暗黒星雲の奥深くから、地球を急襲する怪獣軍団!
持ち前の超能力と巨体にものを言わせ、傍若無人の限りを尽くす
悪党どもに立ち向かうのは、もちろん「彼」である。
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の手先め、これ以上は好き勝手にさせないぞ!」
モッグス「ヴぁうぅあぉ~んっ、出やがったな、宙マン。
このモッグス様の濃縮スモッグにかかりゃ、お前なんざ……」
宙マン「おおっと、悪いがこっちが先だ!
くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、モッグスのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだっ!?」
モッグス「どうもこうも……俺にも見せ場ぐらいちょうだいよ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
かくてまたまた、怪獣軍団の野望は水泡に帰すはめに。
暗黒星雲の怪獣魔王・イフにとって、これが面白かろうはずもなく……。
と言うわけでこちら、暗黒星雲の怪獣軍団・本拠地。
案の定、怪獣魔王の怒りが沸点を越えて煮えたぎっていた。
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンにしてやられるとは!
毎度毎度、どこまでも小癪な男よ!」
イフ「だが、これしきで諦める怪獣軍団ではないのだ――
宙マンを倒し、地球征服の功を成す勇者はいないか!?」
「ケッケッケッ……
既に手は打ってありますぜ、魔王様!」
自信たっぷりの宣言とともに、怪獣魔王の前に進み出てきたのは
軍団の幹部候補生たる五人衆「ダークネスファイブ」の一角をなす
グローザ星系人、“氷結の”グロッケン。
イフ「おおっ、それでは!?」
グロッケン「(頷き)この俺、“氷結の”グロッケンが選んだ怪獣は
既に、千歳において行動を起こしているのです」
イフ「ううむっ、流石に動きが素早いの!」
グロッケン「この真冬にこそ最も元気に、凶暴になる……
今の季節に派遣するなら、もってこいの奴でさぁ。
地球人を地獄の寒波で震えあがらせてやりましょう!」
イフ「その意気やよし、実に頼もしいことよ。
ぐふふ、地球人ども、そして宙マンよ、見ておれ!」
グロッケン「ケケケケ、どうぞご期待下さい……!」
おお、今まさに……悪の胎動は蠢動へ変わろうとしている。
危うし地球、危うし宙マン!
……と、言うわけで!
もっか北海道千歳市は、ご覧の通りの荒れ模様。
真冬の1月とは言え、普段以上に体に堪えるこの寒さはと言えば
先述のやり取りの如く、暗黒星雲の怪獣軍団から派遣されてきた
新たなる刺客によって引き起こされたものなのである。
が、ひとまずそれはそれとして――
こちらは毎度お馴染み「宙マンハウス」。
千歳市ほんわか町一帯もまた、「殺人的」とさえ言えるほどの
今日のこの寒さと無関係ではいられない。
ピグモン「えう~、今日はすっごく冷えてるの~!」
落合さん「いかに1月とは言え……この寒さは異常ですわよね~。
一体どうしてしまったんでしょう、今日は?」
ピグモン「おふとん一杯かぶっても、全然足りなかったの~」
「ヘイヘイ、愛に震える可愛い仔羊ちゃんたち!」
ビーコン「ヒヒヒ、そーいう時はっスね……
お互いの体温で、ズボズボあっためあうのが一番っスよ。
さぁ落合さん、服を脱ぐっス、そして今すぐ寝室へ!」
げ し っ !
落合さん「笑えない冗談はよして下さい、ビーコンさん!」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……
お、オイラ的には100%本気だったんスけどねぇ~」
落合さん「……なお悪いですっ!(怒)」
宙マン「いやぁ、それにしてもアレだ――
このままだと、本気で凍えてしまいそうにさえ感じるよ。
落合さん、何とかならないものかねぇ?」
落合さん「う~ん、そうですわねぇ……」
落合さん「ここは定石に則り、冬場に相応しいあったかお料理で
体の芯から暖まる、ということで」
宙マン「なるほど、時間もちょうど頃合いだしね!」
落合さん「と言うわけで、今日のお昼は定番の鍋料理……
食材の在庫とも相談の上で、鶏鍋にしてみましたわ」
ビーコン「うぉぉ~、ザッツ・王道!
