じりじりと照り付ける太陽、生暖かく湿った空気の重さ……
日本全国津々浦々、どこからどう見ても夏まっさかり。
ここ・北海道千歳市も、暑い日が続く文字通りの「盛夏」。
例年にないほどの最高気温を、今年もぶっちぎりで更新中である。
暑い、暑い、本当に暑い……
そんな北海道の片隅、ご存じ千歳の「宙マンハウス」。
今回の「宙マン」もまた、ここから物語を始めよう。
みくるん「うふふ、ですけど……
今日は珍しく、蒸し暑くなくて過ごしやすいですよねぇ!」
ながもん「毎日、毎日……蒸し暑くて、たまらなかったから……
理由は、どうあれ……正直……たすかる」
ピグモン「寝苦しくなかったから、朝までぐっすりなの~」
宙マン「涼しいおかげで、食欲もモリモリ沸いてくるよねぇ!」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラの場合は性欲も……」
げ し っ !
落合さん「(呆れ)余計なことは言わなくて結構!」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
ビーコン「……っと、それはともかくっスね。
なんつーか……涼しいの通り越して、寒くないっスか!?」
みくるん「ほにゃ……言われてみれば、確かにぃ」
ながもん「……(ブルブルッと震えて)」
ピグモン「えう~、寒いの、急に冬になったみたいなの~」
宙マン「そんなバカな……とは言い切れないね、こりゃ」
落合さん「一体全体、急にどうしたんでしょう?」
ビーコン「まずはちょいと、外の様子見からっスよ~」
と、ビーコンが家のドアを開けて……びっくり仰天!
「……ど、ど、どひ~っ!!(汗)」
落合さん「どうしましたの、ビーコンさん!?」
ビーコン「いや、どうしたもこうしたも……コレ見てっスよ、コレ!」
宙マン「……うわ、何てこと!」
ピグモン「えう~、吹雪でぜんぜん前が見えないの~」
落合さん「ですが、8月半ばに雪だなんて……」
みくるん「(頷き)いくら北海道でも、気が早過ぎですぅ!」
宙マン「急すぎるな……それに、この荒れ方はどう見ても異常すぎる」
ビーコン「(ハッとして)まさか、今日もまたまた……」
落合さん「……怪獣の仕業、でしょうか!?」
ピグモン「(上空を指し)ああっ!……みんな、アレ見てアレ、なの!」
おお、またしても不気味な異変!
ピグモンが指差した方向の空……宙マンたちの頭上を、猛烈な勢いで飛んでいく
不気味な黒い黒雲!
みくるん「ふぇっ!?……ま、まさか、あの雲が!?」
ながもん「(頷き)露骨に……いろいろ……胡散、臭い」
「ガッガッ、ガオオオ~ンっ!!」
ビーコン「ど、どひ~っ!?」
そう、今回もまたまた、大方の予想通り。
黒煙に身を包んで飛来してきたのは、巨大な二枚の翼を備えた
見るも怖ろしい大怪獣であったのだ!
ズ、ズーンっ!
みくるん「ふぇぇん、やっぱりですよぉ、やっぱり~!」
ながもん「あれは……南極生まれの……冷凍怪獣、ペギラ」
ピグモン「えう~、道理で真冬みたいに寒かったわけなの~」
「怪獣軍団」の古参メンバーにして、「冷凍怪獣派閥」の最有力者。
冷凍怪獣ペギラが、またも懲りずに姿を現した!
koumemylove4794.hatenablog.com
ペギラ「ガオオーンっ、おこんつわ!
冷凍怪獣ペギラ様が、北海道にお住いのみなさんのために……
ひと足早く、冬を届けに来てやったぜ!」
落合さん「んーまっ、何て言う有難迷惑!」
ビーコン「急転直下の冬ってのは、風情に欠けるっつーか……」
ペギラ「なぁ~に、黙ってたっていずれは冬が来て……
しばらくの間は、分厚い雪に閉ざされて暮らすンだろうがァ。
ちょっと早かろうが、固いコト言いっこなしさね!」
宙マン「ううむっ……何てアバウトな!」
イフ「わははは! アバウト結構、大いに結構!
暴れろペギラよ、お前の力で千歳に氷河期をもたらせ!」
ペギラ「ガオオーンっ、やりますぜィ、魔王様ぁ!」
怪獣魔王から檄を飛ばされ、がぜん奮い立つペギラ!
のっし、のっしと重々しい足音を響かせ、進撃開始する。
ビーコン「どひ~っ、結局また今回もこうなっちまうんスねぇ!?」
落合さん「逃げるが勝ちですわ、ホラ急いで、急いでっ!」
みくるん「きゃああんっ、怖いやら寒いやらですぅ~!」
平和な千歳市に危機迫る!
