毎度毎度、騒動が巻き起こっているとは言え……
とりあえず今、北海道千歳市はのどかな平和の中にあった。
そんな千歳市の一角、ほんわか町5丁目。
毎度お馴染みの「宙マンハウス」から、今日も物語を始めよう。
落合さん「ビーコンさん!……ちょっと、ビーコンさんっ!
家においでなんでしょ、すぐにこちらへいらっしゃいッ!」
ビーコン「ふぁぁ~い、むにゃむにゃ……
おはようございますっス、落合さぁ~ん……」
落合さん「(ジト目)な~にがおはようですか、もうすぐお昼ですよっ」
ビーコン「んで……オイラに何か用事っスか、落合さん?
急ぎじゃねーなら、もーちょっと寝かせて欲しいんスけど」
落合さん「それそれ、それですわよっ!」
落合さん「メイドの私が、朝からせっせと働いておりますのよ?
肩代わりしろとは申しませんが、お手伝いしましょうか? とか
そう言う殊勝な言葉と発想が、何故出てこないのかしら!」
ビーコン「いや~、申し訳ないっス!
でもねェ落合さん、オイラだっていろいろ忙しいんスよ」
落合さん「忙しい? ビーコンさんが?」
ビーコン「そーっス、大忙しっスよ!
匿名掲示板でエロ画像とか集めたり、スレへの書き込みで
お互いに煽りあったり、自作自演したり……」
落合さん「……んーまっ、いけしゃあしゃあと!
アナタみたいな怪獣を“穀潰し”って言うんです!
居候なら居候らしく、少しは家事を手伝って下さいな!」
ビーコン「いやいや~、シゴトなら毎日こなしてるっスよ!?
オイラにしか出来ない「愛」と言う名の心の仕事……」
落合さん「寝言は寝てから仰いませ!」
ビーコン「え、寝直していいんスか!? だったら遠慮なく……」
落合さん「(激昂)……っがー!!」
ピグモン「えう~……落合さんとビーコンちゃん、またやってるの~」
宙マン「(苦笑)たっはっはっ……二人にも困ったものだねぇ」
落合さん「あーもう、ああ言えばこう言う、そう言えばハウユー!
その減らず口、どうやって塞いであげましょうか!?」
ビーコン「ヒヒヒ、そりゃもうキスで蓋するしかないっしょ?」
落合さん「……いいえ、ホッチキスのおまじないでいきます!
あ、この場合の「ホッチキス」は、そのまま物理的なもので!」
ビーコン「どひ~っ、痛いのはご勘弁っスよ~!(汗)」
放っておけば、いつまでも際限なく続きかねない言葉の応酬。
……だが、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「お、おろろろろろっ!?(汗)」
落合さん「こ、これは……っ!」
宙マン「かなり大きいな……これは只事じゃないぞ!」
激しく揺れる大地、割れ裂ける舗装道路。
土砂を吹きあげながら、地中より姿を現した巨体とは!?
「ガオガオォォーッ!!」
ピグモン「あっ、やっぱり怪獣だったの!」
宙マン「あれは……地底怪獣・テレスドンか!」
落合さん「大方また、怪獣軍団の差し金でしょうねぇ……(溜息)」
ビーコン「う~ん……
テレスドンだとすると、ちょっとおかしくないっスか?」
宙マン「……うン?」
落合さん「何がおかしいんですの、ビーコンさん?」
ビーコン「だって、そうじゃないっスか。
テレスドンと言えば、地底の奥深くに住んでる怪獣だから……
夜行性で、昼間は苦手なはずっしょ!?」
テレスドン「ガオガオ~、鋭いじゃねぇか。
なかなか気が付くやつなんだな、顔に似合わず!」
ビーコン「(憤慨)……最後の一言が、いろいろ余計っスよ!」
イフ「うむ――それは、ワシも思っておった。
夜中に出撃させるべきテレスドンを、どうしてまたわざわざ
真昼のこんな時間に……?」
スライ「んー、ふふふ……それが狙いでございますよ、魔王様」
スライ「怪獣も、宇宙人も、生きとし生ける者は誰でも……
睡眠を妨げられた、寝起きのテンションは不機嫌なもの。
その苛立ちを、逆に破壊のパワーとして利用すれば……!」
イフ「おおっ、なるほど、そういう理屈か!」
ビーコン「どひ~っ、なんつーハタ迷惑な!(汗)」
落合さん「本当に、ロクなことお考えになりませんのねぇ!」
宙マン「……むむっ、困ったものだなぁ!」
スライ「んーふふふ、頼みましたよテレスドン君!
寝起きの不快感で、うんと八つ当たりしちゃって下さいねぇ!」
テレスドン「う~ん、むにゃむにゃ、ガオガオ~!
……スライ、てめぇ、あとで覚えてろよ~っ!」
テレスドン、あくび交じりで進撃開始!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、結局今日もこの流れなんスねぇ~!」
落合さん「寝ぼけ半分で踏み潰されては堪りませんわねぇ!」
ピグモン「きゃああんっ、急いで逃げなきゃなの~!」
おお、まさに千歳の危機!