そうそう、こー言うのがいいんスよ、こー言うのが」
鶏の胸肉と鶏団子、油揚げとでじっくりダシが出たところに
水菜の爽やかな歯ごたえが、この上なく際立つ鍋。
落合さん「簡単に支度が出来て、体も暖まる。
冬場は、鍋料理の真価が最大限に発揮されますわね!」
ピグモン「はうはう~、美味しくてポッカポカなの~♪」
宙マン「冬場に不足しがちな野菜も、無理なく……
そしてタップリ摂れる、ってのも有難いよねぇ」
ビーコン「これからもちょくちょくお願いしたいっスね、鍋!」
落合さん「えぇ、勿論ですとも♪」
落合さん「そんなわけで、今日の我が家の昼食・鶏鍋……
とっても簡単で、なおかつとっても美味しいんですよ。
読者の皆さま方も、是非おやりになってみて下さいね」
宙マン「では、今日のお話はこの辺で!」
めでたし、めでたし、一件落着。
では皆様、また次回の『宙マン』でお目に……
「ちょ、待て待て、待てィや!
それじゃ困るんだってばよぉぉ~っ!」
不意に聞こえてきた、何者かの声。
すわ何事と、外に飛び出した宙マンファミリーの目の前で……
街の一角から噴き上がった、凄まじいばかりの雪煙!
シュバババーンっ!
「ボーフォォォ~ッ!!」
ピグモン「ああっ、怪獣なの!」
落合さん「あら嫌だ、しかも冷凍系の怪獣さんときましたわ!」
ビーコン「どひ~っ、道理で冷え込むワケっスよ!(汗)」
雪煙の中から巨体を現したのは、もちろん怪獣軍団の一員。
かつてその同族が、持ち前の冷却能力で地球防衛軍・極東基地を
全滅寸前にまで追い込んだ、凍結怪獣ガンダーだ!
ガンダー「ボーフォォ~ッ、どうだい、見たか見たか!
このガンダー様の、芸術的なまでの冷凍テクニック!」
ビーコン「だーっ、もう、冗談じゃないっスよ!
ただでさえ寒いトコに、更に寒波の上乗せなんて……」
落合さん「本当、ご勘弁願いたいものですわね!」
ガンダー「ボーフォォ~ッ、いい反応、いい反応!
こちとら、そのボヤきが聞きたかったのさ――それっ!」
冷気を吐き、周囲をたちまち凍りつかせていく大怪獣。
かつて、地球全体に氷河期を巻き起こしたとも噂される……
これが凍結怪獣・ガンダーの恐るべき実力だ!
グロッケン「ケッケッケッケッ、だからこそ……
数多い怪獣たちの中から奴を選んだ、ってことよ!」
グロッケン「あの調子で、北海道全体を凍りつかせてやりましょう。
そして、今年度の除雪費用を軽くオーバーさせ……
ただでさえ財政難に頭を痛めてる、道の財政課の肝っ玉を
別の意味で震え上がらせてやりますぜ!」
グロッケン「そうして、道政が疲弊したところを突いて攻めれば……
北海道はもはや、怪獣軍団のものになったも同然!」
イフ「うむっ、素晴らしいぞ、見事な作戦だ!
さぁやれガンダー、お前の力を存分に奮うがよい!」
ガンダー「ボーフォォ~ッ、やってやりますぜ、魔王様!
目指すは地球氷河期だ~っ!」
ビーコン「どひ~、あんなコト言ってるっスよ、アイツ!(汗)」
落合さん「ですが、このままでは……
本当にそうなりかねませんわ、困りましたわね!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
まばゆい光の中で颯爽、巨大化を遂げた宙マン!