持ち前の凶暴さを全開にして、人々の恐怖と混乱を鼻で笑いつつ
この猛威を阻止すべく、直ちに戦闘機隊がスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ……戦闘機なの!」
落合さん「(頷き)今日も勇んでお出ましですわねぇ!」
ビーコン「いいトコロに来てくれたっス、頼んだっスよ~!」
「ようし、やるぞ……それっ、攻撃開始だっ!」
だが、その相次ぐ直撃にも、怯むことのない冷凍怪獣。
ペギラ「ガオオーンっ、仕事の邪魔だぁっ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
実に恐ろしきは、ペギラの吐き出す冷凍光線の威力。
その洗礼を受け、次から次に撃墜されていく戦闘機隊。
みくるん「ああっ、やられちゃったぁ!」
ながもん「ペギラは、強豪……相手が、悪すぎた。
……防衛隊の、皆さんのこと……
弱いとか、役立たずとか……責めるのは……気の毒」
みくるん「……私、そこまで言ってないよ?(汗)」
……などと、言っている間にも。
大パニックとなり、右往左往して逃げ惑う千歳の人々。
それらをアザ笑うように、霧状の冷凍光線を吐くペギラ!
全てを凍りつかせるばかりか、反重力現象まで巻き起こす……
ペギラの冷凍光線の恐ろしさは、正にここにある。
おお、北海道千歳市、絶体絶命の大ピンチ!
ペギラ「ガオオ~ンっ、どんなもんだぁ!」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
みくるん「ほにゃっ、ビーコンさん、しっかりして下さい!(汗)」
落合さん「このままでは、永久に春の来ない氷河期確定ですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うペギラの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣ペギラ、一足飛びの真冬など御免こうむるぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 出たっスよ、アニキの十八番!」
ながもん「おお……いつもながら……頼もしい」
みくるん「宙マンさーん、頑張って下さーいっ!」
ペギラ「ガオオ~ンっ、お前も氷づけにしてやろうか、宙マン!
カチンコチンになって、永久にグッド・ナイトだぜ!」
宙マン「悪いが……謹んで、辞退させてもらおう!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
宙マン「さぁ、どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ペギラ!
落合さんたちが見守る中、相まみえるは二つの巨体。
翼を激しくうち振り、チョップ攻撃を仕掛けてくるペギラ。
その打撃を見切って回避し、時に受け流しながら、宙マンもまた
果敢に敵怪獣の内懐へと飛び込んでいく。
ペギラ「ガオオ~ンっ、野郎、相変わらずやりやがるな!?」
宙マン「そりゃもう、正義は必ず勝つものだからね!」
力と技、そして舌鋒を容赦なく応酬しあう宙マンとペギラ。
両者、再びバッと離れたところへ――
ペギラ「ガオオ~ンっ、これでもくらえっ!」
ペギラの吐き出す冷凍光線!
恐怖の洗礼を、辛くもかわした宙マンであったが……。
ペギラ「ガオオ~ンっ、そぉれっ!」
バサバサバサバサっ!
ペギラの羽ばたきによって、凄まじい烈風が巻き起こる!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱ強いっスねぇ、アイツ!」
ながもん「さすがは……怪獣界の……古豪」
ピグモン「はわわ、感心してる場合じゃないの~!」
落合さん「(祈るように)……お殿様っ!」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
ペギラ「ガオオ~ンっ、心臓まで凍りつかせてやるぜ!」
「なんの……本当の勝負は、ここからだ!」
宙マン、パワー全開!
ペギラの冷凍光線をひらりとかわして、大空高く舞い上がる。
ペギラ「(目をパチクリ)が、ガオろろろっ!?」
宙マン「行くぞ、ペギラ!」
宙マン「こいつを受けてみるがいい!
宙マン・レインボーキック!!」
全身のエネルギーを瞬時に増幅させ、両足で蹴りこむ大技……
虹色の一撃、レインボーキックがペギラめがけてヒット!
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ペギラを直撃!!
ペギラ「うぎゃああっ、激辛にも程がある一撃ぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりましたぁ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ながもん「……グッジョヴ」
イフ「ぐっぬぬぬ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、怪獣軍団の真の恐怖を知るのはこれからだ。
次なる怪獣が、お前の肝っ玉を心底寒からしめてくれるわ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、冷凍怪獣ペギラは撃退され……
千歳には再び、あの盛夏の暑さが戻ったのであった。
落合さん「改めて……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
ピグモン「これでまた、安心してゆったり過ごせるの~」
ながもん「みんな……宙マンの、おかげ」
宙マン「はっはっはっ、おだてたって何も出ないよ?」
みくるん「うふふ、おだてなんかじゃないですよ~。
……ああ、それにしても本当に良いお天気で……」
……と、みくるんが言いかけた矢先。
不意に、宙マンたちの間を涼しい風が吹き抜けていった。
ビーコン「……うひいっ、ひやっと来たッ!
今のこの風……まさか、また新しい冷凍怪獣っスか!?」
落合さん「(苦笑)……ビーコンさん、よくお考えになって下さいな。
既に8月も半ば近く、お盆を過ぎれば徐々にこの暑さも和らいで……
……でしょ?(にっこり)」
ビーコン「……や、そっかぁ。そうっスよねぇ(頭かきかき)」
宙マン「はっはっはっはっ」
そう、今は夏……
そして、次の季節も控えてるんですもの。