遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

怪物工房へようこその巻

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宙マン「正義の刃、受けてみろ!

 秘剣・スーパー滝落とし!!

土星の第二衛星、極寒のエンケラドゥスに居城を構え……

怪獣魔王・イフや異次元人ヤプールなど、宇宙の悪に遅れはとるまいと

虎視眈々、地球を狙い続けている悪の帝王ロード・ゼッド。

そのゼッドが発動させた「小樽侵攻作戦」の尖兵として現れた

怪物・キングスフィンクスは、ちょうどその場に居合わせた

我らのヒーロー、お馴染み宙マンの活躍で倒された。

やったぞ宙マン、大勝利!

そして、戦いを終えた彼とその仲間たちが……

当初の予定通りに小樽観光の第一日めを堪能して、身も心も

すっかり大満足……と言うところから、今回のお話は始まる。

 

 

さて、すっかり小樽の夜も更けて……

こちらは、宙マン一行が宿泊している小樽市内のホテル。

宙マン「いやー、満足、満足!」

落合さん「おかしな怪物が現れた時は、どうなることかと気を揉みましたけど

 今回の旅行、幸先の良い滑り出しで本当にようございましたわ」

ピグモン「ピグちゃん、今から明日がたのしみなの~」

ビーコン「うん、明日に備えてあとは寝るだけ……でもいいんスけど。

 でも、みんな、なんかこう……小腹減ってこないっスか?」

落合さん「あらまぁ、焼肉屋さんであれだけ食べたのに……ですか?

 でもまぁ、軽く何かつまむ程度なら……」

ビーコン「ウッシッシッ、ハナシが早くて助かるっス~☆」

宙マン「よし、それじゃどこか近場のコンビニにでも……」

みくるん「うふふっ、それには及ばないですよ~♪」

ながもん「みんなに、おみやげ……買ってきた」

落合さん「くんくんっ、この香ばしさ……これはもしや?」

ビーコン「うひょー、小樽名物の半身揚げじゃないっスか~!」

小樽の人々がこよなく愛するソウルフードとして、あんかけ焼きそばと

並び称されるのがこの”若鳥半身揚げ”。

 

ながもん「今は、あっちこっちに支店があるけど……」

みくるん「でもやっぱり一度は、お膝元の小樽のを食べたいかな~、って」

ビーコン「ウヒヒヒ、分かる、分かるっスよ、その気持ち!」

落合さん「あぁ、表面はぱりぱり……

 肉を噛みしめれば、閉じ込められていた肉汁がジュワリと!」

ピグモン「はうはう~、とってもおいしいの~♪」

宙マン「うんうん、さすが本場の小樽だよ、言う事ないね――」

宙マン「とは言え、あまり夜更かしも禁物だよね。

 美味しく頂いたら、ほどほどのところでベッドに入って……

 そして明日も、朝からうんと楽しもうじゃないか!」

ピグモン「はうはう、さんせ~いっ!」

ながもん「(ボソッと)……異議なし」

ビーコン「はいは~い、アニキ、しつも~んっ!

 ”ベッドの中で美味しく味わう”ってのはアリっスかねぇ?

 具体的には落合さんの熟れた体を……」

 

 げ し っ !

落合さん「おバカも休み休み仰いなさい、このエロ怪獣っ!(怒)」

ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」

宙マン「はっはっはっはっ」

そんなこんなの、なんだかんだで賑やかに……

宙マンファミリーにとっての、小樽旅行の夜は更けていく。

 

だが、その一方で……。

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そんな宙マンによって、配下の怪物キングスフィンクスを倒され

はなはだ不機嫌でいる男が、この極寒の星……

土星の第二衛星・エンケラドゥスの魔城の中にいた。

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ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……愚かな人間ども、そして宙マン!

 我輩の力によって、間もなく小樽は壊滅するさだめである。

 間もなく我が威力を全宇宙に示す、新たなる悪の使者が小樽へ……

 ……そう、小樽へ……次の使者……そのはず、なのであるが……

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ロード・ゼッド「うがーっ! 

 遅い、遅い、遅すぎるッ!

 次の使者はまだか、何をちんたらしておるのだ~っ!?(汗)」

ロード・ゼッド「えぇい、もうどうにも我慢がならん!

