春・夏・秋・冬、季節は巡り……
あっという間に明日で12月、今年も残りもうあと僅か。
かくていよいよ、ご当地・千歳にも本格的な冬がやってきた。
そんな寒い日の午後、ご存じ「宙マンハウス」でも……。
落合さん「はぁ……今年も残り、もうあとわずか。
ついこの間、お正月をお祝いしたばかりのような気がしますのに……
ほんと、あっという間ですわね~(しみじみ)」
ビーコン「ヒヒヒ、気ぃつけた方がいいっスよ、落合さん。
時間の経つのが早いとか、そういう事をしみじみ口走るようになったら
もうそれだけでジジババの仲間入りした証拠っスからね!」
落合さん「んーまっ、失敬な! うら若き乙女の私を捕まえて……。
まぁ、ビーコンさんみたいに毎日を自堕落に生きてらっしゃれば
人生を鑑みての感慨なんてどこ吹く風なんでしょうけれどね?」
ビーコン「ヒヒヒ、そりゃもうね!
オイラの瞳は常に前向き、×××は上向き、明るい未来しかないんスよ!」
落合さん「(呆れて)……褒めてませんし、お下品過ぎですっ!」
宙マン「はっはっはっ、まぁまぁ二人とも、その辺で……ね?」
ピグモン「えう~、けんかはだめなの~」
みくるん「うふふっ、それにしても……
あと一か月で今年が終わりなんて、まだピンと来ませんね~。
平和で、のんびりした、今日みたいに何もない一日だったりすると……」
ながもん「ずっと、このまま……まったり、お願い……したい」
落合さん「えぇ、私も同感ですわ。
……そろそろおやつの時間ですし、何かお茶とお菓子を用意しましょうか?」
ビーコン「うひょひょひょ、お菓子!
そう言や確か、貰いもんのドラ焼きがまだあったっスよね?」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもドラ焼き大好きなの~」
落合さん「(苦笑)あらあら、うふふ……
そう言うところだけは、感心するほど記憶力抜群なんですから♪」
そう言いつつ、落合さんが厨房へ向かおうとしたその時。
異変は、まさにその時起こった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
みくるん「きゃ、きゃああああっ!」
宙マン「地震だ、かなりデカいな――」
ビーコン「ひぇぇぇ、しかも並大抵の揺れ方じゃないっスよ!」
落合さん「(頷き)と言うことは、今回もまた……!?」
大地を引き裂き、山を崩す、凄まじい大地震。
そしてまた――やっぱり今日も、千歳の街に現れた恐怖の大怪獣。
今回の悪の使者は……こいつだ!
「ピョゴゴゴォォ~ンっ!!」
みくるん「ああっ! やっぱりですぅ、今回もですぅ!」
ながもん「あれは……ううん……初めてみる、怪獣かも」
ビーコン「おりょ、怪獣博士のながもんちゃんのデータバンクにもないっスか!
ってことはピチピチの新キャラか、それともよっぽどマイナーなのか……」
ピグモン「はわわ、何でもいいけどピグちゃんおっかないの~!(震え)」
宙マン「突然そんな騒々しい現れ方をして……みんながびっくりするじゃないかッ。
そもそも、君は一体どこの何者だね!?」
「ピョゴゴゴォォ~ンっ、知らざぁ言って聞かせやしょう!
俺の名はヒムラー……怪獣軍団の一員、毒ガス怪獣ヒムラー様だィ!」
暗黒星雲の支配者、怪獣軍団を率いる怪獣魔王・イフの命を受け……
今、千歳の街にその恐るべき姿を現した毒ガス怪獣ヒムラー!
彼は怪獣の中でも極めて資料が少なく、一部文献の記述のみにとどまる
所謂「名古屋出身組」の一角を成す希少種の怪獣なのである。
そんな浅はかな考えしかもたない連中に、俺様の大暴れっぷりを見せつけて
怪獣ヒムラーここにあり、と全宇宙に証明してやろうってワケさァ!」
ビーコン「うげっ! そ、そりゃまぁ、確かに気持ちは分かるっスけど……」
落合さん「そこから起こそうと言う行動は、ハタ迷惑極まりますわねぇ!(汗)」
宙マン「ううむっ……何て奴だ!」
イフ「わはは! さぁ行け、思い切り暴れるのだヒムラーよ!
長い間不当に虐げられ、嘲笑に甘んじてきたお前の無念……
破壊のパワーに変えて、今こそ地球の者どもに叩きつけてやるのだ!」
ヒムラー「ピョゴゴゴォォ~ンっ、やりますよ魔王様! やりますともさ!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するヒムラー!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
と、そこへ、千歳市上空に響き渡るジェットの轟音。
千歳基地の精鋭たちが、最新鋭戦闘機でスクランブルをかけたのだ。
ながもん「おおっ……いい、ところで……来てくれた」
ビーコン「いつもタイミングはばっちりなんスよねぇ、タイミングは!」
落合さん「あとは戦果の方も、それに見合えば言う事なしなのですけど……」
「(ムカッ)……チクショー、なんか一般市民に好き勝手言われちゃってるぞ!?
よーし、こうなったら全機、総力を挙げて怪獣への攻撃開始!
我々航空防衛隊の力を、千歳市民の皆さんに見せてやろうじゃないか!」
落合さん「……あらやだ、聞こえてましたの!?(汗)」
ビーコン「う~ん、なんたる地獄耳!(汗)」
戦闘機隊、ヒムラーめがけて一斉攻撃を開始!
無数のロケット弾が、凄まじい勢いで怪獣めがけて叩きこまれるが……
ヒムラーは傷つくどころか、それに対して怯む様子さえも見せない。
ヒムラー「ピョゴゴゴォォ~ンっ、これでもくらえっ!」
上空めがけて、口から黄色い毒ガスを吐き出すヒムラー!
