、ワシらの威力を見せつける者はいないのか……
宙マンを、ギャフンと言わせてやろうと言う者はいないのか!」
「ガハハハッ、だったらよォ……
俺がひと肌脱ぐしかねぇやなぁ、叔父貴!?」
どこか嘲るような怒号とともに、ずいっと前に進み出てきたのは……
怪獣軍団の幹部候補生「ダークネスファイブ」でも屈指の武闘派、
イフ「おおっ、ヴィラニアスよ、やってくれるか!?」
ヴィラニアス「(頷き)お気楽極楽な、あの連中のこった……
ササヒラーを倒して、すっかり安心して気が緩んでるはずさ。
そこへすかさず、俺の送り込んだ新手の刺客が……!」
イフ「うむ、確かにな。
……見ておれ宙マン、すぐに吠え面かかせてやるわ!」
おお、またしても……
怪獣軍団の新たなる魔手が、地球に向けて迫るのだ。
危うし北海道、危うし宙マン!
と、ひとまずそれはそれとして……。
こちらは毎度お馴染みの舞台、北海道千歳市。
これまたお馴染み、宙マンファミリー。
先ほどまで大暴れしていた宇宙怪人ササヒラーを見事にやっつけ
まずは一安心、というところであった。
宙マン「やぁやぁ、お待たせ、お待たせ!」
落合さん「お疲れ様でした、お殿様!」
ビーコン「やー、さっすがアニキ、今日もお見事っした!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~」
宙マン「はっはっはっ、みんなが応援してくれたおかげだよ。
と、それはさておき――」
宙マン「一戦交えたら、例によってお腹がすいてきちゃったな」
落合さん「あァ、それは確かに!
時間も頃合いですし、どこかのお店でランチと参りましょうか――
お殿様的には食べたいもの、何かございます?」
宙マン「う~ん……こういう時は、やっぱり肉が良いねぇ。
よく焼けたステーキにかぶりついて、ざっくりとした歯ごたえと
じゅわりと口の中に溢れ出る肉汁を……」
……と、その時である!
ピグモン「(一方を見て)……あっ!」
ビーコン「へっ?」
落合さん「どうなさいましたの、ピグモンちゃん!?」
嗅覚に優れ、勘の鋭い友好珍獣。
そんなピグモンが、いち早く察知した只ならぬ気配は……
虚空に走った閃光とともに、すぐさま具体的な恐怖の形となって
我々人類の前に立ちあらわれた!
「ギャルウゥゥ~ッ!!」
ビーコン「ずげっ! か、怪獣っス!」
落合さん「……いえ、私の記憶が確かなら、あれは――」
宙マン「(頷く)あれもまた、れっきとした宇宙人だったはずだ」
宙マン「そう、悪名高い宇宙の通り魔……
暗闇宇宙人・カーリー星人!」
カーリー星人「ギャルル~、嬉しいねぇ、この俺をご存知とは!
いかにも俺は、全ての物を当たって砕くカーリー星人……
今は暗黒星雲で、怪獣軍団の世話になってるって寸法よ!」
落合さん「そのカーリー星人さんが、どうして……」
ビーコン「しかも、戦いが済んだばっかのこのタイミングで!」
カーリー星人「ギャルル~、イヤだろう、うんざりするだろう!?
……おうよ、それが狙いさ!」
ビーコン「っがー、故意の当たり屋っスか、アンタ!」
落合さん「……端的に申し上げて、超最悪ですわね!」
ピグモン「えう~、せっかく平和になったと思ったのに~」
宙マン「……うぬっ!」
ヴィラニアス「ガハハハッ、よーし、よしよし!
聞いたかィ叔父貴、宙マンたちはもううんざりだとさ――
まずはこの勝負、俺達の一点先取だぜ!」
イフ「うむっ、見事じゃ!
さぁカーリー星人よ、ここから更に押して押しまくれ。
お前の突進戦法で、千歳の街を徹底的に破壊せよ!」
カーリー星人「ギャルル~、やらせてもらいますぜェ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するカーリー星人!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて右往左往、逃げ惑う人々。
落合さん「あぁもう、次から次に……何てことでしょう!?」
ビーコン「く~っ、すきっ腹には堪える全力疾走っス!」
ピグモン「きゃあぁぁんっ、おっかないの~!」
カーリー星人の出現により、たちまち大パニックの千歳市!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭たちが、最新鋭の戦闘機でスクランブル!
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
ピグモン「防衛隊のおじさんたち、しっかりなの~!」
落合さん「今度こそは……いろいろ、お願いしますわね!?」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
高火力のロケット弾が、矢継ぎ早やに叩きこまれる――
だが、戦闘機隊の奮戦にも、全く動じる様子を見せない星人。
カーリー星人「ギャルル~っ、お呼びじゃねェよ、お邪魔虫っ!」
「……ど、どひゃあぁぁ~っ!?」
星人の両肩の角から迸る、恐怖の破壊光線!
その直撃を受け、一機、また一機と撃墜されていく戦闘機。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
ビーコン「毎度のことながら、何つーか……」
落合さん「……いえ、あの星人さんが強すぎるからいけないんですわ!」
と、人々が口々に嘆いたり、ボヤいたりしている間にも。
傍若無人な星人大暴れのテンションは、今や最高潮に達していた!
カーリー星人「ギャルル~っ、突撃、突撃、また突撃!
