柔らかな、三月の陽差しに暖められている北の大地。
ここ・千歳市も、清々しい青空の下で平和を満喫中である。
慌しくもどこか呑気な、千歳の街をそぞろ歩くのは……
毎度お馴染み「宙マンハウス」の住人、落合さん&ビーコンの極楽コンビ。
と言うわけで今回は、まずこの二人にスポットを当ててみるとしよう。
落合さん「ふう、これで……
先方へのお届け物も、無事お渡しできましたわ」
ビーコン「ヒヒヒ、喜んでもらえてよかったっスねぇ!」
落合さん「それと、はなはだ不本意ではありますが……
ビーコンさんにも一応、お礼を言っておきませんとね」
ビーコン「や、なんのなんの、西村さんにはオイラも普段から
いろいろお世話ンなってるっスからね~。
これくらい、お安いご様子っスよ!」
落合さん「どうしても人手の要る大荷物でしたので、
ビーコンさんが荷物の搬入を手伝って下さって本当に助かりました。
えぇ、心から感謝しておりますのよ!」
ビーコン「(ジト目)……そんだけ?」
落合さん「……へっ?」
ビーコン「いやいや、「へ?」じゃないっしょ、「へ?」じゃ。
オイラの今日の働きぶりに対して、落合さんは……
まさか口先だけの感謝だけじゃ済まさないっスよねぇ?」
落合さん「え~っと、それは、その……」
ビーコン「あ! さてはまさか……
この後オイラを置いて、このオネーチャンはまたまた一人だけで
何か旨いもん食いに行く気じゃないっスか!?」
落合さん「(露骨に目を逸らして)……あ゛ー、本日は大変お日柄もよく……」
ビーコン「(呆れて)……図星っスか!!」
落合さん「あー、いえ、一応申し上げておきますとね?
私の場合は、街で評判のしっとりチャーハンの美味しさの秘訣を
実際に自分の舌で味わう事で研究し、家の料理に取り入れようと言う……
メイドの仕事の一環で、遊びじゃございませんのよ?」
ビーコン「や、それならオイラがご一緒したって別に……」
落合さん「(ジト目)いえいえ、勘弁して下さいな!
ついでと称して餃子だの、レバニラだの追加注文なさるから
ビーコンさんが一緒だと、結局高くつくんですもの!」
ビーコン「かーっ、何をケチくさいこと言ってるんスか!」
ビーコン「……あ、それとも、ヤキモチ妬いて拗ねてるんスかぁ?
ここ最近、オイラがベッドで可愛がってあげてねーから……」
落合さん「誤解を招く問題発言はやめて下さいっ!!(赤面)」
ある意味では、これもまた平和な日常の象徴……
どこまでも実がない、極楽コンビのコトバの応酬。
だが、賢明なる読者諸氏は既にお気づきのことであろう。
こういう日常が営まれているときに限って、このシリーズでは
往々にしてロクでもない事件が起きる、ということを――
そして残念ながら、今回もまたその例外ではなかった!
落合さん「ちょ! 待って下さいませ、ナレーター様!」
ビーコン「ンな縁起でもねーこと、言わないで欲しいっス~!」
ズガーン! グワーンっ!
ビーコン「……ど、ど、どひ~っ!?(汗)」
爆発! 炎上!
平和だった千歳の街に、突如として生じた破壊の混乱!
「びぞぞぞぞ……
我が趣向、驚いてもらえたかな……!?」
ビーコン「うおっ、眩しっ!」
穏やかだった空が、にわかにドス黒くかき曇り……
そこに閃いた雷光とともに、虚空から姿を現した者とは!?
「びぞぞぞぞぞ……!!」
落合さん「あらいやだ、またまた怪獣さんですわ!」
ビーコン「しかも、あんま友好的って感じでもなさそうっスねぇ!?」
たちの悪いサプライズジョークやドッキリを仕掛けるのが大好きな、
「魔界ゾーランド」出身の悪党……そして、今は怪獣軍団の一員。
「そんな我の名は、巨大異形獣・サタンビゾーなり!」
サタンビゾー「いい機会だから、我の名前、憶えておいてね――
この名前、これから大宇宙にばっちり轟いちゃうから。
千歳を壊滅させ、地球を征服した偉人ってことで、ね!」
ビーコン「ひぇぇ、色んな意味で御免こうむりたいっス!」
落合さん「その図々しさだけは、しっかり記憶しましたわ!」
イフ「わははは! さぁ行け、サタンビゾー!
千歳を壊滅させ、そこを足掛かりに地球を一気に攻め落とせ!
さすればお前の名は、偉大な勇者として全宇宙に轟くぞ!」
サタンビゾー「びぞぞ~、万事この我にお任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するサタンビゾー!
迫り来る暗黒の巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
落合さん「ああ、結局今回もこんな展開ですのねぇ!」
ビーコン「こればっかりは、いつまで経っても慣れねっス!」
サタンビゾーの出現により、またまた千歳は大混乱!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭が、怪獣攻撃用の戦闘機でスクランブル!
落合さん「ああ、よくぞ来て下さいました!」
ビーコン「なんだかんだで、やっぱ姿を見ると嬉しいもんスねぇ。
頼んだっスよ~、今度はバッチシ成果込みで!」
「むむっ、またまた言いたい放題言われてる気がするが……
全機、気にせず行くぞ、怪獣に攻撃開始だっ!」
サタンビゾーめがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、その暗黒ボディには全く通用しない。
サタンビゾー「びぞぞ~、もういいから引っ込んでるように!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
サタンビゾーの顔面部から放たれる、必殺の破壊光弾……
「悪魔の接吻」とも異名をとる恐怖の一閃、サタンズキッス!