 小樽侵攻の第二陣は、一体いつになったら出発するのだ――

 工房長、今の今までいったい何をしておった!?」

ずかずかと、無遠慮かつ大股の足取りで歩を進め……

魔城の最深部にしつらえられた、モンスター製造のための工房へ

苛立ちを隠しもせずに向かっていくロード・ゼッド。

用事があるのは、ただひとり。

モンスター作りの凄腕を見込んでスカウトし、魔城の怪物工房にて

怪物創造の総てを任せている、凄腕の職人にして「工房長」。

 

そんな工房の一角、雑然たるアトリエの中に「彼」はいた。

「ふぅむ、どうもまだまだ……

 ここの部分の、エッジとアールのバランスが悪いのぉ。

 もう少しこだわりたいところじゃわい、ブツブツ……」

 

ふと、気配に気づき、作業の手を止めて顔を上げ。

「おやおや、これはロード・ゼッド様。

 このフィニスターめに、一体何用でしょうかな?」

フィニスター「申し訳ない、ワシもこれで忙しい身でしてな。

 ご用事があるのでしたら、簡潔かつ要件を的確に……」

ロード・ゼッド「(イラっとくるが、堪えて)……よかろう、ならば聞く。

 地球攻撃用の新しいモンスターは、未だ完成せんのか?

 そなたにこの工房を任せて何か月経った、いつまで時間を食っておる!」

フィニスター「そうは申しましても……

 芸術に大切なのは一に才能、二にインスピレーション。

 そうせっつかれては、出来るものも満足に出来など……」

ロード・ゼッド「……などと言うそなたの言葉を信じて、既に半年過ぎだ。

 そうして待ち続けていたら、地球攻撃の日は一体いつになる!

 我輩にもだな、いい加減限度と言うものがあるぞ、我慢の限度が!」

フィニスター「イヤじゃなぁ、我が君。

 これから千年、万年栄える悪の帝国を築こうっちゅう御方が……

 たかが半年、一年で狼狽えてどうなさいますね?」

ロード・ゼッド「うがーっ!!

ロード・ゼッド「ああ言えばこう言う、そう言えばハウユー!

 腰を据えるのも結構、だが同様にテンポが快調ならなお結構!」

フィニスター「やれやれ。……つまり、このワシにどうせぇと?」

ロード・ゼッド「何もせんで良い、お前はただ黙って見ておれ。

 ……どぉれ、何か一体ぐらい、使い物になりそうな怪物はないのか!?」

フィニスター「……ありゃりゃ、困りますぞ、ゼッド様

 そうあちこちひっかき回されては、後で整理と掃除が大変に――」

ロード・ゼッド「えぇい、うるさい、うるさいっ!」

わめき散らしながら、ゼッドがアトリエの片隅から引っ張り出したのは

フィニスターが造形の途中で放置していた、一体の怪物の粘土細工。

ロード・ゼッド「おお……これなど良いではないか、いかにも強そうだ。

 ……勿体つけおって、ちゃんと「使えそう」なのがあるではないか……!」

フィニスター「あー、それは失敗作で、いまひとつ気品に欠け……」

ロード・ゼッド「ねーい、ドやかましいっ! 我輩はもう決めたのだッ!

 ……ぐふふふ、今に見ておれ宙マンめ……!」

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呑気であり、それ以上に物騒でもあり。

エンケラドゥスの魔城で、そんなやり取りがなされていたなどとは

とんと、知る由もなく……

小樽滞在中の宙マンファミリーは、爽やかな目覚めとともに

旅行二日目の朝を迎えていたのであった。

 

落合さん「おはようございます、お殿様!」

宙マン「うん、おはよう。

 それじゃ今日も、元気にいってみようかぁ!」

ビーコン「ヒヒヒ、そうなると……」

落合さん「まずはしっかり、美味しい朝ごはんからですわね!」

ピグモン「はうはう~、ゆうべがお肉だったからぁ……」

ながもん「今日は、しっかり……お魚……入れたい」

みくるん「せっかく海の近くの小樽まで来たんですもんね~」

落合さん「それでしたら皆様、今朝はこの落合にお任せ頂けますか。

 昨夜のビーコンさん同様、目星をつけていたお店があるんですの」

 

と、言うわけで。

落合さんの先導のもと、一行が向かった先はこちら……

良心的な価格設定と品物の新鮮さ・高品質で、観光客から地元民まで

多くの人々から愛され続けている市民市場。

ながもん「おお、どれも……すごく……新鮮」

みくるん「どのお魚さんも、干物も佃煮も……

 本当に美味しそうで、目移りしちゃいます~」

落合さん「えぇ、えぇ、そのお言葉には全く異論はございませんし

 私も後でガッツリ買い込むつもりではございますが……

 まずはその前に、市場併設の食堂で朝食と参りましょう!」

ビーコン「あそこの店っスね、落合さん!」

と言うわけで、今日の朝ごはんがこちら。

海のまちへ来たからには、やはり一度はしっかりと味わっておきたい

海鮮セットのスペシャルメニュー!