そのガスを浴びて、戦闘機の精密機器が瞬時に狂い、ショートする。
「う、うわーっ!?」
おお、恐るべきは機械の計器を狂わすヒムラーの黄色いガス!
戦闘機隊はその威力にやられ、一機、また一機と撃墜されていく。
みくるん「ああっ、やられちゃったですぅ!」
ながもん「(ボソッと)機械を狂わす、毒ガス……」
ビーコン「どひ~っ、オイラのPCだけは見逃して欲しいっス~!
色々とエロエロで貴重なデータが盛り沢山なんスよ~!」
落合さん「(呆れ)……心底どうでもいい情報ですわねっ!」
落合さん「とは言え、まさしく文明の大敵……
千歳どころか、全人類の大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ヒムラーの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣ヒムラー、それ以上の乱暴狼藉は許すわけにいかないな!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「おおっ、待ってたっスよアニキ、あんたが大将っ!」
落合さん「今となってはもう、お殿様のお力だけが頼みの綱ですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ヒムラー「ピョゴゴゴォォ~ンっ、出たな、お前が噂の宙マンか!」
宙マン「そうとも、千歳を愛し、千歳を守る……
ただそれだけの、どこにでもいる何の変哲もない平凡な一般市民さ!」
ヒムラー「……チキショー、いちいちツッコまねぇぞっ!?(汗)」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える我らが宙マン。
ヒムラー「ピョゴゴゴォォ~ンっ、ヒムラー様が叩きのめしてやるぜィ!」
宙マン「なんの、勝つのはこの私だ!」
真っ向激突、宙マン対ヒムラー!
落合さんたちがハラハラと見守る中、両者の対決は早くもヒートアップ!
野生のパワーを全開に、荒々しい突進戦法で向かってくるヒムラー。
それを左右にいなし、時に両腕のパワーで抑えこみながら……
宙マンもまた、冷静に反撃のチャンスを伺う。
怪獣に負けじと、宙マン・パンチの連打!
その反撃に、ヒムラーも思わずじりじりっと後退を余儀なくされる。
宙マン「はっはっはっ、どうだヒムラー、参ったか!
……機械を狂わすお前のガス、生身の私には通じないぞ!」
ヒムラー「ピョゴゴゴォォ~ンっ……だったら、試してみるかィ!?」
宙マンめがけて、勢いよく黄色いガスを吐き出すヒムラー!
宙マン「(苦悶)ぐ、うううっ!?」
機械を狂わすヒムラー・ガス、そのもう一つの特徴は臭気。
とにかく……
鼻が曲がってしまいそうほどに、際立って「臭い」のである。
その臭気が宙マンを悶絶させ、瞬間的に体を痺れさせ……!
ズ、ズーンっ!
みくるん「ああっ、宙マンさんが……けほ、けほっ!」
落合さん「私たちの方にまで流れてくるこの臭い……」
ビーコン「たまんないス、マジ鼻がどうにかなっちまうっスよ!(涙目)」
ながもん「……オー・マイ……ガッ」
ピグモン「はわわ、宙マン……臭いだろうけど、がんばってなの~!」
宙マン「(涙目で咳こみ)げほ、ゲホッ……強烈だなぁ!」
ヒムラー「ピョゴゴォォ~ン、気に入ってもらえたみてぇだな。
だったらもう一発、臭いのをお見舞いしてやるぜよ!」
「……いいや、同じ手は二度も食わんよっ!」
ダメ押しとばかりに、ヒムラーが吐きだす黄色いガス。
しかし宙マンは、それをひらりとジャンプでかわして大空へ!
ヒムラー「(驚き)う、うおおっ!?」
宙マン「くらえ! 宙マン・アタックビーム!」
空中高くジャンプし、敵の頭上から撃ちこむ強力破壊光弾……
宙マン・アタックビームが、ヒムラーのボディを直撃!
ヒムラー「(悶絶)あ、あぎゃぎゃぎゃぎゃっ……」
宙マン「ようし、とどめだ!
宙マン・ハイボルテージ・ウェイブ!!」
全身のエネルギーを、一気に解き放ち叩きつける荒技。
ハイボルテージ・ウェイブが、怪獣の全身で荒れ狂うように炸裂――
その凄まじくも美しい、破壊波動の威力を見よ!
ヒムラー「あ、あぎゃぎゃぎゃぎゃっ……こりゃたまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、宙マンさん、ありがとうですぅ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ながもん「……グッジョヴ」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
いいか、この仕返しは必ずしてやるからな――
次こそは、二度と立ち上がれないほど叩きのめしてくれるわ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
恐るべき毒ガス怪獣ヒムラーは撃退され、千歳の街に平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いやぁ、参った参った、えらい目にあっちゃったよ。
でも、おかげで今日もまた、無事に静かな午後の時間を……」
ビーコン「(その言葉を遮って)……あ、あああ~っ!!」
落合さん「(びっくり)……きゅ、急にどうなさいましたの、ビーコンさん!?」
ビーコン「いやいや、よくぞ聞いてくれましたっス、落合さん――
オイラにもちゃんとあったっスよ、今年やり残すと後悔するってコト。
落合さんとベッドの上で、裸とハダカでくんずほぐれつイチャコラと……」
落合さん「(わなわなと肩を震わせて)……ッ!!」
げ し っ !
落合さん「(激怒)ねーいっ、このエロ怪獣!
そんな下らないコトで、話の腰を折るんじゃありませんっ!!」
ビーコン「どひ~っ、真冬の空っ風が身に沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
危機は去ったが、世に騒動の種は尽きまじ。
さぁて、宙マン……
次は、いったいどんな活躍を見せてくれるかな?