渦巻く暗黒星雲の奥深く、怪獣軍団の本拠地では……
今日も今日とて、地球征服のための悪企みが進行中。
イフ「おのれ、宙マン……にっくき奴め。
彼奴のために、絶対の自信をもって臨んだ作戦が次々に潰され
どれほど数限りなく、ワシらの面子が潰されてきたことか！」
イフ「今度こそ宙マンを倒し、地球を怪獣軍団のものにする。
……その輝かしい第一歩を示す、悪の勇者はいないのか！？」
ゾネンゲ博士「ご安心下さい、魔王様！」
ゾネンゲ博士「血気盛んな怪獣が、続々と名乗りを上げており……
その中から特に優れた者を、私が選抜致しましてございます。
……既にその者は、地球で行動を開始しておりますれば！」
イフ「おお、相変わらず仕事が早いな、感心だぞ。……
今に見ておれ宙マンめ、地球は間もなくワシらのものだ！」
おお、またしても……
怪獣軍団の新たなる魔手が、地球に向けて迫るのだ。
危うし北海道、危うし宙マン！
が、ひとまずそれはそれとして。
こちらは毎度お馴染み、北海道千歳市ほんわか町５丁目。
これまたお馴染み、「宙マンハウス」の呑気な住人たちはと言えば
そんなこととは露知らず、午後のひとときを満喫中であった。
宙マン「やー、なんだか微妙にお腹がすいてきちゃったねぇ！」
ピグモン「はう～、さっきお昼ごはん食べたばっかりなのに、なの？」
ビーコン「ヒヒヒ、アニキの食いしん坊も相変わらずっスねぇ！」
宙マン「たはは……面目ない（頭をかきかき）」
落合さん「（微笑）三時のおやつには、ちょっと早いですけど……
そこはそれ、“小腹がすいた”というものですわよね」
落合さん「それじゃお殿様、軽くつまめる“モモ”などいかがでしょう？」
宙マン「モモ？」
落合さん「一口サイズで食べられる肉まんと言いますか、餃子と言いますか……
ネパールの方では、ポピュラーな料理のひとつなんですって。
バーベキューソースをつけて食べると、これがまた！」
宙マン「う～ん、それはまた、何ともそそるねぇ！
よし、ここはひとつ……」
ビーコン「（宙マンにカブって）ひとつ、落合さんにお任せっス！
とびっきり旨いのを頼むっスよ、落合さん！」
落合さん「……って、何でそこでアナタがしゃしゃり出てきますの！？」
ビーコン「ヒヒヒ、まぁまぁ、気にしない気にしない。
オイラは実際、ちっとも気にしてないっスよ。がっはっは！」
落合さん「（呆れて）全くもう、ビーコンさんったら……！」
何気ない軽口の応酬も、平和な日常における絶妙のアクセント。
だが、その時、そんな平和な時間を破るかのように……！
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ！
落合さん「きゃ、きゃあああっ！？」
ビーコン「うわ、うわ、うわ～っス！」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは！？
「ぐぅおおお～んっ！！」
ピグモン「あっ、何か出てきたの！」
ビーコン「何かっつーか、カニかっつーか……」
宙マン「（頷き）どこからどう見ても、巨大怪獣だねぇ……！」
怪獣軍団が地球に送り込んできた今回の刺客、それは……
巨大怪獣、すなわち「巨獣」と称され恐れられる、ビージー星出身の暴れ者。
ヘビー＆ファットがトレードマークの、巨獣マリゴスだ！
ビーコン「そのマリゴスさんが、今日は何しに来たんスか？」
マリゴス「ぐぅおぉ～んっ、ベケヤロイっ！
のんびり観光にでも来たように見えるかァ！？（ニヤリ）」
ビーコン「どひ～っ、やっぱりっスか、そうっスよねぇ！（汗）」
落合さん「いっそ観光目的なら、どんなによかったか！」
ピグモン「えう～、ピグちゃん怖いの～（涙目）」
宙マン「……うぬっ！」
イフ「わははは！ さぁ行け、思い切り暴れるのだ巨獣マリゴス！
お前の力で、邪魔な全てのものを押し潰し、破壊せよ！」
マリゴス「ぐぅおぉ～んっ、任しといて下さいや、魔王様！
ぶっ壊しなら、俺っちの得意中の得意ですぜィ！」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するマリゴス！
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて右往左往、逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ～っ、楽しい軽食タイムのはずが……」
落合さん「怪獣出現だなんて、超ショックですわねぇ！」
ビーコン「（ヤケクソ）がはは、落合さん、上手いコトを！」
ピグモン「ちょ、そんなこと言ってる場合じゃないの～！（汗）」
おお、またまた千歳の大ピンチ！
だが、そんな巨獣マリゴスの進撃を阻むべく……
航空防衛隊の精鋭たちが、直ちにスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、またまたいいタイミングぅ！」
落合さん「今回こそは、期待したいです……本気で！（汗）」
ピグモン「はうはう～、おじさんたち、がんばってなの～！」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ！」
戦闘機編隊、ロケット砲による一斉攻撃！
だが、その凄まじい弾着にも怯まず、猛然と進むマリゴス。
マリゴス「ぐぅおぉ～んっ、百年早いぜ、百年！」
「……ど、どわぁぁぁ～っ！？」
マリゴスの口から吐き出される、灼熱火炎の一撃が炸裂！
その洗礼を受けて、善戦むなしく次々に撃墜されていく戦闘機。
更に、マリゴスの火炎の勢いは市街地にも容赦なく及び……
平和な千歳市は、今や破壊と混乱の巷と化していた！