10000度の威力の前に、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
ビーコン「……あちゃ~っ」
落合さん「分かっていたこととは言え……
こういう結果は、やっぱり悔しいものですわねぇ!」
今や大混乱のピーク!
千歳の平和は、今や風前の灯であった――
と、そこへ呑気にやって来たのは!
宙マン「やぁやぁ、ここにいたのかい、二人とも!」
落合さん「あらまぁ、お殿様にピグモンちゃん!」
宙マン「帰りが遅いから、心配して探しにきたんだよ」
ピグモン「っていうか、ピグちゃんたちに内緒で……
おいしいものでも食べに行ったかとも思ってたの~」
落合さん「(ボソッと)……えぇ、実はそのつもりだったのですけど……
……って、それどころじゃなくてですね!(汗)」
ビーコン「詳細はあちらを参照っス、ほいっと!」
宙マン「う~む、なるほど、さくっと理解したよ」
ビーコン「このままじゃ、マジで千歳が壊滅しちまうっス!」
落合さん「お殿様、いつものように……お願いできますかしら!?」
宙マン「ああ、どうやらそれしかなさそうだね――
よし、いっちょやろうか! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
荒れ狂うサタンビゾーの前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿!
落合さん「あぁ、素晴らしいですわねぇ、この安心感!」
ビーコン「こーいう時、やっぱ頼れるのはアニキだけっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、しっかりなの~!」
サタンビゾー「びぞぞぞ、出て来たねぇ……宙マン。
さては、この我を相手に勝てるつもりで来たのかな?」
宙マン「そうでなくては、わざわざ巨大化なんてしやしないさ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
サタンビゾー「びぞぞぞ、よかろう宙マン……
その自惚れごと、跡形もなく消し去ってやろう!」
宙マン「行くぞ、サタンビゾー!」
激突、宙マン対サタンビゾー!
落合さんたちが見守る中、今日も熱い火花を散らす攻防戦。
両手の爪をひるがえし、奇怪な唸り声をあげながら……
さながら死神そのもののごとく、不気味に襲いくるサタンビゾー。
並の戦士であれば、それだけで恐怖に立ちすくむところであるが
そこは宙マン、潜り抜けた修羅場の数が違う。
サタンビゾーの爪をかわし、受け止め、真っ向から渡り合う!
宙マン「それっ、今度はこっちから――」
サタンビゾー「――行かせるとでも思ったかぁ!? 甘いぞ!」
ザシュっ!
翻るサタンビゾーの爪!
宙マンのスーパーボディをも、鋭く切り裂くこの威力!
サタンビゾー「びぞぞぞ、お次はこれだァ!」
サタンビゾー必殺のサタンズキッス!
その威力によって、宙マンの周囲に凄まじい爆発が生じる。
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
落合さん「……お、お殿様っ!?」
ピグモン「はわわ、宙マンが負けちゃいそうなの~!」
ビーコン「うひゃあ、そんなのマジ勘弁っスよ~!」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
サタンビゾー「びぞぞ~、いよいよ最後の時みたいだねぇ!」
勝利を確信し、とどめのモーションに入ったサタンビゾー。
だが、そんな危機的状況であればこそ……
我らが宙マンの闘志は燃え、最後の気力が振り絞られるのだ!
サタンビゾー「びぞぞ~、何でもいいから、とにかく死ねッ!」
サタンズキッス発射の巨大異形獣。
だが宙マンは、とっさの大ジャンプでそれをかわして大空へ!
サタンビゾー「(狼狽)び、びぞっ、そう来ちゃう!?」
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、サタンビゾーのボディで激しい爆発が起こる。
たまらず、サタンビゾーがドドーッと倒れたところへ――
宙マン「ようし、とどめだ!
宙マン・ハイボルテージ・ウェイブ!!」
全身のエネルギーを、一気に解き放ち叩きつける荒技。
ハイボルテージ・ウェイブが、怪獣の全身で荒れ狂うように炸裂――
その凄まじくも美しい、破壊波動の威力を見よ!
宙マン「――どうだッ!」
サタンビゾー「こ、これは……たまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
落合さん「お殿様、今日もますます素敵です……♪(うっとり)」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなくちゃっス!」
イフ「うぐぐぐっ、おのれ、またしても宙マンめ!
だが覚えておれよ、この怪獣魔王がある限り……
地球は必ず、ワシらのものにしてみせるぞッ!!」
……などという、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、巨大異形獣サタンビゾーは撃退され
千歳には再び、のどかなひとときが戻ったのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「たはは、怪獣のやつと一戦交えたら……
今度はお腹の中身がすっきり、ペッコリ……って感じだよォ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもペッコペコなの~」
落合さん「あらあら、それはいけませんわね。
では、どこかで……お食事にしましょうか?」
宙マン「うん、この際なんでもいいから腹に入れたいな。
……とは言え、出来れば勿論美味しいものを!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも賛成なの、異議なしなの~♪」
ビーコン「そしてトーゼン、落合さんのおごりで……ね!」
落合さん「ちょ、ビーコンさん! どさくさ紛れに何を……」
ビーコン「ヒヒヒ、まぁまぁ落合さん……
この流れでそうじゃなきゃ、むしろ読者が納得しねーっスよ」
落合さん「まぁ、確かにそれはそうですけれど……」
ビーコン「それに、「どさくさ紛れ」ってぇのはね……
具体的には、こーいうのを言うんスよね。ほれほれっ☆」
む に ゅ ん 、ふ に ふ に っ
落合さん「(赤面)……きゃ、きゃあぁぁぁっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、一体どこを触ってるんですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、具体的にはお尻のお肉っスぅぅ~」
落合さん「(赤面)……言わなくてよろしいですっ!」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン!
さァて、次回は……
どんな活躍と冒険が待っているのかな?