今年ももう、残すところあとわずか……
にも関わらず、悪い怪獣たちは続々と地球へやって来る。
年越し準備の合間をぬって、立ち向かうのは我らが宙マン!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
年越しの準備で忙しい身だ、スパッと片付けさせてもらうッ!」
ナターン星人「ぬわっはっはっ、愚かな!
大見得など切りおって、勝てるつもりで来たらしいな――
だが知るが良い、お前には億に一つの勝機もないのだと!」
かくして今回、開幕早々の一大バトル!
果たして、この巨大戦の決着は……どちらに軍配が上がるであろうか?
ナターン星人「死ね、宙マン……自らの非力を思い知りながらな!」
高らかな豪語ととも、目から破壊光線を放つナターン星人。
だが、その一閃は、宙マン・プロテクションに受け止められ……
次の瞬間、星人めがけてそっくりそのままの威力で反射され
逆に、ナターン星人の腹部へ大ダメージを与えたのであった!
ナターン星人「……こ、こんなのってアリぃぃ~っ!?」
所詮、正義の前には敵たるべくもない。
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、またまた宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「ありがとうございました、お殿様!」
人々の歓声が、ヒーローの勝利を讃える――
師走の陽光を浴び、すっくと立つ巨体は、どこまでも逞しかった。
だが、その一方で面白くないのは、勿論……。
ゾネンゲ博士「だーっ! 全くホントに、ナターン星人のスカポンタンっ!
さんざん大口を叩いておきながら、何と言う失態……!」
イフ「むうっ、なんたることか!
このまま宙マンに負け続けで年を越すことになってみろ……
ワシらにとっては踏んだり蹴ったり、赤っ恥もいいところだぞっ!」
ゾネンゲ博士「ははっ、承知しております、魔王様!
既に第二の怪獣が、行動を開始しておりますれば……。
そやつならばきっと、いえ、必ずや宙マンめをっ!」
イフ「ならばよし……何がなんでも、年内に宙マンを叩きのめしてくれるぞッ!」
などと、年末だと言うのに怪獣魔王が意気あがっているその頃……
お馴染み、千歳の「宙マンハウス」では、今まさに年越し準備の真っ最中。
宇佐美さん「はい、各部屋の照明と火災報知機の点検、終わりましたよー。
どこも異常はなかったですけど、ちょっと一部の部品が古くなってたんで
一応、新しいのに換えておきましたからー」
宙マン「やぁ、ありがとう宇佐美さん。
これで我が家も、安心して新しい年を迎えることが出来ますよ」
ピグモン「宇佐美のおじさん、ありがとうなのー」
落合さん「本当に、宇佐美様の腕のよさにはいつも感謝のしっぱなしですわ。
よろしかったら、ちょっとお茶でも飲んでいかれません?」
宇佐美さん「ははは、有難いんですけどねー、これからまだ
三軒のお宅を回らなきゃいけないんですよー。
……それじゃ宙マンさん、来年もどうぞよろしくっ!」
宙マン「はっはっはっはっ、どうぞよいお年を!」
ピグモン「……宇佐美のおじさん、行っちゃったのー」
ビーコン「年末だってのに、電器屋さんも大変っスね~」
落合さん「いえいえ、忙しいのは私たちだって同じことですわっ。
……新しい年を迎えるに当たって、やるべきことは山積みですわよっ!」
ビーコン「おおう、そうだったっス、そうだったっスねぇ!
年明け前に、オイラにはやらにゃならねぇ事があったっス!
DSを開いて、寧々さんとのラブラブ・コミュニケーションを……♪」
げ し っ !
落合さん「だーっ、全くもう、ビーコンさんったらっ!
この師走の忙しいさなかに、な~にが今更『ラブプラス』ですかっ!」
落合さん「家の手伝いもなさらないで、一昔前のゲームに現を抜かしてばっかり……
そんな事なら、いっそニンテンドーDSなんて捨てちゃいましょうか!?」
ビーコン「ちょ、それはダメっス、断じてダメっス!
んな事されたら寧々さんも死ぬし、オイラも死ぬっス!
一挙に二人分の命を奪う、これは凶悪無比な殺人罪っスよ!」
落合さん「……ちょ、あなた、どこまでのめりこんでるんですの!?」
ビーコン「いやいや~、案外珍しくないっスよ、オイラみたいなケース。
いいゲームってね、いつの時代に触れても良いもんっスよ――
ヒヒヒ、落合さんも『ラブプラス』に触れてみれば判るっス~」
落合さん「結構ですっ! この私には『学園ヘヴン』があるんですから……
……じゃ、なくってっ!(赤面)」
……などという、いつも通りの不毛な口論。
と、そこに絶妙のタイミングで横槍を入れてきたのは……!
