遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続ける、恐怖の怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへと向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの故郷へ向けて伸びるのだ!
イフ「うぐぐぐっ、それにつけても憎むべきは宙マンよ。
……奴さえおらなんだら、ワシらはとっくに地球を征服し
あの美しく、青い星の支配者として君臨できていたものを!」
イフ「今度こそ、地球を我が怪獣軍団のものにする……
その輝かしい第一歩を示す、悪の勇者はいないのか!?」
「だったら……
また今日も俺に任せてもらうぜ、叔父貴!」
どこか嘲るような怒号とともに、ずいっと前に進み出てきたのは……
怪獣軍団の幹部候補生「ダークネスファイブ」でも屈指の武闘派、
イフ「おおっ、ヴィラニアスか、その口ぶりは既に……」
ヴィラニアス「ああ、もうとっくに動き出してるぜ、次の怪獣は。
あの悪名高い光のウイルス、“カオスヘッダー”の寄生を
全く受け付けないどころか、ペロリと平らげちまう……」
ヴィラニアス「そのふてぶてしさこそ、まさに怪獣の鑑ってもんさね。
あぁ、今度と言う今度こそは、宙マンだって勝てやしねぇ!」
イフ「おおっ、そう聞くと期待が増してくるのぉ」
ヴィラニアス「(頷き)ガハハハッ、まァ見ててくれや!」
イフ「よかろう、ワシも何だかワクワクしてきたぞ!」
ヴィラニアス「ガハハハハハッ……さぁ、頼んだぞ怪獣マザルガス。
カオスヘッダーさえ寄せ付けない、悪の生命力の凄まじさを
今こそ地球の奴らに見せつけてやれィ!」
おお、何ということであろう?
新たなる地球の危機は、もうすぐそこまで迫りつつあるのか!
が、ひとまずそれはそれとして。
11月も早や下旬となり、今年もあと残り一か月ちょっと。
そんなある日の北海道千歳市、毎度お馴染みの「宙マンハウス」。
落合さん「……洗い物と掃除機がけも、ひとまず終了、っと。
ふぅー、ここ数日で急激に冷え込んできましたわね!」
ピグモン「はうはう~、秋から冬へ、あっという間なの~」
宙マン「気を抜いていると、すぐに雪が積もってしまうからね。
今のうちに、備えは万全にしておかないと!」
落合さん「はい、お殿様、その辺りは抜かりなく既に!」
ビーコン「チチチ、全然ダメダメっスよ、落合さん!」
落合さん「んーまっ、失敬な!
当家のメイドたる私の仕事、そのどこに落ち度があると!?」
ビーコン「ヒヒヒ、毎日の家事も勿論なんスけどねぇ……
もっと大事なコト忘れちゃだめっスよ、落合さん。
そう、オイラとの間に子を設けると言う神聖な義務が……」
げ し っ !
落合さん「ねーい、タチの悪い冗談をっ!」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ、超本気だったんスけど……」
落合さん「っがー、なお酷いですっ!!(怒)」
宙マン「(苦笑)……たっはっはっはっ」
そんな軽口の応酬も、平和な日常を彩るアクセント。
だが、そんな穏やかな時間を破るかのように……!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ピグモン「きゃ、きゃああああんっ、なの~!」
落合さん「こ、これはまた……
例によって例のごとく、いつも通りの展開ですかしら!?(汗)」
ビーコン「……な~んかネェ、猛烈にそういう予感がするっスよ!(汗)」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をも易々と引き裂いて
地の底から今また、姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「クァルルルぅぅ~っ!!」
ピグモン「ああっ、おっきな怪獣が出てきたの!」
宙マン「う~ん、いろいろ慌ただしい冬場とは言え……」
ビーコン「出来ればね~、こーいうワルモン系の怪獣には
ヤンチャは控えて大人しくしててもらいたいっス!(汗)」
マザルガス「クァルルル、残念ながら、そうはいかんでガス!」
怪獣軍団の一員、天敵怪獣マザルガス。
彼は「冬眠休暇」に入る前の腹ごしらえとして、自らの主食である
光のウィルス・カオスヘッダーを、千歳市の地底でたらふく食べて
その全身にしっかり滋養を蓄えていたのである。
マザルガス「クァルル~、これでもう、あとは寝るだけ――
……といきたいけど、それじゃ読者がつまらないでガしょ!?」
マザルガス「食うもん食って、エネルギーも蓄えたことだし……
寝る前の腹ごなしに、軽く暴れてみようかな~、って!
これもまた、俺の旺盛なサービス精神でガス!」
ビーコン「どひ~っ、そんなの全然ノーサンキューっスよ!(汗)」
落合さん「全くもう、これだから怪獣軍団の方たちは……!」
イフ「わははは! やれ、大いに暴れるのだマザルガス!
ここでのお前の働きが、年末賞与の査定を大いに芳しくするぞ!」
マザルガス「っか~、さすが魔王様、そうこなくっちゃでガス!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するマザルガス!
迫り来る巨体を前に、右往左往して逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「ひぃふぅ、師走前なのに走らされちまったっス~!」
落合さん「それも、とことん非生産的で空しい運動ですわ!」
ピグモン「えう~、だけどとにかく逃げなきゃなの~!」
11月下旬、今日も今日とて千歳の大ピンチ!
