黄金週間の陽光に洗われて……
もっかのところ、平和そのものと言ってよい千歳市の山々。
生い茂る木々の枝先を見やれば、美しい花が咲き、今年の青葉が芽吹いて
原生林は鮮やかな緑色に染まりつつある。
だが……
道民共通の願いであるその平和が、今、打ち破られようとしていた!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
大地を引き裂き、煙を吹き上げ、地中から不気味な姿を現した者とは!?
「ケ~ラ、ケラケラケラぁ~ッ!」
けたたましい笑い声をあげて現れたのは、黒光りする外骨格の大怪獣。
暗黒星雲から放たれた悪の使者、甲殻怪獣アルケラだ!
アルケラ「ケラケラケラ……不肖アルケラ、無事に地球へ到達致しました!」
イフ「うむっ、まずはご苦労!」
イフ「さて、着いたばかりのところで悪いが……
アルケラよ、お前にはさっそく仕事にかかってもらわねばならん」
アルケラ「判ってますって魔王様、ハナからそのつもりで来たんですから」
イフ「ううむ、頼もしい返事だ、ますます結構!」
イフ「アルケラよ、お前の使命は……
北海道への前線基地建設、そのための基礎工事を完了させることだ。
今まで幾度も邪魔が入り、断念させられてきた基地建設――
ワシら怪獣軍団の悲願、今度こそは何としても成し遂げねばならぬ!」
アルケラ「ケラケラケラ、お任せ下さい、魔王様。
このアルケラにかかりゃ、基地建設なんてアッと言う間に……」
「おおっと、そう上手くコトが運ぶかな!?」
アルケラ「(ギョッとして)ケラララっ……その声は、もしや!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るアルケラ。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……もちろん、この男だ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣アルケラ、地球侵略の基地づくりなど私が許さん!」
アルケラ「ちゅ、宙マン、どうしてお前がこんなところに!?」
宙マン「ちょうど、ほんわか町内会・巡回パトロールの当番だったのさ。
おかしな地震があったので、胸騒ぎがして来てみたら……案の定だ!」
宙マン「話は聞いた、そして事情が分かったからには容赦しないぞ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
お互いに相手の隙を伺いながらじりじりと間合いを詰め……
そして遂に、真っ向から激突する宙マンとアルケラ。
早くもテンションMAX、超人と怪獣との大格闘戦!
雄大な北海道千歳市の原生林に、ビシッ、バシッと打撃音が響き渡る。
巨大な両手を激しく打ち振り、パンチ攻撃を仕掛けてくるアルケラ。
それらを躱し、受け流して、宙マンもまた果敢に相手の内懐へ飛びこんでいく。
アルケラ「ケラララッ、宙マンめ、やるな!?」
宙マン「もうずっと長いこと、お前たちみたいな悪党を相手にしてきたおかげだよ!」
力と力、技と技、そして言葉と言葉の応酬によってヒートアップする激闘。
そして、再び両者の間合いが大きく離れたその瞬間……
アルケラの口から勢いよく、恐怖の白色破壊光線が放たれた!
宙マン「(よろめき)うッ!」
アルケラ「ケラケラケラ~、隙ありだぜ、宙マン!」
バキィィッ!
巨大な爪の殴打を受けて、たまらず吹っ飛び、倒れる宙マン。
それを好機と見て、アルケラが体全体でのしかかってくる!
宙マン「くっ……くそぉ……ッ!」
アルケラ「ケラケラケラ、このまま一気にトドメ刺しちゃる!」
地面を転がり、激しくもみ合う両者。
ヒーロー危うし――
だが、ギリギリの窮地で、宙マンの闘志に更なる火がついた!
「なんの、これしき……負けて、たまる、かァァッ!」
宙マン、パワー全開!
右足の蹴りでアルケラを吹っ飛ばすと同時に、大きくジャンプ!
アルケラ「け、ケラララッ!?」
宙マン「行くぞ、アルケラ!」
宙マン「デリャァァァーッ! 宙マン・チョップだ!」
空中からの降下とともに繰り出す、渾身の手刀がヒット!
これにはたまらず、アルケラがもんどりうって倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、アルケラを直撃!!
アルケラ「ケラケララぁ……悔しすぎて、思わず笑っちゃう~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「うぐぐぐっ、おのれ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、これしきで勝った気になるではないぞ。
この次こそは、怪獣軍団の真の恐ろしさを思い知らせてくれるわ……!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍によって、暗黒星雲からの使者・アルケラは倒され
怪獣軍団の前線基地建設計画は、またしても水泡に帰したのであった。
宙マン「ふうっ……どうやら、この一件もやれやれか」
宙マン「ああ、それにしても、北海道の自然は本当に美しいな――
私も暮らすこの土地に、侵略基地なんて作られちゃ堪らないよ!」
目に染みわたるような、北国の自然の美しさ。
その生命の息吹が、戦い終わった宙マンにとって何よりの「癒し」であった。
今日も本当にありがとう、宙マン!
だが未だ、怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?