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ。
落合さん「今日もまた……よろしくお願いします、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、頼んだっスよ~、アニキ!」
ピグモン「宙マン、がんばってなの~!」
ガンダー「ボーフォォ~っ、出てきたな宙マン!
俺の力で、お前もカチンカチンに凍らせてやる!」
宙マン「いやいや、これ以上の寒さはご勘弁願うよ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
かくしてまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ガンダー「ボーフォォ~っ、行くぜっ!」
宙マン「どこからでも来い、怪獣ガンダー!」
激突!
真っ向からぶつかりあう、宙マンとガンダーの巨体。
鋭利な爪をひらめかせ、接近戦を挑んでくるガンダー。
もとより、冷気を自在に操る怪獣であるだけに……
寒い今の季節こそ凶暴性をいや増すのは、彼もまた例外ではない。
だがしかし、宙マンもまた決して怯まない。
襲いくるガンダーに、一歩も退かずに格闘戦で渡り合う。
ガンダー「ボーフォォ~っ、やるじゃねぇか!?」
宙マン「はっはっはっはっ、鶏鍋食べて精をつけたからね――
そぉれっ、正義の宙マン・キックを受けてみろ!」
宙マンのストレート・キック一閃!
まともにこれを食らっては、ガンダーも後退せざるを得ない。
宙マン「どうだ、参ったか!」
ガンダー「ボーフォォ~っ、ナメんなこの野郎~っ!」
得意の冷気を吐きかけてくるガンダー!
まともにその直撃を受けて、宙マンの動きが鈍り……
更に、冷気の余波が及んだだけで周囲はこの有様。
恐るべし、凍結怪獣ガンダー!
落合さん「ああっ……いけませんわ、これはいけません!」
ビーコン「まずいっスよ、このままじゃアニキが!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
ガンダー「ボフォフォ、次は心臓を凍りつかせてやるぜ!」
「なんの……負けて、たまるかッ!!」
宙マン、パワー全開――
起死回生の手裏剣ビームが、ガンダーの胸板に炸裂!!
ガンダー「……こ、これはクヤシイぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったやった! やったっスねぇ、アニキ!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぬぬぬっ……おのれ、よくもやりおったな!
だが、お前は未だ怪獣軍団の真の怖ろしさを知らぬ……
次はないぞ、絶対だぞ……忘れるな宙マン!」
……などと言う、もはや毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして今回も宙マンの活躍で、凍結怪獣ガンダーは撃退され
千歳の平和と、そこに暮らす人々の笑顔は守り抜かれた。
そして、宙マンファミリーをはじめ、千歳の人々には……
怪獣の残した「置き土産」を片付ける、雪かき作業が待っていた。
ビーコン「とほほ、立つ鳥跡を濁さずどころか……
しっかり大雪は残してくんだから。やってらんねーっス!」
落合さん「(苦笑)まぁまぁ、ビーコンさん。
氷河期にならなかっただけでも、よしとしませんと……」
宙マン「(頷き)みんなで手分けして、さっさと済ませてしまおう!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもがんばるの~♪」
落合さん「と、いうことです。
ささ、ビーコンさんも頑張って下さいませ、雪かき!」
ビーコン「ん~、オイラの得意は〇〇カキなんスけどね~。
カキつかかれつ、お互いの体温を感じ合いつつ求めあう……
雪かきよりも気持ちよくって、あったまること請け合いっス!
さぁ落合さん、今すぐ服を脱いで寝室へ……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、話を蒸し返すんじゃありませんっ!(怒)」
ビーコン「ひぇぇ~っ、雪女顔負けの恐怖制裁っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
凍てつく風にも、消せない闘志……
真冬の街に、ぱぁっと咲かせた笑顔の花。
ありがとう宙マン、次回も頼んだぞ!