落合さん「見て下さい、このお刺身の輝きぶりときましたら!」

宙マン「なるほど、こっちのオレンジがトキシラズで……」

ピグモン「ピンクのお刺身は、アマエビなの~♪」

宙マン「食べ比べてみると、食感の違いが一段と楽しくて……」

ビーコン「合間合間に食べる、この天ぷらの熱々がまたいいんスよ!」

ながもん「これは、ハッカク……千歳じゃ、珍しい……魚」

みくるん「舌触りがほっこりしてて、とっても美味しいです~」

ピグモン「はう~、ごちそうさまなの~!」

宙マン「はっはっはっ、朝から贅沢させてもらったねぇ!」

ビーコン「さぁ、2日目も気合入れてアソぶっスよ~!」

美味しい朝食で、元気120%。

そんな彼らが次に向かった先は……小樽市内の小高い丘の上に位置し

小樽市全域を一望できる「旭展望台」。

論より証拠、まずはご一緒にご覧頂きたい――

小樽港と市街中心部を見下ろし、遠く石狩湾や暑寒別岳も望むことができる

まさしく文字通りの「絶景」を!

みくるん「はーい、撮りますよぉー、皆さん!」

ながもん「にっこり、笑って……セイ・チーズ」

小樽ゆかりのプロレタリア作家・小林多喜二の文学碑を見たり……

総延長14キロ、合計18本もの散策コースを、それぞれのペースで歩きながら

青空の下、豊かな自然環境に「抱かれて」みるのもまた一興。

落合さん「こういう時間もまた、有意義なものですわよねぇ」

ビーコン「ほ~んと、わざわざ千歳から来たかいがあったっスよ!」

 

ロードゼッド「ぐふふ……

 そんな呑気なことを言っていられるのも、ここまでだ」

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「ウソル・デラピダトーレ・テンタトーレ・ソイナトーレ……

 デボラトーレ・マンシトーレ・エシェデュクトーレェ……

 朽ち果てし万物の精霊よ、大気に遍く邪悪の意思よ!

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「悪の心を呼び醒まし、魔可異の姿を創り出せ!

カァァーッ!!

 

Zスタッフから迸る、邪悪そのもののエネルギー!

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ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!

 

みくるん「きゃ、きゃあああっ!

ビーコン「ちょ、まさか、今日もまたまた!?」

落合さん「いやですわねぇ、色々ご勘弁頂きたいですわ!(汗)」

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落合さんたちの願いもむなしく……

激しい局地地震によって小樽の山が鳴動し、メリメリと大地が裂ける。

そして、巨大な地割れの中からその巨体を現したのは!?

「グワゴォォォ~ッ!!」

 

みくるん「ああっ、やっぱり出てきたですぅ!」

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ながもん「今まで……見た事も、ない……怪獣」

ピグモン「えう~、せっかくお山の上で良い気分だったのに~」

ここまでの流れを通してお読み下さった皆様は、もうお分かりであろう。

これこそ、モンスター職人・フィニスターの拵えた粘土細工(の失敗作)に

ロード・ゼッドが魔力で生命を吹き込み、誕生させた巨大モンスター。

バランス感覚も何もあればこそ、思いつく限りの重武装で全身を固めた

火力とパワー一辺倒の姿は、芸術家気質のフィニスターの美意識には反し

それゆえ、粘土細工のジャンクの中に打ち捨てられていたのだが。

ロード・ゼッド「それも、こうして実体化させてみれば……

 なかなかどうして、悪くない面構えではないか」

ロード・ゼッド「ぐぁぼははは……名付けて奇機械怪獣・デアボリック!」

フィニスター「(頭を抱えて)とほほ……ネーミングにまで品がないわい!

ロード・ゼッド「(じろりと睨んで)ア゛ぁっ、何か言ったか!?」

フィニスター「(慌てて)あわわ、いえいえ……何も何も!」

ロード・ゼッド「まぁ良い、デアボリックよ……

 小樽侵攻の手始めに、まずは宙マンを血祭りにあげよ!」

 

ビーコン「どひ~っ、こっち来てるっスよ~!(汗)」

ピグモン「ふぇぇ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」

宙マン「(頷き)ああ、勿論やるとも!

 宙マン・ファイト・ゴー!!

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閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。

荒れ狂うデアボリックの前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿!

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ビーコン「っしゃあ! これでもう、いろいろと一安心っス!」

落合さん「小樽の平和は、今やお殿様の双肩にかかっておりますわ!」

ピグモン「はうはう~、宙マン、しっかりなの~!」

宙マン「たとえ相手が誰であり、何であろうと……

 平和を乱す者に対して、私は一歩も退きはしないッ!」

デアボリック「グワゴルゥゥゥ……っ!」

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全身にみなぎる怒りを力に変え……

ファイティング・ポーズをとって、敢然と身構える宙マン。

激突! 宙マンVS奇機械怪獣デアボリック!

小樽の山中において、またまた凄絶なる巨大戦が幕を開けた!

激闘また激闘、小樽まるごと超決戦。

かつてない不気味さのデアボリックを前に……

我らが宙マンは、果たしていかに戦い抜くか!?