この俺の突撃に勝てる者、全宇宙にナ~シっ!」
ビーコン「どひ~っ、完全にチョーシ乗ってるっスよ!」
落合さん「ですが、このままでは本当に千歳が……」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、カーリー星人の前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
宇宙の通り魔め、これ以上は好きにさせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うおお! 出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「お殿様、本日二度目の巨大化も素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
カーリー星人「ギャルル~ンっ、潰されに出てきたかよ、宙マン!」
宙マン「ああ、出てきたともさ。
……ただし、潰れるのはそちらの方だがね!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
カーリー星人「面白ェ、だったら試してみるかァ!?」
宙マン「どこからでも来い、カーリー星人!」
真っ向激突、宙マン対カーリー星人!
人々が見守る中、今日もまたまたスーパーバトルの幕が開く。
破壊そのものを自らの存在意義とするかのような、昏い情熱……
持ち前の堅牢な皮膚と強靭な四肢、そして両肩の二本角を武器に
猛然と宙マンめがけて襲いかかってくるカーリー星人。
しかし宙マンも、洗練された格闘技がますます冴え渡り……
カーリー星人の荒々しい猛攻に臆さず、一歩も引かない。
幾度となく響き渡る打撃音、ヒートアップしていくバトル!
宙マン「そぉれっ、こいつを受けてみろ!」
軽快なステップとともに、鞭のような回し蹴り!
宙マンの華麗なキック技に、さしもの暗闇宇宙人もよろめく。
宙マン「どうだカーリー星人、思い知ったか!」
カーリー星人「ギャルルッ……勝負は、ここからだ~ッ!」
ドッスゥゥ~ンっ!
出た! カーリー星人最大の得意技……
肩の二本角をふりかざし、幾多の敵を「潰して」きた突進戦法が
宙マンの巨体をも軽々と吹っ飛ばしてしまう!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
落合さん「(驚愕)……お、お殿様っ!?」
ビーコン「あの攻撃はヤバイっスよ、シャレんなんないっス!」
ピグモン「はわわ……宙マン、まけないでなの~!」
ヴィラニアス「ガーッハハハハ、いいぜ、いいぜ、カーリー星人!」
イフ「そのまま一気に、宙マンを叩き潰してしまえ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
カーリー星人「魔王様直々のリクエストだ、悪く思うなよ――
ギャルル~っ、死んでもらうぜ、宙マぁン!」
「なんの、これしき……やられて、たまるかっ!」
宙マン、パワー全開!
腹筋のバネを使って勢いよく跳ね起きるや、星人の破壊光線を
得意の回転戦法でひらり、ひらりと躱していく。
カーリー星人「ぐ、ぐぬぬっ、ちょこまかしやがって!」
頭に血が上り、めちゃくちゃに光線を乱射するカーリー星人。
その恐怖の猛攻を、宙マンはジャンプで回避して大空へ。
見よ、オリンピック選手もかくやの空中大回転!
突進してきたカーリー星人の頭上をも、軽々と飛び越えてみせ
ビルの壁面を蹴るやいなや、その反動を利用して再び空中へ!
カーリー星人「(驚愕)ンなっ!?」
宙マン「くらえ! 宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、星人の眉間で激しい爆発が起こる。
カーリー星人「(よろめいて)や、野郎っ、よくも俺の急所を……」
宙マン「お次はこれだ、カーリー星人!」
宙マン「ダァァーッ! 宙マン・回転フルキック!」
高速回転の勢いを加え、両足で蹴り込む正義のキック!
鋭い足先を食らって、星人がブッ倒れたところへ――
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、カーリー星人を唐竹割りに切り裂いた。
カーリー星人「と、突撃の……その先が、見たかったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりましたわ、流石お殿様です!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなくちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれ、またしても……またしても宙マンめが!
だが、怪獣軍団にはまだまだ猛者どもが揃っておるわ……
今に見ておれ、思い知らせてくれる!」
……という、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
怪獣軍団の恐怖の使者、カーリー星人を撃退し……
かくてまたまた、見事に北海道の平和を守りぬいた宙マン。
そんな彼を讃えるように、降り注ぐ陽の光もひときわ眩しかった。
落合さん「お殿様、連戦お疲れ様でした!」
ビーコン「ホント、こういう時に頼れるのはアニキだけっスよ~」
宙マン「いやぁ、頼ってもらえるのは嬉しいんだけど……
もう、腹ペコの方が我慢の限界でねぇ。
このままだと、お腹の虫が揃って暴動を起こしそうだよ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお腹ぺこぺこなの~♪」
落合さん「承知しましたわ、すぐにどこかのお店へ参りましょう!
えぇと、お肉が安くて美味しいところと言えば……」
ビーコン「いえっふ~、はいはい、ハ~イっ!
オイラ知ってるっスよ、どんなブランド牛にも負けない旨い肉。
ヒヒヒ、しかもプライスレスなのが嬉しいじゃないっスか~☆」
むにゅんっ、ふにふにっ
落合さん「(悲鳴)……きゃ、きゃああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、セクハラの代償は高くつくと知りなさいッ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、それじゃ皆さん、また次回っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
怪獣軍団から送りこまれる刺客たち……
どいつも、こいつも、曲者揃い。
負けるな宙マン、勇気と闘志で打ち砕け!