ゴ ウ ン ッ !
ビーコン「ど、どひ~っ、ちょっと唐突過ぎないっスかぁ!?(汗)」
落合さん「こちらにも、心の準備と言うものが……!(汗)」
ズゴゴゴグワーンっ!
耳をつんざく大音響とともに、千歳市の上空から猛スピードで飛来し……
一直線に落下、千歳市内の地面に激突して大爆発を起こす赤い球体。
めらめらと燃え盛る、炎の渦の中から立ち上がったのは!?
「ふしゅるるる~っ!!」
ピグモン「はわわわ、な、なんか出てきたの~!(涙目)」
ビーコン「どひ~っ、今回は怪獣軍団・二体めのお出ましっスかぁ!?」
落合さん「(溜息)そんなサービス、誰も求めておりませんのにねぇっ!」
怪獣軍団の一員、異常なまでに巨大化した両腕が特徴の宇宙怪獣オルガ。
赤い光球に乗ってやって来た彼の目的、それは――
落合さん「(おずおずと)……「田中製餡」さんのこしあんときな粉を買いに。
……ですかしら?」
オルガ「っがー、そんなわけあるか、アホンダラっ!!
宇宙怪獣が、あんな風に地球へ来る目的なんざただひとつ……
今も昔も、地球侵略に決まってるだろがっ!」
ビーコン「ちょ、落合さぁん、このタイミングでそのボケは自殺行為っスよ!?」
落合さん「うう、せめて平和への一縷の望みを託したかったんですけど……(汗)」
オルガ「この俺が来たからには、千歳は怪獣軍団のものになったも同然だ。
この身に秘められたミレニアム宇宙パワーの威力、今こそ見せてやる――
そして来年こそ、俺たち怪獣軍団の当たり年だぁ! なっ!?」
ピグモン「はわわ、「なっ」って言われても、ピグちゃん困るの~」
落合さん「まぁまぁ、何てことでしょう……この忙しい時に!」
ビーコン「そうっスよ、これから『ラブプラス』に浸ろうって時に!」
オルガ「……って、そっちかいっ!(呆)」
イフ「行けぃ、怪獣オルガよ、地球の上を大掃除しろ!
地球人どもの街を滅ぼし、にっくき宙マンを倒して……
来たる新年を、ワシらが晴れやかな気持ちで迎えられるようにな!」
オルガ「ふしゅるるる~、お任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するオルガ!
迫り来る異形の巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
オルガ「ふしゅるるる~、何が文明だ、下等動物の分際で!」
唸りをあげ、千歳市の上に叩きつけられるオルガの巨腕!
その圧倒的質量とパワーの前に、次々に破壊されていく建物や車両。
ビーコン「どひ~っ、なんて馬鹿力っスかぁ、あの怪獣!?(汗)」
落合さん「あそこまで無駄に大きいと、腕そのものが立派な凶器ですわっ」
ピグモン「(空の一方を指し)あっ、防衛隊が来てくれたの!」
傍若無人なオルガを阻むべく、直ちに出動する千歳基地の航空防衛隊。
最新鋭のヘリジェットが、二機編隊で怪獣迎撃作戦にあたる。
「さぁ、いっちょやるぞ! 攻撃、開始っ!」
オルガめがけて閃く、ヘリジェット前部のレーザー砲!
だが、度重なる直撃や爆風、衝撃も、オルガの動きを鈍らせることが出来ない。
オルガ「ふしゅるるる~、小賢しいんだってーの、地球人風情が!」
オルガの毒づきとともに、その左肩へ急速に収束していくエネルギー!
そして、その波動の高まりが頂点に達した瞬間……
上空のヘリジェットめがけて、波動ビーム砲の一閃が勢いよく解き放たれた!
「ど、どわぁぁぁぁ……っ!!」
恐怖、宇宙怪獣の波動ビーム砲!
その威力の前に、一機、また一機と撃墜されていくヘリジェット。
宙マン「(息を呑み)むむっ……何て言う威力だ!」
落合さん「さながらあの怪獣自体が、鉄壁の要塞そのものですわ――」
ビーコン「いや、自分の足で動き回る分、下手な要塞よりよっぽど厄介っス!」
爆発! 炎上!
人々の恐怖と悲鳴を嘲笑うかのように、我が物顔で進撃するオルガ。
おお、今や千歳は絶体絶命の大ピンチだ!
