渦巻く暗黒星雲の奥深く、怪獣軍団の本拠地では……
今日も今日とて、地球征服のための悪企みが進行中。
イフ「うぐぐぐっ、それにつけても憎むべきは宙マンよ。
……奴さえおらなんだら、ワシらはとっくに地球など征服して
あの美しく、青い星の支配者となり君臨できていたものを!」
イフ「今度こそ宙マンを倒し、地球を怪獣軍団のものにする。
……その輝かしい第一歩を示す、悪の勇者はいないのか!?」
「我にお任せあれ、魔王様!」
力強い声とともに、怪獣魔王の前に進み出てきたのは……
宇宙金属製の鎧に身を固めた、威風堂々たる偉丈夫。
スライ「おおっ、君は!」
スライ「確か、新人のゼブラゴーネ君、だったね。
今春から、我が怪獣軍団に本採用になったばかりの……」
ゼブラゴーネ「(頷き)いかにも、いつもお世話になっております!」
怪獣軍団のニューフェイス、グロース星人ゼブラゴーネ。
かつてグロース星・地球侵略軍の二代目戦闘隊長として、地球人や
ジャンボーグ9と幾多の死闘を繰り広げてきた、かのマッドゴーネは
彼の父方の叔父にあたる存在なのだ、と言う。
ゼブラゴーネ「怪獣軍団の一員となり、もうすぐ1ヶ月……」
ゼブラゴーネ「そろそろ我も、大手柄をあげさせてもらおうかと。
幹部候補生たるバルタン星人Jrや、ダークネスファイブの不甲斐なさ……
それを見せられ続けるのも、そろそろ我慢の限界でしてな!」
スライ「ぬぬっ……のっけから言っちゃってくれますな!」
イフ「ぬははは……元気が良くて結構、結構!」
イフ「どうやらやる気が有り余っておるようじゃの、ゼブラゴーネ。
だが、そこまで大口を叩いた以上、そなたの為すべきは――」
ゼブラゴーネ「地球の完全制圧、そしてにっくき宙マンめの打倒。
我にとって、それ以外の余分な目的はございませぬ!」
イフ「よかろう、ならば行くがよいゼブラゴーネ!
地球へ向かえ! そして宙マンを倒すのだ!」
ゼブラゴーネ「ははぁーッ!」
かくて勇躍、暗黒星雲から……
空間跳躍によって、地球を目指して出撃したゼブラゴーネである。
スライ「んー、ふふふ……。
張り切るのは結構、ですが肩の力は抜きませんと。ねぇ?」
イフ「(ジト目)お前はリラックスしすぎだ、“魔導の”スライ」
スライ「(鼻白んで)……あららっ」
と、まぁ、ひとまずそれはそれとして。
今回の挑戦者、グロース星人ゼブラゴーネ。
空間跳躍で大宇宙を一気に飛び越え、北海道千歳市のド真中へと
その巨大で、凶悪な姿を現した!
「ぐわはははは……!!」
ピグモン「あっ、なんか出てきたの!」
ビーコン「あれは、怪獣……いや、宇宙人っスかね!?」
落合さん「以前にPATチームの隊史で、見たことがありますわっ」
宙マン「……そうだ、あの顔立ちはグロース星の!」
ゼブラゴーネ「ぐわははは……如何にも、我が名はゼブラゴーネ!
この春、グロース星参謀本部から怪獣軍団への転職を果たし
怪獣魔王様の命により、地球を征服するためにやって来た!」
ピグモン「(涙目)ふぇぇん、おっかないの~!」
ビーコン「全く、いつもそっちの都合最優先なんスから!」
落合さん「えぇ、全くですわ。
事前にアポをとっておく、訪問マナーの基礎も基礎ですわよ!?」
ゼブラゴーネ「ぐわははは! そんなこと、我の知ったことか!」
ゼブラゴーネ「なぁに、すぐにそんな呑気な台詞は吐けなくなる――
ゼブラゴーネの力で、間もなく千歳は地獄と化すのだからな!」
ビーコン「どひ~っ、とりつく縞もないっスよ!(汗)」
落合さん「……えぇ、もう、こういう方が一番困るんです!(汗)」
宙マン「(歯噛みして)……うぬっ!」
イフ「わははは! 存分に力を奮うがよい、期待の新人ゼブラゴーネ!
