無限に広がる大宇宙、渦巻く暗黒星雲の奥深くには……
地球侵略に飽くなき執念を燃やし続ける、怪獣軍団の本拠地がある。
イフ「聞けぃ、者ども!
4月に入り、我ら怪獣軍団も新年度を迎えることとなった――」
イフ「これからは更なる気合でもって……
にっくき宙マンを倒し、必ずや地球を征服するのだ!」
イフ「宇宙のあらゆる場所から、怪獣軍団の旗のもとに集った強者どもよ。
……屈強の戦士、悪の勇者よ、今こそその使命を果たす時が来たのだぞ!」
イフ「その腕っぷし、その超能力、全てを戦う武器に変え……
今こそ、地球の者どもの脳天めがけて叩きつけてやるのだ!」
イフ「怪獣軍団の戦士、新年度を勝利で彩る栄光の勇者よ!
行け! 行け、行けーいッ!!」
おお、今まさに!
怪獣魔王の檄が飛び、新たなる刺客が地球へと向け出撃した。
果たして、今度の敵は一体どんな災厄をもたらすのであろうか?
……と、それはひとまずさて置いて。
そんな事とは露知らぬ、日本列島の最北端。
北海道はうららかな4月の陽気に温められ、平和の中にあった。
それはまた、北海道千歳市・ほんわか町5丁目の一角に暮らす
お馴染み宙マンファミリーの面々も例外ではない。
ながもん「ほら、見て……あそこ」
ピグモン「わ~、ふきのとうなの~♪」
宙マン「おお、あっちにも、こっちにも、至るところに顔を出して……
もう、すっかり春だねぇ」
みくるん「ほんとですね~」
ながもん「(ボソッと)天ぷらにすると……超、旨し」
ピグモン「はうはう~、ながもんちゃんは食いしんぼさんなの~☆」
ながもん「それが、売りです……おかげさまで」
宙マン「はっはっはっはっ、むしろいいことだよ♪」
ビーコン「いや~、北海道も春本番ってカンジっスねぇ、落合さん!
てなわけで、早速……」
げ し っ !
ビーコン「……ちょ、いきなり何するんスか、いきなりぃ!?
話も聞かずに暴力なんて、そんなの許されることじゃないっスよ!」
落合さん「ねーい、お黙りんこっ!
ビーコンさんの振ってくるお話なんて、毎度ロクなことじゃないんですから
今のうちに先払いしておいたまでですっ」
ビーコン「むきーっ、何と言う決めつけ、何と言う偏見! 許せないっス!
オイラと見ればすぐ、間抜けでスケベな発言しかしないと決めつける、
そんな事ではこれからの時代に乗り遅れてくばかりっスよ!?」
落合さん「……抜け抜けとっ」
ビーコン「だからっスねぇ、まずは素直にオイラの話を聞いて下さいっス~。
そうそう、心も体も素直に、まずはおっぱい揉ませるところから……」
げ し っ ! げ し っ !
落合さん「あー、もう、案の定これですものねぇ!?(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……
お、落合さんのその、無駄に豊満な肉体がオイラを惑わすんスよ~」
落合さん「“無駄に”は余計ですっ!!」
と、そんな実のない言葉の応酬もまた、彼らにとっての日常。
だが、そんな平穏な時間を破るかのように……!
ズゴゴゴグワーンっ!
突如として、大音響とともに……
千歳市の一角から噴き上がった巨大な火柱!
ピグモン「あっ、火事なの、大変なの!」
落合さん「あらまぁ……困ったものですわねぇ、火元の不始末!」
ながもん「ううん、それより……もっと、深刻な……問題、かも」
ビーコン「……ってことは、また例にとって例のごとくっ……スかぁ!?」
「ヴァはははは……
知りたい? 知りたいか? 超知りたいんだな、地球人ども!」
「だったら今すぐ、答え合わせをしてやるぜ……
ヴァははははぁ~っ!!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
驚き、うろたえる人々の反応を嘲笑うかのように……
街のど真ん中で、高らかな哄笑とともに巨大化した異形!
