2月下旬、とは言えまだまだ厳しい連日の冷えこみ……
こと、列島の最北端にあたる北海道ともなれば尚のこと。
そんな、寒い寒いある日のお昼ちょっと前。
こちら、北海道千歳市の「宙マンハウス」から物語は始まる。
落合さん「お殿様、今日のお昼は何に致しましょうか?」
宙マン「おおっ、もうそんな時間かね!
……う~ん、改めて問われると、なかなか悩ましいねぇ」
宙マン「落合さんの手料理にせよ、外食しに行くにせよ……
北海道暮らしでは、美味しいものに事欠かないからさ。
何かひとつに絞りこむとなると、これは難しいところだよ」
落合さん「(微笑)うふふふ、お殿様ったら」
ビーコン「ラーメンとかスープカレーみたいな定番もいいんスけど。
……どうせなら、何か目新しくて珍しいモンがいいっスねぇ」
ピグモン「珍しい……はうはう、例えばどんなの~?」
宙マン「そう、そこが難しいんだよ」
みくるん「あの……宙マンさん、それに皆さんも。
珍しいものの中に入るかどうか、ちょっと微妙ですけど……
例えば、釜めしなんてどうですかぁ?」
宙マン「ほう、釜めし?」
みくるん「知る人ぞ知る、って感じなんですけど……
恵庭に一軒、道産の食材にこだわって釜めしを作ってくれる
そういう専門店があるんですよね」
ながもん「(頷き)こないだ、食べに……行ったら……
……超が、つくほど……美味しかった!」
みくるん「色とりどりの食材が、お釜の中でじっくり蒸されて……
蓋を開ければ、ふわっといい匂いが立ち昇って」
ながもん「それら、全ての旨味を……米粒が、残らず……受け止めて」
みくるん「噛みしめれば、甘~い味と香ばしさが口いっぱいに広がって!」
ながもん「おお、これぞ……天にも、昇る……心地」
ビーコン「だーっ、二人ともストップ、ストップっス!(汗)」
ビーコン「どうスか落合さん、こんな飯テロかまされた日にゃ……」
落合さん「(頷き)判りますわビーコンさん、皆までおっしゃらずとも。
……えぇ、今日はもう、釜めし目指して一直線ですわ!」
宙マン「いいねぇ釜めし、私も全く異議なしさ!」
ピグモン「はうはう~、釜めし、釜めしなの~♪」
と、一同の気分が釜めしモードで盛り上がっていた時。
そう、ちょうどその時であった!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「あらあらまぁまぁ、また地震ですの!?」
みくるん「これって、ひょっとして……」
ながもん「ひょっと……すると……」
ビーコン「どひ~っ、ひょっとするんスかねぇ、やっぱ!?(汗)」
そう、今回も「ひょっとする」のである、甚だ残念ながら。
大地を割り裂き、地上に躍り出てきたものとは!?
「ワギャギャギャ~ンっ!!」
けたたましい鳴き声とともに、すっくと立ち上がる巨体。
全身が黒い羽毛に覆われた、遥か古代の大怪鳥だ!
ピグモン「ああっ、なんか出てきたの!」
みくるん「おっ、おっきな鳥さんですぅ、お化け鳥ですぅ!(涙目)」
ながもん「あれは……巨鳥、ジアトリマ」
落合さん「えぇ、私も古生物図鑑で何度か拝見したことがありますわ。
ですが、それにしましては……」
ビーコン「ちょ~っと、サイズがデカすぎじゃないっスかねぇ!?」
宙マン「その巨大ジアトリマが、巡り巡って怪獣軍団の手先ってワケか!」
ジアトリマ「ワギャギャ……落ち着くとこへ落ち着いた、ってわけさ。
魔王様も認めた俺様の実力、今こそ思い知らせてやるぜ――
天国でも地獄でも、好きな方へ旅行させてやらぁな!」
ビーコン「どひ~っ、毎度のことながら……」
落合さん「んもう、何て言う身勝手さなんでしょう!?」
ジアトリマ「ワギャギャ、うるせぇうるせぇッ!」
ジアトリマ「とにかく俺様ァ決めたんだ、やると言ったらやるんだッ。
宙マン、お前を倒して地球を征服してみせるぜ!」
宙マン「全くもう……強引だなぁ!」
イフ「わはははは! さぁ行け、暴れるのだジアトリマ!
怠惰な平和を貪る地球人に、真の恐怖を教えてやるがよい!」
ジアトリマ「ワギャギャ~、万事俺様にお任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始のジアトリマ!
迫り来る巨体を前にして、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
落合さん「全くもう、怪獣軍団の皆様ときたら……
私どもが何かしようと言う時に限って、コレですもの!」
ビーコン「毎度のこととは言え、キッツイっスよねぇ~!」
みくるん「お二人とも、ボヤいてる場合じゃないですよ~!(汗)」
ジアトリマの出現により、早くも大パニックの千歳市内。
原始怪鳥の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ながもん「おおっ……あれに、聞こえるは……」
ビーコン「山鹿流の陣太鼓……もとい、ジェットの爆音っス!」
落合さん「頑張って下さいませ、航空防衛隊の皆様方!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく巨鳥へ叩きこまれるが……。
ジアトリマ「ワギャギャ~、効くわけないだろってーの!」
「……う、うわぁぁぁ~っ!?」
ジアトリマの目から放たれるレーザーショット!