マリゴス「ぐぅおぉ～んっ、これがホントの千歳バーベキューだぜィ！」
ピグモン「えう～、あの怪獣、あんなこと言ってるの～」
落合さん「こうなると、もうお殿様だけが頼みの綱ですわ！」
ビーコン「アニキ～、ここは一発なんとかして欲しいっス！」
宙マン「ああ、やるとも！ 宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うマリゴスの前に舞い降りる！
宙マン「トゥアーっ！ 宙マン、参上！
宇宙の悪党め、粋がって暴れ回るのもそこまでだ！」
ズ、ズーンっ！！
ビーコン「いえっふ～、出たっス、アニキの十八番！」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、がんばってなの～！」
マリゴス「ぐおお～んっ、出やがったな、宙マン！」
宙マン「巨獣マリゴス、正義の力で打ち砕いてやる！」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今こそ世紀のスーパーバトル開幕だ！
マリゴス「ぐおお～んっ！ 宙マン、ペシャンコにしてやるぜィッ！」
宙マン「来るなら来てみろ、私は負けない！」
真っ向激突、宙マン対マリゴス！
落合さんたちが見守る中、超パワーの肉弾戦が展開される。
突き上げる激情のおもむくまま、ヘビー級の巨体を揺すりながら
しゃにむに突進してくるマリゴス。
宙マンさえも手を焼く、その猛パワーの凄まじさを見よ！
マリゴス「ぐおお～んっ、オラオラどうした、どうしたァッ！」
宙マン「なんの、まだまだ！」
両手の爪を縦横に奮い、猛然と襲いかかるマリゴス！
さしものヒーローとて、この一撃を食らえば只ではすまない――
パンチをかいくぐりつつ、冷静に相手の隙を伺う宙マンである。
大地を揺るがし、砂をまきあげ……
ダイナミックに展開される、両者の巨大バトル。
走り、跳び、跳ねる！
宙マンとマリゴス、気迫とともに幾度も交錯する巨体。
宙マン「さぁて、そろそろこっちがお返しを……」
マリゴス「ぐおお～んっ、そう言うワケにゃいかねぇぜっ！」
マリゴスの灼熱火炎が炸裂！
周囲に巻き起こった爆発が、宙マンの体をよろめかせ……
マリゴス「ぐおお～んっ、お次はこれだぁ！」
ヘビー級ボディの質量を活かした、マリゴスのメガトン頭突き！
このダメ押しにはたまらず吹っ飛び、倒れてしまう宙マンである。
落合さん「ああっ……お、お殿様っ！」
ビーコン「ど、どひ～っ、なんてこった……
野郎の図体と体重、もうそれ自体が強力な武器なんス！」
ピグモン「はわわわ……宙マン、負けないでなの～！」
宙マン「（苦悶）うう……うっ！」
マリゴス「ぐおお～んっ、芯までウェルダンで焼いてやるぜっ！」
「いいや……たとえレアでも、お断りだっ！！」
宙マン、パワー全開！
マリゴスの火炎をジャンプでかわし、大空に舞いあがる。
マリゴス「（驚き）ぐ、ぐおおっ！？」
宙マン「さァて、今度はこっちがお返しだ――」
「テリャァァーっ！
宙マン・南十字チョップ！！」
両腕を真っ赤に燃え上がらせて放つ、渾身のクロスライン！
南十字チョップの直撃に、マリゴスがたまらず倒れたところへ――
宙マン「とどめだ！ 宙マン・エクシードフラッシュ！！」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、マリゴスを直撃！！
マリゴス「ぐおぉぉ～、これまた強烈ぅぅ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
ピグモン「はうはう～、やったのやったの、宙マンの勝ちなの～！」
落合さん「お殿様、今日もますます素敵です……♪（うっとり）」
ビーコン「いえっふ～、やっぱアニキはこうじゃなくちゃっス！」
イフ「うぐぐぐっ、おのれおのれ、宙マンめぇぇっ……
だがしかし、これしきでいい気になるなよ。
我が軍団には、強豪怪獣がいくらでもおるわ……！」
……という、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、恐るべき巨獣マリゴスは撃退され
千歳には再び、のどかな午後のひとときが戻ったのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様」
宙マン「いやぁ、怪獣のやつと一戦交えたら……
小腹どころか、すっかりお腹がペッコペコだよ！」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんもペッコペコなの～」
落合さん「あらあら、それはいけませんわね。
急いで帰って、“モモ”の支度を致しませんと……」
宙マン「うん、そのネパール餃子も勿論楽しみだし……
もうすぐ三時ってことなら、甘いデザートも楽しみだね」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんも賛成なの、異議なしなの～♪」
落合さん「（微笑で頷き）えぇ、重ねて了解いたしましたわ！」
ビーコン「よーっし、そういうコトなら話は早いっスね！
オイラが落合さんに、とびきり甘い接吻と言う名の……」
落合さん（……ぶ ち っ ！）
げ し っ ！
落合さん「ねーいっ、よくも毎度毎度、そんな世迷言をッ！」
ビーコン「どひ～っ、コレがないと読者が納得しないんスぅぅ～」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン！
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな？