お前の腕前、ワシの眼前にしかと示してみるがよい!」
ゼブラゴーネ「暗黒星雲よりご照覧あれ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するゼブラゴーネ!
荒々しく迫る巨体を前に、なすすべもなく逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、毎度とは言え、参るっスねぇぇ~っ!」
落合さん「遊びも、家仕事も、世間話も、全てはこれからでしたのに!」
ピグモン「はわわわ、そんなコト言ってる場合じゃないの~!」
宙マン「いいから逃げるんだ、早くこっちへ!」
ゼブラゴーネの出現で、混乱の巷と化した千歳市!
だが地球人とて、ただ座して見ているだけではない――
星人の進撃を阻むべく、航空防衛隊がスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、今日もまたまたお出ましっスよ!」
ピグモン「はうはう~、かっこいいの~!」
落合さん「今日こそは……今回こそは、何とかなりますかしら!?」
「これ以上、市街地の被害を広げてはならん――
全機、アタック! 攻撃開始っ!!」
対怪獣専用に導入された、航空防衛隊の最新型戦闘機。
高火力のロケット弾が、矢継ぎ早やに叩きこまれる――
今回こそは、怪獣軍団の猛威を阻止できるであろうか!?
ゼブラゴーネ「ぐわははは……ちょこざいな!」
「う、うわぁぁぁぁ~っ!?」
ゼブラゴーネの角から放たれる、くさび状の破壊光弾!
その威力の前に、一機、また一機と撃墜されていく戦闘機。
……あぁ、やっぱり今度も無理でした。
ビーコン「どひ~っ、なんだか泣ける結論っスねぇ!?(汗)」
などと、ボヤいている間も……
市内を我が物顔で蹂躙する、ゼブラゴーネの破壊は止まらない。
あぁ、北海道千歳市、絶体絶命の大ピンチ!
落合さん「何てことでしょう、あの勢い……
ちょっとやそっとで、容易に止められるものではないですわ!」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!」
宙マン「いいや、まだまだだよ……千歳にはまだ、この私がいる!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ゼブラゴーネの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の悪党宇宙人め、もう好き勝手はさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「ああ、やっぱココ一番で頼れるのはアニキっスよねぇ!」
落合さん「えぇ、安心の度合いが段違いですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ゼブラゴーネ「ぐわははは……出てきたな、プラネット星人。
お前が噂の宙マンか、待っていたぞ!」
宙マン「グロース星人、さっさと暗黒星雲に帰れ!」
ゼブラゴーネ「あぁ、いいとも。お前の首を手土産に、堂々の凱旋だ!」
宙マン「あくまでやる気か……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
ゼブラゴーネ「グオォォーッ! 行くぞ、宙マン!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ゼブラゴーネ!
人々が見守る中、巨大サイズの攻防はのっけからヒートアップ。
持ち前の怪力と、身につけた邪悪な格闘術……
雄叫びをあげ、猛然と宙マンめがけて怪獣さながらに襲いかかる
ゼブラゴーネの凶悪・獰猛な戦いぶりは、まさしく叔父譲り。
宙マン「なんの、やすやすと正義が屈するものか!」
軽快なフットワークで、左足から、右足から……
矢継ぎ早やに次々と繰り出される、宙マンの連続ストレート蹴りが
ゼブラゴーネの巨体をよろめかせる。
宙マン「どうだ! 宙マン必殺、マシンガンキックの威力は!」
ゼブラゴーネ「ぬううっ、小癪なぁっ!」
激しく打撃で渡り合い、お互いの立ち位置を入れ替えて……
ますますヒートアップしていく、宇宙の正邪の大バトル。
ゼブラゴーネの手刀が、拳が、凄まじい破壊力で繰り出される。
だが、宙マンは怯むことなく猛突進!
