北海道千歳市――
眩しい朝焼けの光が、美しい街並みを静かに照らしていく。
いつもと変わらぬ夜明けとともに、今日ものんびりと繰り返されるのは
そう。
もっか宙マンは、朝の日課であるウォーキングの真っ最中なのであった。
まだちょっと冷たい朝の空気。
その澄み切った清冽さを胸一杯に味わいながら、ゆったり自分のペースで
お決まりの「いつものコース」を歩いて行く。
今日もまた、平和で楽しい一日が始まる予感。
が、そんな健康的なウォーキングの様子を、物陰からこっそり眺める
一対の不健康な視線があった。
(くっくっくっ……来やがった、来やがった。
宙マンよ、呑気にしていられるのも今のうちだけだ!)
おおっと、にわかに波乱の気配。
だが、そんなこととは全く知る由もない宙マンは……。
宙マン「ふぅ~。
軽く歩いたら、なんだか気持ちよくお腹が減って来ちゃったな。
さてさて、今日の朝ご飯は何だろうな~?」
「ケケケケ……
朝飯より、自分の身の心配をしな~っ!」
ババッ!
おお、見よ! 驚愕せよ!
待ち伏せていた不穏な影が、物陰から勢いよくその姿を現した!
宙マン「おおっ、お前はバット星人だな!?」
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「ケケケケッ……覚えててくれたのかい、嬉しいね!」
宙マン「で、今回もまた、わざわざ叩きのめされにお越しかね!?」
バット星人「っが~、舐めるのも大概にしておけよ、宙マン!
この私は、お前を打倒するために暗黒星雲から送りこまれた殺しの使者――
朝のウォーキング中こそ、お前が最も無防備になる瞬間と踏んだのだ」
バット星人「その推測は見事に的中した! 今こそお前の最後だぞ!」
宙マン「それで、わざわざこんな早朝に待ち伏せか……悪趣味だぞ!」
バット星人「けけけけっ、何とでもほざけ!」
イフ「行けぃ、バット星人、殺しの使者よ!
我が怪獣軍団の悲願、宙マン抹殺を今度こそ成し遂げるのだ!」
バット星人「全て私めにお任せ下さい、魔王様!」
バット星人「どうだ宙マン! 今日の朝日はひときわ綺麗だろう――
人生の最後にあんな美しいものを見られるなんて、この幸せ者めっ!」
宙マン「なんの、絶対に負けたりなどするものかっ!」
ファイティングポーズをとり、バット星人に身構える宙マン。
さぁ、今朝もまたスーパーバトルの幕開けだ!
両腕の鋏をバタバタと打ち振り、宙マンめがけて殴りかかってくる星人。
宙マンもまた、その猛攻撃を真っ向から迎え撃つ。
両者、パンチとチョップの激しい応酬!
早朝のほんわか町が、突如として宇宙ボクシング大会タイトルマッチの
試合会場と化したかのような熱気に包まれていく。
バット星人「えぇいっ、宙マンめ――どうだ、これでもかっ!」
宙マン「まだまだ、今度はこっちから行くぞ!」
宙マンのストレート・パンチが、バット星人の頬げたにヒット!
星人が怯んだところへ、更に水平チョップをも炸裂させる。
どうだ、宙マンの華麗なる連続殺法!
その威力には、さしもの触覚宇宙人も後退を余儀なくされる。
宙マン「これ以上痛い目に遇いたくなければ、大人しく暗黒星雲に帰るがいい!」
バット星人「お、おのれッ! こうなったら奥の手だ――
必殺技、バット超音波をくらえっ!!」
おお、これこそバット星人が新たに会得した必殺技……
腹部から放射して、相手の頭脳に激しい苦痛を与える“バット超音波”!
バット超音波の洗礼に苦悶し、頭をかきむしってよろめく宙マン。
……ついに、その体がドドーッと地面に倒れ伏してしまった。
宙マン「(苦悶)……う……うう……っ!」
バット星人「けけけけっ、元・銀河連邦の英雄とも思えんザマだな!」
ゾネンゲ博士「おおっ、新必殺技の威力は想像以上ですな!」
イフ「いいぞバット星人、そのまま一気にとどめを刺せッ!」
バット星人「けけけけっ、お任せを~!」
最後の一撃を加えんと、猛然と突進してくるバット星人。
だが、その瞬間……
宙マンもまた、残された気力と体力を一気に爆発させて動いた!
「なんの……
悪の思い通りになど、いくものかッ!!」
バネのように勢いよく跳ね起き、そのまま一気に大空へ舞い上がる!
その超人的なジャンプ力に、バット星人が怯んだところへ――
宙マン「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺キック!
その威力の前に、大ダメージを受けて吹っ飛ばされるバット星人。
宙マン「どりゃあーっ! 宙マン・ショット!!」
出た、電光石火の必殺キック!
その威力の前に、大ダメージを受けて吹っ飛ばされるバット星人ミルトン。
宙マン「どりゃあーっ! 宙マン・ショット
気合とともに、不可視の破壊衝撃波を放つ宙マン!
バット星人の腹部に炸裂した一閃が、その戦意を徹底的に殺いだ。
バット星人「も、もう……あと一歩……だったのに……!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぐぬぬぬっ、おのれぇぇっ……またしても宙マンめが!
今に見ておれ、この次こそは思い知らせてくれるわ……ッ!」
かくして我らが宙マンの活躍により、恐怖の暗殺者・バット星人は返り討ちにされ
千歳の平和はまたまた守り抜かれたのであった。
大地を包む朝の光が、ヒーローの勝利を讃えるかのように眩しい。
まさに宙マンは、向かうところ敵なしの強さである――
……ぐ う ぅ ぅ ~ っ
……だが、そんな彼も、空腹にはからっきし弱いのであった。
宙マン「……う~ん、こりゃいかん。急いで帰ろう!」
朝からホントにお疲れさま、宙マン。
帰ったら、美味しい朝ご飯が君を待ってるぞ!