その威力の前に、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
みくるん「あんな調子で、怪獣さんに暴れ続けられたら……」
ながもん「(ボソッと)本気と書いて……マジと、読むくらい……やばし」
ジアトリマ「ワギャギャ、そ~れ、どんどん行くぜィ!」
調子に乗って、レーザーショットを乱射するジアトリマ。
爆発! 炎上!
今や北海道千歳市の運命は、風前の灯であった!
落合さん「いずれにせよ、これはこのまま放ってはおけませんわ」
ビーコン「これじゃ釜めしどころか……
オイラたちが釜蒸しみたいになっちまうっスよ~!(汗)」
ピグモン「宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)ようし、行くぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ジアトリマの前へ颯爽降臨!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
ジアトリマ、悪ふざけもそのくらいにしておくがいい!」
ジアトリマ「(目をパチクリ)わ、ワギャギャっ!?」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ジアトリマ「ワギャギャ~、相変わらずカッコつけやがって。
そのニヤケ面、俺様の嘴でボッコボコにしてやるぜ!」
宙マン「なんの、叩きのめされるのは貴様の方だ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ジアトリマ「ワギャ~っ、行くぜ行くぜ、行くぜ宙マン!」
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ジアトリマ!
落合さんたちが見守る中、巨人と巨鳥が攻防戦の火花を散らす。
ジアトリマの武器は怪力と、強靭な足によるフットワークの軽さ――
そしてそこから繰り出す、鋭く巨大な嘴の一撃だ!
たった一発でもまともに食らえば、いかに宙マンとて危うい。
執拗に繰り出されるジアトリマの嘴を、軽快な動きでかわしつつ
何とか、反撃のチャンスを掴もうとする宙マンであったが……。
ジアトリマ「ワギャギャ~ッ、くたばりやがれ!」
嘴攻撃をまともに受けて、ドドーッとぶっ倒れる宙マン。
畳みかけるように、ジアトリマのレーザーショットが炸裂!
爆発! また爆発!
レーザーショットの威力が、周囲に凄まじい爆発を生じさせる。
グワーンン! ズガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ながもん「いけない……怪獣の、ペースに……呑まれてる」
ピグモン「はわわ、ちゅ、宙マンまけちゃうの?」
落合さん「いいえ、お殿様がこのくらいの事では……決してっ!」
ビーコン「アニキ~、頑張るっスよ~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ジアトリマ「ワギャギャ、いよいよ最後だ、とどめだぜ宙マン!」
両手の爪と嘴をかざし、猛然と突撃してくるジアトリマ。
「なんの、これしき……負ける、もの、かぁっ!」
宙マン、パワー全開!
ジアトリマの突進をかわしつつ、合気道よろしく敵の力を逆利用して
その巨体を高々と担ぎ、持ち上げてしまう。
ジアトリマ「(狼狽)わ、ワギャギャっ!?」
一気呵成に、ジアトリマを投げ飛ばす宙マン・リフター!
地面に叩きつけられ、巨鳥がふらふらになったところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ジアトリマを直撃!!
ジアトリマ「ギャイィィッ……こ、コリャたまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりましたぁ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ピグモン「これで今日もまた、めでたしめでたしさんなの~」
ながもん「あとはもう……釜めしへと、一直線」
ビーコン「それもこれも、み~んなアニキのおかげっスね!」
落合さん「ええ、お殿様はやっぱり素敵です……♪(うっとり)」
イフ「うぐぐぐぐ……宙マンめ、またしてもやってくれたな!
だが、これで勝ったと思うのは大間違いだぞ。
怪獣軍団の威力で、今度こそ地獄へ叩き落としてくれるわ!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくて宙マンの活躍により、突如出現した怪鳥ジアトリマは撃退され
千歳の平和は見事に守られたのであった。
ビーコン「アニキ、お疲れ様っした!」
ピグモン「危ないところだったから、ピグちゃんハラハラしちゃったの~」
宙マン「たはは、ハラハラよりも……私ゃ、すっかりハラペコだよ~」
みくるん「無理もないです……
お昼ご飯前に、あれだけの大立ち回りですもんねぇ」
ながもん「だからこそ……心置きなく、釜めしを」
宙マン「あぁ、私もそれを楽しみに頑張れたのさ!」
ピグモン「はうはう~、宙マンばんざい、釜めしばんざいなの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、いや~、楽しみっスねぇ釜めし!
……あ、でも落合さんは少しセーブしないと、っスね。
あんまり食べ過ぎると、また太るっスよ?」
落合さん「うぐっ! このエロ怪獣は、よくも私の気にしてることを……(汗)」
ビーコン「あー、でも大丈夫、大丈夫っ。
食べたら食べたでしっかり運動して、脂肪燃焼ダイエットっス!
夜のベッド運動なら、オイラも喜んでお付き合いするっスよ?
……ヒヒヒ、もちろん性的な意味で♪」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! よして下さいな、おぞましいっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、相変わらず凄まじすぎる運動量っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
そんなこんなの、相も変わらぬ賑やかさで……
昼食には、美味しい釜めしを堪能した宙マンたちであったとさ。
しぶとい寒さも何のその……
宙マンファミリーは、いつだってお祭り気分!
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?