落合さん「いけません、このままでは……
本当に千歳の街が、新年も迎えぬまま最後の日を迎えてしまいますわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うオルガの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
宇宙怪獣だろうが、地底怪獣だろうが、平和を乱す者に対しては……
たとえそれがどこの誰だろうと、私は断固として戦うぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ピグモン「はうはう~、宙マンの「コレ」が出たらもう安心なの~♪」
ビーコン「もうこうなっちまったら、頼みの綱はアニキだけっスよ!」
落合さん「よろしくお願い致しますわね~、お殿様!」
宙マン「(頷き)ああ、やるとも……見ていてくれ、みんな!」
オルガ「(嘲笑)ふしゅるるる、ドアホが!
運動会じゃあるまいし、観客席の応援で張り切ってる場合かよ!」
宇宙怪獣の毒舌などは意にも介さず……
あくまで自分のペースを保ちつつ、優雅ささえ感じさせるファイティングポーズで
オルガに対して敢然と身構える宙マン。
宙マン「(ニヤリ)羨ましいなら羨ましいと、そう言ってくれて良いんだぞ?」
オルガ「(ムカッ)ふしゅるるる、ナメやがって! ブチのめしてやる!!」
宙マンの挑発に逆上し、猛然と襲いかかってくるオルガ!
それに対して怯むことなく、あくまで冷静に受けて立つのは我らがヒーロー。
大激突、宙マン対オルガ!
落合さん達が見守る中、巨人と巨獣の凄まじい死闘が北の大地を揺るがす。
オルガの武器である巨腕が、唸りをあげて宙マンに叩きつけられてくる!
その恐るべき連打を受け流し、かいくぐりながら、宙マンもオルガの懐に飛びこみ
チョップの連打を叩きこんでいく。
そして……ここで遂に、宙マンのドロップキックが出た!
ダイナミックなその一撃に、さしものオルガもよろめき、怯まされる。
宙マン「どうだオルガよ、思い知ったか!」
オルガ「ふしゅるる……これを喰らっても、まだそんなクチが訊けるかァ!?」
オルガの左肩から発射される波動ビーム!
その凄まじい威力が爆発を巻き起こし、今度は宙マンを怯ませる。
バクハツ! バクハツ! また爆発!
宙マンを倒すべく、怒り狂って波動ビームを乱射するオルガ。
オルガ「ふしゅるるっ、チョコマカと……だが、この一撃で今度こそ!」
宙マン「なんの!(大ジャンプでかわして)」
宙マン「せいやぁぁーっ! 宙マン・チョップだ!」
降下速度の勢いも加えて、一気呵成に叩きこむ脳天チョップ!
痛烈な一撃を食らい、オルガがたまらずブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、オルガを直撃!!
オルガ「ふしゅるるっ、悔しい……こ、こんなはずじゃなかったのにな~!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりました……お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、アニキの強さは今年も超安定だったっスね!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐ……おのれ! またも、またしても宙マンめが!」
イフ「だが、今に見ておれよ……怪獣軍団の力を見せつけるのはこれからだ!
来年こそは、来年こそは必ずやお前を倒してみせる!
頼んだぞ、我が軍団のつわものどもよ!」
「「「ウォォーッ!!」」」
かくて暗黒星雲にて、怪獣軍団が来年に向けての怪気炎をあげる一方で……
ここ千歳市には、再び平穏な年末の午後が戻ってきていた。
みくるん「宙マンさん、今年も一年お疲れさまでした!」
ながもん「年内、最後まで……かっこ、よかった」
みくるん「悪い怪獣さんと戦ったから、お腹すいてますでしょ~。
うちのおせちのお煮しめ、ちょっと多めに作っちゃったんで……
よかったら、皆さんもどうですかぁ~?」
落合さん「あらあら、よろしいんですの?」
宙マン「はっはっはっはっ、それじゃ遠慮なくご馳走になろうかな」
ピグモン「はうはう~、みくるんちゃんのお料理、楽しみなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、この時期ならではの煮しめもいいんスけどねぇ……
オイラ的にはやっぱ、みくるんちゃん自身を食べちゃいたいっスね~。
きっとガンモドキみたいに、噛みしめるほどにいい味が……♪」
みくるん「ぴっ!?……えーと、あの、その……(困惑)」
ビーコン「だいじょぶ、だいじょぶ、優しくするっスよ~☆」
げ し っ !
落合さん「いえいえ、まずはやっぱり大掃除を済ませちゃいましょう――
まずは我が家の粗大ゴミの始末から、っと!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、せめて萌えるゴミと呼んで欲しいっス~」
宙マン「はっはっはっはっ」
いろいろあり過ぎた2022年も、残りあとわずか――
皆様、どうぞよいお年を!