みくるん「ああっ、何か出てきたですぅ!」
ピグモン「今日もまた怪獣なの、おっかないの~!(涙目)」
ながもん「うんにゃ……そうじゃ、ない。
あれは……宇宙人……銀河、星人……ミステラー星人」
宙マン「そうか、あの名うての戦争好き……!」
そう、彼こそが今回の刺客。
怪獣軍団の一員にして、宇宙で最も好戦的な種族として悪名高い
“銀河星人”こと、ミステラー星人であった!
ミステラー星人「ヴァははは、ご紹介ありがとう、ナレーター君!」
ミステラー星人「日ごとに木の芽も膨らみ、水ぬるむの候……
四月に入り、怪獣軍団も新年度を迎え、こうして地球に
その一番手として、俺がやって来たわけだな。うん」
みくるん「……はぁ」
ながもん「それで、その新年度に……YOUは、何しに……日本へ?」
ミステラー星人「ヴァははは、よ~くぞ聞いてくれましたッ!
新しいスタートの景気づけに、千歳、ブッ潰しちゃうんで。
そういうコトでひとつよろしく、ねッ!」
落合さん「な~にが”ねッ”なんですか、何がっ!(呆)」
ビーコン「どひ~っ、案の定ロクでもない流れっス~!(汗)」
イフ「わははは! 何と頼もしい姿よ、流石だぞミステラー星人!
4月の新年度に相応しい暴れっぷりで、怪獣軍団の未来を華々しく飾るのだ!
さぁ、今ぞ起て! 戦士よ、行けぃ!」
ミステラー星人「ヴァはははは、万事お任せを~、魔王様っ!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するミステラー星人!
迫り来る巨体を前に、人々は悲鳴をあげて逃げ惑うばかり。
ビーコン「どひ~っ、急転直下でとんでもない事態っス!」
落合さん「えぇ、ビーコンさんの方がまだマシに思えるほどですわ!」
ビーコン「……ちょ、それどういう意味っスかぁ!?」
みくるん「はわわ、いいから今は逃げなきゃですよ~!(涙目)」
銀河星人の猛襲を受け、たちまち大ピンチの千歳市!
だが、この大ピンチに対して……
ただ黙って見ているだけの、航空防衛隊の精鋭たちではなかった。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
落合さん「お願いしましたわよ~、どうか今度こそは!」
ピグモン「防衛隊のおじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
最大火力が怒濤のように、ミステラー星人めがけて叩きこまれる。
ミステラー星人「ヴァははは、効かぬのずいっ!」
「ど、どわぁぁぁ~っ!?」
星人の口吻から火を噴く“MTファイヤー”!
ミステラー星宇宙軍の兵士に標準装備された、恐怖の破壊弾が
戦闘機を次から次へと撃ち落としていく。
そして、その威力は千歳の市街地にも容赦なく及び……
ミステラー星人「ヴァははは、盛り上がってきました~っ!」
落合さん「あらいやだ、すっかりいい気分になっておいでですわね!?」
ビーコン「う~ん、さすがに宇宙で一番の戦争好きだけはあるっス!」
みくるん「ふぇぇ、感心してる場合じゃないですよ~!(汗)」
みくるん「見て下さい、そんなコト言ってる間にも……!」
ながもん「(ボソッと)街が、危ない……死が、迫る」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番……?」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うミステラー星人の前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
平和を乱す者には容赦しないぞ、思い知らせてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「おお、今日もまた……ナイス……タイミング」
みくるん「頑張って下さいね、宙マンさんだけが頼りですっ!」
ピグモン「大丈夫なの、宙マンはぜったいまけないの~!」
ミステラー星人「出よったな宙マン、返り討ちじゃい!」
宙マン「そうはいかんぞ、ミステラー星人!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまたスーパーバトルの幕開けだ!
ミステラー星人「ヴァはははは~っ、死んでもらうぜィッ!」
宙マン「かかって来い、相手をしてやる!」
対決、宙マン対ミステラー星人!