だが、テレスドンの進撃を阻むべく、直ちに千歳基地の陸の精鋭が
最新鋭の戦闘車両を出動させた。
ビーコン「おおっ、今日は光線車の出番っスね!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~」
落合さん「……毎度、本気で期待はしておりますのよ!?」
テレスドンめがけて迸る、殺獣光線車のメーサー光線!
光の奔流が、怪獣の体を舐め回すように直撃するが……
テレスドンの巨体には、全くと言ってよいほど通用しない。
テレスドン「ガオガオ~、雑魚は引っ込んでやがれ!」
テレスドンの口から、勢いよく吐き出される溶岩熱線!
その灼熱の洗礼を受け、光線車が次々に大爆発を起こす。
落合さん「あぁっ、力及ばず……でしたわねぇ!」
ビーコン「毎度のこととは言え、やっぱ悔しいっスねぇ!」
……などと、嘆いたりボヤいたりしている間にも。
ズガーン! グワーンっ!
テレスドンの容赦ない溶岩熱線攻撃で、炎に包まれていく千歳の街。
テレスドン「ガオガオ~、これで少しは気も晴れたぜィ!」
ビーコン「どひ~、アイツ、あんなこと言ってるっスよ!」
落合さん「このままでは、本当に街が全滅しかねませんわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、それしかないか!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、テレスドンの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
寝ぼけるのもいいが、そろそろ目を覚ましてもらおうか!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~! 頼りにしてるっスよ、アニキ!」
落合さん「お殿様、今日もますます素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
テレスドン「……ガオォ~、宙マンか!
また不機嫌にさせる奴が出てきやがったなァ!」
宙マン「いやいや、不機嫌なのはこちらも同じさ……
とうとう私も、堪忍袋の緒が切れたよ!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
テレスドン「ガオガオ~、潰れろ宙マン!!」
宙マン「悪いね、そういうワケにはいかないんだよ!」
真っ向激突、宙マン対テレスドン!
人々が見守る中、今日もまたまたスーパーバトルの幕が開く。
猛然、パンチ攻撃を仕掛けてくるテレスドン。
地中を自在に掘り進む怪力と、しなやかながらも頑丈な外皮は
既にそれ自体が、巨大戦における強力な武器である。
テレスドン「ガオガオ~、そらそら、叩き潰しちゃる!」
宙マン「なんの、これでもくらえっ!」
軽快なステップとともに、鞭のような回し蹴り!
宙マンの華麗なキック技に、さしものテレスドンもよろめく。
宙マン「どうだテレスドン、正義の蹴りに怖れをなしたか!」
テレスドン「ガオガオ~ッ、まだまだ!」
テレスドン、怒りの溶岩熱線!
凄まじい爆発の熱と衝撃が、宙マンを大きくよろめかす。
落合さん「……ああっ、お、お殿様!?」
ビーコン「っかー、寝ぼけ半分のくせして……
奮うパワーが半端じゃないのが厄介スよね、アイツ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「くッ……!」
テレスドン「ガオガオ~、黒焦げの消し炭になっちまえ、宙マン!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
テレスドンの吐きだす溶岩熱線の第二波!
が、宙マン、今度はこれを得意の回転戦法で軽やかに回避していく。
テレスドン「ガオガオ~、ちょこまかとッ!」
苛立ち、さらに激しく熱線を吐き散らすテレスドン。
その灼熱の一閃を、宙マンは大ジャンプでかわして空中へ!
テレスドン「(驚愕)が、ガオぉっ!?」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・アサルトヒール!」
右足にエネルギーを集中させ、正義の鉄槌のごとく振り下ろされた
踵落としの一閃が、怪獣の脳天を叩き割るように炸裂!!
これにはたまらず、テレスドンがドドーッと倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、テレスドンを直撃!!
テレスドン「ガオォォ……夢見るように、眠りたかったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったぁ、さっすがアニキっス!」
落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれ、またしても……またしても宙マンめが!
だが、太平の夢を貪れるのも今のうちだけだぞ。
次こそは必ず、ワシらの力を思い知らせてくれる!」
……などと言う、毎度毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、大怪獣テレスドンは見事に撃退され
北海道には再び、おだやかな平和が蘇ったのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、お疲れ様なの~」
宙マン「やれやれ、これでどうにか一件落着だね」
落合さん「これも全て、お殿様のご活躍の賜物ですわ」
ピグモン「宙マン、今日もかっこよかったの~」
ビーコン「これでまた、枕を高くして寝られるっスね!」
落合さん「(呆れ)……えぇ、えぇ。
ビーコンさんは、どうぞお好きになさって下さい」
ビーコン「え! マジっスか、好きにさせてもらってOK!?]
落合さん「貴方には、もはや言うだけ無駄だと悟りましたから」
ビーコン「ヒャッハー、やったやったぁ、そんじゃ遠慮なく!
あのね落合さん、オイラが言う所の「寝る」ってフレーズには
字面の意味だけじゃない、色っぽいニュアンスもあるんスよね。
てなわけで落合さん、さっそく服を脱いでベッドの上へ……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、よくも寝ぼけた世迷言をっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、話し合いの前に肉体原語はナシっスよぉぉ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
平和を愛し、正義に燃えて……
怪獣どもと戦う千歳市民・宙マン。
次回もバッチリ、痛快に大活躍だよ~!