宙マンとゼブラゴーネ、両者の全身が闘志に燃えて……
気合とともに、その巨体が交錯する。
宙マン「むうっ、やるな!」
ゼブラゴーネ「ぐふふ、まだまだ……これでもくらえ、宙マン!」
ゼブラゴーネのベルトのバックルが、異様な閃光を放つや否や!
宙マンの全身に、凄まじいばかりの不可視の圧力が襲いかかった。
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
ゼブラゴーネ「ぐははは、苦しめ! もっと苦しめ、宙マン!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
落合さん「ああっ、お、お殿様っ!?」
ビーコン「どひ~っ、アレは色々シャレにならねっス!(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
ズシーン、ズシーンっ……
重々しく足音を響かせて、宙マンに迫ってくるゼブラゴーネ。
ゼブラゴーネ「ぐわははは……宙マン、我が引導を渡してやる!」
「なんの、これしき……やられて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
ゼブラゴーネの破壊光球をジャンプでかわし、大空へ舞いあがる。
ゼブラゴーネ「(驚愕)な、何とっ!?」
ゼブラゴーネの頭上から、稲妻のように急降下していく宙マン。
そして今、正義の怒りとともに繰り出す技の名は!?
宙マン「セイヤァァーっ!
宙マン・トルネード・キック!!」
ゼブラゴーネの胸板を、抉るように直撃する足先!
トルネード・キックの威力に、たまらず星人が倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゼブラゴーネを直撃!!
ゼブラゴーネ「がハァァッ……わ、我が……負けるとは……っ!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「いよっしゃ、さすがアニキっス!」
落合さん「お殿様のおかげで、改めてゆったりと日常を満喫できますわっ。
家周りのお仕事に、おやつに団欒、DVD鑑賞……」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてセクハラも……っスよね♪」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、調子に乗り過ぎですっ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
人々の歓声が、ヒーローの勝利を讃える――
五月の陽光を浴び、すっくと立つ巨体は、どこまでも逞しかった。
イフ「ぐぬぬぬ……またしてもやってくれたな、宙マン!
だが、この次こそは……
もっと怖ろしい、もっと凶暴な怪獣を送りこんでやる!」
……と、そんないつもの負け惜しみはさて置いて。
今回もまた宙マンの活躍で、恐怖のグロース星人ゼブラゴーネは
見事に撃退され、千歳の平和は守り抜かれたのであった。
そして。
戦いの後、暗黒星雲に帰還したゼブラゴーネは……。
ゼブラゴーネ「も……申し訳ございません、魔王様!」
イフ「おお……よくぞ戻ったゼブラゴーネ、無事で何よりじゃ!
本懐を果たせなんだのは残念、とは言え……
あそこまで宙マンを追い込んだのは、実に見事である!」
ゼブラゴーネ「も、勿体なきお言葉……」
ゼブラゴーネ「しかしながら、失敗は失敗……
その事実は覆らぬ以上、申し開きは致しませぬ。
魔王様、何卒この我に死刑を賜りますよう……」
「よ~う、ようよう、お帰り、新入りィ!!」
スライ「んー、ふふふ、どうもお疲れ様でした!」
ジャタール「まぁ、よくある事だよ、ドンマイドンマイ!」
グロッケン「ぱーっと飲み食いして、まずは忘れちまおうぜィ!」
ゼブラゴーネ「(目をパチクリ)……へっ!?
いや、あの、その、話がよく見えないんだが――」
ヴィラニアス「ぱーっと飲み食い……となると、やはり焼肉だな。
スライよ、店の予約は任せたぞ!
スライ「んふふふ、いい店知ってるんですよ! 乞うご期待!」
デスローグ「(浮き浮きと)ごっ、ごっ……♪」
ゼブラゴーネ.。oO(……ああ、そうか。なるほど――)
ゼブラゴーネ.。oO(ここは……「そういう職場」なのだなぁ)
かくして、また一人……
新顔が、怪獣軍団の空気に「慣らされて」いったのであった。
今回の『宙マン』は、これにて。
さてさて、次回のお話はどうなるかな?