小春日和のあたたかな風の中、巨大な両者が真っ向から激突する。
時に大きく離れて間合いを取り、お互いの隙をうかがい……
次の瞬間には勢いよくダッシュし、パンチやチョップの連打を
相手のボディへ激しく叩きつけていく両者。
拳と拳、手刀と手刀が渡り合う肉弾戦……パワーは、ほぼ互角。
だが、数え切れない実戦を経て磨かれてきた技の冴え具合では
やはり宙マンの方に一日の長があった。
宙マン「トゥアっ!」
宙マンのストレートキックが、銀河星人の脇腹にヒット!
さしもの戦争好きも、これにはたまらずズズッと後退。
ミステラー星人「ぬほぉぉっ……こ、これは効いたぁぁ……っ!」
宙マン「どうだ、正義の力を思い知ったか!」
ミステラー星人「ヴァあぁ~っ、ほざくな宙マン!」
火を噴く“MTファイヤー”の破壊弾!
次々に周囲の大爆発を巻き起こし、宙マンの巨体を大きくよろめかせる。
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「あの、武器は……かなり……強力」
落合さん「そんな武器の直撃を、もし一発でも受けてしまったら……」
ビーコン「いくらアニキが無敵でも、ただじゃ済まないっス!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
ミステラー星人「ヴァははは、終わりにさせてもらうぞ宙マン!」
「残念だが……悪の思惑通りには、いかないッ!」
宙マンにとどめを刺すべく、MTファイヤー連射の星人!
が、その猛攻撃を、宙マンは華麗な回転戦法で回避していく。
ミステラー星人「ぬ、ググッ!」
MTファイヤー発射のミステラー星人。
だが、宙マンもさるもの――
素早い身のこなしで、こちらも反撃の光線技を放った!
「それっ! 宙マン・ウェッジビーム!」
ミステラー星人「……ヴぁ、ヴァアアアっ!?」
ウェッジビームとMTファイヤーが、空中で激突して爆発!
そこに生じた閃光で宇宙人が怯んだ隙を、見逃すような宙マンではない。
宙マン「よし、今だっ!」
宙マンは大地を蹴って大ジャンプ、そして空中回転!
宙マン「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
電光石火の必殺キックが、ミステラー星人めがけて炸裂!
その一撃に、星人の巨体がドドーッと倒れ伏したところへ―ー
「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ミステラー星人を直撃!!
ミステラー星人「……ヴァあああっ、なんたるチヤぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「宙マン……グッジョヴ」
ビーコン「新年度も変わらず流石っスねぇ、アニキは!」
落合さん「それはそうですわ、我が家のお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれェェ……またしても宙マンめが!
今日のところは退いてやるが、次は只ではおかんぞ。
覚えておれ……覚えておれ~っ!!」
……などという、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、恐怖のミステラー星人は撃退され……
怪獣軍団の謀略は、今度も未然に防がれたのであった。
みくるん「宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
ながもん「(ボソッと)……おつ」
宙マン「はっはっはっ、いやぁ、どうもありがとう。
みんなの応援のおかげで、今日もどうにか勝つことができたよ!」
ながもん「またまた……ご謙遜」
みくるん「でも、そこがまた、宙マンさんの素敵なところですよね」
落合さん「えぇ、えぇ、まさしくその通りですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マンだいすきなの~♪」
ビーコン「いやもう全く、宙マンのアニキ様々っスね!
さーてと、平和が戻ってホッとしたところで……」
落合さん「(ジト目)……ホッとしたところで?
また何か、ロクでもないこと仰るつもりじゃないでしょうね!?」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラだって馬鹿じゃないっスよ!
オイラと落合さんとの間には、もはや言葉なんて要らないんスから。
てなわけで、その無駄に豊満な肉体へ直接セクハラを……」
げ し っ !
落合さん「ねーい、あなたは大馬鹿を超えた超馬鹿ですッ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、四月の風がやけに沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も平和な我が街・千歳……
守り抜くのは、ご存じ我らの宙マンだ。
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?