だが、人類もただ手をこまねいている訳ではない――
マザルガスの阻むべく、航空防衛隊の空の精鋭が、千歳基地から
直ちにスクランブルをかけたのであった。
ピグモン「あ、防衛隊が来てくれたの!」
ビーコン「頑張ってくれっス、頼むっスよ~!」
落合さん「どうかこれ以上、悪い怪獣の好きにさせないで下さいませ!」
「我々の底力、見せてやれ――全機、攻撃開始っ!」
雨あられとばかりに叩きこまれるロケット弾!
だが、マザルガスはそれらの猛攻撃をものともしない。
マザルガス「クァルルル、雑魚はお呼びじゃないでガスよ!」
「……う、うわぁぁぁっ!?」
マザルガスが口から吐き出す破壊光弾!
その直撃を受け、戦闘機は一機、また一機と撃墜されていく。
マザルガス「クァルル~、どんなもんでガス!」
落合さん「あぁ、いけませんわ、千歳の大ピンチです!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うマザルガスの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣よ、悪ふざけはそのくらいにしておくがいい!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ! アニキの十八番が出たっスよ!」
落合さん「ああ、やはり素敵ですわ、お殿様っ!(うっとり)」
ピグモン「宙マン、よろしくおねがいなの~!」
マザルガス「クァルル~、やっぱり出てきたでガスね!
お前を倒して、穏やかな冬眠生活に入るでガスよ!」
宙マン「おぉっと、そう上手くいくかな……!?」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
宙マン「平和を乱す無法者め、私が打ち砕いてやる!」
マザルガス「クァルルル、勝負でガス!」
激突、宙マン対マザルガス!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者がしのぎを削る。
長い冬眠に入る前の腹ごしらえとして、大好物のカオスヘッダーを
心ゆくまで堪能して、全身に滋養とパワーとをたっぷりと蓄えた
今のマザルガスは強い、実にパワフル!
だが、そんな怪獣の猛攻に対して……
ただただ押されっぱなしでいるような、我らがヒーローではない。
宙マン「そぉれっ、これでもくらえ!」
宙マン得意の、水平空手チョップがヒット!
胸板に痛烈な一撃を受けて、さしものマザルガスも後退。
宙マン「どうだ、参ったか!?」
マザルガス「クァルルル……ナメたらいかんでガスよ!」
怒り、破壊光弾を吐き出すマザルガス!
だが宙マンは、それらの一閃をジャンプでひらりとかわす!
マザルガス「ムムッ!」
宙マン「マザルガス、正義のキックを受けてみろ!」
マザルガス「クァルル~、ナメんなって言ったはずでガスよ!?」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
空中でキック技の態勢に入った宙マンを、光弾が急襲!
その威力に、バランスを崩して墜落してしまったヒーローである。
ビーコン「どひ~っ……あ、アニキ!?」
落合さん「なかなか味なことをなさいますわね、あの怪獣さん……」
ピグモン「はわわ、感心してる場合じゃないの~!(汗)」
宙マン「(苦悶)く、くそぉっ……!」
マザルガス「クァルル~、一気にとどめでガスよ!」
「なんの、負けるか!
デリャァァーっ! 宙マン・ショット!」
宙マンの気合とともに、不可視の衝撃波が飛ぶ!
その直撃を受け、マザルガスが吹っ飛んだ隙を逃さず――
今、宙マンは伝説のスーパー剣を抜き放った!
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー旋空斬り!!」
シュバァァァッ!
スーパー剣を大きく振るい……
刀身に蓄積したエネルギーを、鋭い光刃に変えて放つ大技!
宙マンの「旋空斬り」が、マザルガスを横一文字に切り裂いた。
マザルガス「クァルル、最悪の寝つきでガスぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~! 今日もアニキがやってくれたっスよぉ!」
落合さん「お見事ですわ、やはりお殿様です!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
覚えておれよ、この次こそは必ずお前に赤っ恥をかかせてやる!
枕を高くして寝られるのも、今のうちだけだぞ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
怪獣マザルガスは倒され、千歳に平和が蘇ったのであった。
宙マン「やぁ、みんな、どうもお待たせ!」
落合さん「ああ、お殿様、今日もお疲れ様でした!」
ビーコン「ヒヒヒ、どうにかこうにか一件落着したことっスし……」
ピグモン「おなかもすいたし、早めの晩ごはんなの~♪」
宙マン「おおっ、ナイスな提案だね、ピグモン!
今日のおかずは何かな、落合さん?」
落合さん「はい、今日のメインは豚ばら肉の角煮でございます♪」
宙マン「おおっ、いいじゃないか、私の大好物だよ!」
落合さん「昨夜からじっくり、コトコト煮込んでおりますので……
口の中で、ほろりとほぐれるほど柔らかくなっておりますわ」
ピグモン「はうはう~、食べるのが楽しみなの~♪」
ビーコン「その柔らかさはまるで、落合さんの熟れた肉体……
とりわけこの、無駄に豊満なオッパイちゃんのように!
ヒヒヒ、素晴らしいっスねぇ、サイコーっスよ!」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、今日も今日とて一言多いですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、おあとがよろしいようでぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
とか何とか言いながらも、この後……
落合さんの御手製・豚の角煮丼のとろける旨さに舌鼓を打ち、
舌もココロも大満足の宙マンファミリーであったとさ。
北海道の空の玄関、千歳市に……
今日も輝く、正義の星ひとつ。
次回も頼むぞ、我らが宙マン!