遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

『ウルトラマンアーク』5話、見ました!

”自然現象に対して、完璧は有り得ない。

……だが、俺たちには責任がある。

納得できるまで、

とことん調べてみようじゃないか!

星元市・大光峠のトンネル工事現場において発見された怪獣の化石……

と時を同じくして、深い山中の峠が突然巨大な「海」と化してしまうと言う怪事件に

SKIP星元市分署・伴ヒロシ署長の大学生時代の恩師である考古学者・牧野博士が絡んで

展開していく今朝の『アーク』の物語。

 

そんなかつての師弟関係に、10年近くずっとあり続けて来た苦い思い……

牧野博士は学生時代の伴が発見してきた化石を、過去の経験だけに即するかたちで

「新種の生物の化石などではありえない」と否定してしまった(皮肉にもその直後に

訪れた全世界的なK-DAYで、未知の巨大生物の存在はなし崩し的に肯定せざるを

得なくなっている)、またその化石の発見者である伴も、あのときもっと食い下がり

とことん調べてさえいれば、怪獣災害そのものを防ぐことは出来なくても、その被害を

少しでも減らすことはできたかもしれない(そして、その思いが彼のSKIP参加に対して

背中を押すこととなった)と言うそれぞれの歴史と後悔。

 

声高に叫び、胸倉をつかみ合うような対立ではなく、決定的な生き方の違いでもない

ほんの小さな心の「しこり」に過ぎないようなものですが、それらの小さな営みが

日々積み重ねられ、前を進み、しかも「怪獣のいる世界」でなければ有り得ないような

人々の哀歓のささやかなドラマとしてさりげなく、自然に描き切ってくれると言うのは

本作『アーク』ならではの素晴らしい美点として、今話でもしっかり健在です。

ウルトラマンアーク & 全ウルトラヒーロー ひみつ大図鑑 (講談社MOOK)

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で、そんな峠の怪事件の調査が進む中でかつての師弟の関係と信頼も穏やかに修復され

今の伴ヒロシがSKIP分署長としてメンバーの信頼を得るに足る理由が改めて示され……

そして朝食時のゆで卵に石堂さんがつけた塩が、この事件の陰に潜んだ怪獣の存在を

SKIPが掴む上での決定打になる(『帰マン』14話において、坂田自動車工場での

何気ない会話からシーモンス上陸の理由が産卵であることを掴むなど、これもまた

『ウルトラ』怪獣&人間描写におけるひとつの常套ですよねぇ)など、さりげなく

ちっぽけな日常描写の丁寧な積み重ねの上に毎回の怪奇・超常現象の数々も存在し

それがクライマックスにおける怪獣出現のカタルシスとして結実していく作劇は

真摯であり誠実で、その流れに身を委ねるのが実に気持ちいいですね。

[バンダイ(BANDAI)] ウルトラ怪獣シリーズ 219 リヴィジラ

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さてさて、そんな今回のゲストスターである”巨鯨水獣”リヴィジラ。

最初にその造形をスチール写真で見た際には、そのバカみたいに大きな口と言う

色んな意味で思い切りの良すぎるデザインから、どんなコミカルな演出でもって

滑稽に立ち回ってくれるんだろう、などと失礼な(笑)感想を抱いていたのですが、

いざ蓋を開けてみればマァ怪獣らしくて怖いこと!!

 

海中を自在に泳ぎ回るばかりではなく地中をも自在に掘り進み、深い山中の峠に

「海」を形成できると言う雄大な特殊能力(劇中ラストでは、その塩分濃度によって

他の外的静物を近づけさせないためのものだと推測されていましたね)、水中と言う

バトルフィールドの利点を存分に活かして我らがアークを苦戦させる巧者っぷり。

ソフビですとこんなにもお間抜けでギャグマンガチックにも思えるこのルックスが

いざ本編に出てくるとまぁ怖いこと、怖いこと(汗)!

 

そう、このリヴィジラに限った話ではないですけど、『アーク』新登場の怪獣たちは

どれも「あくまで生物である」と言う描写の背骨がしっかりビシッと入っていて

ファンシーさやコミカルささえ感じる「可愛い系」の玩具向きな見た目の連中ながら

生物らしさの実存がどの怪獣にも溢れている、その真摯さが本当に嬉しいですね。

 

加えて「巨大な怪獣がただ暴れれば良い」と言うのではなく、工場地区で生成される

何らかの成果物が怪獣にとっての「餌場」であったり(シャゴン、ネズドロンなど)、

あるいは今回のリヴィジラのように「海中」と言う自らの生息圏内でその能力を

存分に発揮してヒーローを苦しめたり……優れた怪獣とはデザイン上の尖り具合や

データー上の数値的な強さばかりではなく、出現までの前兆や異変、どんな場所で

どんな暴れ方をするか(=どんな生態を有しているのか)が抜かりなく描写されて

はじめて輝きを放つと言う……「怪獣番組」としてはごく当たり前のことであり

それだけに時として忘れられがちなこの概念と衒いなく向き合ってくれるのが

市井の一怪獣ファンとして何にも勝る喜びです。

[バンダイ(BANDAI)] ウルトラ怪獣シリーズ 216 シャゴン

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怪獣番組として、空想特撮シリーズとしての「当たり前」。

その心地よさを迷いなく今に伝えてくれる『アーク』、